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【ネタ】犯罪防止のために禁止にすべきものリスト

Posted on 3月 27th, 2008 in 未分類 by apj

 別エントリーとして立てる。

 インチキ「ゲーム脳」理論レベルの考察で話を進めると、結論がどれほどひどいことになるかを考えてみる。

【ルール】
・現実の殺人事件等の容疑者が、時間と手間をかけてやっていたことをリストアップし、禁止リストを作る。
・因果関係の立証は必要としない(ゲーム脳の立証レベル及びゲーム脳を信じる人達のリテラシーレベルに準拠することが重要、そういう設定の話なので)
・「○○脳」を自由に定義して構わない。
・関係性の立証らしき理屈付けは「ニセ科学」に基づいて行うものとする。

【例】
■テレビゲームを禁止(元祖)、ゲーム脳
■ビデオの収集を禁止(さらに元祖、参考:宮崎勤事件)、ビデオ脳
■無職ひきこもりは禁止
■弓道を禁止(金川容疑者のもう一つの特技)、弓道部脳
■ラグビーを禁止すべき(大麻と集団レイプ)、ラグビー脳
■他人を応援する行為の禁止(集団リンチは応援団の仕業だったな……)、応援団脳
■社交的なサークル活動の禁止(スーフリ事件)、サークル脳
■学校内放送の禁止(岡山突き落とし事件)、放送部脳
■アメフト、サッカー禁止(レイプ事件)、アメフト脳とかサッカー脳とか
■高校生の野球の禁止(飲酒喫煙が記事になるとたいてい野球部)、野球部脳

 項目追加と、ゲーム脳あるいはマスコミのバッシングレベルのお粗末な説明を追加するのも有りかと。
皆様の秀逸なアイデアを募集します。

薬学会シンポジウムとか

Posted on 3月 26th, 2008 in 未分類 by apj

 薬学会のシンポジウムで、水関連のニセ科学について話をしてきた。
発表直前に、「ニセ科学とは何か」の説明を頼まれたので、急遽スライドを並べ替えた。普通の会場だと、自分のパソコンを持っていって繋いで手元でスライドを変えながら話すのだけど、今回の会場は、パソコンを別の機器につないで、USB経由でマウスやキーボードを動かす方式だった。パソコンを受け付けてもらって繋ぐと、担当の人がマウスを振ると操作していてもポインタが動いてしまう。その状態でスライド追加をやって、余分なものを消したりしたから、1枚目のはずのスライドをうっかり消してしまっていた(オペレータ側でマウスを動かしたりしているチェック処理と私の操作が干渉したっぽい)。その上、Macだからか、演台の別のパソコンにスライドは出ているのに、そのパソコンから切り替えができない。合図して切り替えてもらうことになったが、元々かなり早くしゃべらないと終わらない量だったので、とても最後までたどり着けそうになく、磁気水の話をカットした。そのかわり、対策としてどうするかということを少しだけ入れた。
 なぜ研究者が正しい情報を出さないのか、具体的に何をしているのか、とか、一部の研究者が怪しいモノに手を貸すことをどうにかできないのかといった質問が出た。また、情報を出して大丈夫なのかという質問もあった。
 大学発で懐疑的な情報を出すことのやりにくさというのは、所属組織が訴えられる可能性があるという部分なので、研究者の情報発信について組織を免責する仕組みが必要である、と簡単に答えた。また、学問の自由との関連で、組織が法的責任を負うのは、むしろしてはいけないことだろうとも付け加えた。具体的な対策としては、教育面では、健康情報を評価するフローチャートなどを教えて実際に出回っている健康情報を当てはめて判断する練習をしてもらうといったことを一般向けにやっていると説明した。
 全体が終わってから、共同通信社の人に、訴訟について訊かれたので、大学が訴えられたけど私は弘中絵里弁護士を代理人にして訴訟参加、冨永教授も壇弁護士を代理人にして訴訟参加、で、悪徳商法じゃないかと求釈明が連発され、訴えた原告は3人からあれこれ言われる事態になってます、と答えた。山形の方は削除要求に対する債務不存在確認訴訟で本人がやってる上、勤務先にも不作為を要求し、東京のは2年分の名誉毀損の責任追及だと……。「まあ、手間はかかるが代理人が仕事してくてるのでかなり楽、費用と時間はそれなりにかかりますが……訴訟はまあ普通にやるもんでしょう」と言ったのだけど、どうも向こうは「訴訟でとんでもなく大変なことになっている」というコメントが欲しかったんじゃないかと^^;)。でもなぁ、私の方は、弁護士&裁判所御用達の訴訟資料専用ファイルってすごく便利、と思ってたりするわけで、気にするところがずれているような。

