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何が必要になるかわからないよ

Posted on 11月 5th, 2008 in 倉庫 by apj

 先週、共通教育の内容へのコメントとして、学生さんから「学部でやる専門と違う内容なので、勉強して将来役立つことがあるでしょうか?」というのをもらった。多分、全国各地でそう思っている学生さんはたくさんいるんじゃないか。それで、年長者としてちょっとだけ説得を試みた。

 けちなことを言わずに、何でも勉強した方が良いよ。
 私の経験からすると、「勉強してなかったことが必要になる」ことの連続だった(でも、きっと、勉強して知っている知識を使う時は、それと意識しないで使うから印象に残らないのだろうね)。
 紆余曲折を言うと……物理出身なのに就職先は化学になった。趣味で触ったコンピュータは、卒業研究や修士の研究で実験装置の制御プログラムを組むのに役だった後、博士課程の間のバイトに役立ち、その後数年、職が無かった期間、食べていくための手段になった。航空機の制御やら航空管制のしくみが内容の、「航空電子工学」なんてものを高専で教えたこともある。これは電磁気学や、物理の実験で出会った簡単な制御理論の知識を動員してこなした。
 その後、水のニセ科学批判をやったら、いろいろ揉めることになって、これまでに裁判をやったし、今でも係争中である。自分で訴状を書いて本人訴訟をやったりもしたし、弁護士とも楽しくやっている。実は、数年前から法律を独学することにした。しかし、最初に法律を学んだのは、みんなと同じくらいの年齢の時に、大学の教養教育で法学をとったことがきっかけだった。その後10年ほどしてからまた自分で勉強することになったけど、その際の敷居を、教養教育の時の勉強がだいぶ下げてくれた。全くゼロというのと、多少やったことがあるというのは、だいぶ違う。
 大学4年間は専門をやるとしても、社会に出たって勉強は継続しないといけないし、きっと、どんどん、これまでやってなかったことが必要になる。人生、この先何が必要になるかはまだわからない。そんなことは誰にも予測できない。だから、いろいろ経験しておくと、その時は浅く知っているだけでも、次に必要になって勉強するときの、心理的な敷居はかなり低くなる。何でも貪欲に吸収するように心がけておくと、後で役立つこともあるよ。

 こんな話をざっくばらんにしてみた。

 どこかの分野の知識を完全に捨ててしまうのはもったいないし、将来そのことが足を引っ張るかもしれない。せっかくいろいろ勉強できるチャンスなのだから、ぜひ活かしてほしい。

 まあ、私だって、知らないことの方が多いのだけど、専門外の分野だからといって、頭から拒否したりしないように心がけるつもり。


ここからは旧ブログのコメントです。


by ageee at 2008-11-17 15:39:17
名文かも

全国の学生に読ませたい名文かも。自分の経験で語っているところがポイント高いと思います。

さっそく、娘(大1)と息子(高専1)に読ませることにします。


by RBの残党 at 2008-11-54 17:30:54
Re:何が必要になるかわからないよ

いろいろな分野を知ることは人脈を広げることにつながるでしょうし、その人脈の方がビジネスを運んでくるということもあるでしょう。そして、その出会いが「金の卵」か「トンデモ」なのか、判断するために、「トンデモ」関連知識は直接必要でしょう。いろいろ学ぶことで人にだまされないようになる。それは、基本的なことであり、誰もにあてはまることでしょうね。


by かとう at 2008-11-00 18:12:00
その通り。

本来、社会からも大学では、「手に職を附ける」事を期待
されているわけではないし。
#そういうスペシャリストが欲しければ、専門学校からとるし。
#あるいは、高度な専門知識が欲しければ、修士だし。

さまざまなことに対応出来る為には、昔で言う一般教養の
授業は必要であり、それが大卒に求められているもの。


by 酔うぞ at 2008-11-25 05:33:25
Re:何が必要になるかわからないよ

「学部でやる専門と違う内容なので、勉強して将来役立つことがあるでしょうか?」

その学生に「学部やる専門は卒業後に役に立つのか保証があるか?」と聞いてみたいですわ。


by omni at 2008-11-40 08:28:40
ええ、本当にその通りです

ええ、本当にその通りです。
私は応物系の研究をして就職したら、プラントエンジニアリング、つまり化学工学関係の開発をするはめになりました。それでも何とか製品を世の中に送り出すことができました。自分でテーマを選べるようになったのは30代の後半になっていました。それなりに最先端を走っていたと思ったら、どんでん返しが起こって研究撤退、その後、リサイクル関係の起業を担当したりしました。リサイクルは利権の世界ですから、その筋のヤーさんにお目にかかったりもしました。

