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重たい話

Posted on 11月 1st, 2006 in 未分類 by apj

 「高校生の通学カバンは15kgもある」より。大学だとどうなるかちょっと考えてみた。
1位:医学部 教科書はどれも大判、分厚い、高密度な光沢紙の三重苦。
2位&3位 The CELL + ハーパー生化学の生物系と 、アトキンス(物化)+モリソン・ボイド(有機)+シュライバー(無機)+ヴォート(生化) の4連コンボの化学系の戦い
4位 法学部 (但し模範六法を紙で持ち歩いた場合)

分厚くてしょうがない教科書って、物理系じゃあんまり見かけないなぁ。輸入物の原著だと時々あるけど。

今月号のパリティは2度おいしい

Posted on 10月 31st, 2006 in 未分類 by apj

 物理の雑誌の「パリティ」。おいしい話題の1つ目は、「舌触りのよいチョコレートのつくり方」で、レオロジーの話題を紹介している。具体的にどうすべきというところまでは踏み込んでいない。ただ、食感をどうやって物理的に評価するか、ということなら、食品工学の話題だが、これは昔からの「家政学部」が手がけていて、普通の大学の理学部や工学部が関わることの少ないネタである。レオロジー+食品工学で内容を作れれば、「おいしい物理学」ってな、タイトル通りの内容の一般向け講義ができそうな……。

 もう一つの話題は、男女共同参画企画で、元お茶の水大教授の伊藤厚子先生が、どうして物理を選んだのかをまとめておられる。高等学校での学力到達度に男女差があったが女子ががんばって挽回した話や、会社に就職しようとしたら当たり前のように男女別賃金が提示されていた話は、今では想像がつかない。大先輩たちのがんばりがあって、一応はあからさまな差をつけられなくて済むようになったのだろう。
 このあたりは意識の差もあって、私の数年上の先輩あたりまでは職場で苦労している。給料や待遇で差別はなかったものの「女性の教員が来たからもう秘書は雇わなくていいよね」などと言われて「どうしてそうなるんですか」とやんわり反論して意識を変えてもらう努力をしたり、ということはあって、ストレスになっていたらしい。
 女子学生を理系へ、というのは国をあげてやっていて、 「女子中高生理系進路選択支援事業」採択機関の決定についてなんてのもある。楽しそうな企画がたくさんあるし、理系の内容に親しんでもらって敷居を引き下げる効果もありそうだ。ただ、女性が理系を選んだ時のロールモデルに、修士課程くらいまでの女子院生ならともかく、女性の大学教員を持ってくるのはどうかと思う。
 大学や独立行政法人の研究機関のポストが圧倒的に少ないし、今後増える見込みもないので、博士号取得者が最終的にどうなるかさっぱりわからない状態である。これは男女差がもはや問題にならないほど厳しい。ポスドクで数年食いつなぐことができても、その先の保証は何もない。ポストの数が少なすぎる上に増える見込みもない(だからなれる可能性自体が非常に少ない)ものや、身分が不安定すぎるものをロールモデルにしても、見抜く力のある人は逆に見切りをつけるだろうし、見抜けず乗せられた人には悲惨な未来が待っている。どちらにしてもあまりいいことがない。
 修士くらいまでで企業に就職し、技術者としてそこそこ安定した生活をして、仕事の面でも充実しているような人達をどんどん紹介した方が、女性が理系を選んだときのロールモデルとして望ましいのではないか。博士号をとったひとを紹介するなら、きちんと企業から派遣されて、生活の心配なく取得できたケースを見せる。そういう人達なら(大学教員を探すよりは)数も増えてきてるし、「普通に頑張れば私にもなれる」と思える対象じゃないかなぁ。

