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ニセ科学批判批判への対応

Posted on 8月 21st, 2007 in 未分類 by apj

 Chromeplated Ratのエントリ(by poohさん)より。社会学玄論(by mercaさん)の「疑似科学批判が流行る理由」のコメント欄で議論していたら、「菊池先生と天羽さんへ」というエントリが上がった。
 展開はそれぞれのblogを読んでいただくとして、議論がさっぱり進まない理由は、mercaさんが、疑似科学と疑似科学批判の両方の実態を知らずに、疑似科学批判批判のメタな議論を書いたことによる。
 菊池さんについての

菊池さんを始めとするラディカルな疑似科学批判者は、自らは正しい科学観に基づいているという絶対的自信があり、自らの科学観を疑うことなく、他の学説を批判しているように思えます。

とあるけど、この問題は、既に松山の物理学会の時にたざきさんが指摘し、菊池さんも私も表現が多少違うだけで同意している。個別の科学の中身は、実験や観察の積み重ねによって不確かなものから確からしいものへと連続的に変わっていくのであり、この点については多分田崎さん、菊池さん、私は同意している。水伝批判、マイナスイオン批判を実際にやったら、菊池さんと私の主張は相当程度オーバーラップすることになる。だから、mercaさんのこの観察は、やっぱり現実を見ていないように思う。
 mercaさんは、きくちさんのニセ科学批判の具体的中身を知って批判しているように見えない。きくちと書いて貼り付けたわら人形に向かって批判を展開しているだけではないのか。
 しかし一体どうして私に理解を示し菊池さんには頑固に不理解を示すポーズをとっているのか?と思ったら、poohさんのところに面白い指摘が。

分断工作のつもりでしょう。頭悪いなあ。
by かも ひろやす (2007-08-21 22:13)

 で、poohさんの別の意味で興味深いコメント。

分断しようにももともとみんなばらばらなんですけどね。
暗黙で通じ合える優しい関係なんてないから、逆に見解の共通する部分は明解だし、そこは鍛えられてるわけです。思いつきの切り貼り言説なんかじゃそこには立ち向かえないわけで。

戦術が透けて見えるのは痛々しいですね。
by pooh (2007-08-21 22:38)

 去年あたりから、菊池さんと同じ場所で講演したり、たざきさんに司会をしてもらったり、左巻さんや小波さんも一緒だったりするもんで、ガワから見るとニセ科学批判の一派だか一味だかに見えることがあるらしい。たまにながぴいさんが別のスタンスでがんばってくれてたり。ところが現実は全く違っていて、poohさんの指摘通り、最初から全員ばらばらである。情報交換や打ち合わせはしても、なれ合いが全く無い。同じ事をしている人を見て一味とか一派だろうと思いたがる心理って、一体何なんだ?
 仮に、きくちさんと私を分断しようとしても全くの無駄に終わるだろう。必要があれば、個別のスタンスでやり返すだけの話である。
 疑似科学批判批判するのは自由だけど、それなら疑似科学の実際と批判の実際と批判してる個別の人達の実態をちゃんと見てからにしてほしいな。

 でもまあ、mercaさんのところはメタにとどまっているだけだが、もっと壮絶なのがある。「科学者の常識の欠如 – アルスブルグの研究室」で、延々ニセ科学批判をする科学者を批判している。ところが最初に

ニセ科学(或いは疑似科学)という言葉があります。言葉の正確な定義は知りません。

と勢いよく宣言。これじゃ、ニセ科学もニセ科学批判もニセ科学批判批判もまとめて不可能だろう。一体何を目的として長い文章を書いたのかが謎だが……一種の憂さ晴らし?

