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水素水の状況

Posted on 1月 14th, 2009 in 倉庫 by apj

 日本医科大学の太田教授からメールをもらったので、全文掲載する。このエントリーへのコメントとして書かれた内容である。だいぶ状況が見えてきた。

From: 太田 成男Date: Tue, 13 Jan 2009 19:08:21謹賀新年
天羽さんへ

 ニセ科学へのただ乗りという逆の状況、あるいは紛らわしくしたことの責任(2009/01/07)を拝見しました。

 かなり好意的に書いてくださったと感謝しております。私が直接インターネット上にのせても本人かどうか判別がつかないでしょうから、メールで私の意見をお送りします。天羽さんからwebにのせていただければ幸甚です。

 まず事実誤認があります。

>太田教授の製品化するという判断が拙速だったのではなくて、もともと、製品化したくて仕方のない企業から持ちかけられた研究だったということのようである。

 事実は、 

 製品化したくて仕方のない企業から研究をもちかけられたのではなく、すでに水素水を製品化していた企業が水素の研究を太田へ依頼したというのか経過です。企業設立は2002年、製品化は2004年1月(厚生労働省の認可)、研究の依頼は2004年8月、研究開始は2005年1月、顧問就任は2006月2月、最初の論文発表は2007年5月。順序は(1)研究の依頼(2)製品化ではなく、(1)製品化(2)研究の依頼の順です。

 この経過をみれば、「まぎらわしい顧問関係」ではなく、ごく普通の顧問関係であることがおわかりになるでしょう。

>nature medicineの成果発表と同時に「効果効能を謳う活性水素とは無関係だし水素水とも結びつかない」という情報を発信し、商売側とは距離を置く、くらいのことをすれば何とかなったかもしれない。

 論文発表は、水素ガスの効果(2007年5月、続いて2007年7月)を先行していますが、その時点で、すでに水素水の飲用効果も動物実験で明らかにしていました。ただし、水素ガスと水素水の論文発表の時期はずらしています。水素水の論文は通りにくいでしょうから、水素ガスの論文を先行させ、水素分子の効果を浸透させてから、水素水の動物実験結果発表は1年遅らせて、2008年6月(認知機能低下抑制効果)、12月(動脈硬化抑制)、2009年1月(抗がん剤の副作用軽減効果)に発表しました。「効果効能を謳う活性水素とは無関係」ではありますが、「水素水とは結びつかない」どころか、「水素水の飲用効果」はすでに明らかにしていたので、「水素水とは結びつかないという情報」を発信しないのは当然です。

>私としては、こんな紛らわしいことを始めた太田教授にはとことん責任を取ってもらいたいと思っている。この場合の責任をとる、とは、効果効能を謳えるところまで研究を全うし、厚労省が認める程度の「水素水製造規格」でも定めることに一役買って、業界団体の指導をして、インチキ宣伝をする業者は居るにしてもそれは団体にも入ってないモグリ、という状況を作り出すといったことを意味する。

 もちろん、とことん責任をとる覚悟でおります。

(1)少なくとも、本格的臨床試験により効果効能を明確に言えるようにする。現在、多くの研究者と医師と幅広く大規模臨床試験を開始しようと計画しています。

(2)効果効能の基本原理を分子レベルで明確にする。

(3)インチキ業者を根絶するように努力する。水素研究会では、企業会員を非常に厳しく選別しており、水素分子がはいっていない不良品を販売したり、インチキ宣伝をしたり、販売方法に問題がある企業は、企業会員にはなれないようにしています。

(4)活性水素、マイナス水素イオンとバナ天然水素水(水素分子はまったく入っていない)に対しては、公然と排撃するよう努力する。過去に「活性水素」や「マイナス水素イオン」の言葉を使っていた業者は基本的には水素研究会会員にはなれません。

 「ニセ科学のただ乗り」というのは事実を反映しているようには思いません。いかに「活性水素」や「マイナス水素イオン」からは被害を受けたかは筆舌につきません。

>最初に出回っていた怪しい話を撃墜しながらまともな商売が主流になるように振る舞う、というのが可能な立場だと思うんですが・・・

 努力していますが、まだまだ力不足です。しかし、「トリム」は「活性水素」を使わなくなったし、「活性水素」を使う業者は以前より非常に少なくなっています。「マイナス水素イオン」の勢力拡大スピードも遅くなったようです。2009年には大手の参入により「いかがわしい」小さな会社は生き残れなくなるでしょう。

 「紛らわしいことをやっている」と自覚しているかについてですが、普通の順序でないことは十分自覚しています。なぜ普通と違う順序になるのかという理由は明確で「物質特許がとれない」からです。「効果効能があるが物質特許はとれない物質を公共のために利用できるようにするにはどうしたらよいか?」がテーマであり、壮大な実験です。

太田成男

 太田教授が出している水素水の効果効能(動物実験)は、「何に対するものか」が絞り込まれているということに注目。実験をすればこうなるのは当然で、「健康にいい」「老化防止」「慢性病に効く」といったあやふやな話にはならない。
 この流れでいけば、研究が進んでヒトでの試験が行われて結果が出たとしても、やはり、「何に」「どれくらい」使うかが特定されたものになるはず。今後も、太田教授の論文を勝手に引用して「健康にいい水です」などといって売るのは、はっきり言って間違いで、治療法としてどう使うかに絞って考えなければならない。
 「健康にいい水」を売りつけたい人や、活性水素から水素に無節操に乗り換えようとする人にとって、太田教授の仕事はかなり魅力的だろう。買わされる側としては、「権威」が無関係なところで使われていないかどうかに要注意である。「動物実験したら効果があった」を、実験無しに「ヒトに効く」にすり替えたりするのもダメ。焦らず実験を見守ろう。