 いやね、もし「私のキャリアをマネする」と言い出す女子学生がいたら、まず間違いなく「止めとけ」って言うよ、実際。途中で脱落する可能性の方が圧倒的に高い道を、未来のある若者に薦めることなんかできないし。どうしても学位を取りたい人には、「絶対新人として会社の正社員に就職しろ、できれば一部上場あたりの会社」って薦める。ポスドクは増やしてはいるけれど、3年で契約期間が切れて、次はどこで仕事をするか分からず、途中でボスに何かあったらそれだけでいろいろ危うくなるし、何か病気にでもなって療養が必要になったら即アウトだから、「科学技術立国」「人材流動化」の実態は「とんでもない底辺ブルーカラー、不安定雇用の巣窟」なのね。ただ、世の中では少数派の高学歴に属するから、ブルーカラーだとは思われないし思いたくないだけなんだろうけど。だから、「フリーターと紙一重でも人生棒に振ってもいいからやる」というならご自由にどうぞということになる。

学内の場合はクレームが直接こない

Posted on 10月 31st, 2006 in 未分類 by apj

 このblogをやり始めて1年以上経つ。で、その間に、「これはまずいんじゃないの」という指摘が学内から何回かあった。私にも至らないところもまだまだあるから意見をきいて修正したりもした、ただ、納得いかないのは、「手を回す」やり方でクレームが来るというところで、これは常に共通している。
 管理者のメールアドレスを書いてあるのだから、直接メールしてくればいいのに、「学科長経由」でくる。内容にもよるが、誰が言ってきたかを訊こうとしても、隠されてしまう。クレームを出してる側が名前を特定されたくないためにわざとやってるんじゃないかと思ったりするわけで、かなり気持ちが悪い。大学でやってる以上、しょうがないのかもしれない。
 今では、レンタルサーバも安くなってるし、いっそblogだけ外のプロバイダに出してしまえば、直接連絡する以外に方法は無くなって、すっきりするかもしれない。
 はてなのアカウントもちゃんと持ってるけど、使ってない理由は、何かあったときに過去ログの移転が面倒だからということに尽きる。自前サーバでスクリプトを動かしておけば、ログファイルは何かあってもftpでサルベージできるし、機械的な変換も可能である。PHP4なら普通に使えるレンタルサーバ屋さんもあるし、思い切って移転させるかな。

 容量調べたらスクリプト込みで111MB。1GBもあれば当分大丈夫だろうし、さくらインターネットだとスタンダードで年間5000円で運用できる。gTLDドメインが年間1800円、汎用jpドメインなら3800円。今、環境ホルモンの方で使ってるサーバが若干高めなので、裁判が終わったら、ドメインは維持しつつサーバを安いのにするつもり。だから、マルチドメインで運用できる1GB-1.5GB程度のものがあれば、まとめて安くあげられそうである。
 あとはドメイン名だが、このblogだけ出すのに使ってぴったりの名前、何かいい案ないですかねぇ。

想定問答集(1)

Posted on 10月 31st, 2006 in 未分類 by apj

 ちょっと前に書いた「昼過ぎに電話があって……」とか、向こうの掲示板でのやりとりとかのまとめ。今期はパンキョーの科学リテラシー1回休みなので、時間に余裕があるから次のための仕込みをしておく。他にも書き物を抱えているのでそのためのメモも兼ねて。ニセ科学にありがちな主張を○印で示した。なお、以下に列挙したものを「公理」と呼ぶと数学屋さんが顔をしかめそうだが、まあ思考のお遊びということで大目にみてほしい。

仮称「幽霊見たってええじゃないか、の公理」(幽霊否定派でも肯定派でもないことに注意)
公理1)人間にとって「自分だけが認識できること」は、ごく普通にある
公理2)「自分だけが認識できること」の内容・パターンは、人間同士なら似通ったものになる場合がある
公理3)「自分だけが認識できること」は客観的真実と一致しないことも多く、その場合、任意の他人と共有することはできない
公理4)公理1-3の「認識できること」を客観的事実と一致させて生まれたもの、及びそうするためのルールが科学である
公理5)客観的事実を決める過程では、公理1-3の事実は、誰でも確認できる検証にかけられる。このとき、多数の人々の歴史的な活動に基づく経験が利用され、それは大抵の場合、個人やある団体の主張する経験よりも圧倒的多数である。

