甲18号証の2
甲18号証の2(原告:松井氏提出書類)
本件訴訟は2007年3月に第一審判決が言い渡され、既に確定しています。このページは、ネット上の表現を巡る紛争の記録として、そのままの形で残しているものです。
htmlの性質上、元の印刷物とはフォントやレイアウトが違っているため折り返し位置が異なるが、できるだけ原文に忠実に再現した。この書証の0元はpdfファイルで、原文へのリンクは甲18の1に記載されている。
平成17年10月17日
「松井三郎氏と中西準子氏との間の訴訟について」
2004年12月の国際シンポジウム(名古屋)のリスクコミュニケーションのセッションにおきまして座長をつとめられた中西準子氏((独立行政法人産業技術総合研究所化学物質リスク管理研究センター所長)と、講演者をつとめられた松井三郎氏(京都大学地球環境学大学院教授)との間におきまして、名誉毀損に関する訴訟が発生しております。
原告側の松井氏からは本件が環境ホルモン問題にかかわりが深いこと、また環境ホルモン学会の研究発表会と国際シンポジウムがつながって開催されており当日のセッションの参加者に環境ホルモン学会員の参加者が多かったことから、名誉毀損にかかわる謝罪広告の場の1つとして、環境ホルモン学会ニュースレターに掲載してもらえないかという要望が出されました。
内分泌撹乱化学物質学会(環境ホルモン学会)は、本件が名誉毀損にあたるかどうかを判断する立場にはありません。また特定の方を応援する立場でもありません。ただ裁判により中西準子氏の謝罪広告の掲載という判決が出された場合や、或は、判決とは別に中西氏と松井氏が合意されてお二人から掲載の希望が示された場合は、ニュースレターのインフォメーションコーナーに掲載して良いのではないかと判断致しました。本コーナーは会員へのお知らせのページで従来より無料掲載しておりました。尚こうした掲載するかどうかは、お知らせする価値があるかどうかのケースバイケースでの判断である事をご承知下さいますようお願い致します。
インターネットの広がりによって、それが単なる情報の相方向的な流通だけにとどまらず、いろいろな議論、論争の場への広がりがみられ、そしてある場合には中傷なども含まれる時代になっています。これに対して学会がどのように向き合い、社会的、学問的責任をはたすべきかについては理事会メンバーの間でも多様な意見が存在します。例えば、学会に対する不当な意見にたいしては(もしそれがあれば)迅速に抗議すべきであり、それをしないということは、非を認めたこととなるであろうという意見とか、市民社会は、結局は冷静に判断されるのでいちいち目くじらをたてずに放置しておいたほうが賢明であるという意見とかがあります。適切な対応のあり方や時期などを含め、どうするのが良いか悩ましい時代にありますが、司法で現在係争中の出来事をネットを通じて掲示板で論議するのは、学会本来の趣旨からずれるのかなと考えています。
次世代の国民の健康と環境を守ることが、そしてそのための研究を発展させることが私達の願いです。内分泌撹乱物質に関しては、従来からの毒性学では扱っていなかった未知の研究領域に広がっており、このことが科学的な論争とともに社会的な論争の原因になっているのかも知れません。しかし昨今のアスベスト禍をみていますと科学者の果たすべき責務は大きいものと思います。社会の持続的な発展のうえでも、また私達のあとに生まれ来る世代の為にも、内分泌かく乱と呼ばれる事象を正確に理解することは必要と考えています。ひきつづき本会の発展を応援していただければと思います。
(環境ホルモン学会会長 森田昌敏)