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EM菌を薦める人の主張?

EM菌の話の方に含めるかどうか迷ったのだけど、直前の話と関連があるのでこちらで。

直前の、http://www.cml-office.org:8080/official/wwatch/radioactive/comment-rad-05.htmlの議論をしていたら、ツイッターで

牛乳☆たん@milktan2525

γ線が菌に当たると、菌を構成する元素の電子を内核励起し、多数の電子が励起状態となる。励起された電子が基底状態に戻る過程で一部が温度に変換され、外の系と平衡状態となる。その温度が通常培養に適した37~38℃です。

37~38℃です。可視光はγ線に1光子あたり18~22個出ます。「既に確立された強固な法則」とやらで否定して下さい。

というコメントをもらったので、これについても批判しておく。これは、EM菌を推進している人達が、放射能対策についてどのように述べているかを紹介したものである。

 結論から先に述べると、この主張は、実質ゼロのものを科学用語を駆使することにより、一般の人にそれなりの効果があるように見せかけるという詐欺的主張、と判断することになる。γ線を直接利用しているというのはただの無理解に基づくものだが、ここまで細かい説明をするのであれば、むしろ、EM菌宣伝が持つ「騙す意図」がはっきりしてくる。

 直前の記事では、γ線のエネルギーを丸ごとそのまま利用する、という言説に対し、それは既に確立された法則に反する、と述べた。こちらに変更は無いが、丸ごとではなく、被曝の結果(つまり生き物を構成する分子や原子にエネルギーを与えた結果)、随分エネルギーの小さくなった塊を使うという主張までするのなら、原則には反しないがその効果は実質ゼロであるというしかない。

 主張の通りであるなら、γ線とエネルギーのやりとりがあった結果、元々の培養温度である37~38℃から測定できるような温度変化がまったく無い、つまり温度に寄与する分はほぼゼロに近いほど小さいことになる。それが培養に適した温度になって菌の成長に役立つかのような印象を与えようとしている部分にごまかしがある。

 引用部分と同じ考え方をするならば、γ線のエネルギーのごく一部が人体内で熱として散逸する(でも温度変化としてはまず検出できない)ことをもって、人体はγ線のエネルギーを体温維持に利用できる、という主張も可能になるだろう。


ところで、EM宣伝の方では、37~38℃に緩和すといった言い方を本当にしているのだろうか。素人を煙に巻くためにもっともらしく科学用語を組み合わせたことが非常によく分かる表現なのだけど、宣伝のソースを知りたい。この紹介された主張の元になった実験の詳細も知りたいのだが、どこにあるのだろうか。


【追記】

 実のところ、最初にγ線のエネルギーをEM菌が直接使っているという主張が話題になった時、あちこち相互作用してエネルギーが低くなったものを使っているという言い訳が出てくるのではないかという予想はしていた。その程度のことは誰かがEM菌宣伝をしている人に入れ知恵してもおかしくない。そうなった場合、科学を使った「説明」としてはより緻密なものになるわけで、その分だけぼろが出やすくなる(どんな実験をしたのか詳細を問い詰めればおかしな武部分がでてくる)上、より周到に準備をして他人を騙そうとしたということもはっきりしてくる。

 今回紹介された表現の通りなら、EM菌の宣伝では、エネルギーの散逸や緩和という言葉を単にもてあそんでいるだけであることがはっきりわかる。どういう経路であれ最終的にエネルギーが散逸して熱エネルギーの形になった結果が温度の上昇として観測できるのであり、「○℃に緩和」というのは意味がない。