ゲルマニウム水を取り上げて……
パンキョーの科学とニセ科学を考える、の配布プリント制作中。原子論の発展を例に、科学の本筋がどうやってあちこち関連しながら発達したかというあたりを説明し、いよいよニセの例をとりあげることにした。で、松岡農水相の件で今が旬のゲルマニウム(還元)水の宣伝をネタにしてみた。
前回、宣伝の一部を学生に配って、怪しいところと正しいところに波線とアンダーラインをしてみろ、と課題を出した。一応、危険だからこの内容を信じるな、とは念押ししておいた。明後日配るプリントの準備をしていたのだが、学生の感想に、宣伝内容を信じそうになったというのが結構出てきた。また、生物をやってないから不安だとか、知識不足が原因でニセをニセと見抜けないというコメントも出てきた。で、これに対して返事を書いているうちに、
・既に知っている知識だけでやりくりできるわけではない。
・それならどうやって確からしい情報に楽にたどりつくか。
・いい情報にたどり着いたってそのものズバリの答えなんか無いことの方が多い。
・知識が不十分な状態で「安全側に振る」判断をするにはどうするか、というのがニセ科学を見抜くポイントになるのでは。
といったことに思い至った。
全部知ってなくてもよいし、100点取らなくても良いけど、いくつか怪しい部分に気付いた時点で残りの信憑性もない、と判断するというやり方をどう見せればいいのか、ということで、私が調べた手順とか注目したところの資料を渡して、実際に跡をたどるという形で説明しようかと思っている。まあ、宣伝という「一番説得力を持たせなければいけない物」に変な内容が混じっている時点で、「残りは正しいかもしれない」などと読む側が弁護してやるというか勝手な期待を抱くのは只のはアホだということをどう伝えるかという話になるんだが。
ここからは旧ブログのコメントです。
by ながわ at 2007-05-08 16:12:08
Re:ゲルマニウム水を取り上げて……
これは面白そうですね。許す範囲でまたブログでお教えいただければ有り難いです。その資料も拝見したいくらいで。
いわゆる社会的な偏見の軽減のようなことを考えている際にも、似たようなことを思う場合があります。知識を増やせば軽減されることはあるけれど、でも知識信望が行き着く先ではない。じゃあどう考えるのがよいか? そもそも偏見ゼロ状態ってどんなだ?とか。あ、これは少し違うか。脱線すいません。
by bugbird at 2007-05-05 16:57:05
Re:ゲルマニウム水を取り上げて……
セキュリティの考え方と一緒なんですよね。それ。
限られた手持ちの情報資源から、未知の脅威を認識するという技術なんです。まずは己の情報資源は有限であるという状態をできるだけ客観的に認識できるように努力することから始めるわけですが。
by mino at 2007-05-56 16:57:56
Re:ゲルマニウム水を取り上げて……
はじめまして。普段はROMですが、質問がありまして。
「パンキョー」ってなんですか?
by 柘植 at 2007-05-37 17:32:37
Re:ゲルマニウム水を取り上げて……
こんにちは、apjさん。
>まあ、宣伝という「一番説得力を持たせなければいけない物」に変な内容が混じっている時点で、「残りは正しいかもしれない」などと読む側が弁護してやるというか勝手な期待を抱くのは只のはアホだということをどう伝えるかという話になるんだが。
この部分ってのは、まさに個人個人が「生きる厳しさ」をどう身につけているか?の部分なんですよね。
私は悪徳商法レス屋の時代に「確かに悪徳と言えない会社を疑ったら悪い」と遠慮する人に、「紛らわしさもまた罪」という事を言っていた訳ね。主婦の方の内職商法とかが多かったから、「スーパーで買い物の途中にトイレに行きたくなった時に、商品入れたカゴを持ったままトイレにはいかないでしょ」なんてね。世の中にはそうやってトイレで商品を移し替える様な万引きもあって、それに「間違えられまい」という心がけは、皆さんきちんとお持ちなんです。そして、ボーとしていたり、あるいは子供がせかしたりして、カゴを持ったままトイレに入って出てき時に疑われても、「これは自分が疑われるような行為をしたからだ」と納得するだけの常識もお持ちなんですね。
実のところそれと同じなんですね。トイレで商品を移し替える万引きがいるみたいに、宣伝で科学的でないことを言いふらす「ニセ科学商品販売業者」がいる訳だから、まともなものをまともに売りたいなら、宣伝文句一つにしても「間違ったこと」は書いてはならない訳です。それは「万引きと間違えられたくなかったら、商品持ったままトイレに入らない」と同じなんですね。だから、宣伝に一カ所でもおかしなところがあるなら「ニセ科学商品か?」と疑うことはなんらおかしな事ではないわけです。少なくとも、「商品持ったままトイレに入る」様な「紛らわしい行為」をしたという事は確かなのだからね。
こういう、身近な例を挙げて、「紛らわしさも、また、罪」という常識を身につける事が、特に一般教養などでは大事じゃないかなんて思います。
by と at 2007-05-33 17:41:33
Re:ゲルマニウム水を取り上げて……
「パンキョー」>一般教養科目
って、もう死語ですか?がちょーん[:泣き笑いネコ:]
by mino at 2007-05-44 18:22:44
Re:ゲルマニウム水を取り上げて……
とさん
どうもありがとうございます。
私は高専卒なもんで、「一般教養」というくくりで授業を受けてないんですよ。
それでそういう略語も知りませんでした。
by 温泉カワセミ at 2007-05-37 20:00:37
Re:ゲルマニウム水を取り上げて……
apjさん、
>知識不足が原因でニセをニセと見抜けないというコメント
まぁたぶん、マスコミや広告に騙されたという経験(と言うより自覚)の乏しいヒトはこうなのかも知れませんけど、よく知らないから『とにかく信じる』のではなく、よく知らないから『とりあえず判断はペンディング』するって言う習慣を付けないとダメってことなんぢゃないですかねぇ?
