Feed

電子タバコを買った

Posted on 3月 3rd, 2010 in 倉庫 by apj

 電子タバコを見つけて衝動買い。ニコチン・タールが含まれていないことを確認後、付属のカートリッジのミント味を使ってみた。タバコ味カートリッジもお試しでついていたが、もともと喫煙の習慣はない(生まれてから一度も煙草を吸ったことはない)ので、わざわざタバコ味を試す気にはならない。当然のことながら、この先も本物の喫煙をする予定はない。大体、季節の変わり目に咳喘息の治療が必要になりがちなので、喫煙するなど自殺行為も甚だしい。

 一応「禁煙・減煙」目的の商品で、喫煙の習慣がない人は使うなと書いてあるが、大きなお世話だと思うので自己責任で使うことにする。説明書の注意書きを忠実に守って電子タバコを使うという目的で、これから改めて喫煙の習慣を身に付けるってのは、物凄く本末転倒だと思うし、体にもよくない。
 電子タバコのニコチン・タール無しのものなら吸っても他人に迷惑はかからないし吸ってる本人の健康も害さない、習慣性も中毒になることも無いだろうし、部屋が臭くなったりもしないし、火の不始末による火事の心配も全く無いし、吸い殻散らかすと怒られることもない。とりたてて害があるとも思えないのだが……。

 吸ってみた感じではそんなに悪くない。ミントについては、もうちょっと香りが強ければ、口臭軽減目的にも使えるかも。
 ネットで調べたら、電子タバコのカートリッジには、バニラ味とかイチゴ味とかいろいろあってなかなか良さそう。

 使用目的は……実は減量・ダイエット用。バニラとかイチゴとかレモンを選んで「煙草の量のコントロール」ではなく「食欲のコントロール」に使えないものかと考えている。吸ってみると、ミントの場合、数回でもそれなりに口の中や鼻の奥にミントの香りが残るので、これがバニラやイチゴやレモンなら、甘い物やおやつが欲しくなったときに香りだけで我慢する、というのに使えそうである。ニコチン中毒になる心配が無いので、安心してダイエットに使える。

 20歳の頃の体重から10kg以上増えて、何とかした方がよい身にとっては、口が寂しくなった時にどう対処するかが切実な問題だったりする。これまではチュッパチャプスが定番だったがカロリー制限をやってる時には利用不可(というかこんなものを常用してたから後から減量が必要になったわけで……)。ヘルシー路線ということで、おやつ昆布という手を考えたが、咥えているところを他人に目撃されると間抜けなのでやっぱり利用に制限が……。それで、ノンカロリーの電子タバコで、食べ物に対する嗅覚と味覚だけうまいこと誤魔化してはどうかという手を思いついた。

 難があるとしたら「禁煙だ分煙だとやかましく言われている今どき、煙草を吸ってるように見える」という点くらいだが……そこは妥協するしかないか。少々格好が悪いが、チュッパチャプスとおやつ昆布と電子タバコの三択だからなぁ……。

【追記】
 よく見ないと本物を吸ってるかどうかがわからないため、ニコチン無しの電子タバコであっても、公共の場所では使用場所が限られるらしい。それならいっそ、チュッパチャプス型とか、三連のチロルチョコ(復刻版)型とか、クッキー型のものを作ると、人目を気にせず使えるかもしれない。電子タバコの場合はそもそもが禁煙目的から出発してるので、見た目もタバコだけど、ダイエット目的から出発すれば、食べ物を模した形にするというのも有りなんじゃないか。

大学で義務教育の尻ぬぐい

Posted on 2月 28th, 2010 in 倉庫 by apj

 毎日新聞の記事より。

25時:言霊とミカン /宮崎

 ミカンに「ありがとう」「死ね」と話し掛け、変化の有無を観察する「言霊(ことだま)大実験」が昨秋、県南地域の中学校であった。言葉の大切さを考える道徳学習だという。

 対象はビンに入れた3個のミカン。約2カ月後、生徒から悪い意味の言葉を掛けられた方が腐り始めた。良い言葉の方は変化なし。発案した教諭、そして多くの生徒が「言葉が伝わったのでは」と思ったという。

 言霊とは、言葉が霊的な力を持つという信仰だ。そして人は、古くから森羅万象に魂が宿ると信じてきた。位田晴久・宮崎大学教授(野菜園芸学)は「園芸作物を育て、心の癒やしや安らぎを得る効果は間違いなくある。若い世代が事実の検証を重ねて不思議な現象を明らかにすることに期待したい」としたうえで、「植物に人間の言葉の持つ意味を理解する器官は確認されておらず、現時点で真理として教えるのは適切ではない」と指摘する。

