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博士が100にんいるむら

Posted on 5月 17th, 2005 in 倉庫 by apj

博士が100にんいるむらがネットのあちこちで話題になっている。最初に見かけたのは2ちゃんねるだったが。で、内訳は
16人 医者
14人 助手(最近は任期制)
20人 ポスドク(任期制)
8人 会社
11人 公務員
7人 他分野
16人 無職
8人 死亡あるいは不明
ということだ。元データは博士の生き方の「数字で見る博士課程修了後」の「第1回:博士課程修了者の選択肢」の表とのこと。平成12年度の調査がもとになっている。
この中で、まあそれなりに安定した将来を歩めることが確実なのは、医者+会社+公務員の35人だけだろう。任期制の職は、終われば無職突入だし、博士終わった直後で無職だとその後職にありつくのは非常に大変である。任期付き助手とポスドクの一部が職を得るとして、せいぜい4割ちょっとが何とか幸せになれるのかな、と思っていたら、平成14年度の統計では、社会人の大学院後期課程の院生が約2割だそうで。てことは、100人中40数人の職に困らない人のうち20人は最初から職があった人たちということになる。てことは、無職&数年後無職が50人以上、博士を得て新規に職を得られる人が20人ちょっと位、で、社会人以外で進学して何とかなるのは1/3ってことになる。
 これじゃ、アカデミックへの期待を煽って博士進学を勧めるのは犯罪的行為に思える。進学を勧めるとしたら、在学中に企業のインターンシップなどの利用を促し、フレッシュマンとして3年間終わった後で企業に入るという進路を提示しながらでないと、人生棒に振ることになりそうだ。
 文部科学省は修士の学生を企業で研修させることを考えているが、理工系の修士課程は実はそんなに就職に困っていない。困っているのは博士課程の院生で、修了時に会社に行ければ良いが、下手にポスドクをやってしまうと人生のやり直しが難しくなる。むしろ、博士課程の院生にこそ企業での研修をさせた方が良いように思う。

知財の講習会

Posted on 5月 16th, 2005 in 倉庫 by apj

 通常実施権を確保して、他から邪魔されないようにするために、「確定日附アル証書」を作ろうという話。なので、ノウハウやら著作やら含めてどんどん報告しろということらしい。

東京行き

Posted on 5月 14th, 2005 in 倉庫 by apj

 前回に続いて誘っていただくことができたのでと学会に参加。終了時に推薦してもらって入会が認められた。ちなみに今日持っていったのは、文部科学省「心のノート」。

 帰りに本屋で、吾妻ひでお「失踪日記」を買った。あまりに真に迫った路上生活の描写は、まるで「路上生活サバイバルマニュアル」の趣があり、この通りに一度やって体験してみたいという衝動にかられた。

 中西氏の名誉毀損訴訟については、どうやら、市民団体が訴訟を利用して言論封鎖をもくろんだのではないかという節がある。中西氏の方も、民事訴訟に対して抱いているイメージが適切ではないと思うので、そのへんを今後コメントしたいなあ。そんなことを考えながら久しぶりに東武百貨店の本やを見ていて、「名誉毀損の法律実務」佃克彦著(弘文堂)を衝動買いした。新しい本なので、2ちゃんねるに対する訴訟の話も入っている。
 今考えているのは、この訴訟を授業のネタにすること。ググル八分の話題とセットかな。内容には踏み込めないので、(1)訴訟に対する偏見を持ってはいけないこと(民事訴訟とは何か、誰でも当事者になりうる、など)、(2)目的外の訴訟であっても提訴されたら戦略上言論を隠さなければならず、その中に必要な科学的情報が入っている場合もあること、つまり訴訟による言論封鎖があり得ること、(3)情報が無いからといって事実がないわけではないこと。探し方に工夫が必要(ググル八分、事件関係共に)、といったことをリテラシーの問題という観点から取り扱ってみよう。特に(1)は必須で、偏見をまず除去しないと、科学的情報の判断にたどり着かないこともある。

 昨日から読み始めたのが、スティグリッツの「人間が幸福になる経済とは何か」。スティグリッツの教科書の方も手に入れてるので、眺めつつ読んでいる。

「二十歳の民事訴訟」を!

