2003年 3月 14日
情報公開審査会 第4部会 御中
平成14年(行情)諮問第484号
2003年 3月 14日の口頭意見陳述に関する補足説明
565-7810 大阪府吹田市山田丘2-1
大阪大学ベンチャービジネスラボラトリー
天羽 優子
上記案件について,2003年 3月 14日の口頭意見陳述で意見を述べさせていただきましたが,説明中でもう少し補足した方がわかりやすいのではないかということに気付いた点があります。そこで,補足説明をさせていただければと思い,この文書を提出いたします。口頭意見陳述後の文書提出が手続上認められるのかどうかについて,法の運用をを私はよく知りませんので,もし手続上受け付けていただけるのでしたら,補足内容も考慮して審査していただきたく思います。
記
1. URLとウェブコンテンツの取扱について
URLそのものの開示や,URLが指し示す文書内に個人情報がある場合の取扱についてですが,出版物と同じ扱いが妥当であると考えます。
まず,ウェブコンテンツは多くの場合,著作物として取り扱われます。この点,出版物の製作と同じです。次に,ウェブコンテンツをサーバに置いて一般に公開するということは,著作物を出版して公表するのと同じことになります。文書のURLを特定することは,書籍の題名・著作者・出版社・文献の所在場所等を特定するのと同じです。この情報がわかれば文書内容に誰でもたどり着くことができるからです。
意見陳述の際に,「すでに公になった情報」について,誰が公表したのかという質問が出ました。出版物であれば,政府刊行物のような公文書に近いものから自費出版された自叙伝のような個人情報を含むものまで,いろいろな種類があります。ウェブコンテンツの場合,これらの違いは,公的機関の委員会決定などを経て公開されたものなのか,個人の意志で公開したものなのかという違いに対応します。しかし,いずれにしても,出版済みであるものは,一般に公表済みということになります。
本案件では,処分庁は,文書中のURLについて,URLが指し示す文書の内容が個人情報に関係したり企業の利害に関係するという理由で,不開示としています。この問題は,「議事録その他の行政文書中で特定の出版物について言及され,かつ当該出版物の内容が誰かの権利を侵害する可能性がある場合に,当該出版物そのものを特定する情報が,法が定める不開示情報に該当するのか?」という問題と同じものです。
法が不開示情報を定めたのは,情報を開示することによって新たな権利侵害が発生することを防ぐためである,と私は理解しています。既に公表済みの出版物の内容が誰かの権利を侵害していた場合に,行政文書中に書かれた当該出版物の雑誌名や書籍の題名・著作者・出版社・文献の所在場所等を特定する部分を開示したとしても,さらに新たな権利侵害は発生しないと考えるべきではないでしょうか。出版物の内容による権利侵害発生の責任は,出版を行った者(著作者や出版社)が負うのであって,「こんな本があるよ・こんな記事が出てるよ」と単に言及しただけの人が負うことはありません。行政機関についても同様の基準で判断すべきではないでしょうか。行政文書中で既に世の中に出回っている出版物に言及した場合,その出版物を特定する部分を情報開示するかどうかについて,処分庁がその出版物を逐一確認して権利侵害の可能性を考えて判断するというのは,明らかに負わなくていい責任まで処分庁が負っていることになります。
URLおよびコンテンツ内容は,処分庁の外で出版済みの本や雑誌と同じです。ですから,書籍や雑誌と同じ基準を適用して考えるべきです。URLは,それが指す文書中に個人情報や企業の利害に関する情報が含まれていたとしても,不開示にする必要がありません。そもそも,本や雑誌を特定する情報もURLも,それだけでは法が定めた不開示情報に該当しないと考えるべきだというのが,私の意見です。
2. 電子メールアドレスの取扱について
電子メールのアドレスについて,本人が開示されることを望んでいない場合は開示するべきでない,というのが最近の判断の流れですが,本人自らがウェブページなどで公開している場合はその限りではないと考えています。
電子メールの場合は,住所とはかなり扱いが異なります。およそこの日本で普通に生活する場合,居住地で住民登録されますから,否応なしに住所が割り当てられます。したがって,平穏な生活のためには,住所をプライバシーに関する情報として保護する必要性が出てきます。一方,電子メールは,使わないという選択をしたところで,生活に支障はありません。さらに,一人が複数の電子メールアドレスを持って,自由に使い分けることが極めて容易にできます。メッセージに広告を追加するかわりに,無料で使える電子メールを発行している企業も多数あります。1つのアドレスは公表するが,他のアドレスは仲間しか知らない,ということも,望むままにできます。「アドレス」と呼んではいても,現実社会の住所とは性質を全く異にします。
ですから,所有者自らが,ウェブページなどで連絡先として公表している電子メールアドレスについて,行政文書中で特定した場合には,その部分を情報開示しても何ら差し支えないと考えられます。所有者が公開を予定しているメールアドレスを,行政の判断で「公開を予定していない」とすることは無意味ではないでしょうか。 |