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エムレット・エンジェル・ウォーターへのコメント(2011/06/18)

【注意】このページの内容は商品の説明ではありません。商品説明中に出てくる水の科学の話について、水・液体の研究者の立場から議論しているものです。製品説明は、議論の最後にある、販売会社のページを見てください。

 

 "エムレット・エンジェル・ウォーターという、分類としては「波動系」の水。

まず、このエントリー

より。

MRETとは、Molecular Resonance Effect Technology(分子共鳴効果技術)のことです。

だそうで、まあネーミングに突っ込んでも仕方ないのだけど、「分子共鳴効果」なるものがあると信じているのだなあ、ということくらいはわかる。

 

つまり、この水は一般の天然水や精製水とは違い、純粋なH2Oである水に特定の低周波数の健康電磁場を施して分子構造を安定化させ、人体が放射能などの影響に対応できるようにデザインされた、「ナノテクノロジー特許技術構造水」なのです。

 水の分子構造が変わっていたら、もはやそれは水ではないし、物性が大きく違うはずなので、水としての使用は不可能である。通常の水と同じに使えるがごとくに宣伝している時点で、水の構造が変わっていないことを意味している。

(1)私たちの免疫系を活性化してくれます。細胞の含水量を増加させることによって、私たちの身体全体に 刺激を与えてくれます。

 細胞の状態は、細胞自身によって、水分量も含めて調節されている。外から強制的に含水量を増やすことがもし可能ならば、それは細胞にとっては負担でしかない。

その次のエントリーには、
(1) あらゆる分子は特定の振動数を持つ電磁波を吸収する 性質を持っている。
(2) すべての生物学的作用において水は重要な役割を果たしている。
(3) 生体細胞はその機能を増強させる低周波振動と共振作用を生じる。

 とある。(1)と(2)は正しい。(1)については、分子固有の電磁波の吸収は普通にあって、赤外線、可視光、紫外線の吸収測定が広く行われている。(2)は言うまでもない。ところが、(3)になると怪しくなる。「低周波振動」といっても、何が振動するのかを曖昧にされている以上、何と何の共振なのかがまったくわからない。電気的なものなのか、力学的なものなのかもわからない。これでは何も言ってないのと同じである。

 後半の、エイズ患者への投与については、結果が書かれている論文が示されていない。臨床試験の結果を書いた論文がどれであるか特定されない限り、実験が行われたかどうかも、結果の評価がどう行われたのかも不明として扱えばよく、根拠のない話とみなしてもかまわない。

 

 説明のその他の部分も、突っ込みどころしかないのだけど、この時期一番まずいのは、「放射能などの影響に対応できるように」の部分だろう。

 

ここではっきり書いておく。水を飲んだことによって、人間の体が放射能の影響に対応できるように(普段以上に)なることはない。 今のところそのような実験結果は報告されていない。放射能の影響を避けるために、特別な処理をしたと称する水を使うことには何の意味もない。「免疫力を高める」といった表現から間接的に主張することも無意味である。なぜなら、「免疫力を高める」の内容が具体的ではない上に、そのことを示す結果も確立されていないからである。 エムレット・エンジェル・ウォーター を見に行く