 このメールを受け取ったので、掲載するという連絡と共に「動物実験が終わった段階で人向けの製品を出すのは拙速ではないかと思うのですがこの点についてはどうお考えでしょうか。」と質問してみた。返事をもらえればもっと状況がわかるかもしれない。

 太田教授からすれば、活性水素(イオン)などに被害を受けたということなのだろうが、当事者でない身から一歩引いてみれば、ヒトに対する結果が出てから何に対してどう使うかを絞って販売すればいいのに、と思うので、このあたりには温度差がある。

【追記】
 私の質問について、太田教授から次のような返事をもらった。

天羽さま
水素水の飲用効果の動物実験が終わった段階で人向けの製品を出すのは拙速ではないかと思われる点についての私の考えですが、

(1)効果効能を謳う製品の販売は現段階ではよくない。
(2)効果効能を謳わない製品は、安全性の基準を満たしていれば水素水を公に販売することがすでに承認されているのだから、良い悪い以前に製造・販売を誰も禁止することはできない。
(3)高価な水素水の販売は望ましくない。
(4)効果効能を謳えるように人を対象とした調査研究を進めたい。
(5)水素水が「活性水素」や「マイナス水素イオン」とは全く別ものであることを周知させたい。

ということでしょうか。

太田成男

裁判所まで行くとはっきりすることがある

Posted on 1月 13th, 2009 in 倉庫 by apj

 『安部英医師「薬害エイズ」事件の真実』武藤春光・弘中惇一郎編著(現代人文社)978-4-87798-386-4を購入。
 刑事事件で一審判決無罪となり、控訴審の途中で安部医師は亡くなった。この本は、当時のマスコミの大バッシング報道が、いかに事実とかけ離れていたかを示すものである。
 一審判決の全文が付録CD-ROMに収録されている。たくさんあるのでこれからゆっくり読むことにする。

 買ったばかりなので1章を拾い読みしてみた。マスコミがいかにウソをつくかという興味深いケースが多数出ている。情報の意図的な隠蔽、正反対の印象を与えるための操作を連発している。いくつか引用する。

 しかし、血液製剤によるエイズウイルス感染は世界中で同時に起こったのであり、しかも、日本はその時期においても他国と変わりなく、また感染者の数においてもむしろ少ない方でした。(中略)そして、血友病の臨床医が、この問題で刑事責任を問われた国など、日本以外に、一カ国もなかったのです。 仮に、メディアがこの事実を報道していれば、安部医師攻撃などできるはずもありませんでした。しかし、わが国のメディアは意図的にこのことを隠蔽しました。弁護人の一人がS新聞のO記者に、「なぜ、メディアはこのような海外の状況を報道しないのか?」と尋ねたことがありました。O記者はこう答えました。「先生のおっしゃるとおりで、そのことはわかっています。しかし、現在はそのようなことを書くわけにはいかないのです」と。

 検察官が、この手法を用いて、メディアがそれに踊らされたものとして、エイズ研究班における安部医師の「毒発言」があります。これは、研究班で、塩川医師が「血液製剤におけるエイズなんてほっとけば収まる問題ではないか」との超楽観論を述べたので、安部医師が「自分は、臨床医として、使っている薬が毒かもしれないという危機感を抱きながらやらざるを得ないのだ。そんな楽観論で片付けられては困る」とたしなめたものです。 これを、検察官は、法廷で、わざと塩川医師の発言を省略し、「安部医師は、非加熱製剤を毒かもしれないと知りつつ投与した」というふうに朗読したので、傍聴したメディアが翌日の朝刊で一斉に「毒と知りつつ投与」と報じたものです。

 エイズ研究班の第1回の会議をネタにNHKがやったこと。

NHKは、これについて、その研究班の会議から10年以上も経った時点で、郡司氏にインタビューして、「その席でそのことを報告したかどうかについて記憶がない」と言わせた上で、委員の一人の塩川医師にインタビューして「それが当時わかっていれば研究班の血尾論も皮っていただろう」と言わせただけで、番組を作成し報道してしまったのです。 ところが、後日、研究班の会議を録音したテープが出てきて、「それにより、郡司氏がロット回収のことを研究班第1回会議で報告していたことが明確に示されたのです。 本来であれば、NHKとしては、全く間違った内容の番組報道をしたことについて、全面的に反省し訂正すべきでしたが、それすらされませんでした。

 次は騙しのテクニック。うかつにメディアのインタビューに応じるとろくなことがないという見本。

 安部医師が、メディアバッシングに苦しみ、ホテルを転々としていた頃、NHKは、「活字メディアは好きなことを書く。うちは、安部さんの言葉をそのまま報じるから是非インタビューを受けてくれ」と甘い言葉をかけてきました。これにだまされた安部医師は、用意されたホテルの一室で、血液製剤エイズの問題についてのインタビューに応じて,時間をかけて説明しました。ところが、NHKは、とりあえず一部をニュースで使わせてもらいますとして、文脈を無視して切り出した1~2分の言葉をニュース番組に使用しただけで、ついに、安部医師の言葉を報じることはなかったのです。

