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第8回
- プリント3枚目の1.2冒頭で切れているところは本来何と書いてあったのですか。
→ΔGを、物質の相対的な「安定さ・不安定さ」を表す量として使う。
- わかりやすかったです。ギブスエネルギー=エンタルピー ー エントロピー×温度、ということですか?ΔfGのfって何ですか。
→その関係式で合ってます。fはformation energyのf。
- ”乱雑さ”とはどういうことですか?分子が並んでいないことですか?
→並んでいないことも含まれるが、もう少し正確にいうと、取り得る状態の数。
- ”エントロピー”と”エンタルピー”を間違ってしまいそうです。どうしてこんなに紛らわしいのですか?
→さあ……。ただ、慣れれば全く別物と認識できるようになります。エンタルピーの方が直感的には分かりやすくて、総発熱量、と理解すればいい。
- 活性酸素が体に悪いとかも言いますがあれも嘘ですか?
→その文脈では嘘ですよね。たいていはその後に「活性酸素を消去する○○」を売りつけるための宣伝がくっついているわけで。感染症の時に外からきた病原体を殺すのに活性酸素を作って使ってます。必要なくなったら分解して無くすのですが。本当に「活性酸素を消去する○○」が有効だったら、うっかり感染症の時に飲むと一気に悪化しそう。
- H2(g) + (1/2)O2(g) → H2O(l) ΔH = -285.83kJ ですが、H2O(l)→H2(g) + (1/2)O2(g) ΔH = -285.83kJとなるのでしょうか。
→それで合ってます。
- 粒子の集合状態変化により使える熱量が減る、とのことえすが、それなら燃焼でエネルギーを得る場合液体の石油より気体の天然ガスを用いた方が効率が良い、ということでしょうか?
→効率として比較できるのは、同じ物質を燃やした場合です。石油の組成と天然ガスの組成は違うので、単位物質量あたり得られる熱量も違いますので、直接比較はできません。液体の石油を燃やす場合と、その石油を気体にしたものを燃やす場合の比較なら、気体を燃やした方が使えるエネルギーは大きくなります。
- エントロピーは乱雑さの尺度とありましたが、エントロピーに最大や最小がありますか。
→ネルンスト・プランクの仮説というのがあって、ほとんどの(現実に存在する)物質についてSの下限は物質によらず0である。実験してみたらなぜかこうなっている、というもの。上限に制限はない。 【ここから先の話は学部専門レベル、興味のある人だけどうぞ】 実は熱力学を化学の学生に教えているのだが、実はかなり難しい。大多数の教科書がやっている方法では全体像がつかめないのが、熱力学の厄介なところである。熱力学の第○法則、というのをきいたことがある人は数多いと思うが、第○法則というのは重要だけども熱力学の一部に過ぎず、この法則から熱力学が組み上がるわけではない。少し長くなるが、熱力学を組み上げるために必要な要請を列挙しておく。 [平衡状態への移行]系を孤立させて(静的な外場だけはあってもよい)十分長い時間放置すれば、どんなマクロ変数も時間変化しない特別な状態へと移行する。この時の系の状態を平衡状態(equilibrium state)という。 [部分系の平衡状態]もしもある部分系の状態が、その部分系をそのまま孤立させたときの平衡状態とマクロに見て同じ状態にあれば、その部分系の状態も平衡状態と呼ぶ。平衡状態にある部分系の平衡状態はどれも平衡状態にある。 この2つと、(単純系とは内部が均一で偏りがない系のことだと思ってもらって) [エントロピーの存在]任意の系の様々な平衡状態のそれぞれについて、実数値が一意的に定まるエントロピー(entropy)という量Sが存在する。 [単純系のエントロピー]単純系のSは、エネルギーUを含むいくつかの相加変数の組U, X1, ..., Xtの関数である:  これをエントロピー表示の基本関係式と呼び、U, X1, ..., Xtをエントロピーの自然な変数と呼ぶ。単純系の部分系は元の単純系と同じ基本関係式を持つ。 [基本関係式の解析的性質]基本関係式は、連続的微分可能であり、特にUについての偏微分係数は、正で(Uが物理的に許される範囲のすべての値をとりうるならば)下限は0で上限はない。 [均一な平衡状態]平衡状態にある系の中の任意の球状の部分系に着目したとき、その部分系の状態が空間的に均一であれば、その状態は、その部分系のエントロピーの自然な変数の値と一対一に対応する。 [エントロピー最大の原理]単純系の基本関係式をとするとき、これらの単純系の複合系は、与えられた条件の下で、すべての単純系が平衡状態にあって、かつ  が最大になるときに、そしてその場合に限り、平衡状態にある。そのときの複合系のエントロピーはの最大値に等しい。つまり、与えられた条件下で局所平衡エントロピーを最大にする状態が平衡状態である。 