Feed

ホメオパシーに対する宣伝規制案

Posted on 7月 10th, 2010 in 倉庫 by apj

 医薬品でないものは効果効能を謳ってはいけない、という縛りがあるのに、まともな医療としての効果効能が期待できないもの(ホメオパシー)が、治療法として誤認されほうだいのまま宣伝が野放しというのはどう考えてもおかしい。本来なら、謳って構わない効果効能(つまりプラセボ分しか期待できない)を明記し、それ以外の効果効能を謳うことを禁止する、といった形で縛っておかないといけなかったはず。これは、ホメオパシー以外の代替医療でも同様。

 そもそも、「代替医療」という呼び方そのものが優良誤認だろう。現状の医療をまともに「代替」できないものが混じっていて、その部分の品質管理が抜けているのだから。

 ということで、こんなのはどうか。たたき台として作ってみた。

【ホメオパシーについての宣伝規制(案)】
(1)現在使用されている医薬品・治療法と誤認させるような宣伝は一切禁止する。
(2)効果がプラセボ効果のみであるということを明示しなければならず、かつこの宣伝のみが認められる。
(3)プラセボ効果とはどんなものであるかを一般人に分かりやすく説明しておかなければならない。

【許される宣伝の例(案)(ブラッシュアップ必要)】
 ホメオパシーの効果はいわゆるプラセボ効果のみで、現在使われている医薬品に期待されているような効果は一切ありません。
 プラセボ効果とは、実際には薬としての効果がないものを服用しても症状の改善が見られるという効果です。主に暗示の効果です。単なる「気のせい」も含みます。プラセボ効果は、レメディではない、ただのあめ玉や小麦粉を服用するだけでも生じます。
○こんな方にお薦めします
 副作用が怖いが、薬をのんだ気分に浸りたい方。
 病院で治療を受けているが、他に何かを飲むことで心の安定を得たい方。
 既に十分な検査と治療を病院で受けた結果、自覚症状があるのは「気のせい」だと言われてしまっている方。
 今日のように医学・医療が発展する前の時代に立ち戻って、自らの持つ免疫力を試したいという挑戦心溢れる方。
○注意事項
 ホメオパシーは各自のご判断でご利用ください。
 ただし、レメディには医薬品としての効果は全くありませんので、本当に医薬品を用いることが必要な病気にレメディを使用して医薬品を使った気分になっていると、手遅れになって重症化したり、最悪の場合は死に至ることがあります。病気が伝染性のものである場合は、ご家族や友人知人ひいては社会にまで感染を拡げてしまう結果になることがあります。他人への感染の危険のある疾病へのご利用は決してなさらないでください。

【許されない宣伝の例(案)(ブラッシュアップ必要)】
○医薬品あるいは治療法としての効果効能があると誤認させるもの
・△△に対する治療効果があります。
・△△に対する予防効果があります。
・△△の症状を軽減します。

 っつーか、厚生労働省はさっさと仕事しろ。

追記:ホメオパシー団体の自衛宣伝と混同されないための但し書き
 発想としては、特商法によるマルチ商法の規制と同じです。規制をきちんと守ったら儲けるのはほぼ不可能、という着地点を目指せばよいのではないかと。
 特商法があったってマルチは無くならないしネズミ講も出てくるんだけど、現状の野放しよりは、マルチ商法程度にホメオパシー(を含む代替医療)規制ができれば良いのではないかと。

kikulogのコメント欄より転載、個人用メモ

Posted on 7月 10th, 2010 in 倉庫 by apj

 助産師会ぐるみでホメオパシーを推進していた証拠物件の一例。元エントリ―はこちら

18. かいもの ― July 9, 2010 @13:22:33
気になったので助産師会HPをググッてみました。
専門家集団であるはずの助産師会がかなり関わっている・・・

http://jmat.jp/kanso.html
より引用(東京都助産師会HPに投稿された研修の感想)
『知識的な学びとしては、ホメオパシーのお産における
優位性を大いに実感させていただきました。』以下省略