 大阪大の菊池誠教授(物理学)も「ミカンはただの物質で、言葉の影響を受けるとは考えられない。少数での実験結果は偶然に左右される。気持ちはわかるが勇み足だ」と疑問視する。

 子供の理科離れが指摘されるなか、真偽不明の事柄をあたかも事実のように扱うことには違和感がある。心に平穏を与える宗教やおとぎ話を否定はしないが、世間には科学や善意のふりをしたまがい物が数多くあるからだ。

 病気や美容への効果をうたう商品やサービスを巡る詐欺的商法は後を絶たない。中学生も数年後には社会人だ。「愛の言霊パワーを封印した限定商品をわずか10万円で」と勧められた時、冷静に判断できるか。健全な批判精神を養うことも、教育には必要ではないだろうか。【石田宗久】

 まだ、「水からの伝言」から派生した「みかんに声かけ実験」を、義務教育の道徳で教えている教員が居るらしい。
 私の方では、大学の共通教育で水からの伝言を取り上げて、「科学として間違いで国語としてもダメで道徳としては不道徳な内容」とやってるわけだけど、義務教育が未だにこれでは、当分この内容を教材から外せそうにない。来年度は、水だけではなく、ミカンやごはんの話も取り上げた方が良さそうでさる。

 結局、大学までたどりついて(私の講義を履修した人には)「道徳でやった内容は実は大嘘で、話の内容は極めて不道徳だ」と教えることになる。健康への効果を謳う「波動関連商品」についても摘発の経緯を説明しているし、そのことと、声かけ実験道徳のベースになっているのが「波動」で、道徳の授業のはずが、インチキ波動商品を売ることに荷担する内容でしかないことまで説明している。詐欺の被害者が出るのを防ぐという意味もあるのだが、受講生には教員を目指す人だっているので、そういう人が、将来、この手の内容を授業でやらないように、ということも狙っている。

 つまりは、義務教育で行われた道徳教育の嘘の尻ぬぐいを大学ですることになっているのである。この手の内容を道徳で教えるというのは、道徳的にはじゅうぶん非難に値する行動だと、今年からはっきり言うことにしよう。そろそろ、いい加減にしてもらいたい>小中高で道徳教えてる先生方。

学校が何をしていたかは、はっきりしているんじゃないかな

Posted on 2月 27th, 2010 in 倉庫 by apj

 YOMIURI ONLINEの記事より。

【学力考 いわての危機・上】社員に「引き算」研修

 小学3年生用の計算ドリルや高学年用の漢字ドリル。これらの教材を、携帯電話などの関連部品を作る沿岸部のある企業では、新人研修で使っている。もう10年になる。「かけ算九九さえ満足にできない若者がいる」との悲鳴が以前から現場で上がっていたからだ。

 「102―69=941」、「107―48=152」。研修の場で、小学校レベルの引き算ができない高卒の新入社員を見て、社長(63)は、あぜんとした。

 研修では、できない社員に対し、上司が付きっきりでマスターするまで指導している。この社長は「学校は何をしていたのか。そう思わずにいられない」と、深いため息をつく。

 「ゆとり教育」導入以後、全国的な問題となった子どもの学力低下。だが、本県の現状はとりわけ厳しい。

 文部科学省が昨年4月に全国の中学生に実施した学力テストで、中3は、数学Aが全国ワースト3、Bが同4位となるなど国数2教科4科目中、国語A以外で全国平均を下回った。数学Aは2007年の全国学力テスト復活後、3年連続でワースト3に低迷する。

 高校生はさらに深刻だ。

 17日、花巻市内で県内小中高の教諭らが集まって開かれた県教育研究発表会で、昨春実施の大学入試センター試験の平均点が主要13科目中9科目で最下位かワースト2という結果が示された。

 加えて、同じ場で、県教委の佐々木修一教育次長は、昨春卒業した東北6県の高校生の高校3年間の全国模試について、英数国3教科合計の平均偏差値がどう推移したか、民間業者が作った県別のデータを紹介した。

 1年生の7月時点で、本県は47・1で最下位。5位の県とは1・7ポイントの開きがある。その後一時回復するが2年生の2月から下降し始め、卒業近い3年生の11月時点では45・5。

 東北トップの県でも49・3で平均を下回っているが、トップから5位(48・1)まで1・2ポイント差でひしめき合っているのに、5位と本県との差は2・6ポイントもあった。