Posted on 5月 13th, 2005 in 倉庫 by apj

 昨日に引き続いて、中西氏の訴えられている件について考えてみた( 掲示板 の方のVulkanさんとTamaさんのコメントが参考になった)。
おかしいと思うのは、どう考えても、名誉毀損訴訟としては、余分な話を出しすぎで、本来の趣旨から外れているという点である。
 民法で該当するのは

第七百九条  故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス
第七百十条  他人ノ身体、自由又ハ名誉ヲ害シタル場合ト財産権ヲ害シタル場合トヲ問ハス前条ノ規定ニ依リテ損害賠償ノ責ニ任スル者ハ財産以外ノ損害ニ対シテモ其賠償ヲ為スコトヲ要ス

の2つである。ところで、名誉毀損は刑事でも定められている。

(名誉毀損)
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
(公共の利害に同する場合の特例)
第二百三十条の二 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
3 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

 この、刑法二百三十条の二は、民事の不法行為の判断においても同様に適用されるという判例がすでにある。
 松井センセがウェブであれこれ書かれてブチキレた挙げ句訴訟に走ったとして、原告側弁護士が「松井氏が個人的な名誉回復だけを求めて提訴したものではない。」なんて書くのは、一体何を考えているのかと思う。提訴する側の主張とは、普通は「名誉が毀損され、回復措置と損害賠償を求めてもちっとも相手が応じないから提訴する」ってな内容になるはずで、民事訴訟とは実際そういうものだと理解しているわけだが。大体、被った損害の回復以外の目的に裁判を利用するのは、明らかに裁判所の目的外利用である。法律素人の松井センセが言うのならともかく、代理人弁護士がこんなことを提訴の直後に言ったら、裁判官の心証をおもいっきり悪くしそうに思える。感情にまかせて原告がこういうことを言い出したら、弁護士が止めるものではないだろうか。被告側としては、「名誉毀損といえるほどの内容はそもそも無かった。本件訴訟は名誉毀損とは関係のないことを争うために起こされたので訴え自体にほとんど意味がない」てな主張だってできそうだ。そもそも、原告側弁護士が「松井氏は、研究者として、国民の一人として、中西氏のこのような誤りを断じて見過ごすことはできないものと考え、貴重な研究時間を割いて、敢えて本件提訴に踏み切ったのである。」なんて主張してるわけで、やりたいことは名誉の回復と損害の賠償ではないと明言してしまっている。仮に、論点をそっちに誘導したいという意図があったとしても(どんなメリットがあるのか全く謎だが)、あまり上手い方法とは思えない。
#まさかと思うが、松井センセがおかしな弁護士に入れ知恵されたってことはないよな?科学的に誤りを言ったって理由で簡単に訴訟に走るようでは、松井センセの研究者生命の方が先に終わるんじゃないのか。
 また、裁判所で取り扱えるのは、

裁判所法第三条(裁判所の権限)
裁判所は、日本国憲法 に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する。

とあるように、「法律上の争訟」だけであって、環境ホルモン騒動が済んだ話かどうかを司法で判断するなんてことはそもそもあり得ない。法律素人の松井センセが勝手に勘違いしたというのならわからないでもないが、プロはそんな勘違いはしないものだと思っていた。だから、この点でも、代理人弁護士が一体何を考えているのか理解に苦しむ。
 また、「公益性」を主張するとしたら、大抵は、名誉毀損で訴えられた側が、名誉毀損にあたらないことを言う時だろう。原告の方から公益性を主張して行う名誉毀損訴訟というのは、相当に変なことではないのか。
 ここらへんの感覚は、訴状や告訴状を書いてみればわかる。私自身、告訴状が終わって訴状制作中のまっただ中だったりするわけなんだが。
 ともかく、意味不明な訴えに至った経緯を読み返して、これは「訴訟のための訴訟」ではないかと思っていたら、掲示板の方で、「環境ホルモン騒ぎが終わっては困る人達が得をする」のではないかという指摘があって、なるほどと思った。さらに「中西先生が訴えられたということがメディアに取り上げられることが目的」だそうで、まだまだ「世間」に残っている「訴訟への偏見」を利用して、中西先生の信用を落とすことが目的ではないかという指摘もあった(そうなると、原告側代理人弁護士が環境カルトに関わってるかどうかもチェックポイントの1つになるだろう)。

