はじめに 3
■第1章 危ない健康食品 13
●八木田旭邦「新免疫療法」 13
進行がんには成果なし 14
手術すれば助かったかもしれないために裁判に 19
独自の判定で居直る現在 26
●師岡孝次監修『末期ガンに一番効くアガリクスは何か』 28
「食品」と「医薬品」の違い 28
ついに逮捕者が出た「がんに効く」書籍 31
担当医の話がない不思議さ 33
使えるネタを無原則に採り入れる論理矛盾 36
●新谷弘実『病気にならない生き方』 40
120万部突破のベストセラーというが…… 40
新造語や独自のPR 42
総花的な「健康」情報と科学的根拠の曖昧さ 46
「抗がん剤」で治療できる患者に対する責任 49
誰でもいえる「正しいこと」が説得力を持たせる? 53
医学的に使ってはならない単語の横行 56
●清水妙正『医者が体験した末期ガンからの生還』 60
「マイタケで生還した」現役医師の体験談 60
医師としては批判せざるを得ないが…… 64
●他の健康食品事件の数々 68
プロポリスの薬事法違反で実刑 68
CPLのバイブル商法 70
イチョウ葉エキスと大豆エキスで催眠療法 72
●バイブル商法に騙されてはならない 76
食品にもいろいろある 76
それ以外の「自称健康食品」 81
バイブル商法がいまだのさばっているのは…… 83
健康「食品」であるかぎり、「抗がん」のEBMはない 85
■第2章 健康観と治療法の疑似科学 89
●川竹文夫 NPO法人ガンの患者研究所 90
1124人のがん患者が交流した集会 90
がんはライフスタイルを改めれば治るのか? 94
「5年生存率向上」はまやかしなのか? 99
「4週間小さくなる」抗がん剤は無意味か? 102
医師の治療を受けることも自覚的である 105
カルト団体傘下の保険適用外治療を紹介 109
●福田稔・安保徹「自律神経免疫療法」 114
交感神経と副交感神経のバランスが大事と提唱 114
量・質ともに不足したデータ 116
科学的見識を疑うコラム 119
「リンパ球の数だけ」で見る現実にそぐわない珍論 121
誰とでも組むことで医学を否定することになりはしないか 128
●野島尚武「超ミネラル水」 130
薬事法的にはアウト、ヒトのデータなし 130
気をつけておかなければならない点 134
「超ミネラル水」にこだわる人たちの体験 136
●朝倉一善『医者もおどろく奇跡の温泉』ほか 140
体験談と飲泉商品紹介の「温泉バイブル本」 140
疑似科学用語の数々 144
温泉に過度の期待を抱かないこと 146
●その他の“ちょっとおかしい”療法 150
石原結實『ドクター石原結實の若返り健康法』ほか 150
甲田光雄『少食の実行で世界は救われる』ほか 154
山田豊文『細胞から元気になる食事』ほか 155
■第3章 テレビの健康情報 157
●関西テレビ「発掘!あるある大事典」 158
主要な部分はすべて捏造 158
企業と科学者の癒着も「反科学」の根源に 161
公権力の揺さぶりだけで根本的な解決にはつながらず 164
痩せ信仰を大きく変える文化が必要 165
●日本テレビ「おもいッきりテレビ」 168
「おもいッきりテレビ」とは何だったのか 168
ありふれたことで煽り、ありふれたもので落とす 171
番組隆盛の背景には「ビジネス」と「国策」 175
●NHK「ためしてガッテン」 179
アディポネクチン値に疑問 179
くずされた言い分 181
健康は特定の数値と全体とのバランスを見るべき 185
「ガッテン」の批判は的はずれか? 190
なぜ「ガッテン」に甘いのか 194
●他のテレビ放送のトラブル 197
白インゲン豆ダイエット法 197
「クローズアップ現代」の番組改編疑惑 198
■第4章 危機煽り本の危うさ 203
●三好基晴『ウソが9割 健康TV』 204
「商売科学」こそ「健康トリック」の真犯人 204
健康情報番組のトリックを暴く 206
「健康」を煽るのも「不健康」を煽るのも同じではないのか 208
科学的誠実さを欠いた危機意識の煽り 211
脱力するしかない結論 215
リスクとベネフィットの両面を示せ 218
●中村三郎『水道水も危ない!』 221
アスベストのリスクは不明 221
20年前のデータを現在は明らかに違う 227
引用と吸入のリスクははっきり区別されている 232
残留塩素はそんなに危険なのか 236
殺菌塩素と抗がん剤の共通点は? 243
安全を求めたはずの結論が「地下水」「ミネラルウォーター」だって? 248
■第5章 芸能人の健康情報 251
●水道橋博士『博士の異常な健康』 252
『博士の異常な健康』読んでみました 252
硬水を勧める無責任さ 253
旧式の体験談で今を語ってもいいのか 255
そんなに若返ることが大切なのか 258
デトックスと分子栄養学の問題点に触れない 263
ヒトを対象にした検証が必要 267
「右肩上がり」の健康感をどう見るか 271
●倖田來未「35歳を過ぎると羊水が腐る」発言 274
「羊水腐る」に「一理」なんかあるものか! 274
彼女は疑似科学の信者であり喧伝者だった 280
彼女だけを責めて済む問題ではないが…… 283
■第6章 “怪しい健康情報”からわかったこと 285
健康情報・こんな点に気をつけよう 286
疑似科学は社会の仕組みを知った上でとらえるべき 292
「理科教育だけ」論は他分野の研究者からも批判 297
疑似科学は一般社会人が自発的に発送するものではありえない 299
「カマキリ叩き」だけで問題は解決しない 301
取り締まれば済む問題なのか 304
代替医療=非科学という紋切り型批判の問題点 307
代替医療に向かう社会的要因 311
今の時点でいえること 314
■健康情報についての参考書籍・サイト 318
これまでにメディアに登場した健康法や健康食品について、どういう問題があるのかを具体的に指摘し、議論した本。立派な装丁で本が出ていても、博士の肩書きがあっても、広く視聴されているテレビであっても、そういうことには関係なく、まんべんなくインチキ情報が紛れ込んでいることがよくわかる。健康食品や健康法の変なものにはまると、必要な治療が遅れたり、健康被害が発生したりすることになる。「うまい話にご用心」というのは、対悪徳商法だけではなく、健康法や健康食品についてもあてはまる。
今後もインチキ健康食品や健康法は増えることはあっても減ることはないだろう。以前もどこかで指摘したが、大学教員の評価基準に社会連携が入っているので、バカ健食の宣伝に荷担する大学人も後を絶たないだろうというのがその理由である。自衛のためにも、ぜひ一冊買って読むと良いだろう。
著者の草野氏は、メールマガジンでは大槻教授を強く批判しており、多少感情的かなと思う面もあるが、この本では冷静な議論をしているので、大変に読みやすい。