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人間この信じやすきもの・・・・・・迷信・誤信はどうして生まれるか

SNコメント

 

著者Thomas Gilovich は,コーネル大学心理学科準教授で,専門は実験社会心理学・認知心理学。

 本書は,1991年発行のHow We Know What Isn't So: The Fallibility of Human Reason in Everyday Life「人はなぜ間違った信念をもってしまうのか・・・・・・日常生活における人間の推論の欠陥」の全訳。教養ある知的な人でもしばしば事実を誤ってとらえがちであることを,豊富な事例によって示し,その原因を認知的・社会的・動機的な要因に分けて解明している。

 まず,認知的要因であるが,バスケットボールの「波に乗る」という現象(ショットが入り出すと続けて入る)などを例にとって,ランダムな現象に規則性を見いだしてしまう偏りの錯誤を説明し,あるジンクスを例にとって統計的回帰現象の過小評価を指摘し,「何もないところに何かを見る」傾向を論じる。そして,信念と合致する情報を過大評価してしまい,自らの仮説に合致する情報だけを探そうとして,あるいはもともと判断するのに十分なデータが欠けているのにそれに気付かず「わずかな情報からすべてを決めてしまう」傾向を紹介する。そして,思い込み(先入観)によって「あいまいなデータを自分に都合良く解釈してしまう」こと,自分に都合の良い情報が記憶されやすいことを論じている。

 社会的・動機的要因は,自分の好む結論と嫌う結論には別々の評価基準を用いがちであること,人づての情報が誇張・省略・面白さのための脚色・歪曲・誤りが含まれること,自分の信念が健全な討論や批判によって正しく修正される機会はあまりないこと,である。

 そして,本書の後半では,非医学的健康法,人づきあいの方法,超能力の3つについて,人がどのように誤信に陥っているかを詳細に論じている。超能力に関する箇所では,超心理学の研究成果に詳しく触れているし,偶然の一致がいかに多く起きるかを具体例で説明しており,参考になる。

 なお,人々が誤った考えをもってしまうのは正しい事実に出会っていないからではなく誤信は経験を積んだ専門家にも広まっていること,だまされやすい人や頭の悪い人が誤信に陥るのではなくむしろ反対であること,という冒頭で述べられている主張には考えさせられる。また,章の冒頭に引用される数々の警句も印象的である。たとえば,

「真実のもつ難点は,それがたいてい不快でしばしば面白くないことである。人の心はもっと楽しくて心和むことを求める。    H・L・メンケン」

 ところで,志水一夫の「トンデモ超常学入門」(⇒P.15参照)のトンデモ超常ブック・ガイドによると,「心霊手術に関しては,スタンリー・クリップナー&アルベルト・ヴィロルド著『マジカル・ヒーラー』(工作舎,1988)も必ず参照のこと。」とある。たぶん本書の記述に不備もしくは一面的な部分があるからだろうが,残念ながら私は未読である。