血液サラサラの嘘
パンキョーのネタになりそうなのでメモ代わりに貼っておく。Sankei Webの記事より。
悪徳商法にご注意…「血液ドロドロ」実はウソ
医師免許を持たない業者が血液の検査を行い、「血がドロドロです。サラサラにしなければ…」などと不安をあおって、高額なブレスレットやネックレスを買わせる悪質商法に関する相談が増加している。高まる健康志向とともに広がる不安心理につけ込んだ手口で、専門家は「医療機関以外での安易な検査は避けるように」と注意を呼びかけている。(山口暢彦)
「無料なので」
国民生活センターによると、同様の相談が平成17年度だけで、589件寄せられたという。年々増加傾向にあり、8年度(132件)の約4.5倍に上っている。
50歳代女性のケース。健康器具販売店を訪れた際、「血液を調べませんか」と店のスタッフに勧められた。スタッフは採った血を顕微鏡で見せながら、「血が動かないですね。70歳代(の血液)です」と説明。
そのうえで、女性に磁気のある腕輪を身につけさせ、再び血液を調べると、「サラサラになりましたよ」と語ったという。腕輪の効果を信じた女性は、勧められるままに約20万円で購入した。
ところがその後、病院で検査してもらうと、「血液に異常はなく健康体です」と告げられた。このとき初めて、女性は「だまされた」と気づいたという。
別の60歳代の女性のケース。業者から「無料で健康チェックをする」という電話があり、自宅に招くことにした。やってきた業者は女性に対し、体に微電流を流し、悪い個所をチェックするという検査を実施。結果、業者は「1カ所だけ悪い値が出た」と語った。
彼女は脳梗塞(こうそく)を患い、健康を気にしていただけに不安を感じた。血栓を溶かして血液をサラサラにするという32万円の健康食品を業者に勧められると、つい飛びつき、購入してしまったという。
医師法に違反
センターによると、売りつけられるものとして特に多いのは、磁気ネックレスなどの医療用具(22.4%)や健康食品(21.7%)。ほかにも、ブレスレットなどのアクセサリー、ふとんなどの寝具類、浄水器などがあった。
「そもそもこれらの悪質商法では、医師免許を持たない業者が検査などを行っているケースが多い」と、センター情報分析部の渡辺優一さん。その行為は、医師法に反する。また、「注射針にしても、こういった業者では使い回しされている可能性も否定できず、危ない」と渡辺さんは注意を呼びかける。
センターに相談を持ちかける人の平均年齢は51・9歳。相談件数が増えていることについては、「健康ブームの高まりを背景に、過去に(比較的大きな)病気をしたことがあるなど健康に強い関心がある人が、トラブルに巻き込まれることが多いようだ」と話す。
早めに相談を
「病院などの信頼できる場所以外で血液検査を受けてはいけない。もし健康に不安があるのなら、かかりつけ医に診てもらってほしい」と渡辺さん。
また、かりに高額商品を契約してしまってもクーリング・オフなどが可能なケースも多い。「あきらめず、早めに最寄りの消費生活センターに相談してほしい」とアドバイスする。
そもそも、何かを身につけて血液がサラサラになることなどは、科学的な根拠はない。
慶応義塾大医学部中央臨床検査部の村田満教授(血液学)は「そもそも血液の“サラサラ”“ドロドロ”に、はっきりした医学的な定義はない」としたうえで、「一般的にブレスレットやアクセサリーを身につけて、血液の状態が改善することはありえません」と話している。
(以下略)
(2007/03/29 09:13)
血液の写真は、撮り方によってドロドロにもサラサラにも見せることができる。見やすくするという理由で、生理食塩水を加えてから撮影することもあるので、濃度と加える量でなんとでもなる。さらに、少し時間が経って固まりかけたところを見せれば、誰の血液でもドロドロに見える。また、正常な人であれば、水を飲んだかどうかで血液の粘度は変わってしまう。