第二外国語を趣味でフランス語にしたら、外国出張はなんとドイツ、通算すると1年以上になりました。それなり勉強したつもりのフランス語は、パリに一泊したときにちょっと使っただけ。会社で役に立ったとしたら、機械の取説を半ページ翻訳しただけでした。

若い時から仕事を選べたり、上司を選べたりはできないのが普通だと思います。管理職になったはなったで、今度は部下を選べないというか、戦力にならない人を抱え込むこともあります。これは企業ではよくあることですが、管理職としては大変です。頭数と人件費として確実にカウントされますから、会社からはそれに見合った成果を要求されます。それと、企業では、部下は上司の意向を理解して仕事をすることになります。部下が上司に対して、「私の立場や気持ちを理解して欲しい」では通用しませんから、じょうずに自己主張するだけのコミュニケーション能力が必要だと思います。


by 温泉カワセミ at 2008-11-51 10:47:51
勿体ない(笑)

apjさん、

こういう考え方の学生さんは多いのかもしれませんけど、せっかく追加料金も取らずに教えてくれるって言うのに、遠慮せんでも良ぇのにと思いますよね。

apjさんの実体験談は、かなり特殊事例(←失礼)が混じってるような気もしますが、学生さんに対する説得力は高いでしょうね。

ワタシなら『勉強して将来役立つことがあるでしょうか?』なんて訊かれたら、『「役に立つか?」や無うて「自分がどう役に立てるか」やっ!』って頭ごなしに叱ってしまいそうですが(^-^ 😉


by 多分役立たず(HNです) at 2008-11-43 07:02:43
話はずれますが。

水伝関係のHPを見ていて見かけて、どこかに投稿しようと思って忘れていたものです。

何かの役に立てばと思いこちらに。

朴斎雑志: 水に芸術はわからない
http://puzhai.cocolog-nifty.com/zazhi/2007/02/post_f593.html
#多分kikulogで見かけたと思うのですが。

朴斎雑志: どちらが不寛容か
http://puzhai.cocolog-nifty.com/zazhi/2008/03/post_5c47.html
相対性理論は間違っている、という方々や、似非科学を持ち出す方々の話を読む前に、一度目を通しておくと良いかも。

朴斎雑志: 辞書使いの辞書知らず その1
http://puzhai.cocolog-nifty.com/zazhi/2007/12/post_e692.html

他の記事も結構参考になりそうです。


by 杉山真大 at 2008-11-23 10:22:23
そうして考えると

兎角、「理科離れ」の問題を「技術立国」の観点で議論しちゃっているってのは、理科の応用範囲の広さが無視されているという問題もさることながら、「技術立国」を目指す必要が無ければ極端な話役に立つと思わなければ科学を学ばなくてもいい、ってミスリードを招く危うさがあるとも言えちゃいますね。「火の玉教授」を筆頭に技術立国の危機を絶叫して「子供は理系にせよ!」と言われる度に、「技術立国のために子供を育てろって、それ何て富国強兵?」って妙な反発を覚えるのは自分だけですかね?


by apj at 2008-11-06 12:29:06
生きていくために理科は必要

 別に技術立国を掲げなくたって、生きていくために理科は必要でしょう。
 ま、火の玉教授は放置でいいんじゃないですかね。はっきり言ってどうでもいいし。
 ってか、何でここのコメント欄で火の玉教授のネタばっかり持ち出すわけ?ちょっとしつこいんじゃないかと思うんだけど>杉山真大さん。そんなにこだわるなら批判サイトを作ったらいかがでしょう?


by 杉山真大 at 2008-11-32 19:59:32
無能な味方や勤勉な無能を放置するのは・・・・・

ただブログだけで書くならマシだとは思うんですよ。でも、「火の玉教授」の場合、それでオカルト批判をメディアで集中的に意識的にやってしまっているとこがあるし、加えて其処から人文系叩きや技術立国も露にする面がある。当人が「国策をリードする」なんて口にするから放置しようにもするのは拙いって気がするんじゃないかと。

無能な味方や勤勉な無能は、下手な強敵よりも脅威にも損害もなり得ることは考えた方が良いんじゃないかと。ニセ科学批判や科学リテラシーと言う観点からしても。


by 杉山真大 at 2008-11-58 20:06:58
あと技術立国絡みで

「生きていくために理科は必要でしょう」それで済むべきだというのは自分も同意しますよ。

ところが、世の「理科離れ」論者の話を聞いていると、必ず技術立国何鱈・製造業何鱈・技術者何鱈って話が無意識的に出てきちゃう。かの『理系白書』だって最近はそうでもないけど、最初の頃は技術立国に下手に絡ませていたんですから。