 偏差値は、1ポイント違うと合格が見込める大学の難易度が一段違ってくるとも言われている。2・6ポイントの開きは、あまりにも大きい。

 東北の残る5県からも引き離されている岩手の高校生の学力について、ある高校教諭は「『みちのく一人旅』だ」と自嘲(じちょう)気味に話す。

 他方、小6は、昨年4月の全国学力テストで、算数、国語の2教科4科目とも全国平均を上回り、国語Aが全国12位、Bが同9位といずれも上位だ。本県の学力低迷は、中学から始まっている。

 佐々木次長は「基礎学力は進学だけでなく、生きていくのに必要なもの。まず、中学の学力を何とかしないといけない」と、焦燥感をあらわにする。

     ◇

 岩手の子どもの学力が危機的な状況になっている。現状と課題を問う。

(2010年2月20日 読売新聞)

 続く記事はこれ

【学力考 いわての危機 中】数学の理解 中3最低

 54・4%――。

 アンケートで県内の中学3年生が「数学の授業を理解している」と答えた割合だ。昨年4月の全国学力テストの一環で実施され、全国平均は64・9%だった。開きは10ポイントを超す。2007年の全国学力テスト復活以来、本県の中学生は、数学の授業が「わかる」あるいは「どちらかというとわかる」と肯定的に回答した割合が3年連続で全国最低だった。中学3年生のほぼ半分が、よくわからないまま数学の授業に臨んでいる。

 このデータは、現場の数学教諭にも衝撃的だった。盛岡市立上田中の佃拓生教諭(40)は、07年秋、全国学力テストの結果が出るのを心待ちにしていた。手応えを感じていたからだ。だが、数学A、Bとも最下位クラスという順位に加え、理解度を尋ねるアンケートも最下位。佃教諭はがく然とした。

 全国学力テストの結果を分析すると、正答率が低いグループと高いグループで、四則計算や文字式など小学校や中学1年で学習する基礎、基本を問う問題の正答率に大きな開きがあることがわかった。

 そこで、佃教諭は、授業で、分数の割り算なら正解の出し方だけでなく、分数の仕組みも丁寧に説明するようにした。50分の授業中、10分は基礎の確認に充てる。そうすると今度は、授業時間が足りない。佃教諭は、「数学の授業時間は10年前より年に35時間減った。中学でやるべき数学の授業をなかなか進められない」ともどかしそうに話す。

 県教委も、中学1年生でのつまずきをなくそうと、08年度、小学6年生と中学1年生向けに「中学校数学準備問題」という問題集を作った。昨年4月末時点の調査では、76%の小中学校が利用し、今後使いたいという回答は9割近かった。

 また、小学校から、子どもたちに自分で知る喜びを知ってもらうため、積極的に辞書を活用し始めたところもある。陸前高田市立長部小は、昨年4月から、全児童95人に国語辞典を配り、全教科の授業中、わからない言葉を調べてもらうようにした。同校は読書も呼びかける。

 授業内容の理解が進まない原因を県教委は、どうみているのか。佐々木修一教育次長は、「前回習ったことと、その日学んだことの確認は基本中の基本。だが、恥ずかしながら、できていない場合が多い」と授業の進め方に問題があると率直に認める。

(2010年2月23日 読売新聞)

 その次がこれ

【学力考 いわての危機】〈下〉家では「ながら勉強」

 大船渡市に住む中学1年生のタカシ君(12)(仮名)は、学校が休みの土曜夜、自宅の勉強部屋にあるこたつでノートを広げた。兄(15)の勉強机もあるが、テレビが目の前のこたつが指定席だ。

 テレビからは、お笑いタレントの大きな声が響き、机の上には読みかけの漫画本。視線はテレビとノートを行ったり来たりする。1日約30分勉強するというタカシ君は「いつもこんな感じ」と屈託ない。家族からとがめられることもあまりないという。

 「ながら勉強」が、ごく普通になっている。昨年8月に全国学力テストに併せて実施された学習状況のアンケートで裏付けられた。「テレビを見ながら家庭学習をしていた」と答えたのは、「ときどき」も含め、県内の小学6年生で76・9%に上る。高校受験を控えた中学3年生でさえ、半数を超す57・4%だった。

 家庭学習の時間も短い。中学3年生の1日あたりの家庭学習時間(平日)は、「1時間未満」の合計が、ほぼ2人に1人の46・9%で、全国平均の34・6%を大きく上回る。県内の小学6年生が34・3%にとどまるということは、中学に入ると家庭学習がおろそかになる子どもが100人のうち12人も増える計算だ。

 では、質はどうか。

 「自主ノート」や「自学ノート」と呼ばれる手法が、家庭学習で中心的な役割を果たしてきた。教諭は「2ページ分」などと分量を指示する程度で、科目や内容は原則自由だ。自主的な勉強習慣を身につけさせようと20年ほど前から広がり始め、教科担任が課題を指定する宿題に取って代わった。

