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またまた別の練習問題

Posted on 6月 25th, 2011 in 倉庫 by apj

 今度は産経新聞の記事

究極のエコ! 重力と浮力で発電する装置をさいたまの80歳男性が開発
2011.6.24 11:35

 東日本大震災でエネルギー政策の転換が叫ばれる中、重力と浮力だけを利用して電気を発生させる装置をさいたま市浦和区の会社役員、阿久津一郎さん(80)が発明した。パチンコ玉を内蔵したピンポン球を高い位置から落として歯車を回して発電、水の入ったパイプの中で球を再び浮力で上昇させて循環させるもので、平成22年10月に特許を取得した。実用化されれば、天候や時間に左右されない“究極の自然エネルギー”として注目を集めそうだ。(安岡一成)

 阿久津さんが開発した装置は、容量約10リットルのアクリル製の箱に、高さ約2メートルの「蓄水管」「上昇管」「落下管」という3本のパイプがついただけの簡単な構造。上昇管には水の逆流を防ぐため、落下管には圧力を保つための弁がそれぞれ取り付けられており、上部でつながっている。落下管には発電機と連動した歯車が取り付けられ、回転すると電力を発生させる仕掛けになっている。

 まず、落下管に水が入らないようにコックを閉め、蓄水管と上昇管がいっぱいになるまで水を入れる。次に落下管のコックを開け、パチンコ玉を内蔵したピンポン球を20個、挿入口から投入。落下した球は歯車を回して箱に落ち、上昇管に入った後、そのまま浮力で上に上がっていく。球は上にたまったほかの球を押し出し、再び落下管に入った球が歯車に衝突する。装置には水位を保つために、ピンポン球の体積分の水が出し入れされており、1つの球は約3分間隔でこの循環を繰り返す-という仕組みだ。

この装置で生み出される電力は1ワット程度だが、阿久津さんは「装置や球のサイズを大きくすれば多くの電力が作れる」と、実験に乗り出している。

 環境問題に関心があった阿久津さんは5年前、高いビルを眺めていて「上から物を落としたら大きなエネルギーになるのでは」と考えたのが開発のきっかけとなった。落とした物を上に持ち上げる方法に悩んでいたが、ある日、水に浮くゴルフボールを手にして、浮力を活用することを思いついた。その後、約2年半かけて装置を開発。費用は700~800万円もかかったが、昨年10月に特許を取得した。米国や欧州などにも特許出願中だ。阿久津さんは、この装置を使って雨水で店舗のネオンの電力に使ったり、湧き水を使って登山道の明かりに使用したりというアイデアを披露する。

 また、阿久津さんは「球体が動くのを眺めているだけで楽しいから、からくり時計のように楽しめる」ともいう。「この装置をすべての送電鉄塔やビルに設置すれば、将来、原子力発電はいらなくなるよ」と話している。

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 難易度は高くないが、いろいろ設問できそう。現実にあった例として講義のネタ用メモ。

アートコミュニケーション擁護者による嫌がらせ継続中

Posted on 6月 23rd, 2011 in 倉庫 by apj

【緩募】下記IPアドレスによる、このサイトの管理人apjに対する名誉毀損となるような書き込みが掲示板、ブログコメント等に行われていた場合、ログを提供していただけるとうれしく思います。証拠があれば、裁判所に発信者情報の開示請求を行い、相手を特定して発言の責任を問うことができます。

 今年の3月に「 アートコミュニケーションは寄付先を明らかにすべきです」というエントリーを書きました。このエントリーについたコメントで、「質問者」と賞する人が出てきて、2011/06/15に「何の恨みがあるの?人の揚げ足とって楽しい?」と書き込みました。この書き込み元のIPアドレスは、

116.91.8.228 d228.FtokyoFL102.vectant.ne.jp

でした。

 放置しておいたところ、「架空なのは投資話だけじゃなくて」の方に、「余計なお世話」と名乗る人物が、クレームを付け始めました。クレームの開始は2011/06/16で、この人物の投稿元IPアドレスも、