第一、技術立国の観点で言うなら、ノーベル賞を貰った下村氏なぞ殆ど評価されなかったと思います。こうした研究を支えるために金融工学(最近は旗色悪いけど)も認めているアメリカに比して、技術立国のために文系就職を邪道と考えている日本は懐が小さいんじゃないでしょうかね?


by apj at 2008-11-00 06:59:00
ルサンチマンにしか見えませんが

>当人が「国策をリードする」なんて口にするから放置しようにもするのは拙いって気がするんじゃないかと。

 真に受ける人なんか居ないのではないかと。言うだけなら勝手ですし。
#私が「今から日本を征服するぞ」と言いまくったとしたら、多分「おかわいそうに」「とうとういっちゃったか」と思う人ばっかりになるだけですよね。

>文系就職を邪道と考えている日本
 どういう種類の妄想ですか?

 金融工学は、数学が必要という観点からはむしろ「理系」ではないかと。というか、金融立国にしたいのなら経済学部には数学出来ないヤツは来るなと言わなければならないんじゃないの。

>無能な味方や勤勉な無能は、下手な強敵よりも脅威にも損害もなり得ることは考えた方が良いんじゃないかと。

 既に味方と呼べるような場所には居ないので当面放置で良い。と学会的にはとっくにウォッチ対象だし。


by 杉山真大 at 2008-11-37 10:01:37
「逆オカルト」「逆江原」としての「火の玉教授」

論点が二つに跨っているので、分けて書きます。
>真に受ける人なんか居ないのではないかと。
>既に味方と呼べるような場所には居ないので当面放置で良い。と学会的にはとっくにウォッチ対象だし。

そう理解している人がいれば良いんだけれど、問題はオカルト批判とか疑似科学批判で「火の玉教授」が呼ばれてしまうことにあるんじゃないかと思うのですよ。
#当人も「テレビ番組はオカルト批判以外断っている」なんて言ってるし
幾ら科学の側や疑似科学の批判側で評価されなくてもテレビに露出が多くなる分、それが疑似科学批判や理系の典型として理解されてしまう。言わば「逆オカルト」「逆江原」の様な状況になっちゃっているから、始末が悪いと言う訳で。確かにたま出版社長との掛け合い漫談は絵になりますけど、だからあれで科学批判を理解したつもりなるのはワイドショーの健康コーナーで健康情報を仕入れるのと何処が違うのでしょうかね?


by 杉山真大 at 2008-11-27 10:06:27
ルサンチマンや妄想で済む話ではないかと

>どういう種類の妄想ですか?
ということは、『理系白書』で取り上げたことも妄想になるのでしょうか?既に元記事が消えちゃっているので別ブログからの又引きになりますが。
http://d.hatena.ne.jp/manpukuya/20050325/rikei
「今回の取材では、いくつかの大学の研究室に『文系企業に就職した卒業生を紹介してほしい』と依頼したが、文系就職を機に卒業生と研究室の縁が切れているケースがかなりあったのに驚いた。『証券会社への就職を報告したら、教授が激怒した』と話す人もいた。これは不幸なことだ」
妄想どころか現実にある話だから、指摘している次第で。確かに現在apj様の身の回りではその様な状況も変化しているのかも知れませんが、でも現に理科離れや科学政策絡みの議論をすると、どうしても製造業とか技術立国とかの話が絡んじゃったりするんで辟易するんですよね。それって富国強兵の焼き直しかよ、って突っ込みたくなります。


by apj at 2008-11-07 10:30:07
範囲を広げすぎでは

杉山さんが書いた内容
>文系就職を邪道と考えている日本

杉山さんがこのように書く根拠とした内容
>「今回の取材では、いくつかの大学の研究室に『文系企業に就職した卒業生を紹介してほしい』と依頼したが、文系就職を機に卒業生と研究室の縁が切れているケースがかなりあったのに驚いた。『証券会社への就職を報告したら、教授が激怒した』と話す人もいた。これは不幸なことだ」

 どう見ても「日本」じゃなくて、「たまたま取材した一部の研究室」での話です。なお、理系の学部を出て理系に就職したって研究室の縁が切れているケースはいくらでもあるのでは。理系でどれだけ切れているかも言わないと……。


by 粗忽者@西原 at 2008-11-14 17:25:14
Re:何が必要になるかわからないよ

 失礼します。
 横ヤリになってしまいますが、少し。

 自分は大学の工学部で勉強している身なんですが、そのせいか「理科離れ」の問題を「技術立国」にからめて議論することにあまり抵抗感がありません。
 最近、卒論の指導を受けている先生とも「理科離れ」について話をさせていただいたんですが、とにかく工学部に人が来ないんだそうで。そういった危機感も下地にあるのかと。
 特に単科大学だと致命的みたいで。