 そうであれば、(環境問題は専門外の)私が個人的にこの件で(面識のまったくない)中西先生を応援する理由ができる。そこで、「二十歳の民事訴訟」が標語となるわけだ。

 もともと、「二十歳の民事訴訟」を言い出したのは、悪マニ掲示板の常連の「ものつくり屋」さんである。この標語の趣旨は、社会に出るときに一度は民事訴訟を経験しよう、という意味である。もちろん、現実に実行するにも、そうやたらと訴訟の原因が転がっているわけではないし、第一裁判所がパンクするだろう。この標語の趣旨は、社会に出る時に民事訴訟の仕組みをちゃんと知っておこう、という意味である。
 日本の法は、自救行為の禁止が原則である。つまり、穏やかに催告して応じてもらえなければ、強引に金払えなんてやってはいけなくて、訴訟をしなければならない。民事はとどのつまりは言った・言わないの争いで、法にのっとって裁判官を納得させた側が勝つ。普通に商売をしていたとして、代金を払わない奴にあたったら、払ってちょうだいって手紙出したり穏やかに催告したりして、それでだめなら裁判所を通して請求することになる。つまり、民事訴訟というのは結構身近なものである。だからこそ、現実にかかる費用と手間以上の「敷居の高さ」という偏見は無くす努力をしなければならない。また、訴え・訴えられたことで、訴訟外で不利益を被るような偏見も無くす努力をしなければならない。これは、嫌がらせで提訴される可能性の高いウェブサイトをやっている私自身にも関わる問題である。訴えるだけなら割と簡単にできるし、応訴する側はそれなりの手間も金もかかるから、嫌がらせとしてはそこそこ有効(ただし訴える側も金と手間がかかるしリスクも負うけどね)な方法でもある。

 中西先生には、ぜひきっちり応訴して、変な負け方をしないように最後まで戦ってもらいたいと思う。可能なら、訴訟の顛末を本にでもして世に問うてほしい。この手の本で関心したのが「判決 訴権の濫用」というもので、創価学会が巻き込まれた虚偽訴訟の顛末をまとめたものである。類似のものを出すことができれば、「訴訟に偏見を持つような人は縦書きの本にも容易にだまされる」ことが予想されるため、中西先生の被る不利益をメリットに変えることも可能ではないかと思う。

訴権の濫用じゃないのか?中西準子氏を名誉毀損で提訴

Posted on 5月 12th, 2005 in 倉庫 by apj

2科学と社会105120050512訴権の濫用じゃないのか?中西準子氏を名誉毀損で提訴95菊池さんのところのブログからたどって情報にたどりついた。
松井三郎京大大学院教授、中西準子氏を名誉毀損で提訴!の話だ。資料として全文引用しておく。  名誉毀損行為の中身が微妙っつーか、曖昧だなあ、と。はっきりしたことを知るには、傍聴に行くしかないのだろうけど、これって民事だし、準備書面の交換でほとんど手続きが終わるようなら行っても情報を得るのは難しそうだわな。
 中西氏が出したとされるウェブの内容と、原告側の主張に、訴訟になるほどの差があるように、私には見えない((3)名誉毀損行為の内容)。ここに書いてある内容って、原告側の主張だよね。それにしては主張が弱いような。  ところで、この、 松井三郎氏がどういう利害関係を持ってる人なのかということを特に知りたいと思った。つまり、「次はナノ粒子問題、というテーマででかいプロジェクトを動かそうというようなプランを持っていたかどうか」ということに興味がある。そういうことに何も関係がなければ、純粋に名誉毀損訴をしてみただけなんだろうけど、もしその裏側に、次にどういうプロジェクトに予算を付けるかといった政治的問題があるとしたら、話が違ってくると思う。この人が実際にどういうプロジェクトに絡んでたかということについては、広く情報を集めて共有しておく必要があるだろう。幸い、ネットという便利な道具もあることだし。コメントでもかまわない。「名誉毀損にならない」「事実に基づいた」情報がほしい。  サマリーを読んだ限りでは、原告側の主張には矛盾があると思う。提訴に至った理由の(1)では、要するに批判するときは慎重にすべしと主張している。これはわからないでもない。ところが、中西氏の方は詳細を調査中だったらしい。てことは、原告がやってることは「批判の時は慎重にすべきだが一度批判をした内容を撤回するときは慎重ではなく拙速にやれ」ということになる。何だかダブルスタンダード丸出しなわけだが。