 再来年の集中講義の予定が入ってみたり。今度は水の物理化学で測定法込みで、という話で、やっと専門に近いことを話させてもらえることになった。

むしろ躾(?)の問題というか……

Posted on 3月 25th, 2008 in 未分類 by apj

 幻影随想さんのところの「疑似科学と「空気」の研究」より。

疑似科学のビリーバーが彼らだけの虚構の世界に暮らしているというのは、疑似科学をウォッチしていると誰しもすぐに気づくことだろう。なぜなら疑似科学ウォッチャーは彼らの虚構を共有していないし、彼らの虚構は大抵現実とはうまく折り合いをつけることができないからだ。しかしビリーバー達は、通常その世界が虚構であることに気が付いていないし、気が付きたくもないと思っている。なぜなら往々にしてその虚構は彼らの心の拠りどころであるからだ。ゆえに彼らは、その虚構を壊そうとするものに対しては、激しい拒絶を示すし、どれだけ事実を突き付けられたところで、決して態度を変えることはない。それを認めてしまえばそれまで自分が安住してきた虚構の世界が崩壊してしまうからだ。そして、それを認めず目を背けさえすれば、とりあえず彼らの虚構は保たれるのである。彼らの虚構はもともと彼らの心の中にしかない、現実に根ざさないものだから。

 このことについて、去年の夏頃から、ニセ科学関連の講演の最後にこんなスライドを見せることにしている:
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科学の役割

技術は人に利益をもたらすが、科学の役割の1つは人に真実を認識させることである。たとえ、都合が悪くても……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 これを見せて、科学技術と一言で呼ぶことが多いが科学と技術は本来別物あることを指摘し、「科学の知識を学んだり、科学の方法論やロジックを学んだりしても、都合の悪いことを受け入れたくないという心でいる限り、科学は身に付かないよ。楽しくないこと、不都合なことでも受け入れる心の強さが、知識の習得以前にまず最初に必要なんだよ」と話をしている。こうなると、心構えの問題というかむしろ躾の問題になってしまうのだけど。こういうことを教えるとしたら、割と早い内に教育の一部として訓練しないといけないだろうということで、主に学校から講演を頼まれたときには、意識してこの内容を出すようにしている。
 人に都合の良いことを意識的に目指すのが技術、人の都合はどうでもよくて身も蓋もない真実をはっきりさせるのが科学ということになる。

【余談:別の種類の妄想、以下ヨタ話につき注意】
 ところで、幻影随想さんのところのエントリーで取り上げられた、山本七平氏の『「空気」の研究』だが、もしかしたら、この「空気」を打ち破る一つの方向とは、「ヲタク」に徹し「萌え」を追求することではないかと思ってしまった。エントリーを読んでいて、アニミズムのところでふと連想してしまったのが「擬人化たん白書」。blog主の黒影さんがまとめておられるところにいくつか当てはめていくと、「ヲタク」のやり方で進んだ場合は次のようになりそうである。