○理論よりも体験、経験を重視する
→公理1-3の体験や経験は、そもそも他人にはあてはまる保証はない。
○科学は理論より事実が大事
→「事実」が上記の公理1-3に当てはまっている場合はだめ。科学にとっての事実は、どんな他人とでも共有できる事実でなければならない
○個人的な知識や経験でミラクルな主張・効果を否定しているのでは?
→公理4、5より、科学を使う場合は、個人的な知識や経験ではなく、長い歴史・大勢の人々の知識・経験を使って判断することと同じである。(科学を「学習」するのは個人の活動なので、誤解が生じることがある)
○今の科学では説明できない現象が生じる
→公理1-3の現象は、最初から科学による説明の対象外である
○論文があることを要求するのは学者の論理、象牙の塔の論理である
→公理4-5の科学に、客観的経験の1つとして追加するための単なる手続きに過ぎない(実際、学術論文は誰でも書いて投稿してよいし、内容のみで審査される)。
○意外なところからブレイクスルーがあるものだ
→単なる言ってみただけの主張で認められたブレイクスルーなどない。最初は認められなくても、きちんと観測事実を記載し、誰でも経験できるようにしたものの一部が生き残ると、歴史的なブレイクスルーとして認められることになる。
○「人に言われたことを鵜呑みにするのではなく、自分で確かめてみる。」のが科学者だ
→科学=大勢の客観的経験と異なった主張は、受け容れるにはそれなりの根拠が必要だ。闇雲に実験しても得るものはない。
○自分の感覚だけではない実験(動植物などを使う)をしている
→対照実験が抜けているというオチ
○主張の全てが常に起きるわけではないが、ゼロではない
→どの程度の確率でものごとが起きるかという話は科学で扱えるが、その場合、ある特定の事象が起きた理由を説明することはできない。放っておいても起きることは、一定割合で必ず起きる。珍しくも何ともない。
○科学よりも技術が重要だ
→科学の裏付けのない技術は無力。何か一つ条件が変わったらそれだけで通用しなくなる可能性が高い。科学的知識になっていれば、実現すべき目標がはっきりしているので、そのための技術的工夫を手を換え品を換えすることになる。
○科学的知識に反していても、魅力的で大事なことが起きるのだから受け容れるべき
→ガセネタに慌てて飛びついて被害を受ける可能性が高い
○実験してみろ
→主張する側が先にやって条件と結果を明確に示せ。こちらが先にやって結果が出なかった場合、実験条件が良くないなどと言われる余地があると、いつまでも決定打になる実験ができない。
○今の科学でわからないものがあるはずだ
→公理1-3のカテゴリのものについては、未来の科学でだってわかるはずがない。
○今の科学ではわからないが、「波動測定器」だと評価できる云々
→公理1-3を素直に認めてしまえば、客観的経験にならない経験を他人と共有するために、別のフィクションを持ち込む必要などなくなる。

 「経験は絶対だ」という強固な信念の方を、まずは突き崩さないといけないのかな。「真理の探究が大事」「人間の好奇心に基づく」とか、科学が大切な理由の言い方はいろいろありそうだが、ぶっちゃけ「テメェの経験なんざアテにならねェからだ」が本当のところかもしれん。

大学教員もテラヤバスな件

Posted on 10月 30th, 2006 in 未分類 by apj

 高校の履修漏れ発覚の件。
 公立学校が調査書にウソを書いて出したら、虚偽公文書作成・同行使(刑156、158)に引っ掛かる。有印で1年以上10年以下の懲役、そうでない場合は3年以下の懲役または20万円以下の罰金。有印だと罰金刑が無いので、起訴されたら最後、執行猶予がついたとしても、公務員の欠格事項に該当する。と、まあここまでは、(現実に起訴されるかどうかはともかく)条文との対応はOKだろう。私学の場合も、「事実証明に関する文書」の偽造(刑159)には引っ掛かる。

 虚偽公文書であるという事情を知って受け取った*だけ*なら、故意犯成立となるかどうかがすぐには私にも判断できない(このへんはプロの意見を知りたいところ)。しかし、それを使って合否判定した場合は、事実を証明する文書に故意に虚偽の内容を入れたことになるので、(国立大学法人の作る文書が仮に私文書と判定されたとしても)「事実証明に関する文書」の偽造で、今度は合否判定に関わった大学の教員が軒並み刑159に引っ掛かるのではないか。なお、私立大学の入学試験の答案が刑159のいうところの「事実証明に関する文書」認定された判例は既にある。この部分訂正。私文書偽造の場合は名義を偽った場合に成立するから、そのまま虚偽公文書を使って合否判定資料を作っても該当はしない。該当はしないが、虚偽公文書の効力を発揮させることを手助けすることになるわけで、社会規範には明白に反してしまう。(答案用紙が私文書とされたケースは、替え玉受験の時つまり違う人が名前を騙って作った文書であった。)(こういう超基本的なところでコケるとはテラナサケナスorz。精進します。Lさんご指摘ありがとうございました。)

