大人の科学
前から気になっていた「大人の科学」のスターリングエンジンの号と、ゲルマニウム鉱石ラジオの号が生協にあったので即買い。でも本業の実験があるからすぐには手出しできない。来年は熱力学を教えることになるしなぁ……。
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前から気になっていた「大人の科学」のスターリングエンジンの号と、ゲルマニウム鉱石ラジオの号が生協にあったので即買い。でも本業の実験があるからすぐには手出しできない。来年は熱力学を教えることになるしなぁ……。
「LATEX 2ε 美文書作成入門 改訂第4版」を入手。新版が出たので買ってみた。付録のCD-ROMに、Mac用teTeXがついているが、ソースがUTF-8でも通るものなので、今後を考えると便利かと。インストールも手軽にできる。パッケージの使い方を調べておかないと。
卒論の追い込みを開始した(はず)の学生さんには、「(一週間でマスターする)LATEX 2ε」を買って配置。
白水社のCDエクスプレスといえば、語学の実用的な参考書で、各国語で出ている。その国で生活しているときにありがちな会話を例にして、単語や文法を学びつつ、CDを聴いて練習しようというコンセプトで作られたシリーズである。たとえば、手元の現代ヘブライ語だと、「コーヒーにする?紅茶にする?」といった会話や、「どこでコンピュータを修理できるか知っている?」「トマトを二キロください」といった、生活密着型の例文が出ており、イスラエルに行った臨場感を味わえるようになっている。
これが、ラテン語になるとどうなるか。
「あなたは旅行者ですか?」
「そうです。昨日ローマに来ました」
「何が見たいですか?」
「元老院議事堂を見たい」
となる。
「公衆浴場に行かないか?」
現代の日本で口に出したらほぼ確実に風俗の話だと思われそうだ。
「世界中でどの都市が最も豊かだろうか?」
「もちろん、ローマさ。ローマほど栄えている都市はないよ」
確かに紀元前のあたりはその通りだわな。
「ところで、ぼくは新しいトガがほしいんだ」
トガってのは、ローマ市民が着用する白い上衣のことである。さらに
「これは、何て盛大な行列なんだ」
「ユーリウス・カエサルが凱旋式を行っているんだよ。凱旋車に乗っている月桂冠をかぶった将軍がカエサルさ」
とか、
「試合場では剣闘士たちがみな元首に向かって整列した。何をするのだろう?」
「元首が彼らから挨拶を受けるんだ。彼らのある者は勝利し、ある者は傷つき、ある者は殺されることになるだろう」
今なら人権問題発生だが、古代ローマ基準では問題無し。
「今日は学校に行きたくないな」
「どうして?」
「先生は、ウェルギリウスの詩を覚えてきたかどうか、ぼくに尋ねるだろう。ぼくは全く覚えていないんだよ」
「君が詩を暗唱できなければ、先生は怒って君をむちで打つよ」
ローマの先生、厳し過ぎ。
確かに他の言葉と同様、生活している臨場感はたっぷりある。コンセプトは間違ってない。間違ってないんだけどさぁ……。これのラテン語を暗記してもいいけど、一体どんなシチュエーションで使うんだよその例文は。古代ローマにタイムトラベルでもしてくれと言わんばかりの内容がてんこ盛りで、語学の習得という本来の目的以外のところでツボにはまりまくった。
Newton別冊「完全図解周期表」を購入。特大周期表ポスター付き。学生も社会人も楽しめる一冊だし、理科の先生必携じゃないかな。大学でも、パンキョーなんかやってると思いがけない質問をもらうことがあるので、この手の情報収集は欠かせなかったりする。
つか、インチキゲルマニウム健康法なんかに振り回されてないでこちらを読めと。
昨年はいろいろお世話になり、ありがとうございました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
いやしかし、ネットはつないでるがテレビが無い年末年始って落ち着くなあ。いつ頃からか、年末年始特番の期間が妙に長くなって、見てもあんまり面白いものは無いしで、すっかり遠ざかってしまったのだが……。特番で映画なんかもやってることがあるけど、見たいモノがあればビデオやDVDを借りるか買うかするから意味がない。
元日終わってみたが結局読書三昧で、DVDにはまだたどり着かないorz。
東京に来たので、真っ先にジュンク堂へ。