116.91.8.228 d228.FtokyoFL102.vectant.ne.jp

でした。
 つまりこれは同一人物による嫌がらせである可能性がとっても大きいのです。

 今日の書き込み(このエントリーへのコメント)を見て、本当はどうやら他の記事に文句を言いたいらしいと気づいたので、これ以前にこの人物がアクセスした形跡を調べたところ、アートコミュニケーション絡みでコメントを残したのと同一人物らしいことがわかりました。
 厳密には同じ端末を使っている人物、くらいにしか絞り込めませんし、プロバイダによって違うIPが振られることもあるので別人の可能性も無いわけじゃないですが、書き込みのあった日がが接近していることと、書かれた内容の整合性から、同一人物と判断してもおそらく間違いないだろうと思います。

 ウチにこんな姑息なことをしてくるくらいですから、他所のサイトでも、アートコミュニケーションに批判的なことを書いたエントリーに対し、上記IPアドレスが書き込み元となった嫌がらせが行われている可能性があると考えます。どうか皆様お気を付けください。同一人物判定の役に立てていただきたく、コメント主のアクセス元IPを公開いたします。

 なお、当blogの管理人としては、名前を勝手に変えて意図を隠してクレームを付けるような人物には見に来てもらわなくて結構ですので、当該人物のアクセスを制限してみます。まあ、こういう粘着さんは、どうせ手を変え品を変えすりぬけようとすることが多いんですけどね。

 それにしても、アートコミュニケーションには、なかなか素敵な支持者がいらっしゃるようです。他人に偉そうに説教たれておいて、その一方で、名前を変え、別のエントリーに無関係を装って書き込みつつ、アートコミュニーションについてのエントリーを消させる方向に持っていこうとするなどというう、面倒くさいことをして面白がる何とも奇特な方が。

【追記】
 コメントで、行政処分について教えてくださった方がいましたのでこちらにも。ドラゴンさん、ありがとうございました。
 アートコミュニケーションは「褒め上げ商法」が原因で行政処分されたようです。消費者庁のリリース(pdf注意)

平成23年6月17日 消費者庁

特定商取引法違反の電話勧誘販売業者に対する 指示処分について

消費者庁は、電話勧誘により俳句、短歌等の作品を書籍へ掲載するなどのサービスを提供していた事業者である株式会社アートコミュニケーション(本社:東京都豊島区)に対し、本日、特定商取引法第22条の規定に基づき、次のとおり指示しました。
1 電話勧誘販売に係る役務提供契約の締結について、契約を締結しない旨の意思を表示した者に対し、当該役務提供契約の締結について勧誘し ないこと。(再勧誘の禁止)
2 電話勧誘販売に係る役務提供契約の締結について、迷惑を覚えさせるような仕方で勧誘しないこと。(迷惑勧誘の禁止)

1.株式会社アートコミュニケーション(以下「同社」という。)は、全国の図書館から氏名、住所、電話番号などの情報が記載された作品集を収集するなどして、そこから得た情報に基づき消費者宅に電話をかけ、同社が発行する書籍である「Mahoroba(まほろば)」、「Lifework(ライフワーク)」などへの俳句、短歌等の作品の有料掲載、あるいは、作品展における俳句、短歌等の有料展示サービスについて、電話勧誘販売(有料役務提供)を行 っていました。

2.認定した違反行為は以下のとおりです。
(1)同社は、消費者が「値段(書籍への掲載料)が高いので、できません。」と断っているにもかかわらず、「宣伝のために説明させてもらいます。」と言って話を続けたり、「(同社に対して一旦考えておくと伝えた後、断りたいと言う意味で)やめるから。」と申し入れをしたにもかかわらず、「入会すると言ったではないか。」と言って、申し入れを受け入れず勧誘を続けるなど、契約の締結をしない旨の意思を表示している消費者に対し、引き続き勧誘を行っていました。
(2)同社は、消費者が明確に断って電話を切った後に、ごく短い間に立て続けに4、5回もの電話をかけて勧誘を続けたり、あるいは、10日くらいの間にわたり、毎日のように消費者に対し電話をかけて勧誘を続けるなど、消費者が迷惑を覚えるような執ような勧誘を行っていました。

 だそうです。詳しい勧誘の状況は、消費者庁のニュースリリースをごらんください。
 根拠もろくに示さず、私のところに削除要求を送りつけてきたときから、ろくな会社ではないと思っていましたが、やっぱり、という感じです。
 ついでに、「批判的なことを書いた人に対して執拗に嫌がらせの書き込みを行った」も追加してほしいくらいですが、こちらは社員がやった証拠は今のところないし、消費者庁の管轄じゃないか^^;)。