 なお、自分は火の玉教授こと大槻教授が編集されている「物理数学One Point」シリーズで勉強している最中だったりします。研究職を目指している関係上、理学的な掘り下げがどうしても必要なんで。
 ……いや、このシリーズは真っ当な内容ですよ?


by かとう at 2008-11-29 18:53:29
理系でも

切れてる人たくさんいますよ。
そもそも、「企業に就職」であるから、研究室でやってた
研究と同じ領域の研究を企業でさせてもらえる人の方が
圧倒的に少ない現状、ほとんど切れていると形容しても
いいかも。
#OBと飲み会とか、同窓会とかそういうレベルは切れてる
#に入りますよね?
#研究に関しての情報交換が出来る=切れていないって
#定義で、上記は書いてます。
#人間的交流であれば、「ほとんど切れている」は、当然
#言いすぎです。


by かとう at 2008-11-54 20:10:54
ところで、

学内サーバのwikiの新入生向け情報の
「大学ってこんなところ」に、この話を書いてあげて欲しいっす。

書かれている通り、講義を自分で選択するって所は、
高校までの一方的に与えられる教育から、学問への
転換期で、こういう話を聞かせてあげたいタイミング
ですので。
「どの講義だと、単位とりやすい?」だけで選んじゃって
いくのは、もったいないしね。


by 杉山真大 at 2009-02-07 08:44:07
蒸し返しになりますが

本日、図書館の除籍本コーナーを漁っていたら件の「理系白書」の文系就職に関するコメントがみつかりました。中央公論2007年2月号に載っていた。2005年3月12日付毎日新聞に載っていた吉川弘之氏のコメントです。

「若者が社会に問いかけた重要なメッセージだったのに、大学は時代の転換点に気づかず、新しい技術者像も提示できなかった」

結局、文系就職というのを科学の応用範囲の広さとして捉えられず、技術立国の危機という狭い視点でしか見れなかった限界と解することも出来ると思うのですが。


by 杉山真大 at 2009-02-19 08:53:19
理工系が減ることがそんなに問題か?

>粗忽者@西原氏
その中央公論に載っていたグラフを見ると解かるのだけど、理系離れと騒がれている割に医歯薬とかは増えているし。理工系の減少も工学部の減少が目立っているのに過ぎないのですよね。

かつての様に「いい物をドンドン」で食える社会でないである以上、果たして昔の様な理工系重視ってのが果たして有効なんでしょうかね?apj様の物言いを借りれば「みんなで大量生産と技術開発で下手に売れないものを作った挙句、ゴミまみれで医者に罹るのも不自由する社会ってどうでしょう?」ってことになるのですが。


by 粗忽者@西原 at 2009-02-04 14:16:04
Re:理工系が減ることがそんなに問題か?

 何で自分? という気もしますが、名指しされてしまいましたし、失礼させてもらって。

>その中央公論に載っていたグラフを見ると解かるのだけど、理系離れと騒がれている割に医歯薬とかは増えているし。理工系の減少も工学部の減少が目立っているのに過ぎないのですよね。

 いや、ですから、その工学部へ来る生徒の減少が、工学部自体や生産業の危機意識につながっているんじゃないかといっただけなんですが。
 ただ、理学部での生徒数の減少が見られないなら、確かに理科離れとの関係を論ぜませんし、その部分は了解しました。

>かつての様に「いい物をドンドン」で食える社会でないである以上、果たして昔の様な理工系重視ってのが果たして有効なんでしょうかね?

 じゃあ、代案を出してください。自分は物心ついたころにバブル崩壊を経験した世代でして、実体を伴わない金融商品といったものにあまり信用を持てないんですよ。
 だからこそ、社会に役立つようなモノゴトを実際に生み出すことができる理工系の分野に魅力を感じて、今の立ち位置にいるんです。