中西氏のように、国の科学技術のあり方を決定する立場の人が、そのような誤った認識を持ち、その結果、国が政策決定を誤ることになれば、国民の健康や生態系に取り返しのつかない事態も招来しかねない。

 という意見はわかるが、その意見を通すための解決策が、民事の名誉毀損訴訟だってのは何か根本的に間違ってないか?中西氏が「環境ホルモン問題は終わった」と考えていたとしても、それこそ、これまでの研究経過によってどういう意見を持つかは科学者の自由のはずである。その意見に異議申し立てをしたいのなら、それこそ科学の土俵でやればよいのであって、裁判所でやるというのは、裁判所の目的外利用、つまり訴権の濫用じゃないかと思う。裁判所は学会じゃないぞ。それに、アレルギー性疾患の原因として環境中の化学物質の問題が「懸念されている」だけで、反対意見を持つ人に対して訴訟をしかけるというのは、ちょっと尋常ではないように思う。文章をそのまま読むと、中西氏が終わったと主張したのは「環境ホルモン」問題であって、「化学物質一般の害」ではない。どうも、巧みに、対象となる物質の範囲をすり替えているように見えるが、単にサマリーの文章がまずいだけなんだろうか。
2005年3月16日 本件名誉毀損裁判について
原告代理人 〒105-0004東京都港区新橋4-25-6ヤスヰビル2・6階
コスモス法律事務所
TEL03-3432-1475/FAX03-3437-3986
弁護士 中 下 裕 子
1.本件訴訟の概要 (1)当事者 原告:松井三郎・京都大学地球環境学大学院教授、文部科学省特定領域研究班(平成13~15年度)「内分泌攪乱化学物質の環境リスク」代表 被告:中西準子・独立行政法人産業技術総合研究所化学物質リスク管理研究センター所長、前横浜国立大学教授 (2)請求内容
11159375261118839109133.24.28.17/::/1116105世間のジョーシキ松井さんのプレスリリースの中身を検索してみると文科省の研究費による業績評価が下記で見られる。
www.mext.go.jp/b_menu/houdou/16/12/04120103/005/006.htm
高く評価されている。が中西さんの環境ホルモン研究評価(プレスリリースが言うところの)とは真っ向から対立する。ウーン!

訴権の濫用?という指摘に真実味がでてくるな。
ここに次の松井さんのナノの危険性を研究しようとする研究プロジェクトなどに(研費や京大COE研究など)松井さんの名前が出てくると、とっても危ないです。まさかですが、
プレスリリースはあまりにも正直に事情を告白してくれているのではないのですかね。まさに事象の地平線上になにかが霞んで見えてきませんか。このブログはなかなか中身が濃いい。1116493803218.137.150.57

NHKを見損ねたのだが

Posted on 5月 10th, 2005 in 倉庫 by apj

 今日のNHKの クローズアップ現代 で、「追跡 学位売買」というのが放映されたらしい。ウェブの番組紹介は次の通り。

「金さえ払えば、誰でも簡単に博士号が入手できる」そんなEメールが今、日本のビジネスマンのもとに大量に送りつけられている。実際にキャンパスもなければ、講義もなく、学生もいない、名前だけの大学が、”学位工場”として学位を乱発、そんな違法すれすれのビジネスが波紋を呼んでいる。アメリカでは学位を買った人が政府の要職についていたことが発覚、スキャンダルにまでなった。今回、”学位工場”をアメリカで追跡取材、学位工場の実態を明らかにすると同時に、その摘発の難しさを浮き彫りにする。