 それにしても、何でウチのエントリーにしつこく馬鹿な内容を書き込んで、わざわざ目立つようなことをしたのかが謎です。私が書いた、アートコミュニケーションは寄付先を明らかにすべき、程度の主張はかなり穏やかなものです。問題の書き込み主が余計なことをしなければ、私が、アートコミュニケーションとの関連を探し出すこともなかったし、このエントリーを書くことも無かったし、消費者庁のリリースにたどり着くことも無かったわけです。ハンドル名の「余計なお世話」は本当に名は体をあらわしていますね。

 そうそう、「余計なお世話」さんは、業者に対する批判的な報道記事を引用する目的をはっきりさせろと文句言ってましたし、コピペはけしからんそうですし、このエントリーの目的も書いておかないといけませんね。
 「行政処分があった以上、アートコミュニケーションを取り上げるサイトも増えるかもしれません。また、以前からアートコミュニケーションのやり方に疑問を持って何か書いていた人もいるかもしれません。そういうところに対して、あなたが嫌がらせする、しかも、アートコミュニケーション関連の記事が気に入らないと明言せず、さも、他の記事の倫理的問題を指摘するような振りをして行うケースも増えることが予想されるので、あなたを特定できる情報を示した上で、他サイトの管理人さんにも情報提供しておくこと。ついでに情報も募集すること」がこのエントリーの目的です。どうです、詳しく説明したでしょ(笑)。

【追記】
庇護者と称するのが現れました。
リモートホストは 125.174.252.87
p2087-ipbf213aobadori.miyagi.ocn.ne.jp.
でした。
こうやってろくでもない内容を書き込む人が出てくれば出てくるほど、アートコミュニケーションの評判が巻き添えで下がりそうです。

悪徳商法注意

Posted on 6月 20th, 2011 in 倉庫 by apj

福島で悪質商法=「3千円で放射線測定」-不安に付け込む、注意呼び掛け

 福島県内で、原発事故による放射線への住民の不安感に付け込んだ悪質商法が現れた。被害は確認されていないものの、各自治体は注意を呼び掛けている。
 福島市によると、今月上旬、スーツ姿の2人組の男が市内の民家を訪問。「『コラッセふくしま』から来ました」と、県や市の出張所が入居するJR福島駅近くにある複合施設の名前を告げ、住民の60代の男性に「家の周りの放射能を3000円で測定する」と持ち掛けた。男性は不審に思い断ったが、同様の勧誘は同市のほか、隣接する伊達市でも報告されているという。
 福島市消費生活センターは「自治体から来たと勘違いさせる手口」と指摘、「行政機関が有料で放射線を検査することはない」と強調している。(2011/06/20-06:08)

 測定するだけなら悪質商法としてはまだマシな部類かもしれませんが、放射能対策と称してろくでもないグッズや馬鹿健食を売りつける人たちが後に続きそうです。

移転しました&運用方針

Posted on 6月 6th, 2011 in 倉庫 by apj

 勤務先の山形大学内に置いていた「事象の地平線」は、想定外の書き込みがあったために閉鎖となりました。
 ここの運営方針は、勤務先大学内(特に学生)からの投稿と思われるものは原則として削除するというものです。どうしても山形大学内から投稿したい方は、「山形大学に所属していることを全く連想させないハンドルネーム」を使用し「内部情報を書かない」というルールを守って下さい。つまり、教員と学生の関係が見ただけでは全くわからない状態であればよいということです。この場合に限り、一般の方のコメントと同じように普段の通りに扱います。私との職務関係が無い他大学であれば、大学名や学生であることを表明しても何の問題もありません。
 また、当面は、コメントとトラックバックは承認制にします。コメントの承認はできるだけゆるやかに、トラックバックは宣伝spamを全却下の方向でレギュレーションします。

 トップに出すために日付を未来にしていますが、気にしないで下さい。

架空なのは投資話だけじゃなくて

Posted on 5月 31st, 2011 in 倉庫 by apj

装置の方も十二分に架空だろうという投資詐欺の話。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110531-OYT1T00783.htm