直上のエントロピーに関する要請5つが熱力学の本当の基本で、これだけから熱力学関係式の他の全てが組み上がる(出典:清水明「熱力学の基礎」)。相加変数というのは、系を倍にすると値が倍になる変数のことで、代表的なものは内部エネルギーU、体積V、粒子数N、といったものである。熱力学はこれが全てである。馴染んでいるはずの熱力学の第○法則は影も形も無い。 個別の法則や熱力学の第○法則が順次出てきた後でエントロピーを定義する、といった古いスタイルの本を読んでも、全体の構造は全く見えない。歴史的にはそうやって法則が見つかったのだろうが、それを辿っても紆余曲折ばっかりである。私も学部の頃はそういう本を読んだが、結局熱力学の構造はわからなかった。教える側になって整理し直してやっと構造が見えた。力学なら運動方程式から出発すればいいし、電磁気学ならマックスウェルの方程式としてまとまっているし、量子力学ならシュレーディンガーの方程式から始めればいいのに、熱力学にはそういった簡単な基本方程式に相当するものが無い。基本になるものをまとめてみたら、この7つだったということである。S=S(U,V,N...)の具体的な形は物質ごとに決まっていて、(間接的な)測定で求めることができる(間接的、というのは、世の中に温度計や圧力計というものはあってもエントロピー計というものは存在しないからである)。求めたエントロピーが便利な関数の形に整理できなかったとしても、十分な測定点が数表の形で出ていれば、微分も積分も数値的にやればよく、熱力学量は計算できるので何ら問題はない。 ヘルムホルツの自由エネルギー、ギップズの自由エネルギー、エンタルピーは、S=S(U,V,N)をまずUについて解き、U=U(S, V, N)とした上で、S、Vについて順次ルジャンドル変換という計算をすることで求められる。 この方式で学部の熱力学を去年から教えている(物理化学I)。興味があるなら受講してください。他学部他学科の人の受講も歓迎します。【学部専門レベルの話終わり】
- 骨髄移植によって血液型が変わる際に凝集反応は起こらないのですか?また、血液型が変わると血液。骨髄とその他の細胞とで異なる血液型(の遺伝子)を有することになると思うが悪影響はないのですか?
→そこまで詳しい話は私は知らないので、医学部の専門の先生に訊いてみてください。その方がずっと正確で詳しい回答が得られるはずです。悪影響については、もしあったとしても、何もしないことによって死ぬ方がより重大なため、多少の悪影響なら省みずに治療法として選ぶのだろうと思いますが……これも、医学部の先生に訊く方がより確かな答えを得られると思います。
- 物理化学の授業で、エンタルピー、エントロピー、ギブスエネルギーについて習ったのですが、理解できていなかったです。でも、今回の授業で何となくピンときたので良かったです。
- 水について興味がわいた。
- 記憶って時間をさかのぼれるから4次元な気がするのですけどどうなのでしょうか。
→各瞬間での記憶が3次元ならそうなりそう。
- 血液型で人を判断するのは、やっぱり間違っていますよね。前回の授業で聞いてから考えていたんですが、私たちはそーゆーものに操作されている気がします。いいな、と思う人ができても、私は☆型であの人は△型、相性がよくないからあきらめようとあきらめていった人がこの世の中に何人いることか。まあ、運命の出会いというものがあれば、そうなってもいつかはくっつくのかもしれませんが。私は運命の出会いを信じません。先生は信じますか?
→運命の、のニュアンスがわからないが、人と人の出会いは偶然の要素も大きいと思う。
- POINT!エネルギーが高いほど不安定であり放出しようとする。もっと身近な酸化・還元反応を知りどのように役立っているのか知りたいです。
- エントロピーやギブスエネルギーは最近他の講義でも聞くのですが、やはりはっきりとしたものではないので分かりづらいと感じました。
- 高校では習わないような範囲の水の電気分解などの話がきけてよかった。
- 水はあくまでも水であり貴賤はないことが分かった。
- 水で体に良いと聞き家族みんながそれを信じて飲んでいたけれども、よく考えてみれば効果がはたしてあるのかどうかもっと疑ってみなければと思いました。
- 今日の内容はついて行けなかった節があるので、高校の勉強も含めて復習を強化しようと思います。
- どんな質問でも毎回きっちりと答えてくださるので意欲がわきます。ありがとうございます。
- いつも質問に答えてくれてありがとうございます。
- 建国食品とかに気をつけようと思いました。酸化・還元にはだまされません。
- 今日もとっても楽しかったです。
- 要 潤
→? これ以外に、判読できないコメントが1件あった。
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