 日本にも、過去に、「特許大学」というのがあって、「**博士」という称号の「使用権」を販売していたことがあった。アメリカの場合は、大学設置が日本のようにお役所の許認可行政で動いてないので、学位売買組織(ディプロマ・ミル)がある。当然、そういうところでもらった学位は就職の時の資格にも使えないし履歴書にも書けない上、州によっては公職に就くときに提示することが違法行為になる。
 ただ、この間、「欧米にはない制度」という理由で日本の論文博士制度が廃止の方向だという話が出ていた。日本の論文博士制度は、アカデミックな査読のある論文誌に数報以上掲載されていることが前提で、講義をうけていないにせよハードルはそれなりに高く、乱発とはほど遠い状態である。欧米かぶれして日本の論文博士制度をいじくる前に、学位工場をとっとと壊滅させてはどうかと思う。学位売買の広告をする行為を規制してもいいのではないか。

まあ有意義なGWだった

Posted on 5月 8th, 2005 in 倉庫 by apj

 昨日山形に戻ったわけだが、GW中はずっと実験だった。ラマン散乱なのに、カウントをためてノイズを減らさなきゃいかんとか、1つ測定するのに6時間以上かかるとか、まるで中性子散乱みたいな状態(笑)。
ちょうど、京都大のポスドクの人も来ていて、同じ部屋の別の分光器を使ってやっていたので、いろいろ議論したりしていた。とりあえず有意義なGWだった。

 それはともかく、郵便物の保管、7営業日にしてもらえないものか。GWに入った直後に届いたものが、7日の期限がきて、もうちょっとで送り返されるところだった。何とか7日目(つまり戻ったその日)の深夜に引き取りに行ったのだけど。

ゴルフをやって何が悪い?

Posted on 5月 6th, 2005 in 倉庫 by apj

 別に、私がゴルフをする話じゃない(打ちっ放しにも行った経験なしです)。そもそもGWはずっと実験とデータ処理で、遊びに行く暇なぞありゃしなかった。
 そうではなくて、JR西日本の話である。ソースは、例えばasahi.comのこことか。脱線事故直後に従業員がゴルフコンペや旅行や送別会を行っていることを、マスコミが報道している。ボーリング大会の話もあった。
 一体なぜこんなことを問題にしているのか、さっぱりわからない。普通の会社なら、送別会だって親睦会だってやってるのが当たり前だろう。『社長名で各支社に節度ある行動を求める通達を出したが、その後も催しは続いており、「犠牲者の遺族や負傷者の心情を思うと中止すべきだった」として関係社員の処分を検討している。』というのは、どう考えてもおかしい。今回の事故の原因はまだ調査中のようで、はっきりしたことはわからないが、少なくとも社員の懇親会が原因で起きたものじゃないだろう。また、社員の懇親会をとりやめたら、そのことによって輸送がより安全になるかというと、それも普通は期待できない。
 社内で誰かが事故を起こしたら、やるべきことは調査と再発防止と被害者への十分な補償だけだろう。そのために、組織のトップが休む暇も無くなったとしても、それは仕方がない。上の人たちはそれだけの権限も責任も報酬も得ているのだから。しかし、一般従業員に対して、揃って徹底的に喪に服せというのはどう考えてもやりすぎではないのか。合理性を欠くやり方で現場の行動を制限するという発想を続ける限り、今後も事故が減ることはないに違いない。気の毒な犠牲者は無駄死にに終わる。
 こういう内容を平気でとりあげて煽るマスコミのやり方は、意味の無い精神主義で物事を解決するという風潮を助長するだけで、利益が全くないように思う。何て言うか、「欲しがりません勝つまでは」とか、理屈じゃないことを人に強制して物事が実現すると思っていた戦前の一時期の状況とだぶって仕方がない。既に、労務管理が合理性を欠くほど厳しかったという報道もなされているわけで、それが事実なら、無理なく安全を確保するためにはどうあるべきかということが議論の中心にならないと困る。しかし、こういったおバカな報道のせいで、本当の問題点が埋もれてしまうかもしれない。まさかと思うが、抗議にたいするガス抜きのために、わざとにマスコミに従業員の懇親会バッシングさせてるんじゃないだろうね?

