Feed

「理論的に解明」

Posted on 12月 25th, 2006 in 倉庫 by apj

 数日前から、ある方とメールでやりとりをしている。水関係の質問を書いてこられたので、私にわかる範囲でいろいろお答えしている。その中で、ちょっと気になるフレーズが登場した。触媒がからんだ化学反応の話をしていたら、触媒の効果やら反応やらについて「理論的に解明されていますか?」と書いてこられたのだ。
 これには、何と答えていいかわからなかった。それで、化学反応は、平衡論・速度論・反応論といった視点から理解がすすんでいて、平衡論は大体わかっているが速度論になると速度定数の測定はできてもある特定の値になる理由の説明は困難で、反応論になるともっとわかっていないことが多い、といったことを書いて説明した。
 ただ、こういう質問が出てくるとういことは、科学に対する、別の意味でのイメージの混乱があるように見える。
  ある自然現象があったときに、
・それを観測事実として確定させる作業(勘違いやミスではなく、確かに誰でも追試できるだけの条件出しがをする)
・その現象を説明する作業
  →既存の理論(というよりもむしろ法則、枠組み)を適用して説明する
ということができると、科学としての取り扱いではまあまあ理解ができたかな、ということになる。ただし、理論は、もっといいものが出てくればそちらが使われることになるかもしれない。
 理論がないと見つけた自然現象が使えないか、というとそんなことはない。観測事実として確定すれば、それを応用した技術は作れる。自然現象の発見が先で、理論がずっと後ということだってある。逆に、先に理論があって後から実験で確認、という逆のパターンもある。ところが、いずれの場合も「理論的に解明」というのとはちょっと違う気がしてしかたがない。実験が先にあって説明が後になった場合、最終的に理論で説明できたとしても、実験事実と説明の両方で理解を進めたわけだから「理論的に解明」ではないし、理論が先にあって実験待ちの場合は、「実験的に証明」は有り得ても「理論的に解明」とはならない。「理論的に解明」とはどんな状態をイメージすればいいのか?というところでちょっと困ってしまった。科学は理論の固まりであるというイメージが強いのだろうか。

せっかくいろいろ教えていただいたのだけど

Posted on 12月 21st, 2006 in 倉庫 by apj

 ちょっと前に、来年度はセミナー担当かも、ということで、いろいろ教えていただいたのだけど、確定した指令が飛んできてみたらやるのは講義だということだった。今後、セミナー担当の機会もあると思うので、今回教えていただいたアイデアは温めておくことにする。ありがとうございました。
 講義だと何をしようかと考えたのだが、結局、科学とニセ科学を考える、ということで、普段の化学カテゴリーでやっている科学リテラシーよりはもうちょっと広い内容にすることにした。総合領域ということで、1分野にとどまらない内容をやっていいことになっているので。
 ちょうどいいタイミングで「Google八分とは何か」(吉本敏洋著、九天社)という本も出たので、そもそもの情報収集の段階から検討する必要があるということの資料として、参考図書指定してみてもいいかな。若い人だと、見慣れない情報に遭遇→ネットで検索、となるが、単にキーワードを入れただけだとまともな情報にたどり着かないことが結構あるわけで、懐疑的に情報を見るというところから教えた方がいいんじゃないかと思う。

とりあえず資料集め

Posted on 12月 20th, 2006 in 倉庫 by apj

 山形に帰る前に丸の内の丸善に寄って、江本氏の著書を何冊か購入。水からの伝言の写真集は無かった。山形で探して、無ければネットで注文するか。
 AERAの記事とか田崎さんのウェブサイトとかを全部印刷して資料番号を振って……と思っていたら、タイムリーにきくちさんのNHK教育出演が。資料として使わせていただこう。