http://kanagawa-josanshi.com/KENSYU/2007-11-19semi.htm
より引用(助産師会神奈川支部主催研修)
『妊娠・出産のホメオパシーセミナー』

http://www.chibashi-mw.net/kensyu.html
より引用(千葉市助産師会研修)
『平成20年11月10日(月)定例会時「ホメオパシーと私のお産」【講師】勝股智香氏』

http://www1.ocn.ne.jp/~kyotomw/page4.html
より引用(京都府助産師会研修)
『過去の教育委員会による研修会 2009年9月19日:はじめてのホメオパシー』

http://www.midwife-chiba.org/19/2008all.pdf
より引用(千葉県助産師会報告)
『4月総会時ホメオパシーの勉強会』

http://www.hiroshima-josanshikai.com/lecture7.htm
より引用(助産師会広島県支部活動)
『2008.11.29(土)アステールプラザ会議室A13:00~15:00出産とホメオパシー』

http://www.oct-net.ne.jp/~oita-jyo/kaiinkenshu.html
より引用(助産師会大分県支部イベント)
『ホメオパシーコーナー』

http://www.kokoro-jyosanin.com/cgi-bin/kokoro/siteup.cgi?category=1&page=0
より引用(助産師会茨城支部)
『状況に応じてホメオパシーや頭蓋仙骨療法などを取り入れています。』

http://www.homoeopathy.co.jp/sinchyaku_new/index.cgi?index=1573
より引用『本日、兵庫県看護協会新会館にて、兵庫県助産師会主催によるホメオパシー
講演会が行われ、由井先生、鴫原先生のお二方に講演していただきました。

 来週の講義資料に入れるか。
 薬事法になるのか医師法になるのか、死人が出た以上は取り締まってもいいレベルじゃないかな。

疑似医療で被害発生の例

Posted on 7月 9th, 2010 in 倉庫 by apj

 講義資料に使うかもしれないのでメモ。読売新聞の記事より。

「ビタミンK与えず乳児死亡」母親が助産師提訴

 生後2か月の女児が死亡したのは、出生後の投与が常識になっているビタミンKを与えなかったためビタミンK欠乏性出血症になったことが原因として、母親(33)が山口市の助産師(43)を相手取り、損害賠償請求訴訟を山口地裁に起こしていることがわかった。

 助産師は、ビタミンKの代わりに「自然治癒力を促す」という錠剤を与えていた。錠剤は、助産師が所属する自然療法普及の団体が推奨するものだった。

 母親らによると、女児は昨年8月3日に自宅で生まれた。母乳のみで育て、直後の健康状態に問題はなかったが生後約1か月頃に嘔吐
おうと
し、山口市の病院を受診したところ硬膜下血腫が見つかり、意識不明となった。入院した山口県宇部市の病院でビタミンK欠乏性出血症と診断され、10月16日に呼吸不全で死亡した。

 新生児や乳児は血液凝固を補助するビタミンKを十分生成できないことがあるため、厚生労働省は出生直後と生後1週間、同1か月の計3回、ビタミンKを経口投与するよう指針で促している。特に母乳で育てる場合は発症の危険が高いため投与は必須としている。

 しかし、母親によると、助産師は最初の2回、ビタミンKを投与せずに錠剤を与え、母親にこれを伝えていなかった。3回目の時に「ビタミンKの代わりに(錠剤を)飲ませる」と説明したという。

 助産師が所属する団体は「自らの力で治癒に導く自然療法」をうたい、錠剤について「植物や鉱物などを希釈した液体を小さな砂糖の玉にしみこませたもの。適合すれば自然治癒力が揺り動かされ、体が良い方向へと向かう」と説明している。

 日本助産師会(東京)によると、助産師は2009年10月に提出した女児死亡についての報告書でビタミンKを投与しなかったことを認めているという。同会は同年12月、助産師が所属する団体に「ビタミンKなどの代わりに錠剤投与を勧めないこと」などを口頭で申し入れた。ビタミンKについて、同会は「保護者の強い反対がない限り、当たり前の行為として投与している」としている。