私たちだって、科学系の知識を全部網羅してる訳ぢゃないですからねぇ。
by apj at 2007-05-08 21:08:08
Re:ゲルマニウム水を取り上げて……
bugbirdさん、
言われてみれば、確かにセキュリティーですよね。騙されないようにする、というのは一種の防衛的作業ですから。
温泉カワセミさん、
「疑わしきは罰せず」は刑事責任を問う場合の話で、「疑わしいものには近寄らない」は安全確保の基本だ、ということを言わないと駄目みたいです。
ただ、知識が足りなさすぎる場合は「世の中すべてペンディングにするものばっかり」となりそうな気が。まあそれでも安全は安全なんだろうけど。
by 柘植 at 2007-05-03 02:59:03
Re:ゲルマニウム水を取り上げて……
こんにちは、apjさん。
>ただ、知識が足りなさすぎる場合は「世の中すべてペンディングにするものばっかり」となりそうな気が。まあそれでも安全は安全なんだろうけど。
この部分が私がニセ科学掲示板なんかに書いた「一般消費者というのは新規な物に飛びつくのが少々遅れたところで、たいした損をするものではない」という考え方なんですね。
この「大した損じゃない」を「大損」に見せかけるために、「こんな水を飲んでいると癌になりますよ」みたいな販売トークが幅を利かせる訳です。
なんて言うか、会社なら新規な技術の取り入れが遅れたら大損することもあり得る訳だけど、一般消費者というのは、「右見て、左見て、周りがみんな取り入れたら取り入れるかな」とやったって、そうそう大損なんてしないものだという概念も大事なんです。
by nomad at 2007-05-52 05:58:52
Re:ゲルマニウム水を取り上げて……
むー
なんか、だんだんオトナになってきたせいか「え?なんかその説明怪しい」って直感するようになってきましたよ。
なんか怪しそうなので、ちょっとググってみると、あーやっぱり怪しいじゃんよー、というようなことが何度か。
こういう直感というのはどこから来るのでしょうか…
…こ、これはつまりスピリチュアルメッセージ!
by すっぱいぶどう at 2007-05-24 07:45:24
Re:ゲルマニウム水を取り上げて……
科学的知識が何もないという前提なら、金銭感覚にものを言わせて、「水にそんなお金はかけられない」と判断させるのでは物足りないですか?私も今、似たようなところで悩んでいるもので…。
by apj at 2007-05-24 08:55:24
Re:ゲルマニウム水を取り上げて……
>「水にそんなお金はかけられない」
それがですねぇ、宣伝にひかかってしまっている状態だと、
「(ただの)水にそんなお金はかけられない」、でも、
「(健康や病気からの回復を約束してくれるミラクルな)水ならお金をかけてもよい」
となっちゃってることが往々にしてあるかと。
by (ぱ) at 2007-05-22 10:04:22
Re:ゲルマニウム水を取り上げて……
ちょい脱線しますが。
逆に、納豆程度なら、安いし、体に悪いこともなさそうなので、「あるある」を信じていようがいまいがおかずに悩んだら購入する、というのはアリなんでしょうね。
納豆といえば(実は結構日持ちしますが)賞味期間は短く、それでスーパーが損をしないためには在庫をそれほど増やすわけにもいかない。それでも普段は大数の法則でバラけてなんとかなっているところ、「あるある」等で微妙にでもバイアスがかかるとあっという間に品切れ…というのが、先日起こったことの実態だと思っています。
あの件で、メディアリテラシーがどうのとそこらの主婦を批判する記事をブログ等でよく見ましたが、それもまた短絡思考ではないかと。
by nomad at 2007-05-41 08:46:41
Re:ゲルマニウム水を取り上げて……
> おかずに悩んだら購入する、というのはアリなんでしょうね。
いえ。
それはありえません。
絶対にそれはありえないのです。
つまりそれは僕がスピリチュアルメッセーz(ry
by apj at 2007-05-08 11:13:08
Re:ゲルマニウム水を取り上げて……
>おかずに悩んだら購入する、というのはアリ
だと思います。
>微妙にでもバイアスがかかるとあっという間に品切れ…
微妙なバイアスだと、スーパーで買い物に迷う→ふとあるあるを思い出す→買ってみるか、とつい手が商品に、程度でしょうが、内容を真に受けて毎食食べるようになった人も出ていたようなので、バイアスだけでは済まなかったのだと理解しています。
by (ぱ) at 2007-05-07 12:37:07
Re:ゲルマニウム水を取り上げて……
>内容を真に受けて毎食食べるようになった人も出ていたようなので、
どこにでも極端な人はいるものなので、そういう人の割合がどれほどであったか、定量的に計測できないとなんとも言えないでしょう。
何かデータを持っておられます?