某教授ktkr

Posted on 8月 19th, 2007 in 未分類 by apj

 産経関西より。

京大名誉教授 ベンチャー設立は無届け 大学、詐欺トラブル調査へ
 京都大名誉教授(63)が設立したベンチャー企業の出資金をめぐる詐欺トラブルで、この名誉教授が大学の就業規則(無許可兼業)に反し、無届けで会社を設立していたことが17日、分かった。大学は昨年8月、就業規則違反で名誉教授を厳重注意処分としたが、出資金をめぐる一連のトラブルについては全く把握していなかったという。大学側は「産学連携の流れに支障を来す恐れがある」として近く本格的な調査に乗り出す方針で、大学ベンチャーをめぐる行動指針についても京大独自の策定を検討する。

 関係者によると、名誉教授は教授時代の平成17年9月、京都府内の会社社長が出資した5000万円の一部を使用し、遺伝子工学を応用した医薬品の研究開発などを目的とするベンチャー企業「遺伝子情報調査会」を設立。代表者は妻で、名誉教授は顧問に就任したが、実質的には本人が経営していたという。

 ところが、大学に兼職の届けを出しておらず、無許可でベンチャーを立ち上げていたことが外部からの指摘で発覚。大学の調査に「会社にはアドバイザーとして就任したが無報酬だった。届け出が必要という認識がなく反省している」と話したという。

 大学は平成16年4月の国立大法人化後に定めた「兼業の取り扱い通知」に反し、「大学の教職員にふさわしくない行為」に当たると判断。名誉教授を厳重注意処分とし、同社の活動も事実上停止した。

 ただ名誉教授への出資金をめぐって出資者との間でトラブルがあったことは全く把握していなかったという。

 京都大の担当者は「当時の調査が甘かったといえばその通りだが、事実確認など早急に調査を進めたい」と話しており、大学ベンチャーをめぐるトラブル防止を目的とした独自の行動指針などを策定し、教職員への周知も徹底するという。

 この問題では、名誉教授がベンチャー企業設立のために借りた5000万円をめぐり、出資者の会社社長が返還請求訴訟を提訴。名誉教授が3250万円を支払うことで和解が成立しているが、ベンチャー企業の元役員だった国会議員秘書を名乗る男ら2人が4000万円を流用したまま行方が分からなくなっている。名誉教授は2人を背任や詐欺罪などで刑事告訴する構えをみせている。

 京都大では昨年3月、大学院医学研究科の教授が大学の許可なく、医療関連会社2社から計4500万円の資金提供を受けたとして懲戒解雇処分になったケースもあり、担当者は「退官したとはいえ、事実なら大学の信用にかかわるゆゆしき問題だ」と話している。

 (2007/08/18 9:06)

 思いっきり中西応援団の記録に残ってる掲示板のこの辺の話に見えますな。

需要のあるところに供給があると言ってもだな……orz

Posted on 8月 18th, 2007 in 未分類 by apj

またまたYOMIURI ONLINEの記事より。日本語が読み書きできないという現実がこんな形ででてきていた。

1文字5円、卒論に代行業者…大学は「見つけたら除籍」

 大学の卒業論文やリポートの執筆を有料で請け負う代行業者が登場し、波紋を広げている。

 学生がインターネット上で見つけた資料をリポートなどに引き写す「コピー&ペースト」が教育現場で問題となっているが、これを上回る究極の「丸投げ」で、文部科学省は「事実とすれば、到底認められない行為」としている。

 ネット検索大手のグーグルも、「こうした代行は不正行為にあたる」と判断、代行業者のネット上の広告掲載を禁止する措置に踏み切った。

 「国立大の学生・院生を中心としたチームなので安心の品質」「6年で740件の代行実績」。ある代行業者のホームページ(HP)には、そんなうたい文句が並ぶ。別の業者のHPは「社員は学生時代に必要最低限の勉強量で優やAを取ってきた精鋭ぞろい」とアピールしている。

 料金は1文字5円程度。納期は卒論で1週間以上、リポートでは2、3日以上が多い。テーマや内容、分量、納期などを指定のメールアドレスに送り、その後のやりとりで合意すると正式契約となる仕組みだ。こうした業者のHPはネット上で少なくとも三つ確認されたが、個人レベルで請け負っているケースもあると見られる。

