スター管理サービス(2001/11/22)
【注意】このページの内容は商品の説明ではありません。商品説明中に出てくる水の科学の話について、水・液体の研究者の立場から議論しているものです。製品説明は、議論の最後にある、販売会社のページを見てください。
磁気と遠赤外線を使った水の処理装置の販売をしている。
トップページを見ると、
磁気と遠赤外線により、水を活性化させる為、アトピーやアレルギーの方でも、安心してお使い頂けます。
いろんな磁気活水器の会社の宣伝で共通して出てくるのが、この「活性化」という用語なのだが、「活性化」の定義は会社ごとに微妙に違う。また、磁気処理の場合は「活水器」と呼ぶのが習わしになっているようだ。
我々の用語で活性化というと、何か高エネルギーを与えて励起状態にしたり、原子核関係で中性子などを照射して構成原子から放射線が出るようにすることをいう。「活性炭」なんてのもあって、こちらは吸着が起きるように処理したものを指す。いずれにしても、「活性化」の物理・化学的実体がわからないことには、「活性化」された水が良いのか悪いのか、そもそも全く判断できない。磁気処理の場合、「活性化」の実体の解明は、現在のところ十分ではない。
日常用語で「活性化」というと良い意味に使われることが多いが、科学分野では励起状態になったり放射化されたりで不安定・危険物というイメージの方が強い。宣伝用語としては便利なのかもしれないが、業界として内容をはっきりさせる方向に進んでくれないと、宣伝を見る方は何だかよくわからないままである。ただ、実体がわかって正確に定義できるまでには、まだしばらく時間がかかりそうなので、さしあたり、具体的にこんな効果ですよというのが列挙されればいいのではないか。
ユーザーとしては、製品を買うときに活性化とは具体的にどういう効果なのかを業者にきいて確認するとよいと思う。活性化の科学的実体について業者に説明を要求するのは、正確な答えはまだないのが現状なので、そもそも無理である。
利点については、
化学薬品なども使用しませんので、アトピーやアレルギーの方でも安心してお使い頂けます。
非常にわかりやすいし納得もいく。安心して使える理由は「活性化」ではなくて「磁気と遠赤外」のみしか使っていないということなのだろう。まったくもう、宣伝に気軽に「活性化」が出てくるとその意味が広すぎて、却ってわかりにくいように思う。
水道水そのものにどんな効果があるのか、というメカニズムについては、ウェブページではほとんど何も触れられていない。これは、磁気水の場合、水道水(不純物の混じった水)に対してどういう化学的作用があるかどうか自体がまだ解明途上なので、当然である。他社のページが、無理矢理科学的説明を試みたあげく誤った水クラスターの話や「波動」測定などに突っ込んでいるのと比べると、水について余計な誤解を広めないという意味で評価できる。
そのかわり、装置の説明として以下のように書いてある。
磁気と遠赤外線の特性を利用して、永年の経験から培った技術を基に、最適磁場強度を見い出し、独自に開発した、漏洩磁気整流、磁気光学反射共振回路を採用して、最大限の相乗効果を引き出した水処理装置です。
「漏洩磁気整流」「磁気光学反射共振回路」てのはきいたことがないし、どういうものなのかよくわからない。きっと企業秘密なんだろうな。トップページに掲載されている特許の中に入っていれば、特許電子図書館からこのキーワードで検索して詳しい情報がとれるはずだ。しかし、電子図書館は企業からの利用が殺到していて、平日は昼休み時間と午後5時以降でないと、とても混んでいてなかなか検索ができない。おいおい調べてみることにする。
設置方式については、
鉄管を含め、樹脂管など、すべての管の上から挟み込むだけで、延命効果を発揮させます。
ということで、既存の管を外さない取り付けが容易なタイプである。
ところが、以下の説明の内容についてはよくわからなかった。
遠赤外線セラミックスの放射体に、特殊抗菌材被膜工法を採用していますから、一般細菌や大腸菌を制菌することも出来るんです。
確かに、セラミックスが遠赤外線を出すヒーター等の材料に使われていることは多い。この場合、注意しなければならないことは、発生体であるセラミックスは周囲の環境より高温に保たれているということである。ヒーターは言うまでもないことだが、セラミックスによる遠赤外線効果をうたった繊維製品の評価でも、繊維部分を40℃にして、室温は25℃で測定するなどしている。ところがここの装置は外部からの動力は必要としないことが明記されている。それなら、その遠赤外線発生のためのエネルギーはどこから供給されるのだろうか?ある温度の物体は、常に赤外線も遠赤外線も出している。水道管からも装置の磁石からもセラミックスからも水からも出ている。同じ温度なら、お互いに赤外線や遠赤外線を出している。ここでいう遠赤外線はこの意味なのだろうか?もし、装置その他の温度がキーポイントであるならば、そう書いてくれた方が読む方としてはわかりやすい。
装置は「外から水道管を挟み込む」んですよね。「特殊抗菌材被膜工法」を用いたセラミックスは装置のどこにあるのだろうか?装置の写真をみると、磁石も含めてケースに入っているように見える。普通、抗菌材が効果を発揮するのは菌が抗菌材に接触したときだから、制菌効果は水道水に対してではなくて、湿気の多そうな環境に設置されるであろう装置自体に働くことになる。まあ、菌が繁殖しない方が装置自体は清潔に保たれるだろう。装置を長持ちさせるのに有効かもしれない。但し、これが水質に直接関係するのか?という疑問はあるが、水質に影響するとは宣伝でも書いてない。ウソは書いてないのだから、読む方で気を付けて早合点しないようにすればよい。