 まあ、労力空振りなだけだから、騙されたと言ってもまだ許せる範囲かもしれない。しかし、次は酷い。

 この顛末を知ったTBSは、「NHKのように録画ではそのような利用をされてしまう。うちは、生番組で安部さんの言い分をそのまま報じるから是非出演してほしい」とささやいてきました。「ニュース23」はTBSの看板番組であり、キャスターの筑紫哲也氏は最も良心的なジャーナリストと考えられていました。そこで、安部医師は、弁護士とも相談の上、これに応じることとしました。確かに、(かなり意地の悪い質問があっても)安部医師が反したことはそのままオンエアされました。ところが、安部医師とのやりとりの前後に、従来から安部医師攻撃の先頭にたってきたメンバーの安部医師非難の話が録画として盛り込まれ、TBS的に言えば、「バランスをとった」ものになり、安部医師の話の印象が大幅に薄められる形となっていました。このことはもちろん安部医師には伏せられていました。それだけではありませんでした。翌日、TBSは、翌日の同じ番組で、そのメンバーをゲストとして出演させ、前の晩の安部医師の言葉を録画したものを材料として、安部医師の言葉をこっぴどく反論非難するものをオンエアしたのです。今度は、前後に安部医師側の反論は用意されていませんでしたから、TBS的バランスもとられていませんでした。このようなやりかたが非礼であり、異例で異常なことは言うまでもありません。安部医師側の抗議に対して、TBSの担当者は平謝りに謝りましたが、そこまでしても、TBSは安部医師バッシング報道をする以外に念頭になかったのです。

 ちょうど、「共通教育の講義で、報道は何かを調べるためのとっかかりとしては使えるが、情報が歪められる場合も多々あるので、そのまま信じるのはあぶない」という話をしてきたところだった。 これと似たような形で展開しつつあるのが、福岡のいじめ教師の事件。こちらは、裁判してみたらマスコミのバッシングとは相当違う展開になりそうだという事実が全く違っていたという(修正:本の方は口頭弁論が始まったちょっと後で終わっているので)話が「でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相」という本に書かれている。判決が出る前(本の方はそもそも口頭弁論2回目くらいまでの話)だったので、その後を追い切れていない(追補版を出してくれることを希望する)。自殺強要や暴力で児童を長期入院に追い込んだ教師→事件そのものが児童両親によるでっちあげ、というものすごい展開である(というのは本の内容で、これがどういう弁論を経て事実認定されるかは訴訟記録を見るまで不明である)。感情を煽る情報の出し方をして被害者面すればマスコミは踊るけど、そんな程度じゃ裁判所は欺せないという、まあそういうことらしい。
【追記】判決についての報道があったが(コメント欄でひろのぶさんが指摘)、その報道では判決は市に対してしか出ていない。バッシングされた教師は裁判ではどういう扱いになったのかが不明である。そもそも訴えられなかったのか、まだ続いているのか、単に報道されてないだけなのか。
 報道の方を元にするなら、いじめと認定される行為はあったが「殺人教師」呼ばわりされるもとになった「自殺強要」は認められていないことになる。
【さらに追記】国賠法の適用があれば、個人の責任は表に出てこなくなるから、そっちで争ったのかもしれない。だとすると、公務員個人が当事者として攻撃防御をする機会はそもそも無いわけで、当事者になれない公務員個人に対して名指しでバッシング報道するのは、反撃できないことを承知の上で行うリンチと変わらないのではないか。そういうマスコミの行動に対しては「卑怯」という評価しかできない。

 この手のマスコミによるバッシングを狙って、提訴と同時にプレスリリースまで出したのに見事に空振りしたのが、「環境ホルモン濫訴事件」だったのではないかと。こちらは、私が、被告となってしまった中西準子氏の応援団をネット上でやっていたので、訴訟情報をそのまま今も公開し続けている(結果は原告の請求棄却、つまり被告の中西氏の勝訴で終わった)。
 その中西氏は、雑感でいちはやくこの本を取り上げていた(雑感459)

 マスコミの捏造歪曲報道に対抗するには、やっぱり、自らが情報発信するしかないのだろう。それも、できるだけ客観的な一次資料を付けて。

 安部医師の起訴は1996年だった。この時期はまだネットが普及していなかったから、情報を伝えるにはマスコミ経由以外のルートが確立しておらず、捏造歪曲自由自在な状態だった。もし、10年後に事件が起きていたら、一次資料をネット上に出す人が出てきて、マスコミによる一方的なバッシングはできなかったかもしれない。
 福岡の教師の事件は、元々、教師の人柄が良かったのか、一次資料を出して相手が児童と親であっても容赦せず真実のために闘うという展開にはなっていない。情報開示の初動がうまくいけば、あそこまで一方的な展開にはならなかったのではないか。これは、一旦本気で揉めると後に響くといった、学校や教育委員会のムラ社会的な部分が効いているのかもしれない。
 環境ホルモンの時は、そもそもマスコミが踊らなかった上、ネットに一次資料(つまり裁判資料)を出す方が先だった。それでも口頭弁論3回目くらいからで、かなり出遅れた感はあったが……。

 環境ホルモンの時の中西氏の代理人が、本の著者の一人である弘中惇一郎弁護士である。環境ホルモンの時は、一次情報を出しつつ、中西氏による訴訟への言及のネット公開も継続しつつ、弁論が進んだ。訴訟の間は書くのをやめろ、とは、惇一郎弁護士は言わなかった。むしろ、書き続けるようにと助言していた。

 私の方は、神戸の当事者参加申出と東京の損害賠償請求訴訟で、弘中絵里弁護士に代理人を願いしたが、弘中惇一郎弁護士も入って下さっている。まあ、社会の隅っこの方の事件なのでマスコミには注目されず静かにやっているが、情報開示はひっそり継続中である(年度末が近付いて滞ってはいるけど)。