(2010年7月9日 読売新聞)

 つまりはホメオパシーをやって子供を殺したということですね。希釈した液を砂糖玉にしみこませる、ってのでホメオパシーであることは確定かと。

ペリカン便なくなったのかあ……

Posted on 7月 2nd, 2010 in 倉庫 by apj

 YOMIURI ONLINEの記事より。

「ペリカン便」名称消える、「ゆうパック」に

 日本郵政グループの郵便事業会社は1日、日本通運との共同出資会社で運営していた宅配便事業「ペリカン便」を吸収統合し、新たな「ゆうパック」として再スタートした。

 33年間親しまれた「ペリカン便」の名称は消滅した。

 東京都千代田区の郵便事業会社本社での記念式典で、鍋倉真一社長は「宅配便業界は熾烈な競争下にあるが、厳しい環境を正面から受け、よりよいサービスを提供する」と述べた。

 CMに出演するフィギュアスケートの高橋大輔選手も登場し「遠征や合宿でゆうパックを利用したい」とあいさつ、早速、ゆうパックを使って長光歌子コーチにお中元の食器を送った。

(2010年7月1日21時19分 読売新聞)

 宅配便の会社を選ぶのに、特にこだわりはなかったのだが、ペリカン便の袋には一時期お世話になった。
 学生の頃、近くのコンビニに、ペリカン便発送用の手提げ袋が常備されていた。丈夫で長持ちして安いので、通学用のバッグとして愛用してたのよ。実家の近くで買った5000円くらいのデイパックを使ったら、2週間くらいで敗れて、カバン買う金も無かったから、ペリカン便の手提げに目をつけたというわけ。同級生は、なんでペリカン便?って不思議がってたけどね。防水も効いてるから雨の日も安心。重い本やノートを入れて下げて20分ちょっと歩いて通学していたら、半年ほど経った後、体育の授業で行われた体力測定で、握力が妙に上がっていたのがいい思い出^^;)。

【ご案内】中野耕一氏の原画展など【拡散希望】

Posted on 6月 29th, 2010 in 倉庫 by apj

 東北地方つながりということで、福島県でのイベントのお知らせです。
 第1回ふくしま「城」フェスタin 二本松 で、中野耕一氏の原画展&戦国武将イラストコンテストが開催されます。イラストの締め切りが今月末なので、これから描いて間に合わせるのは難しいかもしれませんが、中野氏の原画を見るチャンスです。歴史小説のファンの方なら、挿絵を見たことがあるのではないでしょうか。
 案内のポスターを載せておきます。クリックで拡大するはずです。

!!$img1!!

 友人が絵を出している展覧会で中野氏を紹介されて、案内を手渡されたのでした^^;)。

例の「ドブス」騒動について引っかかっていることなど

Posted on 6月 25th, 2010 in 倉庫 by apj

 顛末はITmedia newsなど。

「ドブス」動画問題、首都大生2人を退学処分に 指導教員にも「厳正に対処」
首都大学東京の学生による「ドブス」動画問題で、同大学は撮影・公開に関与した4年生2人を退学処分に、音楽を提供した院生1人を停学処分とした。

2010年06月24日 18時11分 更新
 首都大学東京の学生が「ドブス写真集完成までの道程」と称して一般人を撮影した動画をネットで公開した問題で、同大学は6月24日、撮影に関わったシステムデザイン学部4年の男子学生2人を退学処分に、同研究科博士課程の男子大学院生1人を停学処分(1カ月)にした。学生に対し指導的な立場にあった教員に対しても関与の有無や指導方針を調べており、「今後厳正に対処する」という。

 問題の動画で、学生は「今日の日本においては、ドブスが絶滅の危機に瀕している」などと「ドブスを守る会」を称し、「ドブス写真集を作る」としてJR立川駅前(東京都立川市)で一般の女性を強引に撮影。女性の顔が分かる形でYouTubeに公開した。