 このうち、昨年4月から事業を始めた業者が読売新聞の取材に応じた。これまでに300件近い問い合わせを受け、実際に100件以上を請け負ったという。2万字程度のリポートで10万円、発表会のための個別指導を含む卒論執筆だと35万円からという料金設定にしている。

 事業を取り仕切る20歳代の男性は「もともと大学院の入試対策を有料で行うつもりだったが、依頼の大半は卒論やリポートの代行だった」と明かす。法律関係が依頼の半分近くを占め、文学、経済関係も多い。理系では物理や化学は皆無で、情報科学の依頼が数件ある程度。これまでに、「単位が取得できなかった」「発覚してしまった」という苦情は寄せられていない。

 「卒論を3日で仕上げてくれ」など、安易に代行を頼む学生もいるが、この男性は「依頼者の多くは、教員に放任扱いされ、課題にどう対処すべきか悩んでいる。我々がやっているのは、最後の駆け込み寺のようなもの」と主張している。

 これに対し、この業者のHPをネット上で見つけた京都府立大の川瀬貴也准教授は、今年1月、「あなたたちのしていることは犯罪。即刻やめるべきだ」というメールを送った。「『卒論を代わりに書く』という商売があるとは、とんでもない話。発覚すれば、学生の単位を取り消すどころか除籍処分ものだ」と憤る。

 文部科学省大学振興課も「いかなる理由があろうと、他人に卒論やリポートを書いてもらうことは、常識からも認められない」との見解だ。ただ、大学側からの事例報告などがないため、当面は調査などはせず、様子を見守るという。

 一方、検索大手のグーグルは今年5月、卒論代行業者の広告掲載を禁止した。検索語と関連するウエブサイトが広告として掲載される機能で、今回の禁止措置について、グーグル広報部は「情報提供や執筆のサポートではなく、全部を代行するというのは、不正行為にあたると判断したため」と説明している。

(2007年8月18日16時14分 読売新聞)

 「法律関係が依頼の半分近くを占め、文学、経済関係も多い。理系では物理や化学は皆無で、情報科学の依頼が数件ある程度。」って、つまりは法学部でズルするヤツが多いってことか。リーガルマインドもへったくれもあったもんじゃないな。「教員に放任扱いされ、課題にどう対処すべきか悩んでいる。」って、悩んでとりあえず書いたら指導教員に見せに行けよ。そこでさらに無視されたんなら教員の怠慢だが、最初の案を見せに行きもしないで代行業者は無いだろ、普通は。
 これを防ぐには……卒業試験として、論文試験を課せばチェックできるのではないか。卒論のクオリティと本人の文章のクオリティに極端なギャップがある場合はズルした可能性あり、ということで。

まだちょっと違う気がする

Posted on 8月 17th, 2007 in 未分類 by apj

 酔うぞさんのところでも取り上げられているが、YOMIURI ONLINEの記事より。

「言語力」育成、脱「ゆとり」も…中教審が指導要領改定へ

 今年度中に改定が予定される小中高校の学習指導要領について、中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)は16日、基本方針を「ゆとり教育」から「確かな学力の向上」に転換した上で、自分の考えを文章や言葉で表現する「言語力」を全教科で育成していく方針を固めた。

 国際学力調査で低下していることが明らかになった文章表現力や思考力を向上させる狙いがある。中教審は今後、各教科ごとに言語力の具体的な育成方策をまとめる方針だ。

 学習指導要領は、小中高校の授業で行う内容や時間数などを定めた国の基準で、ほぼ10年に1回改定される。現行の指導要領は、学校5日制の完全実施など、学習内容を大幅に削減した「ゆとり教育」が柱で、小中学校は2002年度から、高校は03年度から施行されていた。

