「事象の地平線」過去ログ倉庫
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2007/01/12
アテにならない情報の取り扱い……?
【修正】
2ちゃんねる閉鎖騒動。教材に使えるかもしれないのでちょいと貼っておく。
スレのトップは報道記事の引用で、
まず、ソースがそもそも2ちゃんねるだからw、こんな人物や住所が実在するかどうかすら不明、という前提から出発することになる。
すると、多少は信憑性が高いのは報道の文章の中身なのだが、それにしてもヘンな内容である。
新聞報道が大間違いなのかもしれないが、法律の運用として果たしてこんなことがあり得るのか?という部分で引っ掛かっている。
私も、名誉毀損訴訟の準備として、発信者情報開示の手続きを裁判所でやったことがある。根拠条文は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(通称:プロバイダ責任制限法)になる。これで争った場合、訴える側は、発信者情報を開示してもらうことが目的となる。ところで、プロバイダのログは膨大であり、一定期間で消去するという運用がほとんどと思われるが、訴訟には時間がかかる。何もせずに開示を求めて争った場合、「開示せよ」との判決を得たとしても、既にログが通常の運用のもとで削除された後だった、ということになりかねず、これでは争う意味自体が無くなってしまう。これを防ぐのが仮処分申請である。裁判所には次のような文書を提出した。提出先は報道と同じ、東京地裁である。
これが、判決まで出ていれば、制裁金が科されても問題はない(判決にそう書いてあればいい)。ただし、裁判所は高利貸しではないから、一日いくら支払え、というのが「開示する」という行動に対して出されることはないのではないか。遅延金のようなものを上乗せするとしたら、損害賠償の額と支払い期限が確定した場合に、支払いが遅れたら「法定利息」を上乗せせよという形でだろう。あるいは、分割払いするときは法定利息を……といったものになる。
私は、てっきり判決が出た後の話だと思ってスレを見ていたのだが、元記事を見て逆にびっくりした。プロバイダ責任制限法の立法主旨を無視するようなことを裁判所がやった、という内容に読めるからである。
2ちゃんねるの方はスレが立ちまくって、まあ完全に祭り状態だが、報道が正しいのだとすると、単なるネタあるいは釣りに見えて仕方がない。
関連条文。民事保全法。仮処分の手続きは、あくまでも本案の訴えを起こすことが前提であり、一定期間内に本訴を起こさないと保全自体が取り消される(確か三ヶ月以内だったと思うがうろ覚え)。
とにかく、開示請求→ひろゆき無視→名誉毀損等でひろゆきに損害賠償請求(提訴)→勝訴判決→ひろゆき賠償金払わず→強制執行、差し押さえ、とか、開示請求→ひろゆき無視→開示請求の本訴→勝訴、判決には遅延した場合に金払えと書いてある→それでもひろゆきが無視→強制執行、差し押さえ、のいずれかならまだ話はわかるが、報道の記事では何が何だか意味不明である。また、本案判決に基づく強制執行なら、仮処分でどうこうする余地は既に無いはずだが……。
【追記】
条文見つけた。
スレのトップは報道記事の引用で、
12日午前、仮差し押さえを申し立てたのは、西村氏に約500万円の債権を持つ東京都の会社員の男性(35)。男性は2Ch上で自身や家族の実名、住所を晒され、「人間の屑」「ネットストーカー」などと中傷されたため、昨年8月、西村氏を相手取り、東京地裁に書き込み者の情報開示を求める申し立てをした。で、これについて、当の2ちゃんねるでは、申し立てを行った人物として、
西村氏が出廷してこないまま同9月に開示を命じる仮処分が出たが、何ら対応が得られないため、間接強制で1日5万円ずつ制裁金を科すこととなった。それでも西村氏の法廷無視は続き、決定から100日を経て債権は500万円に膨れあがった。
東京都会社員と書かれている。ここから、本当のところがどうなっているかを(合法的に)確認するには何が必要か、ということが問題。
塩沢俊平(35)
文京区 東急ドエルアルス根津
東京都文京区根津2丁目
塩沢こと鶴田俊平は文京区根津在住。
まず、ソースがそもそも2ちゃんねるだからw、こんな人物や住所が実在するかどうかすら不明、という前提から出発することになる。
すると、多少は信憑性が高いのは報道の文章の中身なのだが、それにしてもヘンな内容である。
新聞報道が大間違いなのかもしれないが、法律の運用として果たしてこんなことがあり得るのか?という部分で引っ掛かっている。
私も、名誉毀損訴訟の準備として、発信者情報開示の手続きを裁判所でやったことがある。根拠条文は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(通称:プロバイダ責任制限法)になる。これで争った場合、訴える側は、発信者情報を開示してもらうことが目的となる。ところで、プロバイダのログは膨大であり、一定期間で消去するという運用がほとんどと思われるが、訴訟には時間がかかる。何もせずに開示を求めて争った場合、「開示せよ」との判決を得たとしても、既にログが通常の運用のもとで削除された後だった、ということになりかねず、これでは争う意味自体が無くなってしまう。これを防ぐのが仮処分申請である。裁判所には次のような文書を提出した。提出先は報道と同じ、東京地裁である。