 ところが、県南部の中学校の数学教諭(45)は「自主ノートで数学をやってくる生徒は、ほとんどいません」と明かす。ノートに同じ漢字の書き取りを繰り返すだけ、という生徒も少なくないという。

 実際、県立総合教育センターが昨年11月に実施した調査では、県内中学の教科担任の63・6%が、自主ノートの学習効果に疑問を感じていた。

 こうした現状から、県教委は、宿題に再び目を向け始めている。北上市立和賀東中では09年度から各教科できめ細かに宿題を出し、生徒の取り組みを4段階で評価している。すると、授業で積極的に質問する生徒が増えてきたという。

 8年前に全国で本格導入された「ゆとり教育」の目的の一つも、自主性を育むことだった。しかし、学習塾「M進」盛岡本校の高橋栄一講師(35)は、「最近の生徒は、自分から学ぶ姿勢に乏しい」と分析する。

 「自主」や「ゆとり」という言葉は耳には心地良く響く。でも、その裏側で、見落としてきたものはなかったか。基礎学力の低迷という厳しい現実は、学校と家庭に自らを見つめ直すよう迫っている。

 (この連載は、中島幸平、吉田拓矢、工藤武人が担当しました)

(2010年2月24日 読売新聞)

 一部の進学校を除いて、学校、特に小・中・高が何をしてきたかは、はっきりしている。成績に関する「粉飾決算」をしていたの一言に尽きる。学習内容がマスターできていない生徒を進級させ卒業させて続けてきた。何も岩手に限った話ではない。
 まともな学力試験を課す大学に進学する人達は勉強する機会があるから学力を向上させるチャンスがあるのだろうけど(それでも大学全入とAO入試の横行で危なくなっている)、粉飾決算成績判定&受験勉強の機会無し、なら、学力がどうなるかは誰にだって想像がつく。四則演算の補修を会社でしたくないというのなら、受験勉強を通過した大学生を雇うしかない。あるいは、高卒の入社試験に小学生レベルの算数の問題を課して選別するか、どちらかだろう。会社で無理にフォローしようとせず、出来の悪いのは試験で落として突っ返す方針でいった方が、教育現場に対して「何が問題か」をきっちり突きつけることができるはずである。小学校で学ぶべき事は小学校が責任を持って、習得するまでやらせなくちゃいけない。習得してない人を卒業させた結果、その次の学校が尻ぬぐいする羽目になるとうというのは間違っている。中学、高校についても同様。
 また、数学が出来なきゃ就職できない、というメッセージを伝えることも大事なんじゃないかなぁ。数学は社会では役立たない、といった間違った偏見をただすためにも。

英:ホメオパシーへの財政支援の中止

Posted on 2月 26th, 2010 in 倉庫 by apj

 NewScientistの記事より。英国の国民保健サービスが、ホメオパシーへの財政支援を止めることを決定した模様。
 これまで支援があったことの方が驚きだが、支援を止めるのは良いことである。プラセボのために保健の金を投じる余裕など無いだろうから。

 それはともかく、ホメオパシーがプラセボ以上に効くという印象を与える行為はすべて患者への騙しだろう。世の中、騙されることに金を払って無問題な場合もあるが、それは、金を払う側がそのことを知っている場合だけである(フィクションを読んだり観たりするために金を払うなど)。ホメオパシーが「プラセボ以上の効果は何も無い」ことを患者に十分に説明し納得させた上で使われるのなば、患者に正しい情報を与えている(インフォームドコンセントが十分である)ことになるが、そうでないものは患者を誤認させていることになる。

磁気水(吉岡氏の件)について補足

Posted on 2月 18th, 2010 in 倉庫 by apj

 1つ前の関係ないエントリーに、愉快犯を名乗る人物が、リモホ112.68.231.242(←他でも似たようなことをしてるとか、磁気活水器マルチの関係者かもしれないので一応メモ)から書き込んできた。
 関係のない話題にフォローしている時点で程度が知れるわけだが、そのまま続けても話が混乱するので、こちらに引用して、コメントは削除する。

磁化水」計測に成功 (by 愉快犯)
http://www.minusionwater.com/magwatermeasurement.htm
なんていう記事が吉岡さんのサイトにありましたよ。
水商売ウォッチングの反論が楽しみ!
あんたの科学者の端くれならくだらんことばかりブログに書いてないできちんと科学者らしいコメントを述べよ!
at 2010/02/17 23:10:38

 これについては、既に掲示板で話が済んでいる。
http://www.cm.kj.yamagata-u.ac.jp/bbs01/showthread.php?mid=27577&form=tree
http://www.cm.kj.yamagata-u.ac.jp/bbs01/showthread.php?mid=27567&form=tree