 いずれにしても、文科省あたりの対策が示されない限り、大学としても動けなさそうである。ほんでもって、推薦入試の願書締め切りは多分年内、早いところでは推薦入試そのものがあと一ヶ月程度で始まったりするわけで、一体どうするのかと……。募集要項に「調査書考慮します」って文言が入ってたら、逃げようがないし。【以下訂正のため削除】

【以下追加】
 http://www.yts.co.jp/news/news_20061030162011.htmlより。医学部は判断を決めた模様。以下引用する。

未履修問題は大学入試に影響
2006 / 10 / 30
 山大医学部ではあさってから推薦入試の願書受付が始まるが、きょうの記者会見で履修不足があった場合高校の調査書には科目の評価や修得単位を何も書かないこと、偽りの記述が明らかになれば入学決定後でも合格を取り消すことなどを強調した。また医学科では数学と理科の指定された科目を必ず履修する、あるいは履修見込みであることとしていて履修しなかったら調査書が大きな比重を占める推薦入試の合否への影響は避けられないとの見方を示した。山大では他の5つの学部でも推薦入学の願書を受け付けるが、「改めて注意事項を確認する考えはない」としている。

  こちらは別ソース

虚偽発覚なら合格取り消し
2006/10/30 21:19
 高校必修科目の未履修問題で、山形大医学部(山形市)は30日、入試出願に必要な調査書について未履修の科目を履修したと虚偽記載しないよう各高校に求めると発表した。虚偽記載が発覚した場合は合格後でも入学を取り消すとしている。
 高校側が提出する調査書には履修科目の成績を記入する欄があるが、同大医学部は未履修科目があっても、卒業する見込みであれば出願を受け付けるとしている。
 医学部は11月1日から推薦入試の受け付けを始めるが、例年生徒を推薦している高校に対して書面で正確な記載を求める。
 山形大の入試担当者は「他学部の出願についても医学部と同様の対応をする方向で検討している」と話した。

 報道だけじゃよくわからない。
 最初の方は未履修があれば調査書には何も記載せず空白にせよと読めるが、後の方は未履修分についてのみ記載しなければよく、履修した分は記載してもかまわないと読める。いくら未履修が発覚したからって、世界史とか芸術とかなら、空欄になるのは調査書に書かれる科目のせいぜい1割程度では。すると、後の方だった場合、調査書に重きを置いて採点したとして、未履修があっても履修した人とさほどの大差は付かなさそうだし、さらに面接点が加わるわけだから、この基準でペナルティになるのか?
 そうすると、むしろ、きちんと卒業要件を満たしてくれるかどうかが問題となりそうだ。大学としては、高校の授業の実態を実地調査する権限も力もないわけで、高校側が「追加授業しました」って言ったらそれを受け容れるしかないのでは。しかし、既に受験対策を理由に違反の前科のある高校が、受験の妨げになるから今さら追加授業なんかやめてくれという声多数の状況で、「追加授業しました」と言ったとして、どこまでそんなものを信じたらいいのだ?
 本当に間に合わせるように履修させてくれるなら、卒業までに帳尻が合えば無問題なのだけど、この場合それをきちんとやってくれるかどうかが一番信用出来ない気が……。
【追記】使い方の具体例としては、ここ(2000年)だと、調査書は評定平均を使い、学業以外の活動を項目別に加算、さらに各種資格取得状況を加算して100点にスケーリングしている。こちらは推薦で、評定平均をそのまま出願資格にしているケース。評定平均のところがネットでいくつかひっかかるが、分母が未履修を含んだとしても、大差にはならなさそう。