 マスコミによるバッシングが起こりうるような事件でも、悪役を振られた当事者が自ら情報発信しながら法的手続に臨む、というスタイルを、一つのパターンとして確立することを考えてはどうだろう。情報開示が風評を断つという効果は確かにあるだろうし、いいようにバッシングされるよりは、相当ましな結果になるんじゃないかと思うのだけど。

着信音作成ソフト

Posted on 1月 10th, 2009 in 倉庫 by apj

 iToner2というのがあるそうで。
 自分で持ってきた音源を着信音にしようにも、他の携帯電話では、いろいろ変換したりしないとうまくいかず。せっかく作っても転送して使ってみるとまともに再生されなかったり。iPhoneでこれが改善するなら、次に買い換える時はiPhoneにしたい。好きな音源を自由に着信音に設定できるだけでも、私にとっては買う価値がある。

ニセ科学へのただ乗りという逆の状況、あるいは紛らわしくしたことの責任

Posted on 1月 7th, 2009 in 倉庫 by apj

 昨年の秋に、「ニセ科学フォーラム」「水素水について」というエントリーで、日本大学の太田成男教授と直接話をしたことを書いた。その後、某会社の人から情報をいただいたり、水素水販売側が怪しくならないようにするのに困っているという話が来たりした。
 既に述べたように、太田教授のやっていることは
・科学(この場合は医学)の研究としては何も問題がないし、むしろ順調に科学としての成果を挙げている。
・水素水を販売するタイミングが早すぎる。
・太田教授が直接責任を負える顧問先企業では、水素水の販売に際して効果効能を謳わないことを守らせており、宣伝の態様は法律を遵守していて特に問題がない。
というものである。1つ1つについては何も問題がないし、法にも触れていない。
 ところが、特定の状況の下で、この3つが出そろったために、別のよろしくない効果を発生させることになりつつある。まっとうな商売をしようとしていた人達に別の圧力をかけてしまっているのである。某それなりに名の通った企業が効果効能を謳わずに水素水の販売を始めることになったり、気を付けて普通に食品として(効果効能を一切連想させず、普通のミネラルウォーター扱いで)売っていたのに健康関係のコーナーにも置けという圧力がかかったりということが起きている。
 太田教授のやっていることは、個別には問題がないので、それぞれを直接に批判するというのは難しい。そこで今回のエントリーのタイトルになる。つまり、まぎらわしいことをやった責任、という点から批判するしかないということである。

 太田教授以前に、水素(関連)水を広めたのは、九州大の白畑教授の「活性水素」説である。電気分解をしてできる弱アルカリ性の水の中に「活性水素」ができると考えて実験を説明しよう、という論文から話が始まった。この研究は日本トリムとの共同研究で、論文が出た後、日本トリムが「九州大教授によって活性水素の存在が証明された、活性水素は原子状水素である」といったことを主張したため、一気に広まった。これ以前には、水素には言及していなかった、アルカリイオン水製造装置の販売業者が「活性水素」「原子状水素」と表示して販売するようになった。もちろん、この用語の後には「体に良い」「酸化防止」といった説明が続く。もともと、白畑教授からしてが、林秀光医学博士による、抗酸化作用を持った水が健康長寿に役立つ、という主張に惹かれて研究を始めたとのことなので、主張の内容はこの手の「健康に良い水」の宣伝との相性も良かった。白畑「活性水素」説は、日田天領水の販売にも利用されることになった。一方林秀光博士は、「活性水素君」という、水に入れて使う金属マグネシウムスティックを製品として販売した。金属マグネシウムは水にゆっくり溶けて、水素ガスを発生させる。
 しかし、「活性水素」は白畑教授の論文でもその後の特許でも、化学物質としての存在が示されることはなかった。そのうち、白畑教授は、「活性水素は原子状水素ではなく、白金ナノ粒子に吸蔵された水素である」と主張を変えた。杏林大学の平岡らは、抗酸化作用を持つ水について、トリムの水や日田天領水、活性水素君の水も含めて調べた。その結果、いずれも弱い抗酸化作用はあったものの、「活性水素」のような、活性酸素と直接反応して消去効果を示す物質の存在は確認できないことがわかった。日本トリムは、1年ほど前から、全社を挙げて、今後は活性水素を出した宣伝は行わないという方針をとっている(末端に徹底させるのが大変なようだが、トップダウンでやっている)。

 何かアピールするキーワードがあると、実験で確認もしないままコピペで広がるというのが、水関連の宣伝の常である。マイナスイオンがブームになったときは「マイナスイオンが入った水」という宣伝文句が頻出したし、白畑説が出てからは、関係のない水まで「活性水素」が含まれている、抗酸化作用があって体にいい、と主張した。一旦こういうイメージが広まってしまうと、「活性水素じゃなく単なる水素分子」「弱い抗酸化作用はあるがビタミンCのような酸化防止効果はない」「健康への影響についは目下証拠無し」と言っても、受け入れられないか、さらに歪んだ形で情報が広まることになる。

 ここに出てきたのが、太田教授のnature medicineの論文であった。

 論文が、これまで「活性水素」の「酸化防止で健康にいい」効果を宣伝してきた人達に使われるのではないかということを考えて、まだそういう話ではない、と注意を喚起した。が、すぐに宣伝には使われたようである。
 私にとって予想外だったのは、太田教授が率先して、研究と並行して水素水を売る企業の活動に関わったことであった。
 水素ガスを脳梗塞後の血液再還流時の脳へのダメージを抑える治療法として使う、という話は、医学の基礎研究としてはまっとうだし、発展性も期待できる。nature medicineに出たのなら研究費だっていろいろもらえるだろうし、普通に考えて、何も慌てて太田教授が水素水を売る側になる必要など無いはずである。
 一方、水素(関連)水の方は、活性水素だ原子状水素だナノ粒子吸蔵水素だと、宣伝に登場する物質が錯綜している上、「抗酸化」「健康にいい」というイメージだけが広まっている。この状況で水素水を販売すれば、似たり寄ったりの怪しい商品と思われても仕方がない。だから、太田教授がなぜ商品化を急いだのかがわからなかった。

