超高濃度水素水サーバーリアルドラフトへのコメント【2014/11/04】
【注意】このページの内容は商品の説明ではありません。商品説明中に出てくる水の科学の話について、水・液体の研究者の立場から議論しているものです。製品説明は、議論の最後にある、販売会社のページを見てください。
まず、「高濃度水素水のちから」を見てみる。
ただ、人間の体は活性酸素と戦い、錆びを取り除く力「抗酸化酵素」が体内で作られているので10代、20代ではお水をはじくようなお肌や健康な体を維持できるのです。しかし、その抗酸化酵素は40歳をピークに減ってしまうため悪玉の活性酸素と戦う力が衰えて「老い」や「病気になりやすいからだ」に変化してしまいます。
とあるが、これは、商品宣伝にありがちな、典型的な間違った活性酸素悪玉説である。
活性酸素は過剰に生じれば体に害をなすことがあるが、その一方で、体に不可欠である。感染症の原因となる病原体が体の外からやってきたときに、病原体を殺すために活性水素を作っている。もし、活性水酸素を減らしてしまうような何かを飲むのであれば、体の免疫機能の低下をもたらすことになる。
さらに、活性酸素が本当に悪い影響を及ぼすのか、ということについても、再検討が始まっている。日経サイエンス2013年6月号には、「覆る活性酸素悪玉説」という特集記事が掲載された。遺伝子操作を行って体内の抗酸化酵素を減らしても寿命が変わらないという動物実験の結果が得られつつある。さらに、状況によっては抗酸化作用を持ったビタミンの摂取がヒトの寿命を縮めるという結果も得られている。水素水に本当に抗酸化作用があるとしても、それが体に良いということを意味しない可能性が出てきている。
「水素への取り組み」を見ると、
【あまった活性酸素がなくなると】
病気ではないようだが「怠い」「疲れがとれない」「イライラする」といった症状が緩和されます。
「活性酸素 生理機能」をキーワードにして、ac.jpドメイン限定で検索してみると、活性酸素がこのような症状をもたらすという話は全く出てこない。このことから、宣伝中の「活性酸素」は、科学や医学の用語としての活性酸素ではなく、宣伝用語としての活性酸素であることがわかる。
同じページに、水素分子の効果に関する原著論文リストなるものが掲載されているが、こういうものを原著論文リストとは言わない。なぜなら、著者名と発表年しかかかれておらず、そのままでは内容にたどり着くことができないからである。原著論文リストというのは、著者名、掲載雑誌名、雑誌の巻・号、出版年、掲載ページを並べたものである。
このリストなるものを見ると、ヒトで確認されたのはわずか2件のみ。最初のものは水素ガスを用いており、2番目のものは水溶液とガスの両方を用いている。ガスと水では水素摂取の条件は著しく異なるため、水素ガスの生理作用が確認されたからといって、水素水を飲めば良いということには全く結びつかない。
論文の完全な情報がわざとに隠されているため確認できないのだが、水素の生理作用の研究では、血中水素濃度の変化で、水素の量と効果の関係を測定しているはずである。大抵の物質の生理作用は、濃度が低すぎると効果が無く、ある程度濃度が上がってくると濃度と効果が大体比例し、それを過ぎると効果が飽和したり副作用が現れたりする。いくら水素水サーバを作って効果を期待しても、飲んだ後の血中水素濃度の変化が論文に書かれた条件の通りでない限り、効果は期待できないことになる。さらに、動物実験で効果のある条件と人に対して効果のある条件が同じである保証は全くない。
また、論文リストでは、虚血による脳組織の損傷や脳の病気に対して水素の効果があるという動物実験の結果が多数出ている。まず、動物実験の結果をそのまま人に適用することはできない。動物で効果がみられたのに人に使うと効果が思うように得られなかった薬剤などいくらでもある(だからこそ、最後は臨床試験をしないと薬剤として認められない)。
仮に、動物実験と同様の効果が将来人に認められたとしても、これらの結果は虚血など何らかの病気を抱えている場合における効果である。病気の治療に効く薬剤を健康な人が飲んでも意味がない。健康な人が水素を摂取しても、何も起きず全く意味がない可能性が高いのである。
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