・「空気」や疑似科学の根とは、「モノに何かを見出す心の働き(アニミズム)」である。

 は、モノを萌えキャラ化した上で萌えキャラの方に何かを見出す心の働きになるから、ナマのアニミズムを切り離してしまっている。

・「空気」とは人々の間の「お約束」によって成り立つ社会的な虚構である。

 萌えを共有できるという部分は虚構だが、そもそも萌えキャラ化の段階で虚構であることを明確に意識することになる。

・「空気」に引きずられることなく理性を保つためには、空気とは何かを理解し、その特性と影響を把握して、自身と社会を相対化できる必要がある。

 自分自身と萌えキャラの区別がつかなくなるヲタクは、普通は居ないんじゃないか。基本的にヲタクは唯物論者である(by山口貴士弁護士)。
 私の想像(というか妄想)がもし合っていれば、ヲタクのこのような性質は山本氏が指摘した「空気」と真っ向から対立するものになりそうで、するとなぜヲタクバッシングが時折起きるかの説明がつくかもしれないなぁ、と思ったり。非ヲタが真実として消費したがっている(が客観的真実ではない)ものが、ヲタクにかかると虚構として消費されてしまう、とも言えそうだし……。
 いや、何でこんなことを連想したのかは自分でもよくわからないのだけど。

訂正行脚

Posted on 3月 23rd, 2008 in 未分類 by apj

 物理学会で発表してきた。実は、ラマン散乱の解析に数年使ってきたモデルが違っていたことが判明したため、間違いでしたという報告になった。笑われてしまった……orz。元の理論屋さんの論文にミスがあったのをそのまま使ったというのが原因。不自然に見えるような式ではなく、使ってきた結果も他の実験と矛盾しないものであったために、気付かなかった。それを使った論文、統計物理の理論系のレフェリーも通していた。それでも、散々同じセッションで発表してきたので、間違いに気付いた以上は正直に報告するしかない。
 悩ましいことに、訂正版で解析をやり直してみたら、どうも、間違いだったバージョンの方が結果が良かったり……。特定のモデルの定式化としては間違いであっても、もし意味のある別モデルから同じ形の式が導出できるようなら、モデルとしての性質は実は悪くないんじゃないかという、何だか歯切れの悪いことになってしまった。間違いではあったが、偶然性質のいい関数を引き当てていた可能性もあり……。もう少しいろいろいじってみて、理論屋さんにも元論文の訂正論文を出してもらうように頼んだりしなければならない。大きな方針に変更は無いし、水の場合は高温では訂正後のモデルの方がいい結果を出していたりする。落ち着くまでしばらくかかりそうである。

 今回は、自分の発表が済んだら引き上げることに。他のもいろいろ聞きたかったのだけど、26日の薬学会で話すための準備をしなければならない。最終日の26日には、ポスドク問題についていくつか発表があり、以前世話になった阪大VBLの先生も話をするので、聞きたかったのだけどちょっと無理。

買い物メモ

Posted on 3月 21st, 2008 in 未分類 by apj

お店:大内商店
場所:弁護士会館地下1階
電話:03-3503-1688
fax:03-3503-1856

【品物リスト】
《ビニールファイル ソフト(透明タイプ)》
Sサイズ(2.5cm)  210円
Mサイズ(4cm位?) 315円
Lサイズ(6cm)  420円
《ビニールファイル 表紙付きのもの》
ハード 472円
ソフト 493円
※サイズはMのものと同じ。

【追記】
 現物を確認。
 S,M,Lサイズあるものは、2穴に通す部分が丸い形でだいぶ長め。500枚くらいは余裕で綴じられそう。
 ハードカバー表紙付きとソフトカバー表紙付きは、2穴に通す部分が平たい形(つまり、普通に売ってるコクヨのフラットファイルで使われているのと同じ)でやや長め。ハードカバー表紙付きは、ファイル本体はMサイズのものとほぼ同じ。
 なお、「表紙」は、この場合「訴訟資料専用表紙」なので、事件番号とか法廷とか双方代理人や当事者連絡先といったものを書くためのフォーマットが印刷されている。従って、訴訟資料入れ以外では役立たない。一般用途には、3サイズある表紙無しのものを買うか、表紙無しで売ってもらうかすると良い(表紙はボール紙を差し込んであるだけなので簡単に外せる)。ソフトファイルは見た目が軟質塩ビ素材、3サイズ物とハード表紙付きは、市販のクリアーファイル類似の素材。塩ビは経年劣化するが、本当はどの材料かまではわからず、耐久性能は不明。
 紙のフラットファイルで厚みがコクヨ標準品の倍程度のものもあるが、これも法律事務所向けの表紙や背表紙が印刷済みなので、一般用途には向かない。無地のものは作っていないとのこと。