 ところが、最近になって、太田教授が水素水の研究をし始めたきっかけは、株式会社ブルーマーキュリー側からの働きかけだったということを教えてもらった。また、nature medicineの論文掲載の後、ブルーマーキュリー主宰で、東京・経団連会館で記念講演会が開かれ、NHKのニュースの動画をDVDで配ったり、新聞記事を引用して講演したりということをしていたとのことである。
 つまり、太田教授の製品化するという判断が拙速だったのではなくて、もともと、製品化したくて仕方のない企業から持ちかけられた研究だったということのようである。
 なお、この研究から発表への流れについても何ら問題はない。きっかけが企業から持ち込まれたテーマだという研究はいくらでもあるし、論文掲載という通常の科学の成果発表の手順を踏んでから一般に講演している。

 この結果、
(1)これまで活性水素を謳っていた人達(ジャンルを問わず、例えば磁気処理水まで含まれる)が、太田教授の成果を都合の良いようにくっつけて宣伝する。
(2)太田教授とは関係のないところで水素水販売が行われ、これまで通りの抗酸化云々に加えて、太田教授の成果まで勝手に継ぎ足して使われる。
(3)太田教授は効果効能を謳わずに水素水販売をさせている。そこに気付いて同様のやり方で販売する会社もある。
といったことが起きている。
 太田教授としては、「水素水」を売っているのに「活性水素」と混同されて迷惑しているらしい。しかし、既にデマが飛び交って大混乱中のところに、まだ十分な試験が終わる前から水素水を売ることを決めたのは太田教授なのだから、ある意味自業自得でもある。まあ、太田教授も、活性水素に踊った集団が、それほど無節操に使えるキーワードなら何でも使う、論文の恣意的利用もどんどんやるとは思っていなかったのかもしれない。太田教授は、論文を勝手に宣伝に使った企業に対して法的措置までとって請求を認めさせたということだが、1件や2件の紛争をやっても追いつかないだろう。そこまで成果の曲解に対する対策をやっているなら、訴訟の件も含めて情報開示したらどうかと言ってみたのだけど、太田教授にその気はないようである。この方面で防衛するつもりなら、ブルーマーキュリーと一緒じゃダメで、nature medicineの成果発表と同時に「効果効能を謳う活性水素とは無関係だし水素水とも結びつかない」という情報を発信し、商売側とは距離を置く、くらいのことをすれば何とかなったかもしれない。

 水素水の現状については、太田教授がきちんと監督しているという前提が成り立っている限りにおいて、ブルーマーキュリーの宣伝をチェックすればわかることになる。ブルーマーキュリーが効果効能を出していないということは、効果効能を謳ってよい状態まで研究が到達していないということを意味する。太田教授の研究が確かなものであっても、効果効能を主張できるような製品に結びつける道はまだ遠いと考えるのが正しい。しかし、「水素を使った治療方法の研究をきちんとしている研究者が顧問をしている会社が水素水を売っている」というのを普通の人が見れば、効果効能を謳っていなくても,水素水は確かなのだろうと思ってしまうのではないだろうか。
 ところで、他の企業まで効果効能の宣伝を一切無しに水素水を売ることにした、というのは製造ラインを作って売ってもペイするというのが企業の判断ということになる。つまり、効果効能を謳わなくても現状では水素水が売れているということである。太田教授と関係無しに売っても何とかなるということなのだろう。買う人のうち、太田教授の話を知っている人もいるかもしれないが。じゃあ、何故売れるのか、と考えると、これまでに散々出回った「活性水素」「抗酸化」「体に良い」のニセ科学宣伝が引っ掛かる。「水素」というキーワードが既に「抗酸化」「体に良い」と結びついているから、効果効能を謳わなくても商売できるということではないか。

 今回の水素水の問題は、普段目にするニセ科学とは逆のパターンである。つまり、既にニセ科学宣伝で出来上がってるイメージを利用することによって、効果効能を謳わない適法な宣伝をする業者が商売するという形になっている。違法な宣伝をする業者も同時に活動していて、イメージの強化は勝手にそっちが受け持っている。

 太田教授がしていることは、
・まっとうな研究の成果と製品の間に関連があるとついつい思ってしまうような紛らわしい顧問関係を作ったこと
・活性水素が作った健康に良いというニセのイメージに乗っかる形で、紛らわしい商売に荷担していること
である。つまり、紛らわしさを発生させている責任はある、ということである。勿論違法ではないし、研究プロセスに違反があるわけでもない。紛らわしさだけである。

 マルチ商法なら、普通の商売人はマルチのような問題のある商法と混同されるような紛らわしいことは避けるもの、という議論が既にある。しかし、今回の太田教授のしていることについて、「紛らわしいことは避けるべき」と言っていいのかが微妙である。悩ましいけど、まだ、どういう論を立てるとよいかがわからない。

