パーソナルツール
現在位置: 科学とニセ科学 / JapanSkeptics / 超常文献リスト / ノンフィクション個別データ / ニッケル博士の心霊現象謎解き講座
ナビゲーション
 

ニッケル博士の心霊現象謎解き講座

SNコメント

 

 著者Joe Nickellは,ライター,マジシャン,私立探偵などの経歴をもつCSICOPの理事。講演やテレビ出演も多く,Ph.D.を取得した母校のケンタッキー大学で英語の講師をしている。

 本書は,Entities: Angels, Spirits, Demons and Other Alien Beings「存在──天使,聖霊,悪魔,その他の異界の者たち」の邦訳で,霊媒,心霊写真,幽霊,ポルターガイスト,悪魔つき,ドラキュラ,ゾンビ,天使,妖精,聖母マリアの出現まで,不思議な「存在」の正体を徹底調査し,真相を明かしたもの。ただ,本書は抄訳で,原書にあるUFO,ネッシー,雪男などの章が省略されているのが残念である。

 よくトリックが暴かれたことのない真の霊媒として紹介されるダニエル・ダングラス・ヒューム(ホーム)については,観客の中にインチキを目撃した人物もいることを紹介し,次のように批判している。

あるときなどは,ロンドンの屋敷の窓からふわふわと出て,隣の部屋の窓から入ってきたという。部屋は暗かったのだが,降霊会の参加者たちは月明かりで彼が浮いているのが見えたと主張した。ところが,1868年の暦を確かめるとその晩は新月で,歴史学者トレバー・ホールの言葉を借りれば,「部屋が少しでも明るかったと考えるのは無理がある」のである。

さらに,その場にいた証人たちの見たものがおかしい。実際にヒュームが外へ浮かび出るのを「見た」人はいなかった。彼らはヒュームの窓から出たという言葉を鵜呑みにしていたのである。そしてヒュームが隣の部屋へ入ったように思った。一部の研究者たちは,ヒュームは最初の部屋の窓を大きな音を立てて開けた後,闇にまぎれて隣の部屋へそっと移動し,そこでも窓を開けて,空中を歩いて部屋を移動したように見せかけたと考えている。………(中略)………ヒュームは観客たちに席を立たないようにときつく言い渡していた。「何があっても,席を離れてはいけない」と彼は主張した。観客が動き回って不都合があるとしたら,仕掛けが暴かれるのを心配していたからだとしか考えられない。