燃える水」出資募る…無登録容疑で社長ら逮捕

 「水を熱分解して燃やし、エネルギーを生み出す『燃える水』の機器を開発している」などと架空の投資話を持ちかけ、多額の出資金を集めたとして、千葉県警は31日、「エコシステム」(東京都墨田区江東橋)の社長、杉山良広容疑者(53)ら役員ら6人を金融商品取引法違反(無登録営業)の疑いで逮捕した。

 捜査関係者によると、杉山容疑者らは2009年頃、「100万円の元手が数年で500万円になる」などと、無許可で出資を募り、千葉県などの数人から1人につき数百万円、計約1000万円を集めた疑い。被害総額は約4億円に上るとみられる。杉山容疑者らはダイレクトメール発送や説明会開催のほか、実在する大学教授の名前を無断で使ったチラシなども作り、出資を募っていたという。

(2011年5月31日16時38分 読売新聞)

 水の熱分解に要したエネルギー、取り返せそうにありません。

 メモだけだと文句言う人がきたので追記します。

 水の熱分解ですと、たとえば、こんな研究があります。水の加熱のみではなく、酸化物ターゲットに水をあてての分解ですが、それでも2000℃になります。こんな加熱を、石油や電気で行っていたのでは、たとえ水素ができたとしても、エネルギーロスの方がずっと大きくなります。そこでこの研究では太陽エネルギー利用ということになったのでしょう。
 他にも、でかい反射鏡(鏡を組み合わせたパラボラアンテナのようなもの)を作り、太陽光を集めて加熱し、水を熱分解する装置が作られています。日本ではなくアメリカで(雨の降りにくい地方でないと実験にならないから日本では難しいだろう)、まだ実験段階ですが。
 つまり、水の熱分解は、持ち運びできるような装置ではできないし、投資の対象になる段階でもないということです。

 新聞記事では、どんな装置かわからないので突っ込みようがありませんが、この手の話を判断するには、エネルギーの評価が一番簡単です。
 熱分解が起きる温度が2000℃以上なら、水は液体ではなく水蒸気でしょう。水分子1モルを分解するのに必要なエネルギーは、285.83kJになります。水素と酸素を燃やして1モルの水ができる反応では、気体→液体の相変化分が差し引かれますから、237.13kJになります。つまりこれが、水を分解→再び燃やす、をやったときに取り出せるエネルギーということです。
 熱力学の第一、第二法則がありますので、何か装置を作って水を熱分解した場合は、エネルギーロスが生じますから、1モルあたり285.83kJ以上のエネルギーを必要とします。285.83kJは下限ですから、一体どれだけのエネルギーを使うのか、が、判断の際に注意すべきことになります。水1モルの分解のために何度を何分維持しなければならず、それにどれだけのエネルギーを消費する装置か、を見て、285.83kJとかけ離れていればいるほど、話は怪しいということになります。また、装置を作るために必要なコストを、できた水素を売ったとして回収できるか、ということも勘定にいれないといけませんね。

 なお、水を燃やします系の話は、かなり古典的な投資詐欺のパターンで、過去にも(確かアメリカだったか)類似の例があります。

ガンが治った、の信頼度

Posted on 5月 30th, 2011 in 倉庫 by apj

講義に使いたいのでメモ。
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/34374.html;jsessionid=D44293D05A3E29AF18BB8E81227E4C98

「がんにかかった」自己申告の4割は誤り- 国立がん研究センター

 国立がん研究センターはこのほど、疫学調査のアンケートで「がんにかかった」と回答した人のうち、4割が実際にはがんにかかっておらず、誤った申告をしていたとの研究結果をまとめた。

 岩手、秋田、茨城、新潟、長野、大阪、高知、長崎、沖縄各府県の10保健所地域の住民約9万3000人を対象に、2000年から04年にかけて行ったアンケートの回答とがん患者の登録症例を照合した。アンケートで「過去10年間に何らかのがんにかかった」と答えたのが2943人、実際にがんにかかり、登録されていたのは3340人だった。

 照合結果によると、「がんにかかった」と回答した人のうち、本当にがんにかかっていたのは60%。残る40%は、誤って申告していた。一方、がんにかかった人のうち、アンケートにも「かかった」と回答していたのは53%で、47%は申告していなかった。こうした自己申告とのずれについては、がんを告知されているかどうかに加え、がんであることを言いたくない、または自分はがんではないかと疑うといった心理が影響していると考えられるという。
 一方、米国やスウェーデンの調査では、がんになった人の約8割がアンケートにも正しく回答しているといい、「社会や文化、宗教などの背景の違いが関係しているのではないか」と分析している。