 私としては、こんな紛らわしいことを始めた太田教授にはとことん責任を取ってもらいたいと思っている。この場合の責任をとる、とは、効果効能を謳えるところまで研究を全うし、厚労省が認める程度の「水素水製造規格」でも定めることに一役買って、業界団体の指導をして、インチキ宣伝をする業者は居るにしてもそれは団体にも入ってないモグリ、という状況を作り出すといったことを意味する。

Yahooみてつい笑った……

Posted on 1月 7th, 2009 in 倉庫 by apj

 Yahooのトップページを見ていたら、つい笑ってしまった。私が見たときは、
!!$img1!!
な感じだったのだけど。記事リスト上から4つ目の『知人の顔に「バカ」と入れ墨』という記事があって、隣の写真が「顔に墨で無病息災」。事件の方はシャレになってないのはわかるんだけど、入れ墨と墨で書くのは違うというのもわかるんだけど、話題の並びを見てると何だか笑いが……。

WiFiでつないでみた

Posted on 1月 6th, 2009 in 倉庫 by apj

 iPod touchをPDA代わりに使っているのだが、隣の先生が近くにWiFiアクセスできるルーターを設置しておられたので、ちょっとお願いして使わせてもらった。iPod touchはちゃんと接続でき、入れてあるソフトウェアのアップデートもできたし、追加データも持ってくることができた。今月末くらいを目処に、おうちでWiFi使えるようにしたいなぁ。

 今のところiPodに入れているアプリはこんな感じ。大体この順に入っている。趣味がもろに出ている気が(汗)。
・カレンダー(純正)
・連絡先(純正)
・メモ(純正)
・時計(純正)
・日めくり09
・元号(西暦と元号と年齢を求めるアプリ)
・SCI-15C 逆ポーランド電卓HP-15Cのクローン電卓
・11C-Sci 逆ポーランド電卓HP-11Cのクローン電卓
・計算機(純正)
・iSlideRule 計算尺(対数や三角関数も使える)
・MultiConvert 単位換算アプリ
・Convert Any 単位換算アプリ
・設定(純正)
・FUEditor テキストエディタ
・SysStatsLite メモリ使用状況や動いているプログラムがわかる
・プレゼンタイマー 予鈴、本鈴、終了の合図で音を出すタイマー
・Night Stand デジタルクロック
・LabTimer 設定した時間になると音で報せてくれるタイマー
・iMorse 英文モールスを表示する
・ColorOhms 抵抗に描かれた色帯から電気抵抗を求める
・ResisterCode 抵抗に描かれた色帯から電気抵抗を求める
・Roman ローマ数字とアラビア数字相互変換。桁数が多くても対応しているので助かる。実は、Advances in Chemical Physicsの巻番号がローマ数字で、ぱっと見て間違えることが多かったり……・
・MissingCalc 2進、8進、16進、Asciiコードの相互変換と論理演算専用電卓
・i41CX HPの逆ポーランド関数電卓のクローン
・Abacusそろばん そろばん
・Periodic Table 元素周期表。電子配置など簡単なデータは内蔵している。
・TCT Lite 元素周期表。こちらはウェブからデータを持ってくるのが基本。
・iステラ 星座早見盤
・Starmap 星座早見盤
・GoSatWatch 衛星の位置と軌道表示プログラム。世界地図上に表示。国際宇宙ステーションの位置やこの間宇宙空間に飛ばした道具箱がステーションと一緒に周回しているのがわかったりする。定期的に軌道要素をダウンロードしにいく仕様。
・Formulae 簡単な数学と物理の公式集
・Art ぶっちゃけ美術の教科書の鑑賞資料を集めたもの。作家別に代表的な作品の画像を見ることができる。
・iQuran コーラン。無料。アラビア語と英語対訳。
・ISO3166 国別コード・番号表
・PasswordTest パスワードの強さをチェックする
・RandomPass パスワード生成アプリ
・WifiTrac 回りにあるWiFiのスポットを表示、ワンタッチで選んでパスワード入力→接続
・MTelnet telnet
・TouchTerm sshが使えるターミナル
・Ping ping
・mDNS Watch DNSを調べる
・Countries 世界の国の位置と国旗と基本情報
・Safari(純正)
・株価(純正)
・App Store(純正)
・メール(純正)
・マップ(純正)
・天気(純正)
・計算尺  簡単な計算ができるもの
・Metronome メトロノーム
・i文庫 青空文庫リーダー。ダウンロード対応。
・SpeedType タイピング練習ソフト。
・iMetro 世界主要都市の地下鉄路線図。

 ゲームは、無料のハノイの塔、上海、さめがめあたりを入れている。例のプチプチを潰すだけのアプリもあったけど(BubbleWrap)、平らなiPodをタッチするだけなのでもう何が何だか……^^;)

 iQuranは、WiFiで接続できるサイトから、アラビア語でコーランを読み上げる音声をダウンロードして、文章を表示させながら聴くことができる。これが無料ってすごい(ってか布教やら宣伝のためにはこれくらいやらないとダメなのかなぁ)。早速全文ダウンロードして聴いている。さっぱりわからないけど。
 聖書はというと、英語のものは各種があって値段もさまざまだけど、ラテン語とかギリシャ語とかヘブライ語と対訳のものは見当たらなかった。

 青空文庫は、海野十三、寺田寅彦はほぼ全部落としてきた。末弘厳太郎の法学関係の解説も入れた。黒岩涙香と小栗虫太郎もいくつかピックアップ。穗積陳重の「法窓夜話」は、ダウンロードしてきたけど開くとエラーになって読めなかった。