 しかし、学力低下が指摘されているため、新たな指導要領では、「ゆとり教育」からの脱却を明確に示すことにした。

 さらに、「言葉は学力向上のために欠かせない手段」と位置づけ、小学校の低学年から、国語だけでなくすべての教育活動を通じて言語力を育成する必要があると判断した。

 例えば、小学校低学年では、体験学習で感じたことを作文にまとめたり、発表したりして、他の人と比べる学習を重視。中学の理科では、予想や仮説を立てた上で実験や観察を行い、結果を論述させる。体育の授業でも、筋道を立てて練習計画や作戦を考え、状況に応じて修正させる訓練を積むことを想定している。

 経済協力開発機構(OECD)が2003年に行った国際学習到達度調査(PISA)では、文章表現力や思考力を測る「読解力」の順位が、日本は8位から14位に下落した。

 中教審は、こうした力が欠けていることが、人間関係の構築が苦手な子供を増やし、いじめやニートなどの問題の遠因となっていると分析。言語力の習得を通じ、子供のコミュニケーション能力を向上させることも目指したいとしている。
(2007年8月17日3時1分 読売新聞)

 酔うぞさんと同意見になるんだが、「体験学習で感じたことを作文にまとめ」るんじゃダメだろう。まずは、「体験学習で何をやったか他人にわかるように説明する作文を書く」でないと。何を感じたかを考えて掘り下げられるようになるのはもうちょっと大きくなってからではないか。予備知識も経験も足りない年齢だと、知らないことを知ること自体が面白いのであって、内容の評価はひとまずどうでもいいような……。

 

文章で算数の問題を出すと、途端に回答が大混乱になる、といった報告があります。

 これ、大学でも状況は変わっていない。いや、トップクラスの大学の方は問題無しかもしれないが、ウチの場合、自然現象とその解釈を簡単に説明させるような設問を試験で出すと、ほとんどの学生がまともに答えられない(そんなわけで今日は必修2科目まとめて午後から追試をすることになっている)。理学部で、科学の概念が言葉として出てこないというのは、意味がわかってないし他人にも説明できないということで、じゃあ一体どうやってその先を考えるのだろう。

大学の試験などで「二つの説があって正解がない」といったことで「問題を出した方が悪い」と非難される論調がずーと続いていますが、

 採点側の都合ではなく、予備校の都合の面が強いというのが実感。出題する側が一番恐れているのは「マスコミの前で記者会見」「予備校にクレームをつけられる」の2点なので、解答が複数出ても採点基準さえしっかりしえいれば出してもかまわないと思うが、この意見は通らない。

 なお、読解力が根本的に欠けているのではないかと疑わざるを得ない結果が、この間の追試で出てきた。
・教科書に何種類か出ている相変化の概念図のうちの1つを描かせる問題を追試で出したら、本試験の時と違う問題なのに、本試験の解答と同じ図を書いてきた学生が数人。
・定圧熱容量の測定方法を簡単な概念図を描いて説明せよ、とやったら、定圧熱容量と定積熱容量が違う理由について解答した人が数人(2つの違いについては本試験で出題した)。
・必要がない場合に理想気体の状態方程式を勝手に仮定したら減点、と明記してあるのに、ちっとも守られていない。自分が答案に書いている式が理想気体の状態方程式かそうでないかの区別がつかないのか?
 必修科目で、落とせば後でそうとう厳しいことになるのがわかりきっているのに、脊髄反射で書いたような答案が出てくるのは一体どうしてなんだろう。解答する前に問題を読んでいるかどうかについて小一時間問い詰めたくなる。試験時間は90分で5問、記述の量は多くならないように調整しているから、あせりまくって勘違いするような状況でもない。ゆとり教育世代の最初の学年だから、ゆとり教育がまともに機能していれば、読解力と文章表現力でひっかかったりはしないはずなんだが。

