訴状のお約束
訴状の書式についてまとめておく。訴状には、大体以下のような内容がこの順番で書かれているものである。
訴状
日付が必用→平成○年○月○日
○○地方裁判所民事部 御中←第何部に係属するかは、提出したときに裁判所が決めてくれる。事件番号は裁判所が振る。
原告 甲 野 一 郎(印)
原告の住所→〒***−**** 東京都○区○町1−1−1
電話 03−****−****
原告 甲 野 一 郎(印)
代理人弁護士が居るときは、その氏名と事務所がこの下に並ぶ。
被告の住所→〒***−**** 東京都□区□町2−2−2
電話 03−****−****
被告 乙 川 二 郎
損害賠償請求事件←事件名の付け方参照
訴訟物の価格 ○○○円←民事訴訟では、何でもすべて金額に換算するのが基本。
貼用印紙額 ○○円←国に納める訴訟費用。請求金額が多いとこの額も高くなる。
請求の趣旨←裁判所に認めてもらって、被告にやってほしいことを書く
被告は原告に対して金○○○円を支払え
訴訟費用は被告の負担とする
との判決を求める。
請求の原因←具体的に何があったのかを書く。
1 原告は某場所で***している
2 被告は原告に対して***なことをしたので損害が発生した。
3 そこで原告は被告に対し金○○○円の支払いを求める。
証拠方法ここに、主張を立証するための証拠がどんどん並ぶ。
1 甲1号証←原告が提出するものは、すべて甲何号証、と、通し番号を振る。被告が提出するのは乙何号証、になる。
被告がやらかしてくれたことに関する証拠
2 甲2号証
さらにそれを裏付ける証拠
見て分かる通りなんだが、誰が誰をどこの裁判所にいつ訴えるのか、というのが、まず最初に書かなければならないことである。基本は当事者本人が争うことになっているが、プロの手を借りたい場合は、弁護士に頼むことになる。すると、誰に頼んでいるかがわからないと裁判を進められないので、代理人弁護士の名前も一緒に書くことになる。
事件名の付け方は、見た感じ素っ気ないものになる。名誉毀損のように、損害や精神的苦痛まで全部金に換算して請求する場合は「損害賠償請求事件」。仕事したのに給料払わないのはけしからん、というような場合だと「賃金請求事件」、貸した金返せや、という場合は「貸金請求事件」となる。原告の気分としては、きっと「しみったれ雇い主の責任追及事件」とか「不心得者から慰謝料ふんだくりたい事件」などと言いたいに違いないのだが、訴状ではそういう細かい内容を事件名にはつけない。
訴訟物の価格は、金を請求するときはその金額になる。それ以外の場合は、模範六法などを見ると、巻末に手数料一覧が出ているのでそれに従ってきめる。訴訟物の価格が決まると、それに応じて裁判手数料が決まるので、手数料の金額の印紙を買って、訴状に貼り付けて提出する。日本の民事訴訟制度は、当事者本人同士で争うというのが基本形であるため、訴訟費用はあくまでも裁判所を利用するための費用となっている(弁護士に頼む費用は印紙額には含まれない)。
請求の趣旨、は、被告に最終的にやってもらいたいことを書く。この内容は得られる判決に対応している。損害賠償請求事件だと、判決は、たとえば「被告は原告に○○円支払え」(原告勝訴の場合)や「原告の請求を棄却する」(原告敗訴の場合)のように出ることになる。この部分は、裁判所が命令して実行できる(実行したことが客観的に確認できる)内容でなければならない。だから、たとえば「海より深く反省せよ」などというのは具体的にどうしていいかわからないからダメだが、「10万円払え」ならOKである。
請求の原因のところにつらつら並ぶのが、原告と被告の間のもめ事の内容ということになる。証拠を示しつつ、何があったのかを書いていく。原告と被告の関係とかいきさつとかのうち、裁判に必要な情報が全部ここに並ぶ。このへんをスマートに組み立てられるか、泥臭くなるかが、プロの弁護士を頼んだか本人ががんばったかの違いだったりする。
裁判官は、原告と被告の言い分をきちんときいて、法律に従って判断をすることになるので、裁判官に言い分が正しいということを納得してもらうための証拠を出さなければならない。その証拠が置かれるのが、証拠方法の部分である。実際には、書類などに甲1号証、甲2号証……、と通し番号を振って、それぞれが何であるかを簡単に説明する。証拠が多い場合は、証拠説明書という一覧表を別途添付する。一方、訴えられた側だって、そのまま黙っていたら負けるから、そんな事実は無いとか何とか、証拠を出していろいろ主張することになる。
どっちがどの証拠を出したか区別するために、原告は甲、被告は乙、を使うことに決まっている。
当ページでも、原告松井氏提出書類には甲何号証、被告中西氏提出書類には乙何号証、とタイトルをつけているが、これは、原告が甲で被告が乙であるという約束にのっとっているからである。