 ソースが日刊工業新聞なのだけど、掲示板の方にも書いたように、この新聞のこの手の取材記事は、とんでもないものが出ることがあるので信用ならない。かつて、取材される側にいた時の経験からすると(当時の軽部研究室は、紙面が埋まらないと「話題ありませんか」と記者が来るような所だった)、マユツバとか話半分以下だと思う方がよい。私が遭遇したケースは、確かO157の食中毒が問題になって、検査法の開発が必要だという時の話である。同じ研究室の人がこれまで別のDNAについてやってきた分析方法でO157もターゲットにする計画を考えていた、程度の状態で、新聞に出た記事は、既に検出キットの開発が行われていて今にも実用化できる、ってニュアンスの代物だった。さすがにこれはまずいだろうと、取材に応じた担当者が青くなっていた。こういうことがあるので、日刊工業新聞の取材記事であっても、新聞記事はまずあてにならない。

 問題の件は論文のアブストラクトは公開されていて、見ることができる(掲示板の議論の方にアブストラクトへのリンクがある)。それによると、使った水は”Sample water (public drinking water)”となっている。これでは、水の中にどういう不純物が入っているかわかったものではない。微小な効果の測定になればなるほど不純物のコントロールが難しくなるのだけど、著者がそのへんをどう考えているのかがまったくわからない。本文を見ないと何とも言えないのだけど、磁気水界隈では、実験に使う水処理の仕方を変えると結果が変わったという話もちらほらある。水の精製が足りないと、何を測定しているかさっぱりわからないということになる。

 現状の磁場の水に対する効果の測定は、pure waterを使って、溶存酸素の濃度を制御するといった精度で行われている。飲料水などという曖昧なものでOKというやり方をとってはいないのである。

 ついでに言うなら、研究者の1人は、昔はまともだったかもしれないが、最近は、気功エネルギーの研究をしていて、代替医療の怪しい方に首まで浸かっているように見える。普通に考えて、話をそのまま信用していいとは思えない。

 それよりも何よりも、一番笑えるのは、吉岡氏がこの記事を得意気に出していることの方である。

 特商法や景表法によると、商品の効果についての合理的根拠は、販売開始時に備えている必要がある。条文には書かれていないが、根拠の提出を認められてから提出期限までが短いので、根拠を求められてから実験したのでは間に合わないようになっている。従って、法は、販売開始時に合理的根拠を備えるよう求めている、と考えるしかない。
 仮に、この論文がまともだった場合、吉岡氏のこれまでの販売が違法であったことを補強する証拠になるだけである。
 「今回初めて論文になるような段階のものであった」=「それの論文が出るまで合理的根拠を示す方法がなかったし、かつ、その論文が出てもまだその検査方法等が標準的な方法と認められたわけではない」が成り立つので、論文が出る以前から売ってた吉岡氏は、合理的根拠もないのに思い込みに基づいて違法な販売をしていたという結論になる。

 販売が合法であることを言いたいのなら、今頃新しく出た論文を紹介していたのではダメで、「販売する10年も前から論文レベルの話は終わって評価方法その他が確立してました」という顔をしていないといけない。まあ、出来ないだろうけどね。

 つまり、問題の記事を引用することは、華麗に吉岡氏の首をしめることになるのだけど、自分で自分の首をしめている事実にご本人だけが気付いていないということになる。

罵倒されるだけで世の中の役に立つとは……

Posted on 2月 17th, 2010 in 倉庫 by apj

 本日知った笑える話。

 某所某ブログで私と私の知り合いが罵倒されまくりらしい。まあ、私は添え物らしいのだけど。
 これだけなら別に珍しい話ではないのだけど、罵倒してる人は海外逃亡中で、日本に戻ってきたら逮捕されるのだそうだ。
 ところで、海外に居る間は、時効が停止する。
 ネットで悪口を書きまくっている間は、海外に居ることが丸わかりになり、従って時効は停止しっぱなしということになるのだと。だから、今回のケースに限り、ネットで罵倒される=悪い奴の時効を停止させる、ということになり、「ただ罵倒される役を引き受けているだけで何故か世の中の役に立ってしまう」という、何だかなぁな状況が実現してしまった。

 いやかなり予想外というか想定外というか。

ハラスメント問題のその後

Posted on 2月 17th, 2010 in 倉庫 by apj

 私が巻き込まれたキャンパスハラスメント問題のその後について。

 昨年3月の教授会で、私が申立人になった分の結果が出たので、教授会終了後1週間以内位に、確定した報告書について、保有個人情報の開示請求の申し立てをした。備え付けの書面で、窓口に行って手続きしたので、手続上の問題は無いはずである。
 ところが、今に至るまで無視され続けている。情報開示もなく、遅れるという連絡すら無い。情報開示請求に対する対応としては、怠慢の極みである。もう十分待ったし、常識的に考えて、そろそろ訴訟をして情報をいただくことにしても良い頃だろうと思い始めていたら、金沢大の別の先生もトラブルに巻き込まれている模様。