 技術立国がそんなに御嫌いなら、加工貿易で黒字を出して得たこれまでの豊かさも、返上するのがスジだと思うんですがいかがでしょうか?
 こちとら実際に社会の役に立とうとがんばってる、卒論発表ひかえた大学生なんです。余計な茶々いれて徹夜なんてさせんで下さい。


by apj at 2009-02-59 20:16:59
文系といっても金融業だったのでは

杉山真大さん、

 文系就職といっても、行き先は金融業だったんじゃないですか。メーカーに行かずに銀行(外資の投資銀行含む)や証券会社に行ってしまうという話だったような……。
 すると、今回のサブプライムローン問題や、国内の内需壊滅状態を見ればわかるように、金融立国を目指したってダメだろうということや、新自由主義では内需が壊滅してぐだぐだになるということが実験済みとなったわけで、金融立国にも大疑問符がついているんじゃないですかね。ですから2005年の状況とは既に違っていますよね。2005年あたりまでは、新自由主義と規制緩和は善だと思ってたわけですけど、多分今はそうそう都合良くはいかないということがバレつつありますし。


by 杉山真大 at 2009-02-42 21:25:42
つか、バブル後の認識からして違いがあるのでは

>粗忽者@西原氏
>>じゃあ、代案を出してください。自分は物心ついたころにバブル崩壊を経験した世代でして、実体を伴わない金融商品といったものにあまり信用を持てないんですよ。
>>だからこそ、社会に役立つようなモノゴトを実際に生み出すことができる理工系の分野に魅力を感じて、今の立ち位置にいるんです。

うーん・・・実体を伴わないなんて言ったら、「社会に役立つようなモノゴト」とばかりに開発はしても売れなかったり役に立たなかったりするってのも似た様な話なのでは。おまけにメーカーの欠陥製品や大規模システムのダウン・偽装派遣も目にしているから、「技術立国」のスカぶりも充分過ぎるくらい理解してますし。
何より、「社会に役立つようなモノゴト」ってのがモノではなくてサービスやソフトで提供できる事態になっていて、消費者に受け入れられているのが現実ではないかと。

>>技術立国がそんなに御嫌いなら、加工貿易で黒字を出して得たこれまでの豊かさも、返上するのがスジだと思うんですがいかがでしょうか?

何か思うんだけど、これって農本主義の焼き直しなのでは?
技術立国で食えなくなっている現実があるのに、それでも技術立国でしか食える道が無い・他のを犠牲にしても理工系重視だ、ってのは本末転倒しているとしか思えない。


by 杉山真大 at 2009-02-47 21:34:47
それは「理工系」=「製造業」と同じステロタイプですね

>apj様
>>文系就職といっても、行き先は金融業だったんじゃないですか。

少なくとも毎日新聞での連載では、ITやサービス・商社など金融業に限った話ではなかったのですよね。「理工系」=「製造業」と同じステロタイプで、「文系就職」=「金融業」って妄想になっちゃっているのでは。

>>ですから2005年の状況とは既に違っていますよね。

今更、高度成長時代の「いいモノをドンドン」が機能するとは思えないし、そうなると社会制度を一挙に何十年前に逆回転させる「新自由主義」にならざるを得ないのですよね。
そもそも、金融立国の支えがあったから少なからず技術立国でも食えた側面も否定できないし、基礎研究の少なからざる部分が金融工学を駆使したファンドから出ていた現実もある。金融立国が行き詰ったからとは言え、だから製造業ってのも早計に過ぎるでしょう。そもそものファンダメンタルがダメダメなんだから。


by apj at 2009-02-20 21:40:20
じゃあ、何でなら食えると考えているのか教えて下さい

杉山真大さん、

>技術立国で食えなくなっている現実があるのに、それでも技術立国でしか食える道が無い・他のを犠牲にしても理工系重視だ、ってのは本末転倒しているとしか思えない。

 じゃあ、何でなら食えると考えているのか教えて下さい。

 金融立国も、今の制度だと、恐慌を防げないなら定期的にカタストロフ直行だということが明らかで欠陥ありまくりです。ちょっと前までは新自由主義にして金融で、と考えた人が居たようですが、既にチリとアルゼンチンの社会を崩壊させる結果を出したという素敵な実績があります(社会主義より崩壊が早かったような)。文系就職って、新自由主義の社会破壊効果が知れ渡る前の話じゃないんですかね。


by apj at 2009-02-25 21:44:25
Re:何が必要になるかわからないよ

>ITやサービス・商社など金融業に限った話ではなかったのですよね。

 じゃあどこに行ってるんですかね?
 サービス業が就業人口に占める割合は相当に増えてるし、一次産業は減ってる方だし、製造業以外となると、どこがあるんでしょうか?
 これ以外の文系就職って、官僚と法律関係(弁護士、弁理士、司法書士、行政書士、公認会計士とかその他の士業)ですか?でも、これって、有資格者の数が劇的に増えた話はないですよね。弁護士が最近増えてますが、「文系就職」と呼ばれるほどの人数が理系から参入できるだけの定数はもともと無かったですし。


by 杉山真大 at 2009-02-04 03:18:04
技術立国の必然性って?

