ここ数日、掲示板の書き込みに関するルールやポリシーに関する議論が出てきたので、管理者なりのガイドラインについて説明しておく。なお、判例は増えていくし、私が知っている判例も調べるに従って増えていくので、それをふまえて適宜改訂する。基本方針は、法に従った上で最大限何でも議論できる掲示板にする、ということである。
まず、私は、掲示板を設置して不特定多数の人が書き込んで情報公開できる状態にしているので、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成13年法律第137号、通称:プロバイダ責任制限法)」に拘束される。何か問題が起きた場合には、社団法人テレコムサービス協会が出している、「プロバイダ責任法 名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン」「プロバイダ責任法著作権関係ガイドライン」に記載されている判例などを参考にして判断する。当掲示板では、投稿者の個人情報の詳細は不要としているので、通常の方法では発信者情報を特定できない。私から行う発信者情報の開示は、投稿メッセージと一緒に表示される、発信を行ったコンピュータの名前あるいはIPアドレスと、投稿した日時だけである。要するに、掲示板を見ると出ている情報以上のものは出さない、そもそも持っていないからそれ以上の情報は出せない、ということである。従って、発信者情報の開示ができないことを前提として処理を行う。
当掲示板では、画像や音声ファイルの貼付はできないので、問題になるとしたら、文章であらわされた著作物の引用が適正かどうかという点に限られる。文章の引用が許されるのは、引用元や著作者が明記されていて、かつ、引用が従であることである。掲示板では一連の投稿によって全体の議論の流れが作られていくので、たまたまある人の投稿したあるメッセージのほとんどが引用のみであったからといって、直ちに著作権法に抵触するとは考えられない。あるスレッドのやりとり全体として、引用が従であるかどうかを見て判断すればよいのではないか。ことさらに他人の著作の引用でスレッドを埋め尽くし、結果として著作が丸ごと掲載されるような場合は著作権法に抵触するだろうが、引用がところどころ間に入り、それ以外は議論と情報交換が行われるのであれば、問題にならないと考えられる。ただし、この点について判例未確認である。当掲示板のガイドラインとしては、引用を行う場合は引用元と著作者を明示すること(ウェブサイトについてはURLを示すこと)、としたい。忘れた場合は、後でそのことを示す投稿をすればよい。クレームがあった場合は、著作権関係ガイドラインの手続に従って、著作権者であることから順に確認を行った上で、削除するかどうかを決める。なお、適正に引用しても、引用元がウェブページの場合は、どんどん元の情報が改訂されてしまうという、ウェブならではの特徴がある。引用時に適正であれば良い。
刑法の構成要件に該当するかどうかによって決まる。
(名誉毀損)
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
(公共の利害に同する場合の特例)
第二百三十条の二 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
3 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
(侮辱)
第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
客体は人の名誉で、自然人だけでなく法人も含む。また、人は特定されなければならない。名誉の毀損とは、社会的評価を害する恐れのある状態を発生させたことである。侮辱とは、他人の人格を蔑視する価値判断を表示することで、法人に対しても成立する。
当掲示板のガイドラインは、今のところ以下のように考えている。
参加者同士について、当方の掲示板では、参加者は基本的にハンドル名で参加しているので、ハンドル名から個人が特定できる場合は名誉毀損罪が成立しうるが、個人が特定できないハンドル名を使った参加者については、一体誰の名誉を毀損したり侮辱したりしたかが明らかでないから、名誉毀損罪も侮辱罪もそもそも成立しない。
特定企業について、当掲示板で事実を摘示して批判を行っても、第二百三十条の二に該当する場合は、刑事でも民事でも責任を問われない。企業が宣伝している内容について、それに反する事実を示して議論をしても、企業が広く行う宣伝活動は公共の利害に関すると判断されることがほとんどだから、第二百三十条の二が適用される。特に、科学的事実を摘示した場合は問題にならないだろう。企業のウェブページに書かれたり、新聞などの広告に書かれたりした宣伝内容については、企業が自ら公開した情報である。自分で公表した内容について批判は許さないという態度をとっても、それは裁判所でも通らないだろう。ただし、批判はあくまでも論評の範囲でないと、第二百三十一条でひっかかる可能性があるから、エキサイトしないで議論してほしい。
マルチ商法で既に有名な企業について、「マルチである」旨を指摘しても、当該企業の社会的評価を害する恐れがないから名誉毀損が問題になることはない。
これも、刑法を基準として判断する。
(信用毀損及び業務妨害)
第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(威力業務妨害)
第二百三十四条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
ちょっと批判されると、営業妨害だと文句を言う企業が後を絶たないが、業務妨害が成立する要件は明示されているので、だまされてはいけない。第二百三十三条の「信用」とは、人あるいは法人の経済的信用に限定される。従って、「嘘つき、詐欺師」と罵った場合は信用毀損ではなく侮辱罪の方が成立する。真実を告げた場合は信用毀損罪の構成要件には該当しない。
当掲示板のガイドラインとしては、企業の経済状態についての議論をするときは内容が真実であることを確認できるようにして行うこと、としたい。ウェブ上に批判の文章を書いただけでは、威力ではないし偽計でもない。気を付ける必要があるのは「虚偽の風説の流布」と判定されないようにすることだけである。
他人の私生活に関する情報については公開を原則として禁止する。ただし、メッセージの投稿者が本人の私生活をネタにして議論するのは自由である。他人によってみだりに個人の私生活を公開されない、というのがプライバシーの権利だからである。芸能人や政治家など、私生活がある程度マスコミを通して知られているような場合については、その限度で話題にしてもかまわない。
当掲示板で公開してもかまわない情報は、例えば次のようなものである。
当掲示板で公開してはいけない情報は、例えば次のようなものである。
要するに猥褻なのはだめ、ということだが、画像も音声も貼り付けられない掲示板なので、文章のみで猥褻物と認定されるとしたら、それはそれで別の意味で大したものだというか・・・。ウチで書かずにその手の出版社に持ち込んだ方いいというか・・・・。医学的議論の範囲にしてくれ、ということで、純然たるポルノが投稿されたら削除する。ac.jpドメインでやってるので。
以上については、私の判断基準を示した。実際にどんな場合に違法と判断されるかは、ケース事に訴訟をやってみるしか確定させる方法はない。だから、クレームが来た場合に、可能な限りここに書いたことを主張して、争うかどうするかを決めるということだと理解してほしい。
当掲示板のルールをまとめると以下のようになる。といっても、これまでのところ、問題になるようは投稿は無いんですけどね。
当掲示板にも、もっぱら宣伝を目的とする書き込みが時々あるが、スクリプトを用いた大量同時書き込み以外は削除対象としていない。これは以下の理由による。
これらをふまえて、当掲示板の、宣伝書き込みに対するポリシーは以下の通りである。