ジャパンスケプティクス

Posted on 8月 16th, 2007 in 未分類 by apj

 ジャパンスケプティクスの教育分科委員会の集まりがあったので東京まで日帰りで出かけた。
昼頃に東京駅に着き、ちょっと買い物があったので東京地裁に出向いたが、地下の売店の様子が変わっていて目的達成できず。
 昼食後筑波大付属中高にて、活動報告やら活動計画やらを話し合う。
中学高校の先生の割合が高い委員会だった。まあ、教育だからか……。総合的な学習の時間にニセ科学の調査を生徒がやって発表するというのが計画されていた。まあ、筑波大付属駒場といった、勝ち組生徒が集まる学校で、やる気のある先生がいるとそういうことができるのかな。リテラシー格差も拡大中なのかもしれない。でも、指導要領の縛りがあるため、なかなか科学リテラシーを教えるのは大変そうだった。教科書にないことをやるな、というクレームを気にしながらになるらしい。

 とにかく熱かった。暑いってのを通り越して周り中から伝導輻射対流とあらゆるやりかたで熱エネルギーが伝わってくる気がした。
ニュースによれば、
「これまでに観測された各地の最高気温は、岐阜・多治見と埼玉・熊谷で40.9℃と、74年前に山形で観測された国内の最高気温記録を更新したほか、埼玉・越谷で40.4℃、岐阜・美濃で40.0℃を記録した。」
 山形は第三位転落。とりあえず、もうこんな競争はしなくていい、ってかしてほしくないなぁ^^;)。

レポート採点中間報告

Posted on 8月 14th, 2007 in 未分類 by apj

 採点基準に書いたような課題なので……。
 夕方からこっそり出勤して採点開始。日が変わって1時間ほどたったけどまだ半分ばかり残ってる。
 単なる感想文しか無い、そもそも科学の議論をしてないレポート2通が不合格となった。
ネタは自由なのだが、今のところ「ゲーム脳」を扱ったものが軒並み点数が低くなっている。「食卓の安全学」に書かれた判断基準の適用をするところまで調べてあてはめするのが難しい上に、森教授の本を読んだとは思えないレポートが続出している。判定するときは元ネタを読まないとアカンでしょうが……。ネットに転がっている批判的言説と大差ない内容なら誰でも書けるし、wikipediaの内容は裏を取れと言ってあるのに情報源がそこだけだと、そりゃソース不十分で加点はできんわな。
 ネタの選び方で有利・不利が決まるのは仕方ない。「食卓の安全学の内容をふまえ」ることが楽にできるかどうかの見極めも含めて、訊かれたことに答える、という実力のうちだしなぁ。

休み

Posted on 8月 13th, 2007 in 未分類 by apj

 強制的お盆休みなのでとりあえず素直に休み。この間から土日つぶれること多すぎ。暑いから引きこもって読書など。

やっと戻った

Posted on 8月 12th, 2007 in 未分類 by apj

 午前中は数理の翼の閉会式。
 スタッフの挨拶、OB講師のコメント、広中賞の発表、参加者への粗品贈呈やもろもろの案内など。私も簡単なコメントを求められたので、「自分が高校生のときこのイベントを知っていたら、ぜひ参加したかった。今は話をする側になってしまったが……。学校で話が通じる仲間がいなくても、大学までたどり着けば後は変わり者でもそのまま評価されるので、めげずにがんばってください」ってな内容を話した。私はサボリ高校生だったから、参加した生徒達よりはかなり出来が悪かったと思うが、それでも、教科書範囲外のマニアックな物理や数学のネタについて語り合う友達は居たし(高木の解析概論共同購入とか)、相手をしてくれる先生も居た。今は、理科や数学が好きで得意だということが、高校では目立ってしまう要因で、目立たないようにするため日常でかなりのストレスを感じているように見えた。また、1校2人までしかこのイベントには参加できず、高校の先生の推薦が必要なのだが、マニアックな方に突き抜けている生徒を見て、先生の方で気を利かせて参加を勧めるケースもあるらしい。