 同センターの研究班は、「インフォームド・コンセントが普及してきた最近においても、がん罹患を自己申告から正確に把握するのは難しいことが判明した」と指摘。さらに、「自己申告のデータによる研究では、信頼性の高い結果を得ることができない」とし、がんをはじめとする生活習慣病の実態把握や予防法解明のためには、法的に整備された疾病登録が必要だとしている。

 詳しくは、多目的コホート研究のホームページで。

 怪しい民間療法でガンが治った、系の話には、そもそもガンでないものがこの程度は入っているとして考えないといけないという話。

 より詳しい情報へのポインタはこれ

洗えば済む放射能に対して差別なんて馬鹿げている

Posted on 4月 20th, 2011 in 倉庫 by apj

 福島から避難してきた子供が避難先で放射能を理由に差別されたとか、福島からの転入者に放射能のチェックをさせようとしたつくば市が話題になっているので(追記:これは誤解と誤報によるものらしいことが判明 http://togetter.com/li/126247)、超簡単な解説を。

結論その1;放射能は洗って落とせば終わりです

 福島の原発から出る放射能が問題になっています。物質としては、ヨウ素、セシウム、ストロンチウムが主です。放射能というと、何か特別な恐いもののようなイメージを持つ人が居るかもしれませんが、その実体は身の回りにある元素に過ぎません。

 放射線を出す元素とそうでない元素化学的性質、つまり物質としての性質は同じです。
 元素の性質は、元素の周期表から大体予想できます。周期表の縦にならんでいるものは、似たような性質を持つことがわかっています。

 周期表を見ると、ヨウ素の列にならんでいるものには塩素やフッ素があります。セシウムの列には、ナトリウム、カリウムがあります。ストロンチウムの列には、マグネシウムやカルシウムがあります。
 ナトリウムと塩素の化合物で一番身近なものは塩化ナトリウムです。これ以外にも、ナトリウムは、炭酸塩を作ったり水酸化物を作ったりします。カルシウムも塩を作ったり水酸化物を作ったりします。
 セシウムやストロンチウムも、これと似たような化合物を作って土に混じり、水に混じるときはイオンとなって溶けていることが予想されます。

 放射能に汚染された場所に行くと、土埃と一緒に放射性のストロンチウムやカリウムが衣類にくっついったり、靴底にくっついたりします。放射性のストロンチウムやカリウムを含んだ水で濡れても、服や靴が汚されます。手に触れると手が汚れますし、風が強くて埃をあびると、顔や頭にもくっつきます。
 これらを取り除くには、手を洗う、シャワーを浴びる、靴や衣類は洗濯する、といったことだけで充分です。つまり、日常生活で、泥や埃の汚れを落とすというのと全く同じなのです。流し去ってしまえば、放射能の影響は残りません。

 汚染された地域から出て来た時には、放射能を測って、汚れていることがわかったら、速やかに良く洗えば良いのです。それ以上の対応は必要ありません。

結論その2;放射線を出す物質は体内に入れないようにしましょう(体の中は洗えませんから)

 長い間放射能に汚染された場所に居続けると、放射線を出す物質を吸い込んだり、意図せず口の中に入れてしまったりする確率が増えます。
 野菜が育つ時に、放射線を出すセシウムやストロンチウムを吸収してしまうこともあり、知らずに食べると、放射線を出す元素を体の中に入れてしまうことになります。

 体の中に入った元素を、洗い流すことはできません。ですから、最初から体の中に入れないような注意が必要です。つまり、マスクをして吸い込まないようにする、ものを食べる時は放射線を出す物質が無い環境で調理して食べる、放射線を出す物質を含んでいるものは食べないようにする、汚れたものは別に分けてさっさと洗ってきれいにする、といった注意です。

結論その3:人間は危険ではありません

 不幸にして、放射線を出す物質を吸い込んだり、食べたり飲んだりしてしまうことがあります。放射線を出す元素は、体の中に一定期間止まり、放射線を出し続けますから、その人は体の内側から被曝することになります。これを内部被曝といいます。
 しかし、この時に、その人の体の外に出てくる放射線はわずかですから、そのような事故にあった人の側に別の人が居ても、被曝の危険はありません。内部被曝した人は、別の人にとっては何の危険もありません。

