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平成17(行ウ)547 東京地裁判決

Posted on 2月 9th, 2008 in 未分類 by apj

 裁判所判例Watchより。判決全文より引用してみる。情報開示請求で総務省が訴えられた件。
 まず、原告の主張。

原告は,平成17年8月1日,情報公開法4条1項の規定に基づき,総務大臣に対し,請求する行政文書の名称等を「電波により頭の中の考えが字や映像になったり,指をさされたり,右,左手を上げたり,いる場所がわからないのに人がくる理由がわかる文書」として,当該文書の開示請求をした(以下当該文書を「本件文書,当該開示請求を「本件開示請求」という(乙1))。

 次に、被告(=総務省)の主張。

 本件文書は,電波によって直接的に,人の思考が字や映像にされ,又は,人が指を指す,手を上げる,若しくはその人には分からないはずの他人の居場所を訪れることがあるという前提で,そのような現象が起こる理由について明らかにする文書であると考えられる。
 しかしながら,電波によって上記のような現象が引き起こされるとは想定されていないことから,総務省においては,当該現象に関する調査,研究等は実施していない。
 また,総務省において,このような現象が起こる理由を明らかにする行政文書の有無につき,事務室及び書庫の探索を行ったほか,関係部署にこれを保有していないか照会したところ,そのような文書は存在しないことが確認された。

 ……調べたのかよorz。仕事とはいえ大変だな>総務省の中の人。
 でもって、裁判所の判断。

社会通念上「電波により頭の中の考えが字や映像になったり,指をさされ,たり,右,左手を上げたり,いる場所がわからないのに人がくる」という現象が客観的に存在するものとは認められず,当該現象に関する調査及び研究が総務省その他の関係機関において実施されているものとは容易に想定し難いから,当該現象が生じる理由について説明した文書が存在する蓋然性もまた,極めて低いものといわざるを得ない。このことと,上記のような総務大臣の説明及び総務省内の関係部署からの回答の状況とを併せ考慮すれば,本件不開示決定が行われた当時において,本件文書は不存在であったものと認められる。したがって,文書不存在を理由として本件文書の開示をしないこととした本件不開示決定は適法である。

 いや、実に常識的な判決だと思うぞ>裁判所。
 昔、研究室の教授宛にまさにこういう手紙が来たことがある。既にあちこちの大学に手紙を出しまくった後らしく、手紙は手書きのもののコピーで十数ページ、「○○大学の□□先生に問い合わせたら△△という回答であった。」といった内容が後半に列挙されていた。手紙の目的は、「このような電波で人をコントロールする方法について心当たりはないか」という問い合わせだった。教授から手紙を渡されて「よきにはからえ」と言われてしまったので、当時博士課程の院生だった私と友人でとにかく手紙を全部読んで、「大変申し訳ありませんが当研究室ではそのような技術の存在に心当たりはありません」という丁重なお返事を作文したのだった。

 いや~しかし、この手の話は、大学に来るだけかと思ったら、とうとう裁判所にまで到達していたのか……。


ここからは旧ブログのコメントです。


by 石田剛 at 2008-02-09 02:13:09
Re:平成17(行ウ)547 東京地裁判決

ニセ科学フォーラム2007 で伺った「磁石が水に影響して水質が変わった」の件といい。。。

判事の方のお仕事って、たいへんそうですね。
石田だったら、こういう文章を職務として公文書に書いて署名しているという不条理さに、耐えられないかもしれません。


by apj at 2008-02-01 08:49:01
Re:平成17(行ウ)547 東京地裁判決

石田剛さん、

 刑事訴訟で、公判中、弁護人と検察官と裁判官が誰も何も言わなかったってのがあったかと。あれは、ライフスペースの事件でしたっけ?
 あまりにも被告人の主張が意味不明すぎて、裁判所で言うべきことが無くなってしまったというか、何を訊いてもまったくわけがわからない状態なったとか、そういう話だったような。


by 石田剛 at 2008-02-45 16:45:45
Re:平成17(行ウ)547 東京地裁判決

> 弁護人と検察官と裁判官が誰も何も言わなかった
これもなかなかシュールな出来事ですね。

ときどき日本語として会話が成立してない議論を見かけますが、裁判でこれがあると、少なくとも判事の方は、どうしてもそれに付き合わなきゃならないんですね。
石田は議論の相手と日本語が通じてないことに気付いたら、「日本語通じてないよ」って指摘して、あとはどこがどう「日本語通じてないか」だけわかる状態にしておきますね。判事の方はそれだけでは仕事が済まないんですよねぇ。ほんとたいへんそうです。