 視聴者から批判が相次ぎ、学生は動画を削除。だが同大学にも抗議が殺到する“炎上”状態になり、同大学は「多大なご迷惑をかけ、深くおわびします」という原島文雄学長名の謝罪文をWebサイトに掲載していた(首都大学東京、学長名で謝罪 学生の「ドブス」動画問題)。

 学生は大学の調査に対し、「不道徳なものから生じるおかしみを追求することで、何かしらの表現ができると思った」と話しているという。

 同大学は、学生2人が「映像作品を完成するという名の下に、被写体となった方々に対し公然と人権侵害をした」「映像を作品として公開することにより、被写体となった方々の精神的苦痛を増大させた」、同大学の「社会的信用を失墜させた」として退学処分にした。

 大学院生は「不適切な内容の映像であると認識しながら、その映像に音楽を提供し、映像の作成に関与」し、その結果同大学の名誉を傷つけたが、積極的に関与したわけではないとして停学処分とした。

 原島学長は「映像は作成目的・意図を問わず社会通念に照らして倫理観、人権意識を著しく欠く極めて悪質なもの。映像を流された方々の人格を踏みにじる行為を行った上、多くの方々に不快な印象を与えた」と謝罪し、「他の学生の良好な学生生活を脅かすに至ったことは痛恨の極みであり、一刻も早く元の安寧な学修環境を取り戻せるよう全力で取り組む」としている。

 私が読んで気になったtogetterのまとめ。ynabe39さんの発言。

 起訴されて有罪になったわけでもないのに退学にしてしまうというのは、「逮捕や起訴,罰金や有罪判決などの客観的な基準に準拠しないといけ」ないところ、まずいのではないかという意見には全面的に同意。これは、手続きの安定性を欠くのが将来的に良くない結果を及ぼす懸念があるから。
 退学させられた学生が裁判で争ってきたら、これまでに確立している退学の基準に照らし合わせて裁判所の判断がなされた場合、大学が負ける可能性が高いのではないか。大学はアカウンタビリティと敗訴のリスクを秤にかけて、アカウンタビリティを重視したように見える。リスクを負う決断をするのは大学の自由だが、上策では無さそう。

 今後、客観的な基準がなくても退学させるという方法をとりたいのなら、入学前に提示する学則に基準を明記して、実際に実行し、何件か訴訟をやって、裁判例やら判例やらを積み重ねるしかないのかも。そこまでやることが前提だったとしても、何をやると退学になるかわからない学則では紛争のもとになるだけなので、何らかの客観的な基準を書いておくことが必要だろう。ただ、事実認定は裁判所の仕事で大学の仕事ではないので、実行可能かというと疑問。外の基準(起訴されて有罪とか)に頼った方が安定しそうではある。

 ynabe39さんがおっしゃる「停学だとその学生が反省し真人間になるまで大学や教員が面倒をみないと世間の批判を浴びます。大学の責任の取り方としては退学の方が無責任とも言えます」はわかるのだけど、今の大学に「真人間でなかった学生を真人間にする」能力があるかというと、一般には期待できないと思う。そんなノウハウは大学にはほとんどないし、昔なら多少はあったかもしれないそういった部分を潰す方向で運用がなされてきている。

 大学がとれる一般的な方法としては、カリキュラムを変えて倫理的な教育を徹底させるようにしました、といった対策でしかない。特定の個人を「真人間にする」と世間に対して請け負うのは無理だろう。教員の誰かを担当に指名して反省文書かせつつ面談もしました、といったことは実行可能だけど、これで学生が改心する保証はない。
 大学が負う責任と負い方にも一定の限度があるので、その範囲を超えて「大学に責任があります」と主張してしまったら、逆にそれは無責任な主張になってしまうから、すべきではない。
 大学がやるべきことは、例えば、ただの愚劣な権利侵害行為を芸術とカン違いする学生が出て来た理由について、教育内容のどこがまずかったかを検討するといったことであって、特定個人が更生するという結果を世間に対して約束することではない(刑務所だってそんなことは約束できていないのに大学に求められても不可能)。

