当サイトからもリンクしているジャパンスケプティクスより講演以来があったので,(喜んで引き受けて^^)2003年4月12日に講演をしてきた。機会を与えてくださった安斎会長や平岡さん@杏林大学を始めとする,ジャパンスケプティクスの皆様に感謝いたします。
講演内容は,「健康に良いと言われている水」で,1時間(講演資料の公開はここから。pdfファイル)。資料の内容を話した後,掲示板でリクエストのあった「創世水」を取り上げて,具体的にどんな文句で宣伝をしているかを示した。そのあと,安斎育郎会長の司会で,平岡厚氏(杏林大学保健学部),小内亨氏(おない内科クリニック)と一緒にシンポジウムを行った。
講演に関する質問もまとめてシンポジウムのところで受け付けた。
シンポジウムの最初に,平岡氏が抗酸化作用があるとされている水に関する研究について発表した。電解還元水,日田天領水,活性水素君で作った水は,どれも,対照群のイオン交換水に比べれば活性酸素の寿命を短くしたが,スカベンジャーと比較すると活性酸素除去効果は劣るという結果だった。水の成分の分析結果をあわせて考えると,金属陽イオンの存在が活性酸素の寿命に影響を及ぼしている可能性がある。平岡氏の研究は,ジャパンスケプティクスから研究費の援助を受けており,今年度も引き続き行うとのことだった。平岡氏の研究で,活性酸素の寿命に影響しているのが何であるかがはっきりすれば,「活性水素」や「活性水素を含んだ金属クラスター」を持ち込まなくても現象の説明が可能になる。なお,白畑教授が報文中で引用しているScienceの論文に出てくるカゴ状構造をもった化合物は,確かにカゴの中に水素原子を閉じこめることができるが,閉じこめられた状態で水素原子が活性酸素消去能力を持つことはおそらくないだろうということであった。
小内医師の話はなかなか参考になった。「水が危ないという話があるが,リスクの大きさを考える必要がある。今の日本の水道水を考えた場合,水を良くすることで回避できるリスクはたばこの煙を吸うだけで帳消しになるんじゃないか」「慢性病に水が効くというが,慢性病は良くなったり悪くなったりを繰り返すので,悪くなったときに水を飲み始めれば必ず効く(会場笑)」といった具合だった。
質問では,浄水器を売りに来たときの電気分解のデモで,水道水は汚くなるが浄水器の水はきれいだというのがあるがあれはどうなっているのかとか,湯船の湯をきれいにする濾過装置を入れて1年湯をそのまま換えずに使っているが長期間使えるものなのかといった質問が出た。湯船用濾過器についてはよく知らなかったが,浄水器販売時の電気分解は有名な話である。なので,わざと溶ける電極を使うのがポイントだとか,業者によっては電極が反対側にもう1組ある装置を使っていて浄水器の水の電解では溶けない金属を入れてデモすることがある,といった説明をした。
どんな水を飲むと健康で長生きできるのかという質問もあったが,いい水の定義は実は難しい(悪い水であれば,毒物が入っているとか感染症を起こすとか,悪い理由がはっきりしているが,健康にいい水かどうかは疫学調査でもしないとわからない)ので,最低限害にならないものであれば,水は水分子としてしか働かないので・・・という歯切れの悪い回答をすることになった。
講演中で,マイナスイオンとトルマリンの話をして,トルマリンによる水処理の間違った話が「固体物理」に出たため,一般企業と消費者に誤解を振りまいているということをしゃべったら,会場に,「固体物理」の発行会社であるアグネ技術センターの代表取締役の青木氏が来ていて,名刺交換することになった。何でも,「固体物理」については編集委員会が内容を全部決めていて,取締役はまったく関与していないということだった。
小内医師とは,何回かメールをやりとりして,電解還元水の臨床試験の読み方を教わったりもしていたのだが,今回初めて,思いがけずお会いすることができた。既にジャパンスケプティクスの会員だということだった。群馬で開業していて,土曜日も診療日なのでなかなか出てこれないが,今回はシンポジウムで話をするということで,東京までやって来られたとのことだった。
水の結晶写真を使った道徳の授業が行われているということについて,池内了氏からコメントがあった。子供に科学的間違いを教え込むという問題点だけでなく,少し大きくなって教師にだまされていたことがわかったときに子供に不信感を植え付けるという問題もあるという指摘であった。
懇親会では,(噂の)安斎会長の手品を見せていただいた。手品用の黄色いハンカチが目の前で別のハンカチの中に見事に消えるというのを間近で見た。手品のセットは百貨店で売ってるが,できるようになるまでには訓練が必要とのことだ。そういえば,昔知り合った手品研究会の人が,練習では一人で鏡に向かってやってるので端から見ていると単なるアブナイ人に見えると笑っていたのを思い出した。
「ムー」に出ていた(笑),といって,水評価法の記事のコピーを出してこられた方もいた。いやまあ掲載誌が「ムー」だから,波動測定の亜流という,実に期待を裏切らない内容ではあった。波動測定と変わらない話ですよとコメントしたのだが・・・。
ともかく,いろんな方々にお会いすることができて,楽しい一日だった。