by 旅人” at 2008-02-36 19:10:36
Re:平成17(行ウ)547 東京地裁判決

いつも思うんですが、世の中暇な人が多いんですね~。
訴訟一つでもお金と時間がかかるのに、何を思ってやっているのか・・・・。
そんな時間と金が有るなら俺にくれと言ってやりたいもんですね。
まあ、こうゆうのが趣味なんでしょうね~、趣味なら金も時間も関係ないか。_(-_-;)
それにしても付き合わされるほうは良い迷惑ですね。


by 酔うぞ at 2008-02-57 19:25:57
Re:平成17(行ウ)547 東京地裁判決

刑事事件に限定ですが、サンケイ新聞が「法廷ライブ」をネット限定でやっています(紙面に書くことが出来る量ではない)。

最近のは「セレブ妻、夫バラバラ殺害事件」ですが、これを読んでいると「この家庭はどうなっていたのか?」と想像しがたくなります。

こんな証言を経て判決を書く裁判官は大変だし、もちろん検察も弁護士も「どうなっているのだ?」思いながら進めているのでしょう。


by apj at 2008-02-51 20:00:51
Re:平成17(行ウ)547 東京地裁判決

旅人”さん、
 いや、きっとやってる本人は必死なんですよ。だから、忙しくても貧乏でもどうにかして頑張るということではないかと。
 第三者が客観的に見れば「おかわいそうに……」と思うだけでしょうが、本人にしてみれば、「電波で操られている」というのはかなり重大な事でしょう。あくまでも本人の主観でしかないのですが。
 裁判で状態が改善するとは思えないのですが、その判断ができるようならそもそも裁判所には来ないでしょうし。
 


by apj at 2008-02-41 23:13:41
Re:平成17(行ウ)547 東京地裁判決

酔うぞさん、
 そのセレブ妻の事件ですが、さっき、法廷ライブを見てきました。
被告の主張が真実なら、典型的な暴力夫が居る家庭に見えます。

 教訓を引き出すとしたら「もめたらさっさと別れ(させ)ろ」ですかねぇ。
 殺す以外に別れられない、となれば、追い詰められた側が殺人に走ることは十分に考えられます。意地を張って離婚を拒んだとしても、殺されてしまえばどのみち別れる結果になるから無意味だし、事件発生だけ余分だし。命を張ってまで犯罪者を作りたいという目的ならもうどうしようもないですが、そうでないなら別れろと。


by hir at 2008-02-45 02:25:45
Re:平成17(行ウ)547 東京地裁判決

個人的には、こういう訴えを出す人は強制的に精神科の診察を受けさせて、治療の要ありということなら措置入院ということを社会的にやってもよいくらいだと思っています。
統合失調症とかの問題はなくて単なる妄想だよとなった場合にもめそうとか、病気だった場合も落ち着いた後のフォローがなければ元の木阿弥ではなかろうかとか、医療費が増える政策はとりたがらないだろうとか、人権への配慮とか問題は山積していて誰もやりたがらないとも思いますが、
http://www.so-net.ne.jp/vivre/kokoro/psyqa.html
を眺めたりすると、とんでもだなあでは済まないものを感じます。


by newKamer at 2008-02-15 21:08:15
Re:平成17(行ウ)547 東京地裁判決

> 旅人さん

 別に暇なわけではなく、本人にとっては深刻な事態だったんじゃないでしょうか?これって、おそらく「集団ストーカー」問題ですよね??


by 技術開発者 at 2008-02-53 03:10:53
Re:平成17(行ウ)547 東京地裁判決

こんにちは、皆さん。かなりピンボケですが・・・

なんていうか発症率が100人に一人とされる病気の割には、日本人というのは、こういう病気の人に対する対応ができないのですよね。まあ歴史的経緯としては、「ひたすら隔離する」という方針で対処してきた事のせいではあるんですけどね。

なんて言うか、発症して急性期の症状なのは分かるんですが、それが何度目の急性期なのかは分からない。1度目の急性期に適切な治療を施すと陰性期を経て次第に社会復帰も可能な病気なのに、たいていは周りがまともな援助をしないから、陰性期と急性期の間を往復して、そのたびに治りにくくなってしまう病気なんですよね。

もちろん、周りの人にとって「不気味」なのは仕方が無いんですが、多くの人が不気味と感じた後の対処を知らなくて、ただ、ただ不気味だから避けたり嫌ったりという事しかできないんですよね。周りで感情的衝突を避けながら、何とか精神科を受診させていれば、それなりの治療の後で割と早く社会復帰もできたかもしれない人だと思います。


by 旅人” at 2008-02-16 08:14:16
Re:平成17(行ウ)547 東京地裁判決

まるほど。
被害妄想といってしまえばそれまでかもしれませんが、本人は必死なわけですから大変ですね。
ただ、人に迷惑をかけないうちに落ち着いて欲しいですね。