遠赤外線で注意しなければならないことは、遠赤外線は金属を通らないということである。一般に、マイクロ波・遠赤外線・赤外線から可視光にいたる広い波長の光は、金属で遮蔽されてしまう。携帯電話をアルミホイルで包むと電波が届かなくなるし、電子レンジによる加熱も食品を金属の箱に入れるとうまく加熱できない。水道管の外側から取り付ける装置である限り、あるいは水が接触する部分が金属でできている限り、外部に遠赤外線発生体を置いても、遠赤外線は流れる水にまでは到達しないのである。だから、この効果も水に対するものではなくて、装置内の話ということになる。
装置の効果の評価としては、水質検査の結果が出ている。「実際の効果」を見ると、鉄と亜鉛が減っていることがわかる。「応用分野」には沢山の例があがっているが、いずれ、水質の変化の効果として合理的に説明がなされると思われる。「主な納入先」を見ると結構売れている。せっかくいろんなところに設置しているのだから、長期的に年間を通して水質検査を行ってほしいと思う。流速や流量・温度によっても水質は変わるので、どういう時に最も効果的なのかデータを蓄積していってほしい(もうやっているかもしれないけど)。
とりつける水道管の材質について、情報がないのが気になった。水道管が鉄のような磁性体であれば、外側から磁場をかけると磁束のほとんどは鉄の部分を通って、水にかかる磁場は弱いものになるはずだ。非磁性材料の水道管であれば、水にもそこそこ磁場がかかる。この差が装置の効果の出方に反映しても良さそうに思うのだが・・・・。納入先が多い会社だから、追跡調査が可能なはずで、そのへんのノウハウについてもこの先技術が進む可能性がある。
【追加コメント(2001/11/29)】
上記の改訂版のコメントを出したら、スター管理サービスさんから連絡があった。その内容は、「コメントが営業を妨害しているから取り下げてほしい」というものであった。既にいくつかの客から、私のコメントを理由に断られているらしい。私としては妨害するつもりは全くなく、宣伝にあたって間違った科学的知識を広めてくれるなというだけの主張なので、ここで改めて追加コメントを出しておく。
まず、私のコメントを読んで、「ここで叩かれたから商品を買うのをやめる」というのは早合点であり、私としても意図しない読まれ方である。このページの読者においては、そんな判断をするのは止めていただきたい。
水の磁気処理の効果、特に錆除去効果についてはいろんな会社の製品の設置結果で効果があるという結果が出ている。スター管理サービスの場合、ウェブでは検査結果が2例紹介されているが、納入実績からいって、おそらく他にももっと検査結果を持っているはずだ。製品を買うときには、まさにその情報をもとにして購入するかどうかを決定するべきだ。磁気活水器の難しいところは、業者全体を見渡すと、効果があるという場合が多数報告されているにもかかわらず、効果がなかったという報告も一方ではあって、科学技術としてはまだ完全に押さえられていないという点にある。だから、設置後の水質検査の結果が判断材料として最も重要になってくる。
多数の販売業者は、無理矢理科学的説明をしようとしてトンデモな宣伝をしてしまっており、当ページではその宣伝内容についてのみ批判を行っている。普通に磁気活水器を作っている会社で、納入実績もあって効果も確認されているのに、変な科学理論が宣伝に出てくることが結構ある。製品の品質と宣伝の原理説明の部分が大きく乖離するのが問題なのだ。また、何度も書いたように、今現在裏付けとなる科学理論がはっきりしないからといって、それを理由に販売をやめたり購入を止めたりする必要はまったくない。科学的原理がわからないことを理由にして、実際に有用な経験的方法を捨てるべきではないし、それは科学的態度とはいえない。
科学的であるべきは実際の効果の確認試験の部分であって、原理に一見科学的な理屈をつけるということではない。この点については、いろんな宣伝を見る限り、ユーザーと企業の両方が勘違いしているとしか思えない。これは、企業とユーザーの両方にとって(そして液体の研究者の私にとっても)不幸なことだ。変な科学理論をくっつけてしまうと、わかる人にはわかるのでいずれ問題になるだろう。そうすると、実際には有用で顧客も満足している装置であるにもかかわらず、バッシングされることが起こりうる。私としても、トンデモ液体理論や物理理論が蔓延してもらっては困る。
別の磁気活水器の会社の人と話をしたときに、「ユーザーに良かれと思って販売した製品がバッシングされて、ユーザーから苦情がくるのが一番辛いから、磁気活水器の販売を止めようかとおもう」と言われたことがある。どうも、磁気活水器はそろそろブームになりかかっており、製品ジャンルとして目立つと、マスコミなどが怪しい部分を叩く可能性があるとのことだった。そのとき私は、「効果を示す水質検査に重点をおいて宣伝し、無理に間違った科学理論をくっつけたりしなければ、後で問題になった場合でも事実があるといって反論できるし弁護もできる。有用な方法を理論がわからないからといって捨てるべきではない。」と答えた。
私に電話をくれたのは、スター管理サービスの常務だった。これまでに販売したユーザーも満足しているし効果もあるということだった。それなら、顧客になる側はそのデータを検討して購入を決定すればいいし、もし購入したら、後々水質検査のデータをとるのに協力するといいと思う。
私が目指しているのは、トンデモ液体理論が広まるのを防ぐことと、有用な方法に対する勘違いバッシングを防ぐことの両方である。だから、宣伝内容のうち科学的にヘンな部分についてはツッコミを入れるが、水質検査のように確立された評価方法で得られた実際の機能を正しく評価するべきだという方向でコメントを書くことにする。
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