懸案だったウチ(=と学会)の会長の本「審判の日」「アイの物語」をゲット。トンデモ本大賞の時にも売ってたはずだが、荷物が重くなるので山形で買えばいいや、と思って後回しにしていたら、山形の本屋ではちっとも遭遇しなかった罠。SFつながりで、同じコーナーにあった「天涯の砦」(小川一水)も購入。
コンピュータ関連のコーナーに行ったが、Mac OS Xのプログラム関係はあまり目新しいものがなかった。そのかわり、読み物「ハッカーズ その侵入の手口」を購入。
新書コーナーを回って「知られざる「水」の超能力」(藤田紘一郎)を購入。これは、水商売Bookウォッチングのネタとして。大体、NMRで水クラスターが測定できるなんて話を間違いと見抜けない人に水の話なんか書かれても困るんだよな。
地下のコミックスコーナーで「PLUTO(4)」が出てたので即買い。
そういえば正月だし、書き初めでも……と思ったが毛筆道具なんかドッカにやってしまって久しいしなぁ、とうろついていたら「読める書ける アラビア文字練習プリント CD付き」が並んでいたので衝動買い。あの文字いっぺんちゃんと書いてみたかったので、今年の書き初めはアラビア文字に決定、と。ついでに語学コーナーをざっと見渡したら、カエサルの「がリア戦記」をみつけたのでまたまた衝動買い。塩野七海のローマ人の物語も今年で完結したし、じゃあ、名文と名高いカエサルの文章が一体どんなのかぜひ見てみたいと前から思っていたんだけど……でも原文はラテン語な罠。一応英語と対訳になってるし、ラテン語はCDエクスプレスが手元のipodに突っ込んであるし文法書も持ってるが……意味とれるんかいな(汗)。買ったのはLOEB CLASSICAL LIBRARYのシリーズで、 Harvard University Pressから出ているギリシャ・ローマの古典を、原典と英語の対訳にしたもののうちの1冊である。このシリーズには世界史や倫理社会の授業で聞いた覚えのあるタイトルがいっぱいあって、なかなか興味深い。
自然科学関係では、朝倉物理学大系の中身を確認。良さそうなんだけどちょい高目なので、揃えるべきかどうするか悩んでいたのだが、持ってても良さそうだという結論に。値段が値段だから1割引のある生協で買うことにする。
ちっとも進んでないイタリア語は懲りずに継続中だし、海外モノTVドラマのDVDも溜まってるし、熱力学関係も一通り読んで来年度に備えたいし……。何か正月は本読んでDVD見たら終わってしまいそうな。
ってことで、家にいたら本を読んで年を越すし、大学に居たら年越し実験になると決まっているわけだが、今年は読書で年越しのパターンになりそう。それではみなさんよいお年を(と書いてみたものの、あと3時間半ほどで新年の挨拶を書くことになるよなぁ……)。
非認定大学の博士号 吉村作治学長も取得
早稲田大学元教授で「エジプト博士」として知られる吉村作治・サイバー大学学長(63)が、米国の非認定大学「パシフィック・ウエスタン大学(PWU)ハワイ」の博士号を取得していたことが29日、分かった。同大学は、米国で「学位の乱発」と問題化した「ディプロマ・ミル」(DM)の一種とされ、吉村氏は「うかつだった」と話している。ほかの未認定大学で博士号を取得した英語教育の著名専門家も反省の意を示しており、教育界に「学位商法」の波紋が広がっている。(池田証志)
吉村氏は平成6年、週刊誌の広告を見てPWUハワイ東京事務局を訪問。「ハワイ州の認定を得ている」と説明され、ハワイにある校舎の写真を見せられた。30万円を支払い、英文の論文を提出。7年に博士号を授与されたが、肩書に使ったことはないという。
取材に対し「助教授歴7年のとき、同僚から博士号がないと教授になれないといわれた。早大で博士論文を書いていたが、自分の力が世界で通用するか試したかった。DMとは知らなかった」などと話した。
吉村氏は昭和61年に早大文学部の非常勤講師、62年に人間科学部の助教授に就任。同学部教授になったのは平成10年で、11年に早大理工学部で博士号を取得している。
ブログ「学歴汚染」でDM問題を追跡している静岡県立大の小島茂教授によると、PWUハワイは今年5月、最低25人の学生が州内にいない▽ハワイに事務所がない-などとして、ハワイ州法違反(学位不法授与)で裁判所から罰金や閉校などを命じられた。米国大の学位の質を保証する認定団体の認定を受けておらず、DM規制が厳しいオレゴン州に「DMの可能性が高い」とされたという。