>>文系就職って、新自由主義の社会破壊効果が知れ渡る前の話じゃないんですかね。

技術立国も、産業の主軸が農業から工業へと進む段階での成功体験に過ぎないのですが。しかし、工業よりサービスや商業が盛んになりハードよりソフトが稼げる時世になりつつあるから、有効性を持ち得なくなっている訳でして。

>>サービス業が就業人口に占める割合は相当に増えてるし、一次産業は減ってる方だし、製造業以外となると、どこがあるんでしょうか?

既に述べた筈なんですけど・・・・・製造業以外にも例えばサービス業やソフトだったり、経営企画や政策策定に関わるという選択肢もあるし、現に応用分野の一つになっていますし。
何か、製造業で技術開発するだけが能じゃないし、資源の少ない国が付加価値で食っていくというモデルにしても、それが必ずしも技術立国である必然性が見出せないのですけど。しかも技術立国であろうとするなら、新自由主義でしか存立し得ないというジレンマに陥っちゃう。

技術立国として優秀な人材をかき集めている国が、バリバリの新自由主義で福祉が遅れて格差が天文学的に大きいという現実は直視しないと。


by apj at 2009-02-55 03:24:55
誤読してましたm(_ _)m

杉山真大さん、

 書かれた内容を私が誤読していました。すみません。
 私が金融業を念頭においていたのに対し、杉山さんはサービス業やITも含めて、という意味で書いておられたんですね。了解しました。

>しかも技術立国であろうとするなら、新自由主義でしか存立し得ないというジレンマに陥っちゃう。

 逆に、サービス業でいくには内需が崩壊していては不可能ですから、新自由主義のままで、サービス業を中心にして国内経済を回すというのは有り得ないと思います。経済学は素人なのでこの辺の補強をしていただけると嬉しいのですが。
 理系の学生がITやサービス業に行った時点で、新自由主義を止めるという選択肢をとらないとまずかったんじゃないですかね。技術立国を取り下げるよりも先に。


by 杉山真大 at 2009-04-38 08:29:38
加藤尚武氏が興味深いこと言ってるんですよね

とあるウヨブログ経由で知ったのですが、思うとこあって自分でも取り上げたんですよね。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/233579/
http://mtcedar.txt-nifty.com/blog/2009/03/post-65e6.html

アメリカなら報酬だけではなく名声で引き付ける要因があるから、加藤氏の懸念もそこまで深刻にならないんじゃないかと思うのですが。これを日本で置き換えると、それこそ深刻な事態になるんじゃないかと推察するんですよね。世界的な名声ばかりアジア諸国の中でも評価されているとは言い難いのだし、それこそアメリカ以上に報酬で釣るしか他無いってことになっちゃう。

ただ、そうやって一握りの優秀な人間だけを優遇して今以上に格差をつけてしまうことが、果たして社会の持続性という観点からして望ましいのか・・・・・自分には疑問符がつくのですよね。それが技術立国によるものであれ、金融やサービス・ソフトによるものであれ。


by apj at 2009-04-51 12:05:51
保護主義にするしかないのでは

杉山真大さん、

 結局、グローバリゼーションだ新自由主義だ、とやって、人とモノの生産性やら価格競争やらをやれば、
・いい人材を確保したければ高給を払うしかない。そうでないと、より高給を払う他の国や企業との人材確保の競争に負けてしまう。
・他の国の低賃金労働者が働いて作った製品と価格競争するには、他の国と同じ水準の低賃金で労働者を働かせるしかない。そうでないと製品の価格競争に負けてしまう。
ということになりそうです。仰ることを実現するには、人の移動とモノの移動の両方に制限をかけてある程度保護主義にして、その中で格差が広がらないようにするしかなくなりそうに思うのですが……。


by 杉山真大 at 2009-10-21 08:08:21
NHKスペシャル「子どもに貧困がしのびよる」

黒川滋氏とこで知ったのですが。
http://kurokawashigeru.air-nifty.com/blog/2009/10/post-7ddb.html
「新自由主義なら、そうした世代を継続して持続していくコストを払えない産業を維持する必要はない。一時的な雇用不安があってもどんどん人件費の安い国に押しつけていけばいい。無理に国内にしがみつけておくことは弊害でしかないはずだろう」「ケインズ派であれば、そうした雇用や支出など需要を創出するとする。とくに子ども関連の事業は、人件費比率が高く、直接雇用となって経済効果に反映される。したがって子ども支援の政策を推進することは経済成長に寄与すると考える」「経済成長と経済構造の転換ができなかった90年代の初頭に、フィンランドが不況期に教育や子育ての政府支出を増加させたことを紹介して、後に成長のバネにした」