 なぜかGoSatWatchにはまっている。国際宇宙ステーションが道具箱をひきつれて飛んでいる場所が分かると和むなぁ……。

ゴム状イオウの色

Posted on 1月 5th, 2009 in 倉庫 by apj

 asahi.comの記事より。

ゴム状硫黄「黄色」です―17歳が実験、教科書変えた

高校化学の教科書に掲載されていた「ゴム状硫黄」の色が間違っていた。山形県の鶴岡高専物質工学科3年の高橋研一さん(17)が気づき、実験で確かめた。指導教員が訂正を申し入れ、出版社側も間違いを確認。教科書の修正につながった。高橋さんは「自分の実験で教科書の記述が変わるなんて予想外。びっくりしている」と話す。

 ゴム状硫黄は、硫黄原子が鎖状に並んでできた硫黄の同素体。現在使用中の教科書10種類には「褐色・黒褐色・濃褐色」とあり、大学入試でも「褐色」が正解とされてきた。

 高橋さんは、指導教員の金綱秀典教授から「昔、黄色のゴム状硫黄ができたことがある」と聞き、本当かどうか実験で確かめたくなった。

 市販の硫黄の粉末を試験管に入れて加熱していくと、流動性が出てくる。これを冷水に流し込むと、弾力性のあるゴム状硫黄となる。

 市販の5種類で試した。純度98%の硫黄粉末や99%の硫黄華で作ったゴム状硫黄は褐色や黒色で、試験管に黒い物質が残った。だが99・5%の結晶硫黄だと黄色になり試験管に何も残らなかった。

 そこで、黄色いゴム状硫黄に鉄粉を混ぜて溶かし、再びゴム状硫黄にすると褐色に変わった。鉄粉が多いと黒色になった。純度99%以下の硫黄は、不純物で褐色や黒色になると分かった。

 金綱教授は、自分も執筆している大日本図書「新版化学I」のゴム状硫黄の写真を差し替え、記述を「ゴム状硫黄は黄色。黒、褐色の着色は不純物による」と直すよう申し入れた。大日本図書も文部科学省に訂正を申請、09年度教科書から「ゴム状硫黄は硫黄の純度が高いと黄色になる」と注を追加することになった。(清水弟)

 この話は見た目が大事な話なので、写真も引用しておくと、不純物が多い時は!!$img1!!で、不純物が少なくなると!!$img2!!になるということらしい。

 黄色になるかどうかの分かれ目が、99%から99.5%の間にある、というのだから、こりゃ実験したって見落とすことがあるわなぁ。

ムペンバ効果調査中(6):【連絡】前野先生による雪氷学会誌記事の転載

Posted on 1月 5th, 2009 in 倉庫 by apj

 ムペンバ効果について、昨年9月の雪氷研究大会のシンポジウムで、前野紀一先生(北海道大学名誉教授)が発表された内容をまとめたものが、雪氷学会誌に掲載されることになった。「湯と水くらべ」のサイエンスからどうぞ。
 掲載前に情報をいただいたので、広く関心を集めた話題であることから、このまとめも広く読まれるべきであると思い、ウェブ公開について問いあわせてみた。cml-office.orgと勤務先サイトでの掲載について、前野先生と雪氷学会の許諾が得られたので、ウェブで公開する。
 なお、掲載紙面とほとんど同じレイアウトのpdfファイルもいただいたが、ウェブ公開の方が雑誌掲載より先になる可能性があり、さすがにそれはまずいということで、前野先生から原稿のファイルを別途いただき、レイアウトは適宜変更してもかまわないという承諾を得て、私の一存で図などをはりつけさせていただいた。

これって難民問題なので、必要なのは難民キャンプでは?

Posted on 1月 4th, 2009 in 倉庫 by apj

 この年末年始に、派遣切りで仕事や住居を失った人達のために、「年越し派遣村」を作っての支援が行われている。
中国新聞ニュースの記事によると、

 派遣契約打ち切りなどで仕事や住居を失った人たちに宿泊場所や食事を提供する“年越し派遣村”(東京・日比谷公園)は三日、開設から四日目を迎え、これまで約百七十人が千代田区に生活保護を申し込んだ。派遣村の実行委員会は、最終的に申請は二百人を超えるとみている。
 派遣村には同日午後も失業者らが次々と訪れ、この四日間で四百人を突破。うち約二百五十人が宿泊している東京・霞が関の厚生労働省の講堂は、仕事始めに当たる五日から使用できなくなるため、派遣村の実行委員会は厚労省に、五日以降の衣食住の確保など六項目にわたる要望書を提出した。

 厚労省に対しては民主、共産、社民、国民新の野党四党も三日、「東京以外でも同様の状況が起きており、本格的な対応を求める」などと申し入れた。

 実行委によると、要望書提出の際、厚労省社会・援護局の幹部は「雇用政策の結果による“災害”だという認識か」との問い掛けに「そういう気持ちです」と答えたという。

 「災害」という認識はかなり実態に近いと思うが、これって、難民問題が絶賛発生中と考えて対応しないといけないのではないか。「難民」の説明としては、

1951年の「難民の地位に関する条約」では、難民は、「人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた」人々と定義されている。今日、難民とは、政治的な迫害のほか、武力紛争や人権侵害などを逃れるために国境を越えて他国に庇護を求めた人々を指すようになっている。
 また、紛争などによって住み慣れた家を追われたが、国内にとどまっているかあるいは国境を越えずに避難生活を送っている「国内避難民」も近年増加している。このような人々も、難民と同様に外部からの援助なしには生活できない。適切な援助が実施できなかった場合、これらの人々は国境を越えて難民となり、結局、受け入れ国の政府や国際社会は、より重い負担を強いられることになってしまう。

