「熱」
教養教育の方で「熱って何」という質問が出た。一行でコメントするなら、分子や原子の運動の激しさの指標だよ、とでも言うしかないが、当然これでは足りないので、あとは「熱学思想の史的展開」でも読んだらどうかと、参考文献として薦めておいた。しかし今見てみたら値段がすごいことになってるな……どうやら品切れになったらしい。
そんなこともあって「ボルツマンの原子」を衝動買いして読んでみた。熱を運動学的に理解するというのは、今ならすんなりいくけど、実験データが足りなかった頃はえらく受け入れがたく、紆余曲折があったんだなあということが、割と手軽にわかる。教養教育の受講者だと、中学以来理科をやってない人もいるので、「物質は原子からできている」も怪しかったりする。すると、この本の、原子の実在がまだはっきりしない状態で熱をどう捉えるか悩むというのと似たような状況になっているのかもしれない。それなら、昔の偉い人だって苦労したんだよ、ということを知るのもいいかもしれない。迷い方というか入り組んだ風景が見えるだろうし。
ここからは旧ブログのコメントです。
by kkojima at 2006-06-10 19:56:10
Re:「熱」
「熱」という概念は、みんな判っているつもりになっているので、「温度」とどう違うの?と質問を出してみると始めて「え?」とかいう返事が返ってきたりして面白いです。
その点で、運動の激しさの指標という説明はいかがなものかと。
by rmiya at 2006-06-55 00:23:55
Re:「熱」
身の回りの物はみんな原子・分子で出来ている, という話をしたら, 「分子は人間のからだのどこにあるのか?」と質問されてしまいました。高校で化学を履修したという医療系の専門学校生なんですけどね。
by apj at 2006-06-16 00:29:16
Re:「熱」
うーん。ほとんど2,3行しかコメントする余裕がないとなると、何を書くか難しいですよねぇ。本当は熱を持ち込まなくても話が済むなんてことを言ったって余計に混乱させるだけでしょうし。物理の講義なら話をそっちに進めたっていいけえど、一般教育の化学だと……。
単に本だけ薦めておく方が良かったのか。
by apj at 2006-06-13 00:32:13
Re:「熱」
rmiyaさん、こちらも同じような状況です。
消しゴムも分子で出来ていますかとか、何で原子があるってわかったんですか(見えないのに)とか。人間の物の理解の仕方というのは歴史をたどるんでしょうかねぇ。
by すっぱいぶどう at 2006-06-31 01:48:31
Re:「熱」
私もですー。「人間の体の60%は水でできています」と言ったときに、学生は『体の中にポリタンクがあって、その中に純水が入っている』かのようなコメントをくれます。
ところで…エネルギーってどう説明されていますか?
by apj at 2006-06-52 02:01:52
Re:「熱」
そうそう、ちょっと考えたんだが、熱についてもエネルギーの一種だと言った方がよかったかな。永久機関は駄目よ、って説明の時にはそう言ってたのだった。
エネルギーについては……取り出して他の物に作用させることができて、いろんな存在の仕方があるものだ、という説明を(一般向けなので)。そのあと、音→熱、とか光→物質の変化(化学反応とか励起状態とか)、運動→音とか、いろんな例を出したりしてます。
巧い方法があったら私も講義で使いたいので教えてください。
by おんち at 2006-06-37 18:16:37
Re:「熱」
仮説実験授業では授業書<もしも原子が見えたなら>で分子原子のことを小学生にも授業しています。今年は4・5・6年生の理科でやりましたが,いちばん感動してくれたのは4年生でした。もちろん学習指導要領にはありません。
仮説社のサイエンスシアターシリーズでは「熱をさぐる編」として『熱と火の正体』『熱と分子の世界』『温度を計る』『ものを冷やす』の4冊が発行されています。大学生にはやさしすぎるかもしれませんが,一般教養としてはいいのかも。失礼しました。
by apj at 2006-06-24 09:55:24
Re:「熱」
おんちさん、
情報ありがとうございます。仮説社か……今度探して読んでみます。
大学の教員(教育学部除く)は、学部在学中に教職を取っていない限り、理科教育については素人です。予備知識の無い人にわかりやすく説明するノウハウは、理科の先生の方がずっと詳しいと思います。