PWUハワイは「アメリカン・パックウエスト国際大学」と名称を変更。ホームページで「法的問題を解決するため努力している」として入学受付を停止している。PWU元教授は「2年前に経営陣が交代、オンライン化を進めている」と説明している。
吉村氏は「学位は本来、入学金や授業料などの金で買うもの。心の栄養であり、お金だけでは買えないものでもある」とした上で「うかつだった。DMはよくないし、それを悪用するのもよくない。皆さんにも気を付けてほしい」と訴えた。
一方、「英語を子どもに教えるな」(中央公論新社)などの著書やテレビの英語番組の監修で知られるNPO法人「東京コミュニティスクール」の市川力校長は15年、DMとされる「ハミルトン大学」の博士号を取得し、肩書に使っていた。
市川校長は、約80万円を払い、米国で学習塾を運営した経験を単位化、数十ページの論文を提出したが、「DMとは知らなかった。経験で学位が取れるならと思った」という。c
米国議会の調査部門「米会計検査院」が16年にまとめた報告書で、PWUとハミルトン大など7校はDMと位置づけられ、米メディアにも取り上げられている。
PWUカリフォルニアは「DMとされたのは前の経営者のプログラム。WUハワイとは別組織」などとDMへの関与を否定。ハミルトン大は事実上活動を停止しているもよう。29日までに取材への返答がなかった。
■ディプロマ・ミル(学位工場) 実際に就学しなくても博士号など学位を販売する機関・団体のこと。代金を振り込むだけで学位証明書を発行する業者もある。学位取得までの期間が短かったり、通学が不必要だったりするところも。海外に数百はあるとされ、詐欺に利用されかねないとして米国で社会問題化している。
(2006/12/30 02:29)
この話の論点はいくつかあると思うのだが、
・人生経験では学位を取れないという基本的な常識の欠如
・DM問題は随分昔から知られており、日本でも「特許大学」などがあったにも関わらず、DMの学位を学位を認めて教授に昇進させた早稲田大学の見識の無さ。(仮に業績等が十分にあっても、DMの広告塔になるような行為をする人物は教授として不適だろう)
・さらにそういう人物を学長にしたサイバー大学を認可した件
・論文博士の制度は基本的には日本だけでは?(だから廃止するという話が出てきたのでは)だとすると、怪しい制度だと知った上で利用したことになるわけで……
日本の論文博士の制度は、既に学術雑誌に投稿論文がいくつかあることが前提で、査読を受けて学術雑誌に出た内容を改めて1つの博士論文にまとめて審査を受けることになっている。
DMを横行させないためには、やはり、公職(私立の教育研究期間含む)に応募するときや昇任するときの履歴書に書いてはいけない(書いたら採用、任用を取り消すといった罰則あり)の制度を作るしかないだろう。
ただ、それよりも何よりも、吉村氏の「学位は本来、入学金や授業料などの金で買うもの。心の栄養であり、お金だけでは買えないものでもある」という発言が真実ならば、こちらの方が大学人としてよっぽど問題ではないか。確かに、入学金や授業料を払わないと大学に居続けられない。前半が真実だとした場合、金で学位が買える(つまり研究の中身はどうでもいい)と言ってるわけで、そういう認識の人物が学位審査をする側に居られては困る。
後半の「心の栄養」も、研究者としてはどうかと。理系の場合は心の栄養なんかじゃなく、学位を持っていることは、大学や研究期間で仕事をするための単なる資格と位置づけられている。文系の場合は、教授になる頃に学位を取る人も昔は多かったらしい(教授になっても持ってない人もいた)が、それでも「心の栄養」ではなくその道何十年かこつこつと成果を積み重ねたことを認めるという意味合いだろう。
ゲルマニウムを使った健康器具(ブレスレットなど)が流行している。しかし、あまたの健康グッズと同様に、これもまた空騒ぎに終わるだろう。ゲルマニウムに接触しても、ほとんど何も起きそうにないからである。
こういうことを書くと、「実験もしないで」「試してもみないで」と言い出す人が必ず居る。また、「科学でわかっていないこともある」という定番の反論も出てくるだろう。だから、なぜそう言えるのかを説明してみる。
物質を分析する方法の1つに、赤外吸収分光というのがある。物質は、それぞれある特定の波長の赤外線を吸収する性質がある。だから、その吸収パターンを測定すれば、物質を同定したり、場合によっては定量したりできる。赤外吸収分光は、分析化学の分野では定番の測定方法である。どの大学や検査機関にも、かならず1台以上の赤外吸収測定装置があるし、毎日世界中で使われている。