 その後はバスに乗って函館駅に行き、そこで解散。高校の生徒達なので、「家に帰るまでがセミナーです」のお約束の台詞が……。
 撤収の合間に、公立はこだて未来大の美馬のゆりさんとサイエンスコミュニケーションについて情報交換をした。サイエンスアゴラという組織を作って動きつつあるということで、提出予定の企画書をもらった。また、科学リテラシーの講義をやっているということだったので、実は私も同じタイトルでやってます、と、普段の化学Aの講義資料と、この前期に作った科学とニセ科学を考える、の講義資料のコピーを差し上げた。
 廣中先生とはツーショットで写真を撮れたし、サイン入り名刺ももらった。ニセ科学批判の活動について、社会に必要なことだと認めてくださり、「絶対負けるなよ」と励ましてくださった。気合い入りましたよ、ええ。
 まあ、ニセ科学批判の活動はリスクも伴うので、あまり若い人に勧めるのはまずいんだよな。だから、彼らが教育に携わるようになる頃までに、もうちょっと道をつけられたらいいんだけどね。

 函館駅前の土産物屋で簡単に買い物。携帯ストラップの「ご当地解剖図鑑」を4種類購入。「ヒグマ」「鮭児」「十勝乳牛」「毛蟹」で、それぞれの模型の一部が透明窓になってて、理科室の解剖模型のように内部が見えるようになっている。しかし、サイズが小さい上に「ご当地名物モード」で作られているため、解剖学的な名称ではなく、「どの部分が食べられる場所か」という観点で作られている。たとえば、ヒグマは、内臓はそれなりで筋肉部分に「熊肉」、足の部分に「熊の掌」と印刷されている。

 講義と講演が立て続けで疲れたので、帰りの列車の中では寝ていて、起きた後もかなり寝ぼけていた。青森駅で進行方向が変わるから座席を回しますよ、と隣の人に言われて、理由を聞き返したり、じゃあ背もたれ倒したの元に戻さなきゃ、とあんまり関係の無い行動をしたり、そのくせ、後ろの席を回す前にまた背もたれを倒して寝ようとしたり(これをやると引っ掛かって後ろの座席を回せなくなる)。電車を降りるときもまだ寝ぼけていて、入り口のゴミ箱のからはみ出ていたゴミを引っかけて落としてしまったのだが、後ろから降りようとする人が居たので、立ち止まるとぶつかるよなぁ、ということしか頭に浮かばず、ちょっと歩いてから「あ、ゴミ拾わなきゃ」と思ったのだが、既に後ろの誰かが拾って清掃業者の人に渡してくれていた。私のすぐ後ろの方にセミナー参加の生徒さんが何人かいたので、もしかしたら生徒さんに後始末させたかも……orz。ゴメンナサイ。

数理の翼講演

Posted on 8月 11th, 2007 in 未分類 by apj

(ネットに接続している余裕がなかったので今頃アップ……[:困り:])
 午前中に函館に到着。会場は大沼公園の中なので、車で迎えに来てもらった。参加した生徒達はちょうど大沼散策に出ていたので、そちらに向かって合流。さっそく掴まって、マイナスイオンドライヤーを分解したら出てきたという怪しげなシートについて質問された。マイナスイオン自体が未科学で、発生方法の違うものを一緒くたにしている間は科学にはならないよね、ってな話をした。
「そんなインチキなら、このドライヤーは取り締まれないの?」
と訊かれたので、
「どこのメーカーなの?」
と尋ねたら、
「百円均一ショップの中の五百円コーナーで買った」
 ドライヤー単独なら数千円程度、ナノイーイオンのやつは一万円以上している時に(今調べたら、ヘアドライヤーはビックカメラで最安値780円~)、五百円のマイナスイオンドライヤーが百均ショップにあったとして、マイナスイオンのせいで他の製品に比べて著しく優良と消費者が誤認するかね?普通の判断は「他の製品に比べて著しく安物」ではないかい?ってことで、値段の相場から見て何かを期待するような値段じゃないし、公取が動くには難しそうだよねぇ、なんて話をしておいた。
 昼食後講演。前半は研究の話なので、一つの実験だけで全部わかるわけじゃないといったことも含めて、水の低振動数ラマン散乱の話をした。休憩をはさんで、ニセ科学フォーラムでやったのと同じ内容をやった。
 質疑応答で、まわりで変なものを信じてる人がいる、といった相談が出てきた。
 その後、近くのログハウスに移動してバーベキューパーティー。近所の先生や議員さんがボランティアでいろいろ焼いてくださったのでおいしくいただく。
 事実上のセミナー最終日だったので、高校生たちが参加しての感想を一言ずつ述べていくのだが、浮きこぼれの人達は普段は周りと話が合わず、苦労してるんだなあ、というのを感じた。
 入浴タイムの後は夜ゼミ。どうやら私は、「偉い先生」と勘違いされたらしく、別のホテルが予約されていたので、そちらにチェックイン後再び生徒の宿舎の方に移動して合流し、やってきてくれた生徒さんに追加の話をいくつかしたが、残念ながら途中で帰ることに(最終日のゼミはエンドレスなので、OB講師の人のように同じ宿舎に泊まれば最後まで参加可能だったんだけど……)。