発信者情報の消去を禁止する仮処分命令申立書といったものになる。発信者情報を開示すべきかどうかはあくまでも裁判(本訴)によって決めることであり、仮処分でできるのは保全だけである。そうである以上、「開示しろ」という内容の仮処分をもし裁判所が認めてしまったら、事実認定の上判決によって開示か不開示かを決めるべきところ、裁判に拠らずに結論を出したことになってしまう。しかも、報道のケースでは制裁金まで科していることになっている。発信者情報開示請求による仮処分申請で、「開示せよ」が仮処分の内容になることはあり得ないのではないか。本当に裁判所が報道通りの運用をしたのだとしたら、そっちの方が法治国家の裁判所としては実は大問題であろう。
平成○年○月○日
東京地方裁判所民事部 御中
当事者の表示 別紙当事者目録記載の通り
仮処分により保全すべき権利 発信者情報開示請求権
申立ての主旨
債務者は、別紙発信者情報目録記載の情報を消去してはならない。
申立ての理由
第一 当事者ら (以下略)
これが、判決まで出ていれば、制裁金が科されても問題はない(判決にそう書いてあればいい)。ただし、裁判所は高利貸しではないから、一日いくら支払え、というのが「開示する」という行動に対して出されることはないのではないか。遅延金のようなものを上乗せするとしたら、損害賠償の額と支払い期限が確定した場合に、支払いが遅れたら「法定利息」を上乗せせよという形でだろう。あるいは、分割払いするときは法定利息を……といったものになる。
私は、てっきり判決が出た後の話だと思ってスレを見ていたのだが、元記事を見て逆にびっくりした。プロバイダ責任制限法の立法主旨を無視するようなことを裁判所がやった、という内容に読めるからである。
2ちゃんねるの方はスレが立ちまくって、まあ完全に祭り状態だが、報道が正しいのだとすると、単なるネタあるいは釣りに見えて仕方がない。
関連条文。民事保全法。仮処分の手続きは、あくまでも本案の訴えを起こすことが前提であり、一定期間内に本訴を起こさないと保全自体が取り消される(確か三ヶ月以内だったと思うがうろ覚え)。
第二十三条 係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
(本案の訴えの不提起等による保全取消し)
第三十七条 保全命令を発した裁判所は、債務者の申立てにより、債権者に対し、相当と認める一定の期間内に、本案の訴えを提起するとともにその提起を証する書面を提出し、既に本案の訴えを提起しているときはその係属を証する書面を提出すべきことを命じなければならない。
2 前項の期間は、二週間以上でなければならない。
3 債権者が第一項の規定により定められた期間内に同項の書面を提出しなかったときは、裁判所は、債務者の申立てにより、保全命令を取り消さなければならない。
4 第一項の書面が提出された後に、同項の本案の訴えが取り下げられ、又は却下された場合には、その書面を提出しなかったものとみなす。
とにかく、開示請求→ひろゆき無視→名誉毀損等でひろゆきに損害賠償請求(提訴)→勝訴判決→ひろゆき賠償金払わず→強制執行、差し押さえ、とか、開示請求→ひろゆき無視→開示請求の本訴→勝訴、判決には遅延した場合に金払えと書いてある→それでもひろゆきが無視→強制執行、差し押さえ、のいずれかならまだ話はわかるが、報道の記事では何が何だか意味不明である。また、本案判決に基づく強制執行なら、仮処分でどうこうする余地は既に無いはずだが……。
【追記】
条文見つけた。
(間接強制)間接強制なら、支払いは債権者に支払いを命じることになるが……。いずれにしても強制執行するには判決が必要だから、ZAKZAKの記事が意味不明であることに変わりはない。
第172条 作為又は不作為を目的とする債務で前条第1項の強制執行ができないものについての強制執行は、執行裁判所が、債務者に対し、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間内に履行しないときは直ちに、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨を命ずる方法により行う。
《改正》平15法134
2 事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定による決定を変更することができる。
3 執行裁判所は、前2項の規定による決定をする場合には、申立ての相手方を審尋しなければならない。
4 第1項の規定により命じられた金銭の支払があつた場合において、債務不履行により生じた損害の額が支払額を超えるときは、債権者は、その超える額について損害賠償の請求をすることを妨げられない。
5 第1項の強制執行の申立て又は第2項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
6 前条第2項の規定は、第1項の執行裁判所について準用する
カテゴリー:ネット関係の事件など
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posted at 2007/01/13 00:45:18
lastupdate at 2007/01/15 17:46:12
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