 福島から避難してきた人を、放射能を理由に避ける理由はありません。

註)放射線を出す物質が膨大な量ある場合は、そこに近づくことすら危険です(原子炉建屋の中など)。また、濃度の高い放射性物質に触れたものは、くっついている量も多いですから、放射線を出す廃棄物としてわけて処理します。これは、原発で作業をしている人達にとって問題になることです。
 放射線を出す物質がすくなくても、長い間ふれているとやっぱり被曝の量が増えます。

 一般の方々の対応としては、長い間そこに居ない、飲まない食べない良く洗う、で充分です。

(追記)
 差別に過剰反応するあまり、測って安心したいというニーズや、本当に測って対処するべきときに抵抗を感じるようになったりしないか逆に心配しています。必要な測定まで、マスコミの差別探しの餌食になりはしないかと。
 差別、というのは、本人の努力や行動でどうにもならないことを理由に権利を侵害すること、です。これは理由の如何を問わずやっちゃいけない。
 必要なら測定して結果によっては洗いましょう、というのは、差別でも何でもないです。また。客観的には必要性が低くても、安心を求めて測定を行うというのも、情報が不足している状況下では必ずしも悪いことではないと思います。

アートコミュニケーションは寄付先を明らかにすべきです

Posted on 3月 27th, 2011 in 倉庫 by apj

 アートコミュニケーションについて書いた古い記事にコメントがついたので、会社のページを見に行ってみました。

弊社では複数のチャリティー企画を実施し、収益の一部または全額を日本赤十字社など指定公益法人・団体に寄付を行って参ります。現在、小額ながら各団体に100万円ずつ寄付をさせて頂いていますが、どうか皆様のご協力をお願い申し上げます。

 これから寄付予定の赤十字はともかく、アートコミュニケーションは、「各団体」などという曖昧な表現をせずに、既に寄付した団体名だけでもきちんと公表すべきと考えます。そうでなければ、本当に寄付が行われたかどうかを第三者が確認するすべがありませんので。紙媒体ならともかく、ウェブですから、寄付先一覧を公表するなど簡単なことでしょう。顧客情報ではないので隠す理由はありませんし、善行なのだから、詳細をあきらかにした方が、会社のイメージアップにもつながるはずですね。

 アートコミュニケーションというのは、私の勤務先大学宛に提訴の準備をしている、などと2009年10月に書き送ってきたくせに、未だに(2011年3月)訴状の1つもよこさない会社です。法人に対する訴訟の準備が当てにならない会社の主張ですから、やはり裏を取らないと安心できないと思います。

 まあ、私ならば、会社を通すなどといったわざわざ回りくどいことをせず、赤十字に直接送金しますけど。

ヨウ素についての情報整理

Posted on 3月 24th, 2011 in 倉庫 by apj

 水道水の放射能汚染の報道のせいで、浄水器メーカーに問い合わせが殺到しているらしいです。しかし、慌てて浄水器を買いに走ってもあまり意味がないと思われます。

 放射性ヨウ素の環境中での存在形態ですが、空気中では、I2, HOI, CH3I, 粒子状のヨウ素として存在しています(ソース)。
 チェルノブイリの時の放射性ヨウ素計測では、フィルターで捕まえています(この文献、アブストラクトのみ)。これは、エアロゾルに付着したものをエアロゾルの粒子ごと捕まえるので、フィルターが使えたと考えられます。雨水からの抽出は、chloroform extraction であると書かれています。

 「原発事故ニュースの中に放射能を防ぐ「フィルタ」があるという表現が度々出て」くるそうですが、これは、発電所から直接空気中に漏れ出した放射性同位元素の微粒子や、放射性同位元素がエアロゾルに付着しているものを取り除いているのでしょう。

 ところが、ヨウ素が水に溶けた場合は、空気中とは異なり、I-(ヨウ化物イオン)や、IO3-(ヨウ素酸イオン)という形で存在することになります(水道水の放射性ヨウ素は煮沸で幾分減るのだろうか?)。

