導入実績を作る手口(2004/02/10)
【注意】このページの内容は商品の説明ではありません。商品説明中に出てくる水の科学の話について、水・液体の研究者の立場から議論しているものです。製品説明は、議論の最後にある、販売会社のページを見てください。
この文書は、公開してから時間が経ち、当時の会社の名前や取締役の名前も変わっていること、会社の製品自体が新しくなり、宣伝の態様も変わった(医療目的の販売は行っていない)ことから、会社名等を伏せ字にします。当該企業からは、既に血液サラサラを使った宣伝は行っていないという説明を受けました。また、これまでのところ、この文書を公開して以後、山形大学の名前が実態と異なるやり方で使われたという報告はありません。(2007/04/06)
1つ前のコメントで,山形のマイナスイオン機器のメーカーである○○○○を取り上げた。その後,別の新聞記事で,○○○○が,山形市内の××幼稚園での使用例を新聞の宣伝をはじめとしてあちこちで使っていることがわかった。そこで,実際はどうだったのか,山形大物質生命化学科の崎山助教授と一緒に,2004/01/26に××幼稚園まで出向いて,話をうかがいにいってきた。
【2004/03/01追加】
本日,○○○○の□□社長と□□副社長が,このwebページの件で山形大に昼頃にみえた。天羽と崎山で話をうかがった。このページの内容が事実とまったく異なるというのが○○○○の主張である。また,社長は既に××幼稚園に行って園長先生と,事実がこのページの内容と異なるということについて,確認をとってきたということだ。そのときの質疑応答も録音があるということだ。実は,私の方も,××幼稚園に行ったとき,原稿を書く参考にするため,質疑応答のほとんどの部分を録音したものを,メモ書きと一緒に手元に持っており,2月10日の段階ではそれを元にして書いた。つまり,○○○○の主張の内容と,我々が××幼稚園できいてきた内容が真正面から食い違うということが本日判明したわけである。そうであるなら,一方の言い分だけを載せておくのはよろしくない。我々は,山形大学の名前が無制限にマイナスイオンの宣伝に使われるようなことがなければかまわないし,科学的に怪しいあるいは未確認の内容が宣伝で広まったりしなければよい。そこで,このページに書いた内容について,個別に,○○○○の主張(というか反論)を併記するということで話がまとまった(理由説明せずに削除や変更を加えると,今度は○○○○の方にあらぬ疑いがかかりかねないので,対抗言論でいくことにした)。また,○○○○は既に山形大学の名前を使っての宣伝は行っていないし,今後ともするつもりはないことを確認した。さらに,無制限に山形大学の名前を使った宣伝について,見つけたら我々のところに連絡するということになった。
世の中,情報というのは一旦出回ると消すのが大変なのは,宣伝もこのページも同じである。このページについては対抗言論ということで,今日の追記分以外に,これからも,事実とことなる部分の反論を記載していくつもりである。分かりやすくするために,反論内容を,以下,青で示す。
××幼稚園に○○○○のマイナスイオン装置が持ち込まれたのは,去年(2003年)の1月頃である。たまたま,○○○○の社長のお孫さんが××幼稚園に通っていたので,試して欲しいということで1台持ち込まれ,お孫さんの居る教室に置いた。ちょうどインフルエンザの季節であったが,装置を置いたお孫さんの教室では欠席者がゼロであった。一方,年長クラスの方はインフルエンザで休む人が多かった。この話が,お孫さんを通して社長さんにまで伝わったらしく,欠席者が居なかった2月の出席簿を出して欲しいといわれたので出した。