第5回口頭弁論だった

Posted on 3月 19th, 2008 in 未分類 by apj

 神戸の訴訟の第5回口頭弁論なので行ってきた。今日は壇さんも来ていた。
帰りの新幹線で絵里タンといろいろ話をした中からいくつかネタを書いておく。

 ロス疑惑の三浦さんがサイパンで捕まったため、お父上の弘中惇一郎弁護士のマスコミ露出度が上がっている。ニュースで放映されたインタビューは、自宅の近くで行われたとのこと。マスコミに弘中番が居て、張り込まれていて、囲みを突破しないと事務所に行けないのだそうで。事務所の近くで張るのかと思ったら違っていた。

 その三浦さんの著書の「弁護士いらず」について。昨年改訂新版が出ている。ネタになった裁判自体はもう終わっているのだが、東京拘置所のしくみが変わったらしく、その部分で改訂したのだそうで。旧版と読み比べると、拘置所の何がどう変わったかがわかるという、ちょっとマニアックな情報が得られる。私は、旧版はamazonマーケットプレイスで購入し、改訂新版も買ったので、時間ができたら読み比べてみるつもり。

 弁護士急増による弁護士の就職難について。やっぱり初任給は下がり続けているらしい。弁護士過疎のところで仕事をすれば、まだ売り上げを増やせる余地はあるが、そういうところでは紛争が多いわけではないから、訴訟の経験が手薄になる。弁護士といえども、情報交換しつつ訓練しないと訴訟の腕が上がらず、いい準備書面が書けないらしい。渉外専門の事務所だと、弁護士になって10年位経っても裁判したことがない弁護士も居るとのこと。訴訟代理人を選ぶ時は、どういう事務所を経てきた弁護士かというのは、結構重要な情報になる。
 ただ、訓練を受けられない弁護士が増えて、薄利多売で紛争を引き受けるようになると、訴訟代理人が居るのに双方の準備書面が意味不明、という事態も起こりかねず……。価格の安い手抜き準備書面というのがあり得る。本人訴訟であれば、訴訟を進めるのが難しそうなら裁判官が弁護士をつけるように言うことがあるそうだが、既に弁護士がついていて弁論が意味不明な事態になったら、裁判官は一体何と言うのだろう?
 実際、弁護士の名前で内容証明が来て、弁護士を問い詰めたら「私は記載の内容までは知らん」と言われ(だったらそんなもん出すなよ)、訴えてみたらその弁護士はおろか誰も出てこない、という事件があったということ。変な弁護士に当たるケースもこれからは増えるのかもしれない。

 
 訴訟資料持ち歩き用のファイルは特別製らしい。確かに、一般の文具売り場では見かけない。なかなか便利そうだし、他でも使えそうなので、購入方法を今度教えてもらうことにする。

amazonを使った新手の嫌がらせ

Posted on 3月 18th, 2008 in 未分類 by apj

 amazon.co.jpの「ほしい物リスト」が、リスト作成者のプロフィールと共に公開されてしまうという件で、先週あたり、ネットが騒然としていた。2ちゃんねるでもスレが立っていた。
 今日になって、「ほしい物リスト」を使った嫌がらせが行われていることがわかった。他人の実名や住所を使って、「ほしい物リスト」に特定の性癖を連想させるものを大量に登録するという嫌がらせである。
 お堅い職業の人の本名を騙って、その人が男性であれば、例えば「生ハメ○○」「痴漢○○」といったタイトルのビデオや本、女性向けランジェリー製品といったものを大量に登録すると、架空の性的嗜好を演出することができるし、商品の選び方次第で「変態」のレッテルを貼ることが可能になる。
 amazon.co.jpを使っている人は、一度自分の名前でチェックして、おかしなことになってないか確認した方が安全だろう。知らないうちにとんでもない趣味の持ち主にされているかもしれないから。