妙に納得しちゃうんですよね。持続するコストを著く低くしてかないとやっていけないからワープアの問題とか格差云々ってことになる訳で、それでも従前の技術立国神話に縋っているから却って自縄自縛になっているんじゃ・・・・・


by apj at 2009-10-23 08:44:23
Re:何が必要になるかわからないよ

杉山真大さん、

>持続するコストを著く低くしてかないとやっていけないからワープアの問題とか格差云々ってことになる訳で、それでも従前の技術立国神話に縋っているから却って自縄自縛になっているんじゃ・・・・・

 ワープアを生み出してるのって、製造業だけじゃなくてサービス業もじゃないですか?

 外貨を獲得できる方法があれば、そっちに流れるんじゃないですかね。
自縄自縛をやめたとして、何で稼ぐと良いとお考えですか?


by 杉山真大 at 2009-10-13 11:15:13
Re:何が必要になるかわからないよ

>ワープアを生み出してるのって、製造業だけじゃなくてサービス業も

それもそうなんだけど、現実問題製造業で稼ぐってのがどれだけ持続性をもてるか疑問に思っちゃうんですよね。例え高付加価値で稼ごうとしても消費者が支持しない訳で、逆に低コストの力技でコモディティーを量産して個別の問題はサービスで対応ってのが主流になっている訳で。
そもそも内橋克人氏の著作とかを読んでいると、その技術立国論って低コストに高付加価値で対抗ってワンパターンになっていて、それが支持されていないって現実があるんだし。以前「「みんなで和歌でも詠みながら、わびさびの世界に浸りつつ」と揶揄されちゃったけど(?)、実はそうしたソフトやサービスでしか稼げないんじゃないかと個人的には思うんですよね。


by apj at 2009-10-09 18:16:09
Re:何が必要になるかわからないよ

杉山真大さん、

>実はそうしたソフトやサービスでしか稼げないんじゃないかと個人的には思うんですよね。

 国内だけならそれでもいいかもしれないけど、対外的にはどうするのかが疑問なんですよ。
 当面は原油を筆頭に原材料の輸入なしではやっていけないわけで、それを買う金をどここかから稼いでこないといけない。それは国内でサービス業で稼ぎましょう、というのではまかなえないのでは。
 資源の輸入なしに持続可能にするのなら、それこそ、人口も生活水準もほとんど江戸時代まで戻さないと無理でしょう。


by 杉山真大 at 2009-10-11 19:25:11
ソフトやサービスでも外貨を稼げるのでは?

ソフトとかサービスって、国内市場でしか稼げないものなのでしょうかね?例えばコンビニとかセキュリティとかは日本企業が海外に進出しているし、ジャパンクールなどと日本発のソフトが海外で好評だったりしますからね(尤も、それとて多くのワープアを抱えている現実はあるのだけど[:困り:])。

で、同じワープアを抱えざるを得ないのなら、果たして実入りの悪い従前の製造業に縋りつく必然性があるのかが疑問なんですよね。


by 技術開発者 at 2009-10-43 02:37:43
Re:何が必要になるかわからないよ

こんにちは、杉山真大さん。

ちょうど今、労働組合の機関誌にそういうネタの原稿を書いて居た所なので説明させてください。実は9月の末にドイツで総選挙がありまして、これまで中道右派のキリスト教民主・社会同盟が、中道左派の社会民主党と連立を組んで、それなりに社会保障の充実と市場経済とのバランスをとってきたのだけど、ついに耐えきれなくなって、社会民主党との連立を解消して新自由主義を掲げる自由民主党との連立政権になったんですね。

実は、こういう流れは結構予測できていたんですね。というのは、ドイツはヨーロッパには比較的珍しい「外需依存経済」の国なんですね。外需依存の経済に陥る限り、社会保障政策にはいずれ破綻が生じて「小さな政府」を目指す新自由主義政策を取らなくてはならなくなるというのは経済の観点から必然性があるんです。まあ、その必然性を解説する原稿を書いて居た訳ね(笑)。逆に言うと、新自由主義経済から決別して、社会保障の充実をしたければ、経済の外需依存体質から改めない限りできないという事なんだけどね。

