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「自然のしくみ百科」

Posted on 5月 1st, 2007 in 未分類 by apj

 丸善から「自然のしくみ百科」が出ていたのでつい買ってしまったが、8000円は高い。紙の質も高密度2色刷だが、1色刷にするとか新書サイズにするといった方法で値段を下げて出して欲しかった。内容は自然科学全分野に及んでいるし、トピックの説明のところに歴史的経緯が簡単に出ているので、どういう流れの話なのかがよくわかる。広く普及してほしい本だと思うが、この値段だと手出しする人が限られて、数が出ないんじゃないか。なお、amazonではソフトカバーとなっているけど、ハードカバー製本で、値段の方もamazon定価8400円じゃなくて8000円である(訂正:amazonは税込み価格を表示、本は税無し価格+税、で、消費税率変更に対応している)。

 ただ、この本は翻訳だが、元の本の著者の着眼点、特に著名な科学者についての記述が……。
ジョン・ティンダル(チンダル効果のチンダルさんね)について書いてある部分の最後に「彼は妻によって誤って調合された薬を飲んで亡くなった。妻はその後47年生きた。」って、そりゃほとんど毒殺だろーっ!!(汗)。ベンジャミン・トンプソン(後のラムフォード伯)については「1804年にはパリに移り、アントワーヌ・ラヴォアジェの未亡人と結婚した。その結婚は幸せなものではなかった。ラムフォードは、ラヴォアジェがギロチンで死んだのは幸運だった、と述懐したという。」一体どんな悪妻だよ!!ってか悪妻ってレベルじゃねーよw。
 変なところで知識が増える記述もある。ヘルモントについては「傷というものはそれをもたらした武器を処理することによって治癒できるという当時支配的だった俗説に疑問を呈して教会と対立したという」そんな俗説があったのか……ホメオパシーの同類みたいな発想だな。
 「雑学」に分類されているがマーフィーの法則「失敗する可能性のあるものは失敗する」まで入っている。他はボルツマン定数とかホール効果とか、星の進化とか、フィボナッチ数とか、まあ理科年表にも出てきそうなネタを含めていっぱい解説していて予想の範囲なのだが、マーフィーについては快挙と呼ぶべきなのか?
 美的基準なんて項目もあるな。「科学理論は実用的基準と並んで美的基準によっても評価される」。
 「相補性原理」のところには「科学哲学の連中は「波と粒子の二重性」から、そこに本来含まれていること以上の結論を引き出そうとしているように私には思われる」。トンデモサンモナー、と突っ込んでしまいましたよ私ゃ。
 「バックミラー」(今となっては否定されたか置き換わったもの)に分類して「生命力」も登場する。「ニューエイジ科学には怪しげな生気論がほとんどそのままの形で浸透している」なんて書いてあったり。同じく、「自然のバランス」のしょっぱなには「自然のバランスという神話は一般大衆の中にしっかり根付いている。」と書いてある。何でも自然がいいという人への見事なツッコミになっている。

 読んでいて思わず笑える記述があるので、お薦めはできる、できるんだけど……文庫版でもいいからもうちょっと安くならないのか。しつこいようだけども。


ここからは旧ブログのコメントです。


by すっぱいぶどう at 2007-05-46 10:45:46
Re:「自然のしくみ百科」

>一体どんな悪妻だよ!!ってか悪妻ってレベルじゃねーよw。

アントワーヌ・ラボアジェについては、出典は忘れましたが、最近何かで読んだ気がします。ラボアジェにとっては、美人で気が利いて、才覚のある、またとない良妻だったみたいですが、ラムフォードにとっては出しゃばりで気が強くて、これ以上ない悪妻だったそうです。相手が何を望んでいるかで印象が大きく変わる例ではないでしょうか。

本は面白そうなので、私も買ってみます。


by すっぱいぶどう at 2007-05-41 04:13:41
Re:「自然のしくみ百科」

出典はこれでした。このサイトは授業のコネタに使ってます。
http://www.1101.com/kasoken/index.html


by apj at 2007-05-53 04:58:53
Re:「自然のしくみ百科」

すっぱいぶどう、さん
 やっぱり相性が合わなかったということみたいですね。

 ところで、午前中の講義を2つ終えて、午後にこの本を読み始めたのですが、冒頭の「科学のあり方」は、なかなかいい議論をしています。科学における理論とは、予測とは、といったことが書かれています。科学リテラシー関連の話をする人は、一度は目を通したほうがよいかもです。


by kossy at 2007-05-43 05:53:43
Re:「自然のしくみ百科」

非常に今さらで,しかも念のためではありますが…

amazonの価格表示は税込みなので,定価は正しいと思いますよ.


by apj at 2007-05-18 21:00:18
Re:「自然のしくみ百科」

kossyさん、
ご指摘ありがとうございます。値段についてはどうもそのようですね。
本の方は8000円+税、となってます。


by 家鴨衛門 at 2007-05-43 19:43:43
Re:「自然のしくみ百科」

初めまして、家鴨衛門と申します。
>本の方は8000円+税、となってます。
この件について、蛇足をば。

小売商品が原則として「税込み表示」を義務づけられた際、
書籍は、将来の税率変更への対応として「本体価格+税」という表示をした、という歴史的経緯があるそうです。
つまり、「税」はその時点での消費税額を示す「パラメータ名」です。(パラメータ値=消費税額は購入時点で計算)

書籍は店頭での寿命が長い商品なので、税率変更時にすべて回収して価格表示を差し替えるわけにはいかないから、というのが主な理由だと聞いております。
(原価や印税の確定など、他の理由もあるのでしょうが)

私自身は出版業界の者ではありませんが、この表示を導入した時点で出版業界にいた知人が語っておりました。