 情報を広く知らされることを望んでおられるようなので、URLを記載。ただ、安川氏の側で訴訟資料を整理したものが見当たらず、blogだけでは状況がよく分からないので、今の段階では私からは特にコメントはしない。

 ご本人からのメールで、URLの紹介のみにしてほしいと言われたのでメール引用してたのだけど削除。私信だと言ってきたが、公開したいURLの内容以外にはプライベートなことを何も書いていないメールを面識のない人間に送っておいて、私信だと言うのはどうかと思う。

 訴訟資料は公開しているので、私が書いた「ただ、安川氏の側で訴訟資料を整理したものが見当たらず、blogだけでは状況がよく分からないので」についても、事実に反すると言われてしまった。しかし、訴訟資料の整理については、事件報告スタートPを見ても、私が、実際によくわからなかったので、上記のように書いた部分の訂正はしない。訴状の写しを公開しているところを見ると「(つづく)」になってて、続いている部分がブラウザで見ると上の方に来るので全体を通して追おうとすると読みづらい。また、文章が続くのかと思うと、途中で証拠説明書が入っているので、ちょっと構造が見えづらい。

 訴訟資料をまとめたページというのは、私のイメージではたとえばこんなのを想定してるので(←私が作った資料まとめのページの例)。こういうページを作ろうとすると手間がかかるのだけど、安川氏を応援している人も増えているみたいだから、ボランティアをつのってコンテンツ製作をして、一個所にまとめた方が、よりいっそう、後から来た人にとって状況の把握が楽になると思う。

http://blog.livedoor.jp/gardenursing/archives/1251002.html (最新P)
http://blog.livedoor.jp/gardenursing/archives/963456.html (事件報告スタートP)

 これは一般論なのだけど、後の民事を見据えて、関係者に告訴可能な行動があったら、有無を言わさず刑事事件にしておくというのも一つの手だということも頭に入れておいた方がよい。相手の行動に依存するため、常に使える方法ではないが、検察庁にまで証拠を残しておけば、それなりの牽制の効果はあると思う。

 泥仕合だろうと何だろうと、組織内にいる敵を倒さないと研究も教育も全うできないというのが現状なので仕方がないだろう。文句は先に手出しをした奴に言ってもらいたい。現場は戦場、武器は法である。

 なお、上記のリンク先を見てもわかるように、心を病んでいる学生というのは、誰かを攻撃するのに利用しやすい道具として使われることがある。利用する側は笑顔で近付き、利用される側は最後まで気付かないのだろうけど。地獄への道は善意で舗装されている、って言ったのはマルクスだっけ?このフレーズは、こういう時にも使えるのかしら。

【追記】
 安川氏には、「イェーリングの言葉を胸に刻め」というエールを贈っておきたい。

 自分の権利が蹂躙されるなら、それだけにとどまらず、自分の人格までも脅かされる。権利のために闘うことは、自分自身に対する義務である。また、国家・社会に対する義務でもある。

 学者だから云々とか教員だから云々という話ではない。学問以前のもっと基本的な、法治国家の一構成員としての立場での話である。法的紛争によって法に書かれている権利を本物にするということは、それが必要であり義務だからやるのである。

むしろ嬉し泣きする

Posted on 2月 6th, 2010 in 倉庫 by apj

 どうしても一言言いたくなったので、恋愛掲示板より、例の話題。「オタクの彼と付き合ったら、女の価値は下がりますか…

オタクの彼と付き合ったら、女の価値は下がりますか…
by ishikawa0021
投稿日:2010年2月 2日 16:14 JST

30手前の超奥手オンナです。
このたび初めて、男の人と付き合うようになりました。
4つ年下で、ルックスはどちらかというと童顔でかわいい感じ、
眉毛や髪型、ファッションに気を使っていて、オシャレです。
話す話題も音楽・映画・最近のトレンドネタが多く、とても物知りで、
そんなところに惹かれて自然と付き合うようになりました。
年下のかわいい彼ができて飛び上がるほど毎日が楽しかったのですが、

付き合って3か月くらいで、彼の本性が出始めました。
オタクなんです。秋葉原にいるような感じです。
見た目は変わっていないのですが、アニメやコスプレが好き。
そういうイベントにも実はこっそりと顔を出しているみたいです。
そして、、パソコンの壁紙が
ピンクや紫色の髪で巫女さんの格好?したキモチワルイ、アニメ絵。
これを見たときは、あまりにショックで泣きそうになりました。