 数理の翼の活動を始めたのは、フィールズ賞の廣中平祐先生だそうで、会場にも来ておられた。私が高校生の頃は、フィールズ賞の話が伝わり、マスコミへの露出度も上がっていた時で、当時の私や友人にとってはまさに雲の上の人で一種のヒーローだった。まさか、その時は、自分が廣中先生の前で講演することになるなどとは思ってもみなかった。話によると、フィールズ賞で世間で有名になっていたその頃から、教育活動をどうするか考えておられたということだった。

 日程の都合で最後の講義に間に合うようにしか会場入りできなかったが、ゼミ自体は週明けからあって、呼ばれている講師の先生を見ると、「こりゃ私も話を聞きたかった」と思う先生がずらずらと……。で、やっぱり、高校の頃、友達と話題にしていた数学者のピーター・フランクルさんも呼ばれていた(こちらは、当時の仲間うちではアイドル数学者という位置づけだった。)。数学の話のフォローは難しいとしても、語学学習の秘訣については聞いてみたかったなぁ……。

 参加者の活動としては、知り合いを作るというのも大事で、名刺交換というのが企画されていた。高校生達は手作りの名刺を持ってきて、生徒同士、生徒とスタッフや先生同士で交換をしていた。透明名刺を増刷して持っていったので、高校生ウケが良かった^^;)。講演の時は当然水分子ループタイ付けてたので、そっちも高校生ウケした。

放送大学講義終了

Posted on 8月 10th, 2007 in 未分類 by apj

 放送大学の講義、2コマで全部終了。年配の方(=私より年上)も若い方も、みなさん、熱心に聴講してくださった。難易度が一番気がかりだったが、仕事をいただいたきっかけが、普段やっている共通教育のシラバスを見て、ということだったので、山形大でやっている内容が期待されていると判断し、同じ内容をやった。共通教育では、毎回最初に学生のコメントへの返事を紹介したりするので、新しい内容をやれる時間はその分短くなる。今回は、その分が無かったので、12回分の内容(共通教育15回のうち1コマは登録と説明、ちょっとエクストラな話題を2回分用意しているが、本題とは多少はずれるので、メインテーマの分を選んだ)のプリントを配り、2日で終えた。最後の30分に簡単な感想文をレポートとして出してもらい、合否判定して終了。

 で、数理の翼の講演が明日なので、函館に向かった……はよいが、北斗星の人気が高すぎてとれなかったので、今晩は青森までしかたどりつけないのだった。
 明日会う予定の高校生達は、高校生をしていた時の私より、遙かに優秀な人達である。落ちこぼれじゃなく浮きこぼれと呼ぶのだそうで、数理方面のセンスが良すぎて、高校の授業じゃ物足りないは、クラスの友達とも既に話が合わないは、という状態になっているらしい。そういう若者に、易しすぎる講義をしたら失礼になりそうなので、研究の話をきちんとする予定。ただ、オーダーが、半分は研究の話、残り半分はニセ科学の話、となっているので、後半は、ニセフォーラムでやった話題を一部入れてみる。