 ここからは私もまだ混乱している部分。
 村社会的徒弟制度が機能していれば、倫理や道徳をたたき込むのは今よりは容易だったかもしれない。ただ、ハラスメントという弊害が出てしまったため、そちらを潰すために、村社会の論理を排除する方向で学内規則が整備されてきている。
 説得だけで倫理や道徳を教育できるとは限らない。昔であれば、法的手段以外の「圧力」を使うことができたのだけど、今では、法的手段以外に「圧力」を用いること=(法的根拠がないから)違法、とされてしまうために、とれる手段がかなり制限された状態にある。倫理や道徳を強制するために違法な手段をとると本末転倒なので。
 大学から、法的手段以外の方法を奪い去っていった結果が、「「学生重視学生優先」を目指してることになっている日本の大学で,学生への懲戒処分がどんどん日常的になり厳しくなっているという矛盾。これはけっして「学生の凶悪化」によるものではないよ。」(ynabe39)につながっているのではないかというのが私の問題意識である。「教育的配慮」の名のもとに曖昧にしていたり、現場で判断したりしていた部分が、権利義務関係に厳密に落とし込んだら違法になったり無効だったりする場合もあるわけで、そうなると「教育的配慮」は減らすしか無くなる。
 今回の件で、退学処分にしたから終わりというわけではないだろうという主張も理解はできるのだけど、私には、大学側が「そこまでの(=倫理や道徳を強制する)教育能力はウチには無い」と宣言しただけのようにも見える。
 一部分だけ法化社会的運営で残りは「教育」という曖昧なもので括っておくことは多分無理だろう。大学だと、成年を預かるのでなおさらである。
 結局、契約書を作って責任の範囲を定める以外に方法が無さそう。「教育的配慮」まで含めて契約書に書け、といった方向でないと、法化社会的運用は不可能じゃないか。もちろんその内容は公開で。それが教育機関の在り方として望ましいかというと異論もあるだろうけど、今更、大学だけ別扱いにはできないので、法化社会的運営に統一する以外の道も無さそう。

iOS 4アップデートに強烈に時間がかかった理由

Posted on 6月 23rd, 2010 in 倉庫 by apj

 手持ちのiPod touchをiOS 4にアップしようとしたら、バックアップが10時間経っても終わらず嵌った件。
 ネットで調べると、キャッシュを大量に作るアプリが原因の1つだと出ていた。小さなファイルで数が膨大だと時間がかかるということらしい。
 足引っ張る原因の1つはツイッタークライアントで、フォローの数が多いと、アイコンのキャッシュが大量に出来て時間がかかるとか。

 私の場合は、ツイッタークライアントではなくて、「Art」と、「HebrewBible」が原因だった。
 「Art」は、美術の資料集で、著名な画家の絵を見ることができる、美術の授業で使う資料集みたいなものである。こいつの絵は追加分を後からダウンロードできるのだけど、そのときに大量のキャッシュを作るらしい。
 「HebrewBible」は、ヘブライ語版の聖書。本文中からのリンクがいろいろあるんだけど、つついて出る説明とかが全部キャッシュになっているっぽい。暗誦付きのコーランはそれほどでもなかったし、各国語バージョンの聖書もさほどでもなさそう。

 怪しいアプリをいくつか削除して同期させ、それからアップデートし、復元が終わった後で再度インストールする、という手順で、バックアップは30分ちょっとで終わり、全体の所要時間は1時間半程度となった。

