文献講読で英文翻訳サイトの使用を禁止した

 化学文献講読という卒研生向けの科目があって,論文や参考書などを主に英文で読むことになっている。今年はウチは英文の専門分野の教科書を,担当者を決めて読んでゼミをすることにしている。皆さん予習はしているのだが,説明をきいているとあまりにも意味不明で,その意味不明の原因が自動翻訳サイトの訳やウェブで引ける辞書にあることがわかったので,翻訳サイトの使用禁止を指示した。

 たとえば,数式の説明で,こんなフレーズがある。

where epsilon = +1 or -1 depending on whether A is even or odd in the combined power of the momenta

テキストの前後の文脈から,Aは物理量で,位置rと運動量pの関数であることが既に示されている。

 これを,ネットで使える翻訳サイトで日本語にしたらどうなるか。

まずは,ぐーぐる先生。

ここで、Aは運動量の総電力で偶数か奇数かによって、ε= + 1または-1になります。

マイクロソフト。

ここで、イプシロン = +1 または -1 は、瞬間の結合力で A が偶数か奇数かによって異なります。

Weblio。

1. エプシロン= +1またはAが均一であるか混合性のものがおかしいかどうか次第になっている-1が勢いの原動力となる所で、
2. エプシロン= +1またはAが均一であるか混合性のものがおかしいかどうかに従う-1が勢いの原動力となる所で、
3. エプシロン= +1またはAが均一であるか混合性のものがおかしいかどうかに依存している-1が勢いの原動力となる所で、
4. エプシロン= +1またはAが均一であるか混合性のものがおかしいかどうか次第になっている-1が勢いの原動力となる所で。

NAVER(Papago)

ここで,epsilon = +1 または -1 は,A が minute の累乗で偶数であるか奇数であるかによって異なります

Yonder

ここで、epsilon=+1または-1は、aがmomentaの結合力で偶数または奇数であるかどうかによって異なります

Freshly

どこで、イプシロン=+1あるいは-1、Aがそうかどうかに依存すること、あるいはmomentaの結合した力において奇妙。

 どれを見ても日本語として意味が全く通じないし数式の説明としても意味不明である。前後の文脈からmomentaは運動量で,Aは運動量の関数でもあることがわかっているので,「ここで,εが+1になるか-1になるかは,Aが,運動量のべき乗の組み合わせによって偶感数か奇関数のどちらになっているかによる」といった内容の英文なのだけど,自動翻訳の結果をどう見ても,この意味にはならない。

 時間をかけてネットを使って調べても,でたらめを教えられてしまったのでは,全く意味がない。専門分野ごとに用意されている有料の技術翻訳サービスを使えばもっとマシな結果になるのだろうけど,手軽に使えるものならまあこんなものなのだろう。便利なものはどんどん使えば良いと思っているし,学生をいじめる気は全くないのだけど,インチキな翻訳に振り回されて内容が余計にわからなくなるのでは逆に足を引っ張られるだけである。そんなわけで学生には,無料翻訳サイトの使用禁止を申し渡した。技術は進んでいくものだから,もう数年したらもっといい翻訳サイトになるかもしれないけど,今年中に,っていうのは無理だろうなあ。