"必修科目逃れ"まとめwiki

Posted on 10月 30th, 2006 in 未分類 by apj

 要するに、ズルした高校一覧表。
“必修科目逃れ”まとめwiki
履修漏れ高校一覧の情報を集約している最中。
役立つサイトなので貼っておく。

語学の教材購入

Posted on 10月 28th, 2006 in 未分類 by apj

 東京に出向いていたので、帰りに池袋のジュンク堂に寄った。語学コーナーに行ったんだけど、ホントに充実してるなぁ……。特に、CD付きの本を安く出せるようになったというのが大きい。
 昔は苦労した。大学の無い田舎の町に住んでいたからかもしれないが、英語以外の外国語はほぼ壊滅、英語のテキストも受験参考書以外はそんなに充実していなかった。がんばってドイツ語のリーディングのテキストをやっと買ったんだけど、音声はテープで別売りで馬鹿高かった。
 今だと好きなところから好きなだけ手軽に聴ける。ものすごく便利だ。ということで、イタリア語の単語集と、昔やって記憶から抜けたドイツ語会話&単語集やら、フランス語のCD付きテキストを買った。山形じゃ揃ってないんだよなぁ。最近気に入ってるのが東進ブックスの「今すぐ話せる」シリーズ。CDがネイティブのスピードで録音されているので、繰り返し聴いて耳を慣らすのにいい。会話の定番はNHKのラジオとテレビだろうけど、テレビは見ないし、決まった時間にラジオを聴くのは、ずぼらな私には無理だし。

組合の問題なのか?

Posted on 10月 26th, 2006 in 未分類 by apj

半世紀も道徳教育を無視し続けた山梨県教組」あたりへのコメント。他にも教育再生を扱ったエントリがある。
 基本的な論調は日教組を叩くというもので、キーワードは公教育における規範意識だとか「まっとうさ」だという。それはわからないでもないが、日教組に文句を言ってつぶせば教育が再生するかというと、どうもそういう問題ではないのではないか。
 上記のサイトでは道徳教育について、組合が道徳教育を無視したという論調で批判しているのだが、見当外れにの批判に見える。というのは、現実には、道徳教育を熱心にやった結果、広まったのが「水からの伝言」だったりするからだ。水に「ありがとう」というときれいな結晶になるから、人にも「ありがとう」と言おう、というロジックによる道徳の教育は、全国で行われた。これをやっているのは、思想的理由で道徳教育を拒否した教師ではなく、むしろ道徳教育に熱心で、自発的に教材研究を行い、自分の授業に工夫をこらす先生達だろう。実際、水伝道徳の実践は、授業参観や研究授業でも行われており、教員の「自信作」だったりする。この授業を広めたのはTOSSという教育ポータルの団体だが、ネットに実践例を公開することで、より効果的に広まったと思われる。
 他にも、いじめをなくそうという授業で根拠もない「ヘビの脳」が持ち出されたり、「脳からよい物質が出るからいじめをしない」といったものがある。
 思想的な背景によって道徳教育を無視するのはけしからん、と主張している人達はたくさんいるらしい。しかし、その認識は古いか、「思想的背景によって望ましい姿を考えているのだから、それにそぐわない現状なのは別の思想を持った人が何かやってるからだ」という幻想を抱いているか、どちらかのように思える。現実には、「思想的な背景も哲学も皆無、かつ間違った自然科学によって安易に道徳を根拠づける授業」が後を絶たない。そうすることが創意工夫であり、しっかり道徳を教えることだと教える側は思いこんでいるらしい。この状態では、仮に日教組がつぶれたとしても、道徳がまともに教えられるようになるとは思えない。思想的理由で道徳教育を拒否し、そのことを語れるのなら、多分それはまだましな方だろう。現実には道徳とは何かというこを、そもそも認識すらできない状態が出てきているわけで、こっちの方が実は深刻な問題ではないかと思う。
 