この赤外吸収を測定する方法の1つにATRというものがある。屈折率の大きいプリズムの上に試料を接触させて、赤外線を当て、プリズム表面付近にくっついている試料の赤外線吸収スペクトルを得る方法である。この実験では、プリズムの材料として、純度の高いゲルマニウムがよく使われている。もちろん、私もゲルマニウムを使って、赤外スペクトルの測定をしている。
さて、健康グッズとしてのゲルマニウムは、ブレスレットやネックレスに加工されて使われている。体に接触させることによる何らかの効果を狙ったものだろう。実際、
ゲルマニュームは、32℃以上の刺激を受けると、マイナス自由電子が飛び出し、乱れた生体の電子バランスを整え、異常電位を正常にして、細胞の活性化に働きかける。
ゲルマニュームは、医療用具として承認されている商品もあることから、そのパワーは科学的に証明されている。
のような説明がなされている。
しかし、実は接触による効果はほとんど期待できないし、マイナス電子云々も根拠がない。
もし、ゲルマニウムが32℃以上で電子を出すならば、ゲルマニウムに接触している物質はその影響を受けるはずである。普段使っている赤外分光器は、内部に赤外線源があるから、試料を入れる場所は32℃位にはなっている。ゲルマニウムが試料に電子を与えるとすれば、それはゲルマニウムと試料が接触しているところで主に起きるだろう。ATRでは、光学系の配置から、ゲルマニウムに接触している部分を主に測定している。健康情報として言われているようなことが現実に起これば、それは試料の変化を引き起こし、スペクトルの変化となって見えるはずである。しかし、実際にはそんなことは起きていない。プリズムにゲルマニウムとそれ以外の材料を使ったときで、ゲルマニウム特有の試料の変化が起きたという報告はこれまでに1つもない(ゲルマニウムそのものを腐食させるようなものを測れば別だが、今考えているのはプリズムを変化させない接触である)。世界中で毎日測定に使っていて、どこからも異常が報告されないのだから、言われている現象は起きていないと判断するのが妥当だろう。なお、研究者というのは、鵜の目鷹の目で変わった現象が起きてないか探しているものなので、ゲルマニウムプリズムを使ってちょっとでも普通と変わったことが起きれば、大喜びして「新現象発見」と名乗りを上げるに違いない。それをネタに研究費だって申請するだろう。残念なことに、現実には健康グッズで言われている方向では何も見つかっていないのだけど。
「ゲルマニウムを、腐食性のない材料(電解質水溶液、高分子やタンパク質の水溶液、生物の組織など)に接触させたら、健康グッズの説明に出てくるような現象が起きますか」という問いの答えはNoである。
ゲルマニウムが電子を出して人間の体に作用する、といった主張とぶつかることになるのは、これまでに世界中で行われたATRプリズムによる赤外分光測定の結果である。なぜ、人体に触れると電子を与える(電流を流す?)はずのゲルマニウムが普通の試料の測定では何の効果も示さないのかをきちんと説明してくれない限り、ゲルマニウムブレスレットのふれこみを受け入れるわけにはいかない。
「科学的に考える」ためには、新しく提案された証拠の内容と、それが、従来知られている知識をどこまで支持するかあるいは否定するのかを検討することが第一歩である。ゲルマニウムでは、それを人体のような「水を含んだ高分子」に接触させた場合、電子を与えていることが直接観測されていないにもかかわらず、そういう現象があるとされている。一方、ATR測定では、ゲルマニウムプリズムが電子を出せば試料が変化して測定にひっかかるはずだが、そんな現象はこれまでに見つかっていない。電子の移動を測るには、電流を測るか物質の化学変化で見るかが普通行われている方法だから、これまでのところATRの結果の方が圧倒的に確からしいことになる。ゲルマニウムを使ったアクセサリーは、肝心の拠って立つ自然現象に根拠が無い状態で広まっているといえる。
以上が、接触させても無意味だろうと判断した理由である。
