ASIOS公式blog「科学の理解度判定問題」に回答してみる。かなり出遅れた感があるが。
以下の問いについて、科学的思考としてより妥当だと思われる答えをa, bから選択せよ。また、それを選択した理由を自由に記述せよ(答え 各2点、理由 各18点 合計100点)。
【問1】新しい理論は科学を発展させるから、新たな主張にはあまり厳しい批判をせず、大事に扱うべきである。
a. その通り
b. そうではない
答え:b
理由:新たな主張には、それを支える証拠が必要だし、その主張で何がどこまで説明でき、何が説明できないかを見極めないと、それが本当に科学を発展させるものかどうかがわからない。
【問2】これからも絶対に間違いが見つからないように注意して作られた理論は、当然正しい理論である。
a. その通り
b. そうではない
答え:b
理由:間違いが見つからないように作られた、ということは、間違いを見つける手続きが適用できないように作られたということを意味していたりする。それは、正しい理論ではなく、何の役にも立たない理論である。
【問3】新しく立てた理論について、その理論で説明できるという例を沢山見つければ、その理論の正しさはどんどん確実になっていく。
a. その通り
b. そうではない
答え:b
理由:適用例が多いというのは、理論の有用性を示すことになる場合もあるが、正しさとは無関係である。たとえば、オームの法則は、適用できる例がとても多いが、限られた条件でしか使えない便法である。とても有用だが、正しい理論というものとは違う。理論の有用性を示さない場合は、何でも説明できる理論=何も説明していない理論、となってしまう。
【問4】”「白いカラスが存在する」という主張と「白いカラスは存在しない」という主張は対等なのだから、双方が証拠を持ち寄って議論すべきだ。”という考えは科学的である。
a. その通り
b. そうではない
答え:b
理由:「存在する」方は、白いカラスを見つけて持ってくれば「証拠を持ち寄る」ことができる。「存在しない」を示すには、世界中の全てのカラスを持ってこなければ証拠を持ち寄ったことにはならず、そのようなことは不可能である。「ある」を示すには、証拠を1つ探してくれば良いが、「無い」を示すのはほとんど無理である。
【問5】科学の歴史において現代では間違いとされる理論が主流になっていた事が多々ある。これは科学が失敗した例である。
a. その通り
b. そうではない
答え:b
理由:自然を記述する近似の精度が上がった結果、よりよい理論の方が採用され、古い精度の低い理論が間違いとされたのであるから、科学が成功した例と考えるべき。
このテスト自体が有効かどうかを考えてみた。
まず、科学は結構保守的なのだが、ニセ科学商品を売りつけたがる人は、問1のチェックが非常に甘いことが多い。というか意図的に非常に甘くしている。
問3でaになるのは、「波動」な人々かなぁ。何でも「波動」で説明できる世界を夢見ておられるようだし。
問4は、あまり関係ないかもしれないが、唐突に「原則と例外」の話を思い出した。科学ではなく文系方面の議論でも、原則を言うときには説明が要らないが例外を述べるときには説明が要る、という話である。立てられる論が対称ではない場合は、分野を問わずあるということか。まあ、無いというなら証拠を出せ、と無茶を言う人はどこにでも居る。
問5は、問1とセットで登場する事が多い。問1で、怪しい理論へのチェックを甘くしろと主張し、問5で、科学だって過去に間違っていたんだから、今の科学が正しい保証はない、とくるわけで。
結構特徴を捉えているので、問いの立て方としては良さそう。