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「生命の水研究所」へのコメント(2007/09/17)

【注意】このページの内容は商品の説明ではありません。商品説明中に出てくる水の科学の話について、水・液体の研究者の立場から議論しているものです。製品説明は、議論の最後にある、販売会社のページを見てください。

 「科学を装うが、科学ではない」ものを「ニセ科学」と呼んでいるのだが、これぞニセ科学というページを見つけたので鑑賞してみる。
 NMRで水クラスターが評価できるという話の言い出しっぺの松下和弘氏が主催している「生命の水研究所」が実にいい味を出している。

 まず、ここの研究内容を見てみる。研究対象に全く脈絡がない上、木を隠すには森の中、ということで、普通に使われる用語に混じって、怪しいものが入っている。せっかくなので、引用し、怪しいキーワードを赤色にしてみた。黒色にしたのは、どう見てもカテゴリーが違うだろうというものである。

各種水溶液の基礎研究
       各種機器処理水(浄水器、活水器、浄・活水器、磁気活水器)
       国内外ミネラルウォーター
       海水|海洋深層水|海水淡水化水|氷河|氷|雪|雨
       天然湧水|河川水湖沼水|潅水|鉱泉水|水温泉水|地下水
       井戸水|水道水|純水|超純水 
       微弱エネルギー処理水各種調整水
       清涼飲料水ウーロン茶|食品加工水
       化粧水|ターミナル設置ウォータークーラー水
       各種アルコール
       動植物抽出細胞内液・外液
       洗剤羊水|尿|便|糞|血液|母乳|輸液等
 活性酸素の基礎研究
       フリーラジカル|SOD|SOD様活性
 微弱エネルギーの基礎研究
       超音波|超短波|高周波|低周波|温熱|磁場|電場|遠赤外線|気巧電気分解
       マイナスイオンセラミック炭自然界放出エネルギー等
 衡生昆虫、微生物の基礎研究
       ゴキブリ|南極ドナリエラ|水生生物等
 水療法の基礎研究
       生命体に調和する水殺菌力のある水エネルギー活性水細胞再生させる水

 「各種アルコール」ってどう見ても水溶液のカテゴリーには入らない。「各種調整水」は曖昧過ぎて、何も言ってないのと同じである。
  微弱エネルギーというのなら、どの辺より小さいものをそう呼ぶのか、W(ワット)かJ(ジュール)単位で示してもらわないと意味が全く無い。さらに、並んでいるリストはエネルギーの呼び名ではなく、電磁波の分類、物理量の呼び名、物理現象の呼び名で、残りの赤字は科学用語の仲間には入らない。つまり、カテゴリーの違うものが並んでいる。
 なお、水は水分子としてしか働かないので、水療法のところに並んでいるそれらしい用語は、言い換えるならば「ご都合主義の水」である。

 さて、見所は「よい水とは何か」のめちゃくちゃさ加減なのだが……

 実はあまりに面白いので、印刷物を学生に配って、間違いを指摘せよという教材に使いたくなった。するとここに指摘の回答例を書いてしまうと学生の教育にならないので、2007年後期の共通教育の講義が終わったら続きを書くことにする。

 ところで、松下和弘氏の略歴を見ると、「1998年 Pacific Southern University(USA)理学博士」となっている。この大学は有名なディプロマ・ミルで、 カリフォルニア州でだけ認定されているものの、いわゆる非認定大学で、ここで得た学位はカリフォルニア州以外では通用しない(まともな大学であれば、全米のどの州でも、世界のどこででも通用する)。この大学はハワイでは設立を取り消されている。

 当初は、松下氏は単にNMRの解釈を間違えただけかと思っていたのだが、ディプロマ・ミルまで使い始めたということは、積極的にニセ科学を演出するつもりであるとしか思えない。掲示板関連スレはこちら