 今日の別のエントリでも書いたが、高校の履修単位偽装問題が話題になっている。やってない授業をやったことにし、成績証明書に虚偽記載をした学校が続出している。受験対策だの生徒の要望だのと、教育問題*だけ*しか無いかのような報道のされかたをしているが、実際に行われたことは文書偽造・同行使、刑法に抵触する行為で、場合によっては懲役刑もあり得る、明白な犯罪である。生徒に規範を教えるはずの教師が、「自分がやっていることが刑法にひっかかるかもしれない」ということを考えもせずに学校ぐるみで偽造をやっていたことになる。学校がこんな状態で、「道徳教育」ができるとは思えない。「規範意識」「まっとうさ」というのは、社会とのつながりをきちんと考えることで出てくるものである。文書が信用できなくなると、社会活動に支障をきたすわけで、それ故、文書の公共的信用性が保護すべき法益だということになっている。このことをまったく想像もしないか、軽んじる人達が教師をやっているのだとすると、規範意識やまっとうさを筋道立てて教えるのは無理なんじゃないか。(それでも根拠づけようとすると、また、安易なニセ科学をくっつけかねない)
 一方、日教組は政策提言からわかるように、昔から「競争で学力は伸びない」「学校間格差解消」と主張している。このことの自体の是非はともかく、この考え方からは「受験で有利になるためには指導要領も無視する、そのためには文書偽造もいとわない」は出てこないだろう。そんなのは、彼等は思想的に受け入れられないはずだ。

 私は日教組を支持するものではないが、日教組を叩いても問題は解決しないだろうと予想している。どうにかしなければならない相手は、「日教組の思想」ではなくて、「安易にオカルトに頼る非合理な精神」「社会の成り立ちに立ち戻って物を考えようとしない姿勢」だと思うからである。

高校の必修科目履修漏れ問題

Posted on 10月 26th, 2006 in 未分類 by apj

 Yahooでの特集ページ。受験対策のために確信的にやった、成績証明書にも虚偽の記載をしていたということだが、やった人達は、刑事責任を問われる可能性があることをわかっているのだろうか。現三年生をどう卒業させるかという対応で手一杯なのはわかるが、校長の出しているおわびや説明は、報道されたものを見る限り、したことが犯罪であると自覚しているように見えないのだが……。

(公文書偽造等)
第百五十五条  行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
2  公務所又は公務員が押印し又は署名した文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3  前二項に規定するもののほか、公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は公務所若しくは公務員が作成した文書若しくは図画を変造した者は、三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。

(虚偽公文書作成等)
第百五十六条  公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造したときは、印章又は署名の有無により区別して、前二条の例による。

(偽造公文書行使等)
第百五十八条  第百五十四条から前条までの文書若しくは図画を行使し、又は前条第一項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。
2  前項の罪の未遂は、罰する。

 公文書偽造虚偽公文書作成・同行使、刑法に抵触する行為である。
なお、偽造した卒業証書を生徒の父に満足させる目的で提示する行為が偽造公文書行使罪に該当するという判例もある(最判昭42.3.30)。でもって、公訴時効は刑事訴訟法によると

第二百五十条  時効は、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一  死刑に当たる罪については二十五年
二  無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
三  長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
四  長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五  長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
六  長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
七  拘留又は科料に当たる罪については一年

第二百五十一条  二以上の主刑を併科し、又は二以上の主刑中その一を科すべき罪については、その重い刑に従つて、前条の規定を適用する。

第二百五十三条  時効は、犯罪行為が終つた時から進行する。
○2  共犯の場合には、最終の行為が終つた時から、すべての共犯に対して時効の期間を起算する。

 数年前からやっていたらしいが、組織ぐるみ共犯ということになると、まだ時効にはなっていない。今回の対応が、もし行政的な処分だけで終わるとしたらやはりおかしい。刑事手続きによる処理を進めるべきではないか。

FireFox拡張機能

Posted on 10月 25th, 2006 in 未分類 by apj

 ちょっと前のバージョン(正確には把握していない)のFireFoxやMozillaでは、ページの情報→メディア、で表示される埋め込みオブジェクトをローカルに保存できたが、最近のバージョンではできない。保存しようとしてもファイル名が空白になり、ファイル名を入れても何も保存されない。いろいろ調べたら、FireFoxだと拡張機能を使ってやることになったらしい。Download Embeddedという機能拡張をインストールすると、埋め込みオブジェクトを手元のディスクに保存できるので、後からゆっくり見直すことができる。