by QР at 2007-05-33 19:04:33
Re:ゲルマニウム水を取り上げて……
「家計調査」によると一世帯あたりの納豆への支出が、
11月 324円
12月 313円
1月 411円
2月 332円
3月 341円
なので、確かに1月は前後と比べて多いようです。
この調査はもう少し多くの情報がありますので、有意差があるかどうかも分かると思います。
↓の4-1のうち「全国」の数値です。
http://www.stat.go.jp/data/kakei/200611n/index.htm
by 柘植 at 2007-05-23 22:23:23
Re:ゲルマニウム水を取り上げて……
こんにちは、皆さん。
>逆に、納豆程度なら、安いし、体に悪いこともなさそうなので、「あるある」を信じていようがいまいがおかずに悩んだら購入する、というのはアリなんでしょうね。
まあ、そうなんでしょうが、今の世の中にある「小さな事だからどうでも良い」みたいな部分が、実は大きな事につながっている面もあると思っています。
私はヒヤリハットの標語なんてのも考えたりしますが、自分のボツ作品に「ちょっとの油断に、ちょっとのヒヤリ、でもしっかり反省」なんていうできの悪いのがあります。まあ「ちょっとの油断にちょっとのヒヤリ、ちょっとは反省」くらいはして欲しいなんて思うわけです。でも現実には「ちょっと油断に、ちょっとのヒヤリ」で「後は忘却」なんですね。まあ、ご存じの方はご存じですが、1つの大事故の前には29個の小事故があり、さらに300個のヒヤリがあるなんて法則があって、ヒヤリの段階で原因をきちんと究明して取り除くことで、大事故や小事故が防げるなんて理屈があるわけです。
この「良からぬ騙し」みたいなことでも、被害が「たいしてない
」場合に寛容になってしまうわけです。上の標語をもじっていうと「小さな騙しの小さな被害、でもしっかり怒る」みたいな事って言うのは、大きな騙しに合わないために必要な面もあると思うんですね。
by FREE at 2007-05-08 00:30:08
Re:ゲルマニウム水を取り上げて……
こんにちは
ハインリッヒの法則みたいに、
「1つの重大な詐欺的な社会問題の背後には29のニセ科学があり、その背景には300はの科学的誤謬がある」
とか法則が生まれたりして。
by 柘植 at 2007-05-08 01:41:08
Re:ゲルマニウム水を取り上げて……
こんにちは、FREEさん。「消費者側の態度」という話の流れから離れてしまうかも知れないけど。
>「1つの重大な詐欺的な社会問題の背後には29のニセ科学があり、その背景には300はの科学的誤謬がある」
少なくともTV局側では充分に「1つの重大な捏造番組の背後には29の軽微な捏造番組があり、その背景には300の大げさな番組がある」は成り立つ気がしますね。
これを番組とかを受け取る視聴者の側におくと「300の大げさを何らとがめることなく喜んで見ることで、29の軽微な捏造も喜んで見て、1つの捏造番組で納豆を買う」となるのかも知れません。
by 狩田英輝 at 2007-05-55 19:05:55
Re:ゲルマニウム水を取り上げて……
初めまして。
>全部知ってなくてもよいし、100点取らなくても良いけど、いくつか怪しい部分に気付いた時点で残りの信憑性もない、と判断する
個人の例なのでサンプルとしては不適切かもしれませんが、私の知り合いの元高校教師な方に、これをやったら「人間として間違っている」と逆上する方がおられます。
受け入れる心が足りないんだそうで(^^;
ですので、それに近い教育を高校時代に受けていないかどうか、確認された方がよろしいかと。