園長は,最初に持ち込まれた装置は単なるモニター用のものだと理解しており,テストが済んだら返却するつもりだったのだが,持ち帰ってはくれなかった。その後,いい装置だからもっと入れて欲しいとケイエイアイから言ってきた。いいものかもしれないが値段も高いし・・・と足踏みしていたら,20数万円するが半額でもいいから,ということでかなり強引に2台持ってきて置いていった。このとき,園長も個人で1台買った。幼稚園に後から持ってこられた2台については,1,2ヶ月そのままにしていたが,やはり返すことにした。ところが,「返したい」と言っても「そんなことを言わないで。とにかく置いていくから。」と言われた。「モニタの分(最初に持ち込まれた1台)は返す」と言ったら「5万でいいから引き取ってくれ」と言われてしまい,××幼稚園には,結局3台の装置がある。
○○○○によれば,3ヶ月の教室でのテストの後,しばらくして装置(1台目)を引き取りにいった。そうしたら,それは職員室で使われていた。ただ,好評だったので××幼稚園に対して計5台販売した(これは伝票が残っている)。現在,××幼稚園には古いの1台新しいの2台の3台の存在が確認されているが,残りについては××幼稚園内部でどうしたかという問題なので状況を把握していない。
××幼稚園では,最初に持ち込まれた装置が,職員室の棚の上で連続運転されている。後から持ち込まれた2台は使われておらず,体育館脇のスロープの近くにある棚に置かれており,普段は電源は入っていない。
○○○○の確認したところによれば,電源が入っていないのは単に春休みだからということであった。休みでない時には使っているという話だ。(私が上記のように書いたのは,電源の配線はしたがずっと使っていないということだったからであり,ここも食い違っている)
園長が自宅用に買った装置は,直接生き物にあてるのはよくないということがわかったあとは,花が置いてあったり犬を飼っていたりするため,今では動かしていない。
園長は寝室で使っているというのが,○○○○確認の情報である。
ところが,この後,××幼稚園はケイエイアイの宣伝に勝手に使われてしまった。新聞,広告,パンフレットなどに登場するのだが,その宣伝は全部勝手になされたことで,××幼稚園には何も話がなかった。また,パンフレットで「××幼稚園で使われている」として紹介された装置は,実際にその当時使われているものとは違う新しい装置の写真に差し替えられていた。パンフレットが作られた時は,××幼稚園にはモニターとして持ち込まれた1台しかなかったのだが,パンフレットの写真にはもっと後に作られた新しい装置が××幼稚園で使われていることになっていた。その装置は,後から追加で2台持ってきたものと同じ型であった。また,副園長も1台買っている。
パンフレットはこれまでに2回作っていて,この話は1回目に作ったときのことである。このときは,どういう装置を載せてどんなパンフレットになるか,校正刷りが出来た時点で××幼稚園に見せて確認を行った。2回目のパンフレットは最近作ったが,これには××幼稚園の話題は掲載されている。
さらに,宣伝用のビデオ撮影も頼まれた。園長は「父兄の薦めで装置を入れた」「余裕があれば買うが今のところは・・・」といった程度のことを話した。お孫さんの担任の話もビデオに撮った。
ビデオでは園長が積極的に話をしているらしい。これは,後日見せてくださいというお願いをした。
装置の効果を信じた理由は,血液サラサラの実験を見せられたからである。マイナスイオン装置の前で15分程度深呼吸するというもので,深呼吸する前と後で,針をつかって一滴ずつ血液をとり,ガラスにのせて顕微鏡で観察した。顕微鏡は,観察した像をディスプレイに映せるものが持ち込まれた。深呼吸する前の血液は,血球がつながった感じだったのが,深呼吸した後ではばらばらで動きやすい状態になっていたので,血液がサラサラになったという話を信じてしまった。また,深呼吸したときに少し臭いがしたが,空気が澄んでいるような気がした。
○○○○の□□社長だが,マイナスイオン装置以外に,以前はいろんなものを売っていた。売り込み方の特徴は,会社の社長に売ってから部下を紹介してもらうというやり方であった。