とある。
 今回、日本では、労働政策が原因で、住む家を失い援助無しに生活できない人達を大勢生み出してしまったわけで、今、派遣村に居たり路上生活を余儀なくされている人達は、まさに「国内避難民」であり「経済難民」である。いろいろニュースを見ていると、政府は他国の難民を救済する前にまずは自国の難民を救済してくれと思うわけで、難民キャンプのようなものを国内に作って、経済活動からはじき出された人達が再び経済活動に参加できるように支援するしかないのでは。私には、具体的な手順がわからないのだけど、国内にも海外の難民支援をやってきた人達が居るはずだし、そういう人達の知恵を借りて何とかできないのだろうか。

身勝手なマスコミには草の根で対抗

Posted on 1月 3rd, 2009 in 倉庫 by apj

 新聞の押紙問題を取り上げたジャーナリストに、新聞社から圧力がかかった件。
言論による批判ならわかるが、ジャーナリストが引用して公開した文書を、著作権法違反で削除せよと要求したらしい。こんな手法が横行するようになると、裁判サイトを作っている私にも影響するので、ジャーナリストを応援することにする。転送歓迎とのことなので、blog内容を転送しておく。
 「読売新聞、押し紙追及のジャーナリスト・黒薮哲哉氏の言論封じ込めに動く」より。

【転送歓迎】*ブログ、HP、メール、メディアなどで伝えてください。
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読売新聞が自社に批判的なジャーナリストに言論妨害
東京地裁も著作権を拡大解釈し削除命令を出す
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フリージャーナリストの黒薮哲哉氏が読売新聞から不当な言論妨害を受けています。その妨害内容は報道に関わる全ての方に影響を与える深刻なものなので、ぜひ多くの媒体で取り上げていただきたいと考え、以下にその経緯をお知らせします。

「読売新聞」西部本社の法務室長江崎徹志氏が傘下の販売店とのトラブルの件で弁護士に送った文書を、ジャーナリストの黒薮哲哉氏が昨年12月21日に自分のサイト(新聞販売黒書)で引用したところ、法務室長から「削除せよ」との催告書が送られてきました。

そこで、黒薮氏がその催告書も掲載し報道したところ、法務室長は著作権を理由に催告書削除の仮処分申立を行い、東京地裁は1月22日にサイト上からの削除命令を下したのです。そのため、黒薮さんは現在一時的にサイトから催告書の全文を消去しています。

この言論妨害行為の読売側の代理人は喜田村洋一弁護士です。

著作権法第2条1項には、著作物の定義として「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」とあります。この定義に照らせば、読売新聞の法務室長が職務に関して回答した文書が著作物に該当するとは思えません。

しかし、東京地裁の佐野信裁判官は、理由も記さずに「サイトから、別紙の文章を削除せよ」という命令書を出しました。著作権法を拡大解釈したこのような削除申立が認められれば、内部告発などの資料や文書を提示した上での報道ができなくなってしまう怖れがあります。

報道機関であるはずの読売新聞も自分の首を絞める愚かな行為です。

以上のような読売と司法の暴挙に対し、黒薮氏は近日中に本裁判を起こすことを弁護団と検討しています。ぜひこの事件を、メディア、メール、ブログ、HPなどで幅広く伝えていただくよう、お願い致します。

くわしくは、「MyNewsJapan」(有料会員制ニュースサイト)にて報告しています。
http://www.mynewsjapan.com/reports/775

お問い合わせは以下までお願い致します。
黒薮哲哉氏事務所 TEL&FAX 03-3976-6012            
        メールxxmwg240@ybb.ne.jp

2008年2月4日
伊勢一郎(ジャーナリスト)/烏賀陽弘道(ジャーナリスト)/林克明(ジャーナリスト)/三宅勝久(ジャーナリスト)/山中登志子(編集家)/渡邉正裕(「MyNewsJapan」代表・ジャーナリスト)

 この手の内部文書をすっぱ抜いて記事にするということをこれまでに散々やって金を稼いでおいて、自分が同じことをされたら著作権を持ち出すって、どんだけ身勝手なんだ>読売新聞。

 転送元の「SLAPP WATCH」は、トップのところにもあるように、

大企業や団体など力のある勢力が、反対意見や住民運動を封じ込めるために起こす高額の恫喝訴訟をSLAPP(Strategic Lawsuit Against Public Participation)といいます。このブログはSLAPPについての国内外の実例や法律を集め、情報を蓄積し公開する「研究室兼資料室」です。反対運動のサイトではありません。基本的に♪

恫喝訴訟の情報収集サイトである。

 以前であれば、企業が嫌がらせに数千万円から数億円の賠償金を請求してきたら、個人では弁護士に依頼しようにも着手金の支払いができないということになり、着手金を支払い可能な額にまで減額してくれる奇特な弁護士を探すしかなかった。着手金は訴訟物の価額の何%、という規定があったからである。このため、奇特な弁護士さんが見つからないと、素人が、企業の顧問弁護士相手に紛争することを強いられてしまうことになっていた。しかし、今では、弁護士会の報償規定が見直されて、着手金が訴訟価額の何%、という規定が無くなっている。このため、嫌がらせの提訴で巨額の賠償金を請求されても、無理筋な提訴なら、リーズナブルな金額で助けてくれる弁護士さんを見つけることが、以前よりは容易になっているはずである(その代わり、安い金額しか請求しない訴訟を起こしても、弁護士から一定の費用の支払いを求められることになってトータルで赤字という場合も出てくるが)。報償についての見直しは、SLAPPの効果を実質的に引き下げることに効果があったのではないか。