「事象の地平線」過去ログ倉庫
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2008/03/17
信じぬ者は救われる
【修正】
「信じぬ者は救われる」を菊池さんから献本していただいたのでコメントをいくつか。
既にいろんなところで感想や書評が書かれているけど、この本は、ニセ科学を批判する本ではない。なぜニセ科学を信じるのかを考えるための本である。
「ニセ科学、スピリチュアル、悪徳商法がつながっている」という見出しが30ページにあって、菊池さんの発言が
私が、私のできる範囲でニセ科学を斬ってみせることは簡単なのだけど、それをそのまま受け入れてしまう人は、新たなニセ科学が出てきた時には多分また騙される。
パターンの違うものに騙されないようにするには、悪徳商法への対処と同じで、「なぜそれを信じたのか」まで一度立ち戻り、各人が「信じてしまった自分」と徹底的に向き合う以外に解決策はないのではないか。でも、多分、それはとても辛い作業になる。誰だって「自分の経験は正しい」と思いたいし(そうでなければ不安になってしまうし)、「自分が信じたものは良いものだった」と思いたい筈だから。この「思いたい」を否定する作業が必要なのだとすると、ただ単純に正しい科学的知識を伝えるだけでは、その言葉は決して届かないだろう。
弁護士の紀藤正樹は、人間が本来持っている力ではないものに頼る発想を「インスタント志向」と呼んだ。納豆で痩せようとか、水で健康になろうという悪徳商法系のニセ科学を信じることと、スピリチュアルに頼って癒しを得ようとすることは、両方ともこれに当てはまる。しかし、「インスタント志向」で有形無形を問わず商品を売り、売れれば勝ちという社会で暮らしていると、「インスタント志向」そのものの否定は極めて難しくなる。第一、科学(と技術)の側だって、人間が本来持っていない力をいかに理解して人間のものにしていくかという営みを行ってきた。「因果関係を見いだして信じる」ことが人間の基本仕様の1つであり、「インスタント志向」が今に至る文明の発展及び経済活動の基本なのだとすると、否定するのは多分無理で、この2つを間違って使わないように適切に制御するといった発想でないと対応できないのではないか。
元々人間は、信じたい気持ちやインスタント志向を持っていたのだけど、そのままでは実現しないから、後付けで科学(とそれを利用した技術)というものを獲得して、本来の「気持ち」にとっては回り道をして実現してきた。人間の持ち物ではないものを獲得したプロセスを忘れたり、油断して楽な方を選ぼうとすると、この「回り道」をついはしょりたくなってしまって騙されるということなのだろう。
「信じぬ者は救われる」というこの本のタイトルは、人間の基本仕様にストレートに言及しているものだと思う。明快な答えを期待しないで、一度読んでみてほしい。この問題について、今、明快な答えが提示されるとしたら、それは多分嘘だから。
既にいろんなところで感想や書評が書かれているけど、この本は、ニセ科学を批判する本ではない。なぜニセ科学を信じるのかを考えるための本である。
「ニセ科学、スピリチュアル、悪徳商法がつながっている」という見出しが30ページにあって、菊池さんの発言が
僕も、「どれがウソでどれが本当かもっと教えてほしい」と言われるんです。だけど、それを言ったって、言われたものについてああウソなんだとか、本当なんだって思うだけじゃないかという、そんな無力感があります。結論だけあればいい。これは、私も同じ事を感じてきた。水商売ウォッチングの方で実例を取り上げていて、それなりにパターン別になっているから、考える手掛かりになるはずなんだけど「ウォッチングで取り上げていない○○は信用していいのか」という質問がやってくる。その○○の宣伝を見に行くと、ウォッチングで取り上げている別の製品の宣伝文句と似通ったものが一杯出ていたりする。公開している議論を通して知ってもらいたいことは、議論の仕方や目の付け所であり、私は一つの例を示しただけだと思っていたのに、「正解が書いてあるはず」という誤解が後を絶たない。どうすれば、考え方が大事なのだということを伝えられるのか、いつも悩んでいる。
私が、私のできる範囲でニセ科学を斬ってみせることは簡単なのだけど、それをそのまま受け入れてしまう人は、新たなニセ科学が出てきた時には多分また騙される。
パターンの違うものに騙されないようにするには、悪徳商法への対処と同じで、「なぜそれを信じたのか」まで一度立ち戻り、各人が「信じてしまった自分」と徹底的に向き合う以外に解決策はないのではないか。でも、多分、それはとても辛い作業になる。誰だって「自分の経験は正しい」と思いたいし(そうでなければ不安になってしまうし)、「自分が信じたものは良いものだった」と思いたい筈だから。この「思いたい」を否定する作業が必要なのだとすると、ただ単純に正しい科学的知識を伝えるだけでは、その言葉は決して届かないだろう。
弁護士の紀藤正樹は、人間が本来持っている力ではないものに頼る発想を「インスタント志向」と呼んだ。納豆で痩せようとか、水で健康になろうという悪徳商法系のニセ科学を信じることと、スピリチュアルに頼って癒しを得ようとすることは、両方ともこれに当てはまる。しかし、「インスタント志向」で有形無形を問わず商品を売り、売れれば勝ちという社会で暮らしていると、「インスタント志向」そのものの否定は極めて難しくなる。第一、科学(と技術)の側だって、人間が本来持っていない力をいかに理解して人間のものにしていくかという営みを行ってきた。「因果関係を見いだして信じる」ことが人間の基本仕様の1つであり、「インスタント志向」が今に至る文明の発展及び経済活動の基本なのだとすると、否定するのは多分無理で、この2つを間違って使わないように適切に制御するといった発想でないと対応できないのではないか。
元々人間は、信じたい気持ちやインスタント志向を持っていたのだけど、そのままでは実現しないから、後付けで科学(とそれを利用した技術)というものを獲得して、本来の「気持ち」にとっては回り道をして実現してきた。人間の持ち物ではないものを獲得したプロセスを忘れたり、油断して楽な方を選ぼうとすると、この「回り道」をついはしょりたくなってしまって騙されるということなのだろう。
「信じぬ者は救われる」というこの本のタイトルは、人間の基本仕様にストレートに言及しているものだと思う。明快な答えを期待しないで、一度読んでみてほしい。この問題について、今、明快な答えが提示されるとしたら、それは多分嘘だから。
カテゴリー:献本御礼
タグ:
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posted at 2008/03/17 22:28:23
lastupdate at 2008/03/26 18:43:15
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