いろいろ営業中

Posted on 12月 19th, 2006 in 倉庫 by apj

 院生とラマン散乱の実験のためお茶の水大へ。マルチチャンネルでS/Nよくさっさとデータを集めないといけないので。試料を作って(私はビーカー洗いばっかりしてたが)無事測定開始。順調に動き出したのを見計らって、夕方からリンク総合法律事務所の忘年会へ出かけた。
 久しぶりに会うネットワーカーやら知り合いやらが居て、いろいろ話をして盛り上がった。たまたま、社民党党首の福島みずほ氏が来ていたので名刺交換して営業した。挨拶の時に教育基本法の問題についてちらっとだけ言及しておられたので、「実は教育現場にオカルトが入り込むという問題が発生中です」ということで、水伝問題について説明した。この問題はあまり意識しておられなかったようで、興味をもってもらえた。さらに、「愛国心教育については日教組対反日教組といった対立の構図ばかりが強調されているが、それは単に声が大きいだけで、問題はおそらくそこにはない。政治的思想と全く無関係に、現場で、愛国心を教えるためにニューエイジ思想やニセ科学やトンデモ話が持ち込まれる可能性が高く、そちらの方が問題である。道徳教育は既に水伝に入り込まれたし、他にも、環境教育としてEM菌やら燃費向上グッズが持ち込まれつつあるし、インチキ健康番組の内容も使われている」ということも話した。
 後日、資料と説明を送るつもりだが、さて何と言って説得したものか。直ぐに何かが変わるとは思わないが、少なくとも、従来煽られたような対立構造では済まないということを少しは考えてもらわないと、対処の方法が頓珍漢なことになりそうで……。
 まあとにかく、ダメモトでもいろんなところで種まきして、注意を喚起するしか手がないんだよなぁ。

札幌からは無事に戻った

Posted on 12月 16th, 2006 in 倉庫 by apj

 研究会も終わったので早々に札幌から引き上げた。ところどころ道が凍っていたが、特に転びもせず無事に山形に戻った。
 足はまだ痛いが……がんばって動かした方がリハビリになる。で、札幌なんかに行くと「もうちょっと行けばおいしいご飯にありつけるかもしれない」「もうちょっと向こうの店においしいおみやげがあるかもしれない」とか思うわけで、そうすると頑張って歩くので、リハビリに役立つ。やっぱりおいしいものがあると気合いが入るわけで。人間、ゲンキンなものだよなぁ^^;)。問題は、その欲望に忠実に行動するとデブになる危険性が待っているということだったり。

試料がだいぶ遠いところにある件

Posted on 12月 15th, 2006 in 倉庫 by apj

 研究会では来年以降ウチで測定できそうなネタも拾ったけど、これはまだ秘密。
 で、楽しげなのは、水素が秩序化したIce XIが冥王星の衛星カロンにあるかもしれないという話。赤外分光器(を積んだ探査器)が現在向かっているところだそうで。60-65Kで、Ihが存在する圧力条件で一万年以上おかないといけないので、実験室では作れない。

札幌も雪が少ない

Posted on 12月 14th, 2006 in 倉庫 by apj

 低温研で行われる研究会に参加するため、北大に来ている。例年より一週間ばかり日程が早いのと、全国的に暖冬なのと両方の効果で、札幌市内も雪が少ないし、凍り付いているところも少ない。
 まあ、右足の可動範囲が狭いから滑った時のリカバリーが効かないので、特に慎重に歩いている(ってか強制的にリハビリ状態かもしれない)。

下見て歩け

Posted on 12月 13th, 2006 in 倉庫 by apj

 今日、といってもすでに日が変わってしまったが、やっとギプスが取れて歩けるようになった。今年は雪が降るのが遅いので、自転車通勤を再開した。X-rayの結果、折れた骨は完全にくっついているが、関節があまり動かなくなってしまっているので、意識的に動かすトレーニングをしないといけない。特に、階段がまだ危険で、右足に力が入らなかったり曲げ伸ばしすると引っ張られる感じで痛かったりで、手すりにつかまりながら上り下りしている。
 いずれにしても、やっぱりまだASIMOの方が上手だ……と思っていたら、よそ見しながら階段を上ったASIMOが転がり落ちる映像が出回っていた(成功例はこちら)。自分が段差でコケて一ヶ月以上も松葉杖ライフだったので、転がるASIMOを見てなんだか身につまされてしまった……。

