ちょっと違う理由で
「半落ち」が文庫になったので買った。ミステリーなので、あまり詳しく感想を書くとネタバレになるので簡単に。数人の人物の視点を変えながら、被疑者の行動の謎が描かれる構成がしっかりしていると思った。この順番と、刑事手続きの順番がきちんとかみ合っている。
で、これを買った理由は、直木賞作家の渡辺淳一氏が、人間の書き方が薄っぺらいとか何とか酷評してるという話をネットで知ったから。ちなみに、渡辺淳一氏は、日経新聞で「愛の流刑地」を連載中だが、ネットでさんざん酷評されている。愛ルケの方は50代半ばの冴えない男性と30代半ばの人妻の不倫小説だが、出会った→口説いた→定期的にHシーン→プレイの最中に女性が扼殺される→男性自首、という流れで進んでいる。小説としてはドラマチックになるはずの要素があるにもかかわらず、設定が内部矛盾しまくりの文章に加えて女性はまるでデリヘル嬢か人形みたいな書かれ方、ポルノとしても中途半端だし文学にしては悩み方が足りない脳天気小説のため、ネット上では文学史上に残る駄作だと評判になっている。ちなみにここ1箇月は死体描写が続いていたし(日経読者は毎朝それを読むことになる、ご愁傷様)、ちょっとまえの逢い引きのシーンは、「職場で出したらセクハラになる」という代物だった(日経新聞朝刊の連載小説が、ですよ!)。
読んでみた感想は、ストーリーの破綻のなさといい、緊迫感といい、人物描写の深みといい、
「半落ち」>>>>>(越えられない壁)>>>>>「愛の流刑地」
でしたよ勿論。つか、もし「半落ち」が連載だったら、その方が日経新聞としてはずっと良かったんじゃないかと思ったり。組織の人間として縛られる個人の苛立ちなんて、仕事してる人たちにはとっても身につまされる話だしなぁ。