2007年前期 基礎化学演習I
目的
物理化学の標準的な教科書で出てくる数式を見て、そこで拒否反応を示したり、躓いたりしないように予備知識を身につける。
受験数学が苦手でも、教科書を読むための知識を身につけるためには別に問題ない。あえてパズルを解かせるようなことはしない。パズルで点がとれなかったからといって、それでやめてしまうと、化学の修得にも差し障る。パズルではなく本当に自然を記述するのに必要なものしか出てこないのだから、必要以上に苦手意識を持たないように、というのが学生への注意。
高校で数学III, Cをほとんどやってない人も入学してくるので、いわゆる数学科の数学だと目的に合わない。計算の方法として知っておくということを目指す。みんながそこそこ知ってないと、必修の物理化学で落ちる人が続出しかねない。
私はよく状況を知らないのだけど、昔、教養部を解体したとき、「一般教養は大事だから、高校の補習のようなことはやらない」という申し合わせができて今に至っているらしい。学科指定の一般教育でフォローするのが無理がなくていいのかな、とも思うんだけど、どうも無理っぽいので専門必修でフォローすることになった。
内容に関する覚え書き
(0)三角関数と指数・対数関数
- 関数の読み方とか書き方
- log, ln, expなど。eの何乗、という表記は高校でやるし、logについては底が10の時省略、と習う。ところが、数値計算も含めて、logとあると底が10だったり、自然対数はlnと表記する習慣があるわけで、これを言っておかないと混乱する。
- 関数の種類と定義
- 固有名詞付きの双曲線関数は高校ではやらないが、教科書では説明無しに出てくる。
- 意外な躓きの原因に「筆記体」がある。中学の英語で筆記体をやらないから、関数名を筆記体で板書されて混乱、ということがある。
- 関数には多変数のものがあるということの紹介。これは高校ではやらない。
(1)初等関数の微分
- 8割が高校数IIIの微分の内容。実際に、高校の数学の教科書1セットを手元において、どこから説明するかを決めている。数IIIをやってない人も居るので、そこからやるしかない。
- 偏微分の説明。理想気体の状態方程式を例にして、いろんな変数で順番を変えたりして微分する。
(2)関数の積分
- 半分以上が高校数IIIの内容。
- 簡単な多重積分をやる。
(3)微分方程式I
- 解が指数関数を用いて表されるものを中心に説明する。反応速度論など、化学で出てくる微分方程式の典型的な形である。
(4)微分方程式II
- 定数係数
- 変数分離型
- 線形一階
- 波動方程式
(5)ベクトルと行列I
- 高等学校数Cの復習
- 行列式の定義
- ベクトルの内積、外積
- 行列によるベクトルの変換
- ユニタリー性とエルミート共役(量子化学で必要になる)
(6) ベクトルと行列II
- 固有値問題
- 行列の対角化
中間試験
(7)力学I
- 質点の運動
- 運動量と運動方程式
(8)力学II
- 運動方程式の積分
- ポテンシャルエネルギー
- 角運動量
- 単振動(微小振動)、自由落下の問題について運動方程式を解く
(9)力学III
- 円運動(ボーア模型の話で使う)
- 気体分子運動論
- 熱力学の第一法則
(10)波動
- 波の表し方
- 波動方程式(数学でもやったが、もう一度詳しく)
(11)電気的な力
- クーロン力
- 電位、ポテンシャル
- eV
- SI単位と単位系
(12)原子のボーア模型と前期量子論
- 光電効果、黒体輻射、コンプトン散乱、ラザフォードの実験、水素原子のスペクトルなど、原子モデルの元になった観測結果を説明。
- ボーア模型
- 物質も波である