【追記】
 対amazon.co.jpには、名前を使われた人には「自己情報開示請求権」があるので、作成者のメールアドレスや書き込んだ時のIPアドレスの開示を求めるのが最初にすべきことである。拒否されたら、発信者情報開示請求の手続きに入り、IPとプロバイダを特定した後で、今度はプロバイダに対して発信者情報の開示を求めるという手順で、いたずらした人を特定することになる。

訴状を見たい、是非見たいぞ……

Posted on 3月 18th, 2008 in 未分類 by apj

 YOMIURI ONLINEの記事より。

「授業なし・宴会だけ」に弁護士、一橋大と指導教授ら提訴

 一橋大大学院に入学した東京都内の佐藤文昭弁護士(34)が、指導教授の授業を一度も受けられなかったとして、同大と指導教授などに入学金や授業料計約239万円の返還などを求める訴訟を17日、東京地裁に起こした。

 訴状などによると、佐藤弁護士は2002年4月、同大学院国際企業戦略研究科に入学。修士論文の指導教授の授業を受けようとしたが、この教授は02~04年度に一度も授業を開かず、各学期の初めと終わりに宴会を開いただけだったという。その後も指導を受けないまま、今年1月に修士論文を提出したが、不合格にされたとしている。

 一橋大の話「訴状を見ていないのでコメントできない」

(2008年3月17日22時44分 読売新聞)

 一度も授業が無くて宴会だけか……。そりゃ普通は訴えられるわな。ってか弁護士を入学させてこんな指導は危険すぎるだろ(違。
 丸2年開講せずなんてのは、普通は体調不良で入退院といった状況しか考えられないが、それならそれで早めにフォローするものだし。第一この先生は宴会はしていたのだから元気そうだし。一体何をしていたのかが激しく謎。いや、何もしなかったのかこの場合は。

信じぬ者は救われる

Posted on 3月 17th, 2008 in 未分類 by apj

 「信じぬ者は救われる」を菊池さんから献本していただいたのでコメントをいくつか。

 既にいろんなところで感想や書評が書かれているけど、この本は、ニセ科学を批判する本ではない。なぜニセ科学を信じるのかを考えるための本である。
 「ニセ科学、スピリチュアル、悪徳商法がつながっている」という見出しが30ページにあって、菊池さんの発言が

僕も、「どれがウソでどれが本当かもっと教えてほしい」と言われるんです。だけど、それを言ったって、言われたものについてああウソなんだとか、本当なんだって思うだけじゃないかという、そんな無力感があります。結論だけあればいい。