私がアニメを快く思っていないのを彼がうすうす勘づいたのか、
今年最初の初詣は一緒に行ってませんし(彼は一人で行ったらしいです)、
お休みの日にたまに合うぐらいになってきました。

おしゃれな彼なので、友達にも紹介していたのですが、彼の本性を知るにつれ、
横にいる私も同じような人種に見られている気がして、怖くなってきました。
そもそもオタクだったら最初にあったときに言って欲しかったのに。
私、恋愛経験が少なくて不安なことばかりで・・・。
結婚も視野に入れているつもりなんですが。

彼は優しいし、好きです。でも彼の本性を友達に知られたときに、
私の価値も下がるような気がするんです。

オタクの彼と付き合っている女は、価値が低いですか?

 彼氏がオタクと判明したら、私だって泣くぞ。もちろん、嬉し泣きに決まっている。

最近買った本

Posted on 1月 31st, 2010 in 倉庫 by apj

 最近買った本で面白そうなものを紹介。
まずは、「その科学が成功を決める」リチャード・ワイズマン (著), 木村 博江 (翻訳) 、文藝春秋、978-4163721507。
その科学が成功を決める (単行本)
 自己啓発本に対する批判本。実験心理学の研究結果が紹介されている。

実験I 「自己啓発」はあなたを不幸にする!
 マイナス思考を抑制しようとすると、人はかえってその考えにとりつかれてしまう
 宝くじに当たった人は、幸せではなかった
 人間の幸福感のおよそ五〇パーセントは遺伝で決まっていて、変えることができない
実験II 「面接マニュアル」は役立たずだった!
 弱点を最初にさらけ出してしまったほうが、好感度はアップする
 あなたが思い悩むほど、他人は自分のミスを気にしていない
 不特定多数に向けてお願いしても、誰も助けてくれない
実験III イメージトレーニングは逆効果
 「プラス思考」の実践者は、ダイエットにも恋愛成就んも失敗する割合が高かった
 「試験でいい点をとる自分」をイメージしつづけた学生は、逆にいい点が取れなかった
 「ダイエット食品」を食べる人はむしろ太る
実験IV まちがいだらけの想像力向上ノウハウ
 「集団思考」は想像力の欠如をまねく
 人間の行動性向は簡単な暗示で大きく変わる
 モダンアートを見るだけで、想像力は引き出せる
実験V 婚活サイトに騙されるな
 ハードルを高くして「いい女」を装う術は、何の効果もなかった
 マニュアル通りの会話をすると異性から最低の評価を下される
 大勢の異性からよく思われようとすると、逆に異性は逃げて行く
実験VI ストレス解消法のウソ
 大声で叫んだり、サンドバッグを叩いても、ストレスは増すばかり
 不愉快な体験のプラス面を書き付けることで、怒りはおさまる
 自分は健康だと思い込むと、本当に健康状態は改善される
実験VII 離婚の危機に瀕しているあなたに
 いくら夫婦間で話し合いを重ねても、関係改善に効果なし
 夫婦で一緒にゲームをするだけで、恋人時代の感情は甦る
 ぎくしゃくした関係は、自分たちよりダメな夫婦を思うことで改善できる
実験VIII 決断力の罠
 意思決定を集団で行うと、リスクの高い決断になりやすい
 人間は「したこと」より「しなかったこと」で後悔する
 正直者とうそつきを見抜く絶対的方法は存在しない
実験IX 「ほめる教育」の落とし穴
 ほめられて育った子供は、失敗を極度に恐れるようになる
 「がまんすること」を覚えた子供は、挫折しても立ち直れる
 子供をおどして注意すると、逆に禁じられた行為をしたがるようになる
実験X 心理テストの虚と実
 筆跡鑑定による性格判断は間違いだらけ
 人間の性格は、ある程度まで生まれた順番に左右される
 性格は指の長さにあらわれる

 見出しだけで判断すると、それもまた誤ったイメージを持ってしまうかもしれない。買って読めば、自己啓発本に毒された人向けの解毒剤になるかもしれないし、近くに自己啓発本マニアが居るような人にとっても、防衛方法の1つとして使えるかもしれない。

代替医療のトリック」、サイモン シン (著), エツァート エルンスト (著), Simon Singh (原著), Edzard Ernst (原著), 青木 薫 (翻訳) 、新潮社、978-4105393052。
代替医療のトリック (単行本)
 タイトルの通りの内容の本で、よくまとまっている。第1章が科学的考え方についての解説になっている。