出前授業@会津高校

Posted on 6月 18th, 2010 in 倉庫 by apj

 先週やった出前授業のまとめ。理学部に進学する場合のミスマッチを無くすための話。

○新しいものを見つけた時、理由を考えるのが理学部、それを利用して役立つものを作ろうとするのが工学部。大まかに言って何に興味を持つかという方向が違う。
○高校の授業内容は、指導要領で制限されて、他の科目の知識を使わないようにわざとに仕組まれている。しかし、自然は1つなので、大学では何でもありで、他分野の知識も動員して進む。高校の教科書という限定されたものだけを見て、得意科目に絞って勉強すると、大学での何でもあり状態に対応できなくて躓くもとになるので、できるだけいろんなことを勉強しておいてほしい。大学で伸びるのは、結局のところ、全科目まんべんなく勉強してきた人。
○大学の数学は、公理論的扱いをするので高校の数学とは違う。高校で数学が得意でも大学の数学に合わないことはある。あらかじめ大学の数学の教科書をいくつか見て、定義、定理、証明で話が進んでいくのを確認した方が良い。なじめそうにないと思ったら、数学以外に行った方が幸せ。
○高校の数学好きな人は大学では物理に、高校の物理好きな人は大学では化学に、高校の化学が好きな人は大学では生物に行くと合うかも。
○物理進学を考えてる人は、駿台受験シリーズの山本義隆の「新・物理入門」を読んでおくこと。この本のやり方についていけそうにないと思ったら、物理学科以外を選んだ方が無難かも。
○個人的な経験。生物系の研究は、個体差によるばらつきが気になって、私には合わなかった。一方、生物系(農学医学含む)で楽しそうにやってる人にいろいろ訊いたら、個体差があることが面白いとか、個体差があることが苦にならないと言っていた。個体差があることが楽しいなら広い意味での生物系、個体差が無い方が良いが個別の物質に興味があるなら化学系、物質も離れて現象に興味がある人は物理系に合う、ということかもしれない。理学か工学かという分類とは別の適性があるのかも。
○東大に行っても山形大に行っても、学部で勉強する内容はほとんど同じ。理学部の場合は分野ごとに定番の教科書がいくつかあって、そのどれかをやる。定番の教科書が翻訳本だったりすることも多く、世界規模で大体同じことを勉強していることになる。

近況など

Posted on 6月 11th, 2010 in 倉庫 by apj

 twitterでは呟いてましたが、今週は、火、水、木と、香川大学に出張していた。
 香川大で、TDRの測定装置とパソコンをつないでデータを取り込めるようにし、ディファレンス法の計算をやって誘電スペクトルまで出せるような環境を作って、測定のデモをやる、という作業。
 私の手持ちの計算プログラムがMac用(しかもOS9で動作)なので、OS Xのclassic環境を用意するしか無いのだけど、既に購入されていたNI社のGPIBインターフェースがUSB-GPIBで、こいつのデバイスドライバはOS X用のみでOS9用が無かったために一手間以上かかることに。

 GPIB-ENET(あるいはENET/100)なら、OS9もOS Xもドライバがあってどちらでも動いたのに(つまり現状のソフトでも動いて、そのうち Carbon対応したらそっちでもOKになったはず)、なぜかNIの営業はUSB-GPIBを薦めたそうな。香川の先生が「OS9で動きますか。GPIB-ENETならOS9のドライバもあるようですが」などと訊いたところ、「動きます」と答えた上に「遠隔地の制御をするのでなければGPIB-ENETの必要は無い」と言ってUSB-GPIBを買わせておいて、いざ届いてみたら「ドライバは付属のCD-ROMのもの(OS X)しかありません」ということだったそうだ。
 こんな営業をしたNIの担当のヤツちょっと来い……(怒)。

 で、まあ、NI社のえー加減な営業のせいで、classic環境でそのままデータを持ってこれるはずができなくて、Igor Pro(OS Xで動作)のスクリプトを書いて、Igor Proから測定器のデータを読み出してファイルに保存できるようにし、それをclassic版の計算プログラムで読み込んだら、スペクトルの計算までできるようにしてきた。

 おかげで、行った初日は夕食を食べ損ねた上にホテルに入ったら日が変わってるし、その次の日も昼食どころではなく、名物のはずのうどんにありついたのは、撤収の時に駅ビルの食堂で何とか1杯だけだったという有様……。食い物の恨みは怖いって知ってるよな>NI(笑)。

