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相談された

Posted on 2月 20th, 2008 in 未分類 by apj

 午後の会議が終わって部屋に戻ったら、総務から電話が転送されてきた。またクレームかと思ったら(爆)、会社の方からの相談電話だった。
 山野井昇氏について私がウェブに批判を書いていたので問い合わせたということだった。
 以下、相談の内容。会=会社の方。
会「山野井昇氏は東大の先生なのか」
私「教務職員だったはず。研究室は持っていない。医用生体工学講座でも、メンバーのやっているような研究はしていなかったはず。今の身分は事務に確認すると正確にわかる」
会「今は助手になっている。電話もある。しかしいくら掛けても出ない」
私「電話があるかどうかと、教員かどうかは必ずしも関係ない。准教授以上は大抵電話付きオフィスがあるが、学生居室が電話付きのところもあるし、助手の部屋に電話が無い場合もある」
会「サトルエネルギー研究会で山野井氏が活動していて、本もたくさんある」
私「その研究会はニューサイエンスかニューエイジ系の集まり。少なくとも科学ではない。また、言論と出版は自由なので、本はどんな内容でも出せる」
会「微量元素と電子栄養学、などと言われると、科学と区別がつかない」
私「論文の有無で判断しないといけない。ただ、お手盛りの怪しい学術誌モドキもあるから、医学なら医学分野の専門家に、掲載雑誌がまともな学術雑誌かどうかは訊いた方がよい。継続的にどんな学会発表をしているかも参考にはなるが、どんな内容でも発表は可能なので、それだけでは信用できない。本と論文が違うところは、論文には査読があるというところ」
私「ところで、このような問い合わせということは、山野井氏の主張に乗った製品でも作って売るつもりなのか」
会「大々的に宣伝しようかと思っていた」
私「止めた方がよいと思う。特に、マイナスイオンは、根拠がないという批判が既になされているので、今からやるのはちょっと……」
会「マイナスイオンはニセだという批判があることは知っている」
私「それだけではなく、むしろ御社にとってリスクが大きい。もし、理屈がわからないが効果がある、という宣伝をしていたら、何かあって製造物責任を問われた時に、製品は関係ないという立証ができなくて裁判で負ける。科学的なメカニズムがある程度わかっていたら、何か被害が起きても、製品に関係無いという立証ができる。まだ起きていないケースだが、目端の利くクレーマーなら、科学でない製品の宣伝をねらい打ちにするだろう。とにかく気を付けて、変なものを信じないようにしてください」

 科学っぽい嘘を判別するのは、事業者にとっても難しいことがあるようだ。サトルエネルギーであれば、普通に自然科学の素養のある人なら変だと思うはずだが、そういう人が社内に居ないのだとすると、人材の分布も偏っているのかもしれない。