有機農法と波動
「有機」に健康効果なし=一般食品と栄養変わらず-英調査
【ロンドン時事】農薬や化学肥料の使用を減らして作られた有機食品の栄養は、一般的な食品とほぼ変わらず、取り立てて健康に好ましい効果をもたらすわけではない-。英食品基準庁が委託した調査報告が29日公表され、消費者が抱く有機食品の効能とは反する意外な結果が明らかになった。
委託を受けたロンドン大学衛生熱帯医学大学院が、過去50年間に発表された文献を精査した。13の栄養素のうち、ビタミンCやカルシウムなど主要10栄養素では栽培方法によって大きな違いは出ないとの結果が得られたという。
食品基準庁は調査結果について、「有機食品を食べるなという意味ではなく、食べたからといって健康面でより優れた効果が得られる証拠はないことを示している」と指摘している。(2009/07/30-05:33)
有機農法で作った野菜と、一般農法で作った野菜の栄養の分析をしても、有機農法をアピールできるほどの目立った差が無い、ということは、10年以上前から知っている人は知っていたはずである。今回、イギリスであらためて調査をしてはっきりしたということなのかな。
有機農法を支持する人達は、それでも何とか「違いのわかる」評価方法が無いものかと探していて、そこに「波動測定」がつけ込んだらしい。農家に設備として波動測定装置を売りつけるということが行われることになった。しかし、インチキはインチキなので、そのうちバレて、農家を相手に商売できなくなった(農水省の役人まで騒動に巻き込まれた、という話もあったが、具体的に何があったかは不明)。波動の人達が次に目をつけたのが水だから気を付けろ——
水商売ウォッチングを作り始めて間もなく、農業コンサルタントの方から教えていただいた話である。有機農法の農家に波動が入り込んでいたのは、多分、1990年代だろう。それから間もなく、「水からの伝言」が出版され、水に健康な波動を転写する云々な装置を商材にした悪徳商法が行われ、摘発され……そして今に至る。
これまでの使用例を見た限りでは、本当は違いが無いのだけどその人にとって都合の良い違いを出したい、というニーズにつけ込む形で「波動測定装置」が使われている。何を測定しても意味の全く無い数値が出て、測定方法の微妙な違いで数値が変わる(操作する人によって変えられる)のだから、測定しているものは、「波動」ではなくて、多分、その人の「願望」なのだろう。
【追記】
食品安全衛生情報blogの「[FSA]オーガニックについてのレビュー発表」より。
●有機農産物には残留農薬が少ないから健康への悪影響が少ないという主張は残留農薬モニタリング結果によって既に何度も何度も否定されている
有機農産物からも残留農薬は検出される。頻度は多少通常農薬より少ない。しかし基準違反という尺度を用いれば圧倒的に有機農産物の基準違反の方が多い。有機では認められていないはずの農薬がしばしば検出されるから。健康影響に関してはどっちもほぼ影響なし。
ただし英国やヨーロッパの話。日本で怪しげな「資材」を使って「無農薬」と称している人たちの作るものについてはデータがないのでなんとも言えない。
うちの研究所に電話してきた人は農薬として認可されているもの以外を使えば「無農薬」だと主張していた。その人が害虫を殺すために使っていたのは毒性の強いストリキニーネ。使わないでくれと言っても無農薬ではそれが常識みたいなこと言ってた。
少なくとも有機JASですらない「無農薬」と勝手に主張しているモノについては信頼できない。
●通常農産物が有機より有害ではないと言われて有機推進団体が持ち出してきたのが栄養価が高いとか健康に良いとかいう主張。Soil Associationなどがここ数年それを宣伝文句にしてきた。
つまり、無農薬と称して単なる劇毒物を使っていた、ということである。確かに農薬じゃないが……人をなめとんのか。
【追記】
「無農薬野菜です」と言われたら、普通の人は「農薬を使っていない、他の化学薬品とも無関係な”自然な”方法で作られた野菜」と思うだろう(”自然な”はこの手のものを好みそうな人がイメージする自然)。「リストに指定されている農薬を使っていないだけで、他の劇物や毒物はしっかり使っています」とは、思わないんじゃないか。
「農薬以外に他のものを使ってませんよね」といちいち確認しなければならないというのでは、詐欺すれすれのように思うのだけど。
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