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博士課程(前期・後期)進学希望者へ

指導方針

 大学院進学者は、自発的に研究に関する情報を集めたり、研究に関連した勉強を進めるものだ、というのが前提条件である。従って、いちいち手取り足取りするような指導はしない。

 博士前期課程についてはある意味「努力賞」なので、指示したテーマと実験手法を、そこそこ大学に出てきて実行すれば、新しいデータが得られて学会発表2回分ぐらいになって、最終的に論文1報まとめられそうな程度の成果になるように誘導する。

 博士後期課程については、自分で方針を決めて進めるのが大前提なので、研究内容の穴を潰すためのツッコミを入れるのが指導教員の主な役割である。指導教員を教育して博士号をとるものだ、ぐらいに考えておけばよい(指導教員のツッコミを説得できないようでは、学位審査のディフェンスなど不可能だろう)。審査のディフェンスの予行演習だとおもって議論してくれれば良い。

理学部でも多分厳しい研究室……のはず

 多分、私のところは理学部でも厳しい研究室に分類されるはずである。

 化学専攻の合成系の研究室だとコアタイムが設定されていたり、規則正しく研究室に出てこないと先輩や指導教員から生活指導が入ったりすることが多いが、私のところはそういうのはほとんどない。ゼミの時間にきちんといること、実験を一緒にやることが予定されている時にきちんとくること(装置の扱い方を習得する場合なので回数は多くない)ぐらいで、普段の生活指導はほとんどない。これが何を意味するかというと、自己管理できない人はそうでない人とどんどん差がついていき、博士前期課程の半ばを過ぎる頃になると、自己管理して自発的に研究に取り組んだ人との差は埋めようがなくなり、博士前期課程を修了する頃には完全に「詰む」状態になる。めちゃくちゃ不規則な時間にしか研究室に来ない、来ても大して滞在しない、最低限の実験とゼミだけはこなしている、という状態でも私からの説教や注意はほぼない。だからといって安心していると、気づいた時にはどうにもならなくなるのである。説教されなくて居心地が良い、などと思っていると後で確実に未来が無くなる。

 なぜ、こまごまと注意したり説教したりしないかというと、むしろ何もしない方が大学院生自身の自己管理能力があらわになり、ドロップアウトさせるべきかどうかの判定が容易になるからである。大学院生なのだから自発的にやるのが当たり前なので、対応がぬるいからここぞとばかりに手抜きしたいだけ手抜きする人に手間をかけるのは無駄なのである。

 

 

博士後期課程への進学の準備

 弊学の博士後期課程の試験は、博士前期課程の研究内容と博士後期課程の研究計画のプレゼンを行い、30分の質疑応答を経て合否を判定する。博士前期課程の研究内容のプレゼンはまあ何とかなっても、研究計画書の内容を自分で考えられないと質疑応答に耐えられない。

 博士後期課程への進学の準備は、博士前期課程に入った時から始まっている。1回目の試験の出願は2年生の7月の初旬なので、それまでの1年数ヶ月の間、博士前期課程の研究テーマについて常に考え、論文や資料を集め続け、自分なりに研究分野の状況を把握し、折を見て指導教員やその他の教員ともディスカッションし、学会や研究会に行って同じ分野や隣接分野で何が問題になっているかを知り……ということを続ける必要がある。研究対象について継続的に興味を持ち続け考え続け教員がやっていることも横目で見ながら、自分ならこうする、自分はこれが知りたい、教員よりも自分の方がうまくやれる、と思ったら、博士後期課程を受験してもまあなんとかなる。

 博士後期課程への進学を考えていなくても、熱心な博士前期課程の大学院生であれば、上に書いたような取り組みは自然に日常行っているものである。そういう大学院生にとっては、進路を決めるときになって、やっぱり博士後期課程を受験しよう、と思ったとしても、何も慌てる必要はないし特別なことをする必要もない。普段やってきた研究への取り組みから、自分が何に興味があるのか、テーマとして何をするべきか、その研究は実現可能なのか、といったことが自ずと定まってきているはずだからである。普段の研究活動から出て来た自分の興味を研究計画にまとめて出せば、試験当日にいろいろと突っ込まれても大体答えられるはずである。

 逆に、生活指導がぬるいからと、余っている(ように見える)時間を研究に充てず、自分から積極的に研究テーマについて調べることもせず、学会や研究会などに情報を取りに行くこともせずに過ごしていて、博士後期課程に進学しようと思っても、博士前期課程のプレゼンが不十分な上に研究計画書を書くことが不可能だし、書いたところで不十分過ぎて質疑応答に耐えられない。従ってほぼ確実に不合格になる。

 

博士前期で得られる教育には大差がある

 そんなわけで、私のところで大学院生をすると、得られる教育には大差が生じる。

 ずっと研究テーマに興味をもって継続的に調べ続け徐々に理解を深めていくような人には、私も継続的に支援し論文や資料を紹介したり取りよせたりする手伝いをしディスカッションもするので、いくらでも勉強できるし、理解を深めていくことができる。研究に対する考え方やテーマの見つけ方などもその中でわかってくる。まあ、テーマには相性もあるので、合わないと分かった段階で相談してくれれば、その後に向けてより合うものを探すにはどうするか、といった手伝いも可能な範囲ではできる。

 生活指導がぬるいことに乗じてゼミと修論の研究で必要な最低限の実験しかしないと、研究テーマに対する理解が深まることもなく、研究の進め方を習得する機会も無くなる。そういう人は、研究発表させれば即座に理解していないことがバレるので、進学が不可能なだけでなく、就職でも不利になる可能性がある。規則正しく研究室に来ない習慣を2年かけて培ってしまうわけで、その後企業に就職して勤務時間を守れなければ、クビにならないまでも風当たりの強さは相当なものではないだろうか。

 要するに、自己管理能力が高く、根気強くテーマについて考え、情報収集とディスカッションを継続的にするような人が私のところに来ればハッピーになれる。自己管理能力が低く根気強くテーマや研究について考えることをせず細かい説教をされない快適さに浸るような人はその後の将来が詰むので、そもそも私のところに来てはいけない。そういう人は、もっと生活指導が厳しい研究室を選んでおけば、それなりのレベルを維持できるだろう。