これは事実無根とのこと。社長とか組織のトップを説得して下の人間に買わせるような商売は過去に行ったことが全く無いと,□□社長自らが断言しておられた。
とにかく,××幼稚園はいたるところで○○○○の宣伝に使われている。装置の持ち込まれ方も強引だったし,もう今後はおつきあいしたくないし宣伝にも使ってほしくないというのが,園長のコメントだった。
今回確認を取りに行ったときも,そういう話は出なかった。
なお,□□社長は,園長先生から,「大変素晴らしい製品ですので,人の為になるように,□□さん,がんばってください」というコメントをいただいたそうである。
○○○○のマイナスイオン発生器,向こうが勝手に装置を置きに来た場合,いらないと言うと20万円が5万円になるそうだ。20万円で買った方は,見事にぼったくられたことになるけど,ご感想は?・・・じゃなくて,問題は,たまたま孫が通っていたという関係を利用して強引に装置を置いていって,持ち帰れというのも無視した挙げ句,それを導入実績と称して宣伝を行うという行為にある。新しい装置が××幼稚園に持ち込まれたのが,その新しい装置の写真と差し替えたパンフレットが出た後であることを考えると,後からの2台はパンフレットの記載を事実にするために持ち込まれたのだろう。
○○○○によれば,最初の装置をデモ品だから安くして欲しいと言ったのは××幼稚園側とのこと。また,続いて納品したものについても,安くしてくれれば・・・と打診があった模様。金額は正確には20万円ではなく19万5千円である。
××幼稚園は,○○○○によっていたる所で宣伝に使われてしまっており,宣伝を見た人から連絡されてそのことを知るという状態である。しかし,宣伝ほどには××幼稚園では使っていない。売り込みも強引で,園長の人のよさにつけ込んで装置を押し付けた感がある。また,××幼稚園から持ち出した園児の欠席に関するデータだが,宣伝でこれだけが独り歩きするのも問題である。マイナスイオン装置の効果の原因物質が活性酸素であることを考えると,何らかの殺菌効果はあったのかもしれないが,欠席者が居なかった部屋は園内でも最も入り口に近く風通しのよい部屋だったということもあり,装置の効果がどの程度かということをすぐに見積もるのは無理がある。導入実績として宣伝に使われまくるほどの実態を伴っていないと考えてよい。
○○○○によれば,「どうして××幼稚園だけ宣伝に使うの?」と言ってる他の幼稚園もあるので,他を宣伝に使ってかまわないのだが・・・ということ。他にも導入実績はあると主張していた。(私も,幼稚園以外のどこかの納入先を例にした方が望ましいのではないかと思う。崎山氏の話では,活性酸素が出るので幼稚園のような子供のいるところで使うべき製品じゃないということだ。いずれにしても,これだけ話の内容が食い違っているわけで,××幼稚園の名前を出して宣伝に使って,後で別の人から問い合わせがあった場合,どういう話が出るかわからないわけで,会社としても宣伝効果にとって予測できないファクターになるのではないか。)
大学の人間として許せないのは,崎山氏の名前を出して「山形大と共同開発」と宣伝しておきながら,崎山氏の言うことをまるきり無視していることである。2002年の8月に,崎山氏は,「コロナ放電によって発生するのはスーパーオキサイド(活性酸素)が主である。空中浮遊細菌に対する殺菌効果はスーパーオキサイドによるものである。注意事項としては,直接吸ってはいけないし,狭い密室での長時間の使用は避けること」という内容を,○○○○に伝えている。しかし,○○○○はこれを無視して,××幼稚園で15分に渡って装置から出て来る空気を直接吸わせて,血液サラサラのデモンストレーションを行ったのだ。出ている活性酸素の量は少ないと思われるので,実際の被害は生じない程度だろうが,それでも注意を無視して勝手な試験をされるのは困る。なお,この血液サラサラのデモンストレーションだが,活性酸素にさらされることによって血液の性質が変わることは有りうるし,水を飲んだってすぐ変わってしまうようなものであり,そもそも健康のチェックとしては通常は意味がない(高脂血症という病気の診断には役立つが,そうでない人には意味がない)。何らかの病気が原因で血液の粘性が変わっているのなら,一時的に血液だけサラサラにしてみたとしてもそれは解決にならない。