第I章 いかにして真実をつきとめるか
 壊血病、英国水兵、瀉血の臨床実験/科学的根拠にもとづく医療/天才の一打
第II章 鍼の真実
 プラセボの威力/盲検法と二重盲検法/試験される鍼療法/コクラン共同計画/結論
第III章 ホメオパシーの真実
 ホメオパシーの起源/ハーネマンによる福音/ホメオパシー——隆盛と衰退、そして復活/『ネイチャー』事件/臨床試験に付されるホメオパシー/結論
第IV章 カイロプラクティックの真実
 科学的根拠にもとづくお茶/患者をマニピュレートする/骨接ぎ万能療法/注意してほしいこと/カイロプラクティックの危険性/代替医療の危険性
第V章 ハーブ療法の真実
 ハーブの薬学/一番大切なのは、害をなさないこと/思慮ある人たちがなぜ?/実際に経験したのだから疑いようがないという心情
第VI章 真実は重要か?
 プラセボ——罪のないささいな嘘なのか、医療として不正な嘘なのか/効果が証明されていない、または反証された医療を広めた責任者トップテン/代替医療の未来
付録——代替医療便覧
より詳しく知りたい読者のために
謝辞
訳者あとがき

 代替医療について批判を加える際の、基本的な文献の1つになると思われる。

【注意喚起】血液サラサラの写真撮影を病院以外でされちゃった方へ

Posted on 1月 21st, 2010 in 倉庫 by apj

 ここ数年、「血液サラサラ」がテレビ等で取り上げられた。また、2003年頃にピークだったマイナスイオンの大流行の時には、「マイナスイオンで血液サラサラ」という宣伝文句が世の中に溢れ、マイナスイオンの効果を謳う商品の販売に際して、実際に、採血して血液サラサラ写真を撮影された人も居た。業者が、商品を売るために、わざわざ血液の写真を撮影して客に見せるといったことまでしていたようである。

 ところが、最近になって気がかりな話が伝わってきた。血液サラサラの写真を撮るためには、針などでわずかに傷をつくって(耳たぶや指など)血液を採取するといったことをするのだけど、この採血の器具を使い回ししていた業者が居たという話でである。ごくわずかの傷であっても、他人の血液に触れた器具を使うと、感染症の危険、例えばポピュラーなところでは、C型肝炎に感染する危険がある。

 マイナスイオングッズ、及びその他の健康グッズの売り込みを受けた際に、業者に勧められて、医療機関以外で血液サラサラの写真を撮ってもらった覚えのある方は、医師の診断を受けることをお薦めする。
 針等の使い回しをしていた業者が中には混じっていて、「マイナスイオンで健康に」などと言っている間に、C型肝炎に感染させられている可能性が否定できない。C型は放っておくと命に関わるので、早めに発見して手を打たなければならない。他の感染症についても同様である。

 私のところで、具体的に証拠を押さえられないこと、血液サラサラの写真を撮るという販売手法は全国的に行われたために、他にも採血器具のずさんな管理をした業者が居たかもしれないことを考慮し、注意喚起ということでここに書いておく。もし、家族・親戚・友人知人で、過去に、マイナスイオン製品の販売業者や健康グッズ販売業者に、血液サラサラの写真を撮って貰った人がいたら、医療機関に相談するように注意を喚起してほしい。

 この懸念は、実際に検査をされちゃった人に届かせる必要があるので、できれば、いろんなところで話題にして、必要な人に伝わるように協力していただければと思っている。じっくりでいいので情報を浸透させることを手伝って欲しい。
 検査して異常が何も無ければハッピーなのだが、マイナスイオンの流行やマイナスイオン商法が原因で、知らないうち命に関わる感染症にかかったのでは、目も当てられない。C型肝炎についての詳しい情報は、「C型肝炎」にあるし、厚生労働省のページにもQandAがある。血液サラサラの大流行からの時関経過を考えるに、今ならまだ間に合うだろうから、早期発見に努めて欲しい。

 宣伝目的で血液サラサラの話に乗っかるような科学的判断力の無い業者が、採血器具の管理の方は科学的(=医学的に)に安全な方法で行ったと考えるのは、いささか楽天的過ぎるだろう。とりあえずは疑ってかかるしかない。

【追記】
 黒影さんのところで「血液サラサラ詐欺の被害者にウイルス性肝炎感染の恐れあり」がアップされました。過去に、医療機関でさえ採血器具部品の使い回しが行われていたことの記述や、採血器具の図入りの解説など、大変分かりやすく書かれています。このエントリーをごらんになった方は、ぜひ、黒影さんのところも併せて読んでくださいますようお願いいたします。