 この場合、ヨウ素の入った水からヨウ素を除去するということは、食塩水から真水を作るのとだいたい同じです。

 食塩水を煮沸すれば、水が蒸発して濃い食塩水が残ります。また、活性炭と中空糸膜を使った浄水器では、食饌水は真水にできません。ですから、煮沸して残った水を飲むのは却ってよくないし、普及型の浄水器を慌てて購入する意味もありません。
 ただし、煮沸による濃縮が問題になるのは、長時間沸騰させて煮詰めた残りを飲んだ場合の話です。薄い食塩水を作って、加熱殺菌できる程度煮込んでも、見た目で水がさほど減っていなければほどんど塩辛さはかわらない、というのが日常経験するところです。ヨウ素についても同じです。被災した地域では、水の入手が困難だったり、安全のために水を加熱殺菌することが必要になったりするでしょう。どうか、滅菌のための加熱をためらわないでください。放射線もリスク要因ですが、感染症も健康に被害を及ぼします。

 浄水場でも活性炭処理はしていますから、その活性炭で除去できなかったのであれば、家庭用浄水器の活性炭で除去はほとんど無理でしょう。また、活性炭などのフィルターで除去できるのは、細かい塵などの粒子に付着しているヨウ素だけで、イオンとなって溶けているものは通過してしまいます。
 これだけだと、家庭用浄水器の意味がなさそうに見えますから、念のため補足します。家庭用浄水器には、安全のために入っている次亜塩素酸を飲む直前に取り除いておいしくするとか、水道配管の劣化によって混入する錆や、配管保護のために行ったコーティングが原因のわずかな臭いを取り除いたりする効果があります。

 さて、食塩水を真水にする方法として、イオン交換する、蒸溜する、逆浸透膜(RO)フィルターを使う、といったものがあります。これらの方法であれば、水中のヨウ素も除去可能です。

 一方、その他の水処理装置、たとえば、電解水(アルカリイオン水を含む)製造装置や磁気活水器を使っても意味がありません。この騒動に便乗した売り込みが行われる可能性がありますので、慌てて買わないように注意してください。

 これによると、環境中に放出される放射性同位元素のうち、要注意なのは、セシウムやストロンチウムではなく、ヨウ素だということです。ヨウ素は半減期が8日と短い上、発生源の状況も変動しています。今、、コストをかけて純水製造設備を一般家庭に入れる必要があるか、というとそれも疑問です。物理・化学的に手段が存在するということと、それを現実の社会において実行するかどうかの判断は別です。

 現状でのリスクについては、社団法人日本放射線学会の解説をごらんください。

 健康に被害を与えるリスク要因は他にもたくさんありますので、どれにどこまでコストをかけるかは、リスク管理の問題になります。私にはすぐには答えられません。中西準子先生あたりがご専門かしら、と思いつつ……。

【補足】
 安価で手間のかからない方法として、水を汲み置いて放射性ヨウ素が減るのを待つ、ということをすぐ思いつくわけですが……。水道水は次亜塩素酸で殺菌されていますが、時間が経って濃度が減ると、再汚染への抵抗力が失われます。長期に汲み置くのであれば、時々、殺菌用の次亜塩素酸を追加するなどして、感染症に注意してください。

 水源がきれいな場所にある水道局では、活性炭処理をせず、殺菌のみ行っている場所もあるようです。その場合も、仮にヨウ素が混入したとして、家庭用の活性炭を使った浄水器に効果がほとんど無いだろうという結論はかわりません。team-nakagawaが実験を依頼して調べたところ、煮沸で飛ばないことが確認済みです。おそらく、左巻さんの指摘のように、イオンとして存在していると考えられ、この場合は活性炭では吸着できません。ほとんど、というのは、ヨウ素が水の中の塵などと結合している分があれば、塵ごと取り除けばその分だけは減るだろう、という意味です。

停電情報

Posted on 3月 15th, 2011 in 倉庫 by apj

停電計画はYahooがミラーしています。
電力会社のページがつながりにくい場合でもこちらから情報を得ることができます。

個人的連絡
山形市も計画停電の区域に入っています。停電後、山形大学のノードがどれくらい早く復帰するかわかりませんし、サーバーが落ちたままになる可能性もあります。
メールが届かない場合の私への連絡は、Twitterで、@apjにする、できればダイレクトメッセージでお願いします。大量のツィートが流れているので見落とす可能性があります。