山形大学の名前を使った宣伝はもう行っていない。崎山氏が測定した結果も出していない。結果を出して宣伝しているのは,会社を辞めた元専務の方である(現在係争中)。先日も,仙台の会社がそのような宣伝を行っていることを確認した。(取り消し線を書いた部分について,次の連絡があった:そのような係争は存在しない上に,山形大学や工業技術センターの名前を出した宣伝を一切行っていない。)マスコミの取材に応じるときも,山形大学と県の産業技術センターの名前を出さないように気を配っている。日刊工業新聞に出たのは,記者に書かれてしまったからで,大学の名前が出たことは記事が出るまで知らなかった。また,実際に名前を使ってないことを確認するため,後日新しい方のパンフレットを見せてくれることになった。また,装置の取り扱い説明書には,装置から活性酸素が出ることについての使用上の注意も,崎山氏の主張した内容が書かれているとのことだ。
なお,○○○○としては,販売を担当する方々に対し,既に大学や研究機関の名前を出さないように指導を行っているので,もし,そういった宣伝を行っているのを見かけたら,どこの誰が行っているかを連絡してほしい,とのことだ(連絡先:古くなったので省略。見かけたらこのウェブサイトの制作者にメールしてください)。
今回,我々は,○○○○の主張「大学の名前や崎山氏の名前を使って宣伝しない」を信じることにした。そこで,もし,山形大学や崎山氏の名前を出して宣伝をしている業者を見つけたら,我々にも通報してほしい。「共同開発」とは言わないということだが,「協力により」という表現は残るかもしれない。それでも,崎山氏が測定したデータは既に宣伝中では用いていないという明言しておられた。山形大での測定は1回しか行っていない事は事実であり。協力の程度が正しく伝わることが肝心だと考えている。今回の話し合いの結果,今後,大学がお墨付きを与えたと消費者が誤認するような宣伝は行われないものとさしあたりは信じる。ただし,チェックは必要だと考えている。我々の立場は,大学や研究者の名前が無制限に使われることを防ぐというものだからだ。(2004/03/01)
【重要】(2004/03/03)
○○○○から,パンフレットの最新版(A4三つ折り両面カラーのもの)と,山形TVに出しているCMのビデオを送っていただいた。パンフレットを確認したところ,
山形大学の話はどこにも出ていなかった。従って,○○○○の「今は宣伝に使っていない」ということがわかった。
(血液サラサラのデモについては,装置の評価という点では,変化が見えたとしても無意味な測定をしているのではないかということを私が伝えた。血液がサラサラなのが常に良いわけではなく,大事な凝固作用を忘れてませんかというのが崎山氏の意見。顕微鏡の装置は,岡田副社長自らが病院に販売し使用説明も行ったということだが,医者がそれをどういう目的でどう使ったかについては把握していないようだった。2004/03/01)
殺菌の原因物質が活性酸素である以上,活性酸素量をモニターして発生量を制御するという機能が装置には必要である。マイナスイオン測定をするよりも,活性酸素発生装置として品質を高めるべきだろう。××幼稚園で,一体どこに置けばいいだろうかと話をしていたら,体育用具室はどうかという案が出た。普段締め切っていて,汚れから臭いがこもりがちて,かつ,人は入らないからだ。どうも,健康にいい云々とはかなり違う話になりそうだ。
【2004/03/01追記】
青で示した○○○○の主張が真実であるならば,○○○○は,営業先で信頼を得ることになるだろう。崎山氏がマイナスイオン関係の問い合わせに煩わされることもなくなり,私のところに問い合わせがくることも無くなることを期待したい。