 とにかく、人もロボットも足元注意、よそ見は厳禁、ということで……。

講義案募集

Posted on 12月 12th, 2006 in 倉庫 by apj

 大学というところは、今頃来年の講義割り当てを決めていたりするわけだが、どうも、来年、半期で完結する「教養セミナー」の担当が回ってくる模様。二十~三十人という少人数を対象にして講義することになる。もちろん、学生に発表させたり、普段よりも課題をたくさん出して丁寧に検討したりといったこともできる。
 そこで、少人数ならではの講義案で何かアイデアがあったら教えて欲しい。一応、化学の知識がそれなり得られて、ニセ科学の問題も分かってもらえる内容にしたいと思っている。既に自分のところではこんな実践をした、といった情報も歓迎する。

 普段は、講義内容や資料を全部プリントにまとめて配る、学生からのコメントへの答えも毎回印刷して配布する、といったことをしている。まあ、大教室で150人以上も受講者が居ると、これ以外にコミュニケーションのとりようがないというのが正直なところなのだが……。少人数だからできること、何かありそうな気もするんだけど、いいネタを持っておられる方がいらっしゃったら、ぜひ知恵を貸して欲しい。

(追記)何もニセ科学にこだわらなくても、私は過去に阪大VBLで、 LEGO Mindstormを使ったセミナーのインストラクターをやったことがあったりする。年度末の予算で手当できれば、3セットほど購入して、プログラムと制御の実習なんて手もあるよなぁ。そういえば、ホームオートメーションぽいセットも出てなかったっけ……?制御理論の入門みたいなことができると、文系の人でも目に見えて面白いかも。とにかく、いろいろ考えなければならない。

ステロタイプ

Posted on 12月 11th, 2006 in 倉庫 by apj

kikulogのきくちさんのコメントより。

よく僕らが冗談で言うんだけど
(1)研究者に向かって「博士」と呼びかける
(2)教授向かって「教授」と呼びかける
(3)研究者は分野にかかわらず白衣を着ている
(4)教授は部下に「やっておいてくれたまえ」などの「たまえ語」(今考えた)を使う
などなど、科学者自身には(おそらく)なんの罪もないステロタイプが横行しているわけです。

 最近テレビドラマを見ない(ってかそもそもテレビ無しの生活を送ってる)んだけど、やっぱりこういう傾向なのか?あと、「本物の科学者は科学者に見えない」という名言もあるのだけど。
 それはともかく、現実には
(1)研究者に向かって「博士」と呼びかけることはない。ヘタすると周りじゅう学位持ちで一体誰を呼んでるかわからなくなる。固有名詞付きで「○○博士」とも呼ばない。普通に「さん」付けするか、業界によっては「先生」を付ける。
(2)教授に向かって「教授」付きでは普通は呼ばない。特に別のニュアンスを込めてわざとに付けることはあるが、普段の呼び方ではない。これも業界によるが、一律「先生」を付けるか(医者や教師はこれかな)、指導者に「先生」残りは「さん」付け(物理系はこれかな)である。
(2)’ 本当に有名になると肩書きはむしろ落とされて専門用語化(?)する。例:湯川、朝永、など
(3)化学、生物系では白衣必須。物理系は、実験系では半々位。作業服のこともあるし、そもそも特に上衣を着ない場合もある。理論で着ている人はまず居ない(居たら相当珍しい)。ただ、講義の時にチョークの粉で汚れるのが嫌だから白衣、という人はたまに居る。
(4)命令したがるボスは確かに居るが、時代劇的な言い回しで指令が飛んでくることはない。「○○しておいてね。何日までに」と普通に言われる。
(4)’ 命令するより先に、自分が率先して行動したがるボスも多い。