提訴を装った詐欺に注意
悪マニさんのところで知ったので、こちらでもネタとして取り上げる。
以下のような文面の葉書が出回っているらしい。
内容確認通知書
契約会社に対し貴方が行った、料金の未払い或いは契約不
履行に対し、契約会社が貴方に対し訴状を管轄簡易裁判所
に申請した事をこの通知書にてお知らせ致します。当センター職員にて契約会社、訴訟内容等につきましては
お調べ致します。
私どもは原告側からの最終通知、並びに被告人と訴訟内容
を確認する機関の為、個人情報保護法に基づき通知書本人
様のご連絡をお願い致します。御連絡なき場合、管轄裁判所から訴訟の日程を決定する、
呼出状送達後、出廷となります。
尚、裁判所からの重なる通達を無視し続けますと原告側の言
い分通りの判決が下り、執行官立会いのもと、財産の差し押さ
え等をされる事がありますので十分に御注意ください。※企業間で個人情報をやり取りし、悪用するケースもござい
ますので、至急御連絡ください。
※この通知は金銭の請求ではございません。登録番号 (○) ○○××△△ 平成21年
NPO法人 国民消費相談センター
9時~17時30分
〒104-0061
東京都中央区銀座1-18-16
03-5649-9071
もちろんこれは詐欺で、国民生活センターとも消費生活センターとも何の関係もない。
こんなものが出回っているということは、これを信じてひかかる人が世の中には居るということだろう。しかし、少々の知識があれば、この葉書がいかにヘンテコかがわかって、お茶を吹く結果になるので、具体的に説明しておく。
民事訴訟の開始は、
(1)原告が管轄の裁判所に訴状を提出
(2)内容に不備がなければ、裁判所が、期日を決めて被告に特別送達。
である。つまり、訴状が被告に送達されるまで、(代理人弁護士を含む)原告と被告と裁判所以外の誰かが関わることなど無い。そもそも、裁判所や原告本人以外から、訴状がどうなっているかの連絡が来ること自体が有り得ない。
訴状は申請するものじゃなくて提出するもの。基本的な用語を間違えるなと。
訴状に不備があれば、補正するように言わるし、従わなければ却下となる。却下されれば訴訟は始まらない。訴状の審査は裁判官の仕事、窓口で教えてくれるのは担当の書記官だったりするが、この内容が裁判所の外に漏れることはない。
裁判所に訴状を「申請」し、それが関係ない第三者に知られているという設定自体、少なくとも日本の裁判制度の話でないことは確か。
また、訴状の内容やら相手方については、訴状が送達されてくればはっきりするわけで、事前に誰かを通して調べてもらったって何の役にも立たない。訴状と証拠書類の実物を見ないことには答弁書も書けないし、弁護士に相談もできない。要約だけ先に知るメリットは何一つ無い。
原告側の最終通知に至っては、一体どういう設定なのかと(笑)。最終通知も何も、裁判所にあるか、裁判所から送達途中の訴状について、誰か他の人が内容を知ることなんか不可能である。だから、原告:提訴と同時に記者会見、被告:「訴状を見ていないのでコメントできない」が繰り返されるわけだ。
つまり、この葉書の、連絡を寄越せというお願いに至るまでの話は全部嘘である。
大体、普通はこんな面倒な手順は踏まないはず。普通の原告は、提訴するぞといった内容証明の1通でも送って様子見した後は、訴状を提出しているものだ。相手が悪徳なら、内容証明を送るなどという効力もない無駄なことはしないで、とっとと訴えた方が手っ取り早い。そこに、関係のない自称NPO法人が絡める余地なんかあるわけがない。
嫌がらせにせよ詐欺にせよ、本当に訴状が提出されているのならば、訴状が裁判所から送達されるのを待って対応すれば十分間に合う(「特別送達」というものでやってくる)。この葉書は、どう見ても架空提訴に架空NPOだから、きっと、脳内訴状しかなく、実際に訴状が届くことは無いと思われる。
この手の葉書を受け取ったら、近くの消費生活センター(本物)や、警察に届けて、周辺住民や悪徳業者に名簿が渡ってしまっている人達への注意を喚起するために使って貰うと良いだろう。
【追記】ニセNPO法人は内閣府が晒してくれているので、内閣府に連絡するのも1つの手かと。
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