講義では、同じ視野を見ているにもかかわらず明らかに血球の数が10倍以上違う写真を見せて(マイナスイオン業者が実際にパンフレットに掲載していたもの)、高校生物の浸透圧の話を復習しながら、写真がヘンであることを説明している。
ここからは旧ブログのコメントです。
by すっぱいぶどう at 2007-03-02 04:03:02
Re:血液サラサラの嘘
健康な若者は血管が丈夫で弾力があるから、血液がドロドロかサラサラかを気にする必要はないんじゃないのかなぁ…。出血があったときなどは血液がサラサラ過ぎることが危ないように思うのですが。
by apj at 2007-03-22 09:00:22
Re:血液サラサラの嘘
向こうの掲示板でも先日話題にしましたが、血液がドロドロだと梗塞が増えて、血液がサラサラだと脳出血が増えるというオチがまっているそうで。
もちろん、サラサラならいいなどと単純に言えるわけがないので、こまめな血圧測定をやって問題が出てきたら医者の指導を受けるという、ごく当たり前の対応をすればいいんじゃないかなぁ。
by すっぱいぶどう at 2007-03-15 02:55:15
Re:血液サラサラの嘘
>向こうの掲示板でも先日話題にしましたが、血液がドロドロだと梗塞が増えて、血液がサラサラだと脳出血が増えるというオチがまっているそうで。
血液がドロドロとか、サラサラとういう表現ではありませんが、生活習慣病の原因や対策とその問題点で、血液の量や粘性と血管の厚さや硬さや弾力性、強度等と関連して似たような記述がありました。オチ自体については要因のひとつとして、私個人は否定しないかなぁ。でも、関連商品は遠慮するし、『問題が出てきたら医者の指導を受ける』ことにも同意します。
by すがりこ at 2007-03-41 03:32:41
Re:血液サラサラの嘘
はて、血液ドロドロって、最初のほうではコレステロールとか中性脂肪の話だったような気がするのですが。いつの間にか血栓ができるほうの話になっているのですね。エコノミークラス症候群が出てきたあたりで入れかわったんでしょうか。
と書いたところで気になったのでうろうろしてみました。「ウチが元祖だ」と言っているNHK「ためしてガッテン」では血栓の話になっているのですが、同じNHKでも「きょうの健康」では脂肪の話になっているようです。最初のころはどうなっていたのかは古すぎて確認できず。
いずれにせよ、言う人によってコレステロールだったり赤血球だったり血小板だったり、老廃物だったり水不足だったりとまちまちで、定義ができていないことは確かです。
by すっぱいぶどう at 2007-03-21 07:39:21
Re:血液サラサラの嘘
私も専門家ではないので、特に主張もしませんし、apjさんが挙げている記事の範囲ではドロドロ血はウソだと思いますが…。
初めの話は、コレステロールや中性脂肪が多いと…
血管壁を構成しているのは細胞膜で、細胞膜にはコレステロールが含まれている→血液中のコレステロールや中性脂肪が血管壁にくっつきやすくなり、血管にこびりついて血液の通り道を細く(血管壁を分厚く)したりする→くっついた脂肪が完全に血管をふさぐ=血栓、
というロジックだと思います。
あとの話は、ホースの中を流れる液体の圧力として高血圧をとらえたときに、
・液体の量が多い
・ホースが細い、硬い
・液体を流すポンプの力が強い
・液体の粘度が高い
などの要因が考えられることを根拠に言ってると推測できます。『液体の粘度が高い』に重点が置かれているから、定義できないのか、しないのかではないでしょうか。
by apj at 2007-03-28 09:13:28
Re:血液サラサラの嘘
血液サラサラ測定装置は、もともと高脂血症の検査方法だったはずが、健康バラエティ番組に目を付けられて、サラサラ=良い、ドロドロ=悪いの二分法で判定するために使われたという面もあります。
装置の目的外利用でサラサラ・ドロドロの話を広めてしまったから、粘性の話やら脂肪の話やらがごっちゃになって、収拾が付かなくなっているんじゃないですかね。