まともな研究者の対応の例

 名古屋大学の川瀬研究室のページより。「最近出回っている「テラヘルツ鉱石などの健康グッズ」に関して

科学的根拠の希薄な様々なテラヘルツ健康グッズを販売している会社が 近年多数見受けられます。ひどい会社になると、勝手に『名古屋大学川 瀬教授が発明したテラヘルツ波動に基づき、水晶を高温で焼き上げたテ ラヘルツ波を発生する鉱石が癌や脳梗塞を治す』などとして高価な値段 でネックレスなどをご病気の高齢者相手に私の写真などを見せながら 販売していると一般の方から苦情を頂きました。

これらのことは非常に腹立たしく、我々と何の関係もないばかりか、科 学的な根拠が希薄な詐欺紛いの商法です。 私は20年以上、テラヘルツ 波の生体への影響を研究してきましたが、もしもそれらの会社のうたう 効能に(学会が認めるような)科学的根拠が見つかったら、それだけで ノーベル賞ものですが、まだ世界の誰もそのような確たる根拠を発見し ていません。

過去において、同様に科学的根拠の希薄な遠赤外線グッズで長年儲けた 輩がテラヘルツと名前を変えて二匹目のドジョウを狙っているようで、 テラヘルツ波を研究する者としては実に嘆かわしいことです。 さらに 最近では、一部の業者が研究会を名乗って「本物のテラヘルツジュエリー を認証します」などと活動してますが、本物も贋物も普通のセラミクス も岩石も、かつての遠赤外線グッズも、放射原理は常温の黒体輻射にす ぎず、黒体輻射を浴びたら難病が治る、などという話は私の知る限りの 学会では全く認められていません。

これまでは怪しいテラヘルツ商法も苦々しく思いつつも看過してきましたが、 私の名前を使って売っている、という苦情が寄せられた以上、ここに反論 させて頂くに至りました。 今後、もし私の名前を使って売るような会社を 見かけましたら、何卒ご一報下さい。

 まともな研究者であれば、根拠のあやふやな健康グッズの販売に名前が使われることを避けるのは当然ですし、通報があれば、関係ないことを明らかにするのも当然です。この川瀬研究室の反論掲載はもっともなことです。できれば、名前が使われる前に、アレはインチキだと表明していただきたかったところですが……。
 なお、企業が大学と共同研究する時は大学に対して守秘義務を課すのが普通で、一緒に研究した大学側の研究者を宣伝に登場させるようなことはしません。「我が社のすばらしい技術」を前面に出して宣伝するならともかく、大学の先生に手柄譲ってる時点で会社としてはいろいろとダメでしょう。この手の健康グッズが疑わしいかどうかの判断基準の一つとして「大学の先生の名前が使われていると信用ならない」といっても、そう間違いではありません。

業務連絡

ploneに脆弱性が見つかったので、パッチが出て対応できるまでの間、メインのウェブサイトを停止します。ploneではない掲示板や通常のコンテンツにはアクセス可能です。11日にはパッチが出るということなので、説明読んで適用して……今週水曜日くらいには復活の予定。

パッチ配付が1週間ほど遅れることになったから、サイト復活も週明けになることにorz。

ドメイン限定検索を普及させよう

ラジオ出演「疑似科学を科学する」」を読んで。

となるとどうすればいいのか――ということが問われましたが、とりあえず我々にできることは、信頼できる情報の絶対量を増やしていくことかなと思います。たとえば以前に書いた通り、最近「酵素」というキーワードを含んだよくわからない健康法が流行っており、これは疑似科学の要素を多分に含んだものです。しかし「酵素」という言葉で検索しても、まともに生化学的な意味での酵素について解説したページは、上位30位までに2~3件に過ぎません。要するに、業者の発信する情報に、正確な知識が押し流されてしまっている状態です。

 これは以前から指摘していることです。ニセ科学で商売をしている人達は、情報を吟味する気も自分のところでまともな消費開発をする気も(おそらくは能力も)無く、同業他社の宣伝文句をコピペしてきて多少編集して自社製品の宣伝に使っているようです。ですから、数は多いがヴァリエーションに乏しい間違った情報が出回るという結果になります。
 サーチエンジンの検索結果に正しい情報が登場する割合を増やす努力は大事ですが、それと同時に「ドメイン限定検索」を普及させることで、情報がおかしいと気づくきっかけも増やせるのではないかと思います。
 「酵素」を検索するのなら、.ac.jpや.go.jpドメイン限定で検索した時と、そうでない時の検索結果を比べるのです。限定なし検索で謳われている内容が、ドメイン限定検索で出てこないなら、それは宣伝用に歪められた科学とは関係のない言説ということになります。
 もちろん、教育機関でもおかしな言説を信じて情報発信してしまう人がゼロではありませんから、ドメインを限定してもニセ科学言説を完全に遮断することはできません。しかし、出てくる言説の数の分布が大幅に違うということから、ある程度判断はつくはずです。