 まあ、最初、装置側のインターフェースも不具合があって、OS X付属のInteractive Controlで叩いても動かんということがあったりしたわけだが……。何故かdegauss押して本体のメイン電源再投入で治ったという、それはそれで不安要素が残る状態だが、そっちはアジレントにメンテナンスを頼んでもらうしかない。
 計測用のMacはOSの再インストールを2回もする羽目になるし、その他にもいろいろ、まあ大体現場で出そうなトラブルには一通りぶつかったという感じ。

 今日山形に戻ったのだが、明日、午後の講義が終わったら、会津に移動して一泊、土曜日は会津高校で、高校と大学連携のための授業を2時間分こなす予定。

 何だかわからないけど走り回ってる。こんな状況なので、今年のトンデモ本大賞(土曜日に開催)には参加不可能となった。まあ、高校からの依頼仕事優先なのは当然だし。

敢えて乱暴に

Posted on 6月 4th, 2010 in 倉庫 by apj

 学生からのコメントを整理していたのだけど。

 「健康にいい」「ダイエット」を謳う製品全てを無条件に却下することにしても、実は、健康には何ら影響が無いのではないか、ということを考えた。
 何せ、平均寿命が80歳の国ですよ、日本は。

 ちょっと調べる必要があるのだけど、体をこわさない基本って、
(1)バランスのとれた食事を適度に食べる
(2)適度に運動する
(3)睡眠不足にならないこと
(4)そこそこ清潔にする (※コメントで指摘しただいたので追記しました)
くらいだろう。既に病気の人は医師の指示に従うとする(食餌療法や服薬など)。
 これらについてのまともで正しい知識をどこで学ぶかというと、(1)は家庭科、(2)(3)は保健体育(たぶん)。どっちも義務教育。(4)は、家庭科の住居関連のあたりで言及されそうで、そもそも体に良い何チャラ製品群とは関係がない(掃除のためのアイデア商品、といったものには関係するかも)。
 (2)(3)を補える商品は今のところ存在しない。運動用の器具を買ったって体を自分で動かさない限り効果はないし、寝具は選ぶと快適かもしれないがそれも人によるので一律にこれ、ともいえない。(2)(3)を補助するまともな商品なら一律に「健康にいい」「ダイエット」ということにはならないだろう。この器具でこれだけの運動をこれだけ継続すると消費かロリーが○○、といった表示になる。
 (1)は、「足りないものを補う」ものを摂取するなら意味はあるが、何が足りないかは人によるので違うので、一律に「これを飲んだら健康にいい」式の宣伝にはならない。
 ダイエットの方は、カロリー制限と運動以外の解はない。「○○ダイエット」で生き残ったものは何一つない。

 義務教育の知識をきちんと身に付けていれば、「健康にいい○○」「××ダイエット」の情報を全て遮断し商品を却下しても健康に生活できる、ということになってるんじゃないの。

 学生から、知識が足りなくてもインチキに引っかからない方法はないか、と聞かれたので、疑似科学広告の4条件(権威のお墨付き、マスコミ、嘘導入実績、特許)に当てはまる宣伝をしている商品は内容ジャンルを問わず却下、と答えたあと、「健康にいい」「ダイエット」を捨てるだけで、かなりの数のインチキを却下できそうだと思ったわけで。
 数が多いので、却下する条件に当てはまるものをまず全部捨てて、残ったものについてじっくり検討、でもよさそうな気が。膨大なクズの山からひょっとしたら混じっているかもかもしれない本物を捜し出す努力をする意味なんか、普通は無いんじゃないの。それが趣味なら止めないけど。

 これで落とせないのは、燃費向上グッズとかかな。「エネルギー系製品の却下基準」も作ってもいいのかも。
 金融系はまた別扱いだよなぁ。解約や清算の時期を選べない(あるいは清算しようとするとバカ高い違約金を支払わせるような種類の)商品には手を出すな、とかいろいろ。