ゲルマニウムに限らず、「これまでに知られている事実と真っ向からぶつかる主張があったとき、その主張の根拠は、これまでに知られている事実を軒並み否定するだけの内容があるか?」ということに注意しなければならない。主張する人は往々にして科学っぽい説明をしているが、本人が気付いていないだけで、説明の内容が、これまでに知られている事実の広範囲な否定になっていることがある。この場合は、よほどの証拠がない限り、受け入れられないし、検討もされないだろう。
経口摂取は別に考えなければならないが、「健康食品」の安全性・有害性情報によると、経口摂取は、有機ゲルマニウム・無機ゲルマニウムともに避けたほうが良さそうである。安全性がはっきりせず、効果がある場合は生死に関わる副作用とセットで、しかも他に有効であるという証拠がないものを、健康法としてわざわざ利用する必要がどこにあるのかが謎である。
msnニュースの記事より。
発信者情報:同意なしで開示へ ネット被害で業界が新指針
インターネット上のプライバシー侵害や名誉棄損について総務省と業界団体は、情報を書き込んだ発信者の同意がなくても被害者に発信者の氏名や住所などを開示する方針を固めた。これまでは発信者が開示を拒否すれば、誰が悪質な情報を流したか被害者側には分からず、泣き寝入りするケースが多かった。業界団体は新たなガイドライン(指針)を年明けに作り、来春から導入する。【ネット社会取材班】
02年に施行されたプロバイダー責任制限法はプライバシー侵害など正当な理由があれば、被害者がプロバイダー(接続業者)に対し、書き込みをした発信者の情報開示を求める権利を初めて認めた。しかし、実際の運用では「どのような内容が侵害に当たるか明確な基準がなく、業者側で判断できない」(社団法人テレコムサービス協会)との理由で、発信者の同意が得られなければ事実上、開示できなかった。
このため、業界は総務省とも協力し、同法に基づく自主的な発信者情報開示のためのガイドラインを策定することを決めた。原案によると、他人の氏名や住所、電話番号など個人を特定する情報を掲示板などに勝手に書き込む行為を幅広く「プライバシー侵害」と認定。個人を名指しして病歴や前科を公開することも含まれる。
こうした場合にプロバイダーが被害者からの要請を受け、発信者の同意がなくても、その氏名や住所、電話番号、電子メールアドレスなどを開示できるようにする。
一方、名誉棄損については、プロバイダーによる任意の発信者情報開示をあまり広く認めると「政治家や企業経営者らの不正や問題点の内部告発までネット上からしめ出す懸念もある」(業界団体幹部)と判断。これまでの名誉棄損裁判の判例も踏まえ、公共性や公益性、真実性などが認められない個人への誹謗(ひぼう)や中傷に限って自主的な開示の対象とする。
被害者は裁判で発信者情報の開示を求めることが多かったが、悪質な書き込みをした発信者を早急に特定し、損害賠償請求できる可能性も高くなるとみられる。
業界と総務省は一般からの意見も募集したうえで、早ければ来年2月にも導入する方針。
毎日新聞 2006年12月26日 3時00分
情報発信に対する温度差は人によって大きく違うから、一概には言えないのだが、この法改正(条文を変えるのではなく)対応方法変更と同時に「削除あるいは送信防止措置をしなかった場合のプロバイダの免責」をもっと認めることにすればバランスがとれるのではないか。つまり、強制削除はしない代わりに当人同士で徹底的に争え、という方向に誘導せよということである。できれば「発信者情報を開示した場合、裁判所の判断が無い限りプロバイダは送信停止措置を行ってはならない」という内容くらいは盛り込んで欲しい。例えば、送信停止せよという仮処分が通れば停止してもいいし、判決によって停止してもいいが、それ以外の理由で停止するのを禁止せよということである。司法判断がなされる前に事なかれ主義のプロバイダの一存で情報発信自体ができなくなってしまうよりは、裁判所で争うのだから司法判断以外の理由で情報発信を止められることが無い、という方がずっと健全だろうというのが私の考えである。
なお、最近遭遇したケースに、相手の居所も名前もわかっている(顔も知っていたりする)状態、つまり訴状を書くのに差し支えない程度の個人情報を知っている状態であるにも関わらず、プロバイダ責任制限法に基づく送信防止措置を求めてきたというのがあった。明らかにプロバイダ責任制限法の趣旨を理解していない行動である。相手が判明しているのであれば、プロバイダにとやかく言う必要はなく、直接その相手に対して法的措置をとるのが正しい。