OS X Tigerの不具合

Posted on 5月 5th, 2005 in 倉庫 by apj

 実験の合間にTigerを使っていたのだが、一番派手な不具合は印刷ができなくなったこと。
共同研究先のお茶の水大の、OKI Microline 14n と、HP buisness inkjet 2300nの両方ともだめ。印刷を始めて数秒で「ジョブを停止しました」と表示されて勝手に処理をやめてしまう。プリンタ設定ユーティリティから、プリンタのリセットを行い、2300用のドライバをインストールすると一応動くことは動くが、上部マージンを無視してくれたり、日本語が文字化けしてみたり。IgorProからの印刷ですが。

連休中なのでかき入れ時で実験してるわけだが

Posted on 5月 4th, 2005 in 倉庫 by apj

 連休中なので、かき入れ時だしってんで実験だの溜まってるデータ処理などしてるわけだが。またまた香ばしいニュースを見てしまった。

博士号は得たけれど「ポスドク」激増で就職難てな記事が出た。例によって2ちゃんねるでも3スレ目が立ってる。

博士号を取得したものの、定職に就けない「ポストドクター」(ポスドク)が、2004年度に1万2500人に達したことが、文部科学省が初めて実施した実態調査で明らかになった。2003年度は約1万200人で、1年間で約2300人も増えている。

 年齢別では約8%が40歳以上で“高齢化”が進んでいる。大学助手など正規の就職先が見つからず、空席待ちが長引いていると見られる。さらに、社会保険の加入状況から推定すると、常勤研究者並みの待遇のポスドクは半数程度しかいないと見られ、経済的に苦しい状態も裏付けられた。

 政府はこれまで、国内の研究者層を厚くするため、大学院の定員拡大などポスドク量産を推進してきた。しかし、研究職はさほど増えておらず、その弊害が出た形だ。多くは研究職志望で進路が少なく、企業も「視野が狭い」などと採用に消極的で、不安定な身分が問題化している場合が多い。

 ◆ポストドクター=博士号(ドクター)を取得した後、専任の職に就くまでの間、大学などに籍を置いて研究を続ける若手研究者。公募型の研究費を得たり任期付きで給与をもらったりして生活している例が多い。

 今年の3月上旬の日経新聞にも、大学院重点化はほとんどバブルだって話が出てたし。文部科学省は国家予算で失業者を養成するつもりなんだろうか。いつまで、大学院生(特に博士後期)大量生産の政策を続けるつもりなのだろう。

 そういえば、私が博士号を取った直後で既に博士のレベル低下は起きていたな。とくに、軽部研は留学生には甘かった。
ケース1(韓国人留学生の場合):3日に一度はピペットのチップいれた箱を床に落とす。装置の説明するからと言っても全くやってこず、本人曰く「説明きかなくてもできる」。で、見事にマニュアル無視して装置を壊し、もうちょっとで爆発事故で周囲はガクブル。生化学の実験なのに、全然別の人が調整したバッファを勝手に使って、「pHが合ってなかったから酵素が壊れた」と激怒。実験の途中で私が使ってたメタノールの瓶にわけわからんピペット突っ込もうとしたから怒鳴りつけたら、「早く持っていかないと酵素が失活する」……ってお前、実験始める前に何で用意しとかへんのかと。こんな状況なのに「学位をとさなかったら国際問題になる」の教授の鶴の一声でスタッフが学位取らせる下働きをすることに。何とか学位はとったけど、後から同じ留学生が激怒してたよ。「あんなのと一緒にされたくない。同じところで学位を取ったなんて言ったら自分の信用まで落ちる」って。
ケース2(中国人留学生の場合):JIS法のBOD測定の式を勝手に変えて、同じ試料分析してる企業の研究員の人と一桁違う値を出してたっけな。プログラムが組めるとか何とか言って私が組み上げた測定装置のパソコン持っていったが結局まともに動かなかったし。こいつも学位をとった。その後は知らん。
ケース3(某日本人の場合):博士で先端学際工学に。で、そこそこの国立大の任期付きの助手になったが、緩衝液のpH調整ができず(繰り返すが生化学の研究室の筈だが)、学生に馬鹿にされて出勤してこなくなってフェードアウト。こいつのその後も知らんな。
 大体、先端学際の社会人枠はほとんど面接試験しかないから、知識無くても入れる。修士から直接はいるのに、そういう試験で潜り込む時点で終わっとる。で、入ってから苦労する。あの頃の軽部研は、教授の思いつきで下が振り回されていたから、学位論文主査=指導教官、の効果で学位取得にこぎつけても、結局知識も技術も上がらないままになる。