 これは、私も同じ事を感じてきた。水商売ウォッチングの方で実例を取り上げていて、それなりにパターン別になっているから、考える手掛かりになるはずなんだけど「ウォッチングで取り上げていない○○は信用していいのか」という質問がやってくる。その○○の宣伝を見に行くと、ウォッチングで取り上げている別の製品の宣伝文句と似通ったものが一杯出ていたりする。公開している議論を通して知ってもらいたいことは、議論の仕方や目の付け所であり、私は一つの例を示しただけだと思っていたのに、「正解が書いてあるはず」という誤解が後を絶たない。どうすれば、考え方が大事なのだということを伝えられるのか、いつも悩んでいる。
 私が、私のできる範囲でニセ科学を斬ってみせることは簡単なのだけど、それをそのまま受け入れてしまう人は、新たなニセ科学が出てきた時には多分また騙される。
 パターンの違うものに騙されないようにするには、悪徳商法への対処と同じで、「なぜそれを信じたのか」まで一度立ち戻り、各人が「信じてしまった自分」と徹底的に向き合う以外に解決策はないのではないか。でも、多分、それはとても辛い作業になる。誰だって「自分の経験は正しい」と思いたいし(そうでなければ不安になってしまうし)、「自分が信じたものは良いものだった」と思いたい筈だから。この「思いたい」を否定する作業が必要なのだとすると、ただ単純に正しい科学的知識を伝えるだけでは、その言葉は決して届かないだろう。
 弁護士の紀藤正樹は、人間が本来持っている力ではないものに頼る発想を「インスタント志向」と呼んだ。納豆で痩せようとか、水で健康になろうという悪徳商法系のニセ科学を信じることと、スピリチュアルに頼って癒しを得ようとすることは、両方ともこれに当てはまる。しかし、「インスタント志向」で有形無形を問わず商品を売り、売れれば勝ちという社会で暮らしていると、「インスタント志向」そのものの否定は極めて難しくなる。第一、科学(と技術)の側だって、人間が本来持っていない力をいかに理解して人間のものにしていくかという営みを行ってきた。「因果関係を見いだして信じる」ことが人間の基本仕様の1つであり、「インスタント志向」が今に至る文明の発展及び経済活動の基本なのだとすると、否定するのは多分無理で、この2つを間違って使わないように適切に制御するといった発想でないと対応できないのではないか。
 元々人間は、信じたい気持ちやインスタント志向を持っていたのだけど、そのままでは実現しないから、後付けで科学(とそれを利用した技術)というものを獲得して、本来の「気持ち」にとっては回り道をして実現してきた。人間の持ち物ではないものを獲得したプロセスを忘れたり、油断して楽な方を選ぼうとすると、この「回り道」をついはしょりたくなってしまって騙されるということなのだろう。
 「信じぬ者は救われる」というこの本のタイトルは、人間の基本仕様にストレートに言及しているものだと思う。明快な答えを期待しないで、一度読んでみてほしい。この問題について、今、明快な答えが提示されるとしたら、それは多分嘘だから。

打ち合わせをしつつ戻る

Posted on 3月 14th, 2008 in 未分類 by apj

 広島から山形に戻った。

 東京で一旦駅を出て、毛髪科学技術者協会の方と打ち合わせ。美容室向けのパーマ液等の毛髪用の薬剤を製造販売している会社の団体である。4月に講演を頼まれたのでいろいろと……。今回の依頼は、以前、東京理科大の市民講座で話をしたことがきっかけであった。真面目にやっている業者さんを力づける内容をお話できればと思っている。
 打ち合わせでいただいた資料の中に「QCP」という名前のミネラル液の宣伝パンフがあった。「声かけ核実験」の高尾博士による「元素転換認定商品」だそうで……。1リットル20000円のミネラルが入った水溶液で、これを使ってパーマ液などを調整せよということらしい。また、なぜか美容師さんに「液体の混合」が好きな方が多いのだとか。混ぜてお客さんに最適にする、という部分にこだわっておられるらしい。販売する側としては、混ぜなくて良いようにして出しているのだけど、という話。混ぜると大抵は性能が落ちるわけで「どうすればいいだろう?」と訊かれたので「いっそのこと、混ぜてから使うという製品を出してみては?」と言ってみた。混ぜる比率に多少幅を持たせて調整できるようにしておけば、美容師さんの混ぜたい気持ちを満足させつつ、混ぜてうまくいくパーマ液が出来上がるのでは、と思ったもので……。

 広島駅で、にしき堂のもみじ饅頭を購入。以前、にしき堂のパッケージのキーホルダーがあったが、壊れてしまったので、また買おうと思ったら製造をやめたのか、全くみかけない。そのかわり、キャラクターもののご当地キーホルダーが大量に並んでいた。無理にキャラクターものばかりにしなくてもいいのに……。