なんていうか、杉山さんは「貿易の目的」って輸出と輸入のどちらだと思いますか?私が勉強した限りでは、輸入が主目的なんですね。国内で生産出来ない、あるいは生産効率の良くない物を手に入れたいかに貿易が起こると考えるのが普通なんです。とはいえ、外貨を稼がずに輸入はできないから、輸入したい物を必要な量だけ輸入できるだけの外貨を輸出により稼ぐ事になる訳です。世界の多くの国はこういう考え方で貿易をする訳ですが、日本とかドイツの様に「内需で達成出来ない成長を輸出により達成しよう」とすると比較的珍しい「外需依存」という現象がおきる訳です。その結果、経済成長はそれなりに維持出来るけど、無理に輸出した分だけ、国内の産業が輸入に押されて、国内の産業間格差が増大し、それに対策しようとして国家財政が破綻をはじめるから、破綻しないように国内の格差是正を諦める、つまり「小さな政府」になっていく事になります。


by 技術開発者 at 2009-10-24 02:49:24
Re:何が必要になるかわからないよ

こんにちは、apjさん。

「専門と違う内容なので、勉強して将来役立つことがあるでしょうか?」の結論みたいな人間が私ですよね(笑)。上で経済学の事なんか書いていますが、大学では一般教養としてマルクス経済学を学んだだけです。その後、公務員試験なんてのを受けるときにケインズ経済学に関する一般教養の問題がでるので、ケインズも一般教養レベルではやった訳ね。

その後もどうも世の中の流れが、きちんと勉強しないと分からないから、経済学なんかの本は仕事に就いてからも読み続けたあげくにこうなっている(笑)。ご存じの様に法学とか心理学も同じ様なものですね。役にたつというのを「おまんま食える」という意味で言うと、あまり役にはたたないけど、上でapjさんと杉山さんの議論に、少し経済学的な視点からチャチャを入れて見る程度の事をするのには「役にたつ」訳です。


by 杉山真大 at 2009-10-15 04:23:15
リカード以来の真理ですよね

>技術開発者氏
比較優位の秀でたとこに特化して劣っている部分は輸入で賄うってのは、一応経済学を勉強しているんで承知の上なんですが(笑)、内橋克人氏に言わせると日本の外需依存ってのは比較優位とも違う企業が覇権を取るって側面が強い訳ですからね。
で、その比較優位の根源って技術的な優秀さというより生産性の高さだったりしますし。それ故に発展途上国が生産性で追い付いちゃうと比較優位で無くなっちゃう訳で、だから技術開発で高付加価値で勝負すれば今度は消費者の性向とはかけ離れたとこに向かっちゃう・・・・・

何だかなぁ・・・科学技術立国を動機として理科に関心を向かわせるってのが有効でなくなっているんじゃないかと個人的には考えている次第なんです。科学技術立国が有効な時分ならまだしも、状況が変わって有効性を持ち得なくなってしまったら関心を持ちようが無いのですから。しかも、その技術立国の内実すら、現実には問題だらけって来ているし。


by 杉山真大 at 2009-10-34 05:58:34
よく考えてみると

日本の工業化ってのは、輸入しないがために始めた様なものだったりするんですよね。明治の工業化からして、外国から機械を輸入するのを国産品で代替しようってのが始まりだった訳で。それでも原材料は国内産だったりするし、それこそ輸入依存だったのは戦前では石油くらいだったのですから。
巷間言われている「無資源国だから科学技術立国」ってのも、現実には戦後の高度成長時代からだったのだし、しかも輸入というより輸出を目的としていたのだから今では有効性を持てなくなっているのかも知れないですよね。

そうそう、『世界』の最新号で内需拡大のために福祉を重視しようって論考が載っていたそうで。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-c452.html


by apj at 2009-10-41 06:26:41
技術立国ではなくて技術防衛国じゃないとまずい

杉山真大さん、

>機械を輸入するのを国産品で代替しようってのが始まりだった訳で。

 これが今は機械どころじゃないわけで。
 ロケットは国産で何とか技術確保できたけど、戦闘機は作れないから、アメリカに足元を見られてぼったくられている。

 多分、外需依存で経済発展、というよりも、
・石油と、それ以外に必要なもの(たとえば、肥料の原料など)を買う分だけは輸出で稼ぐ。
・外国から、しょうもないものをぼったくり価格で売りつけられないでも済むように、自前の技術レベルを一定水準に保っておく。
というのが、戦略上必要じゃないですかね。


by 技術開発者 at 2009-10-01 18:15:01
貨幣そのものは着れない食えない住めないからね

こんにちは、杉山真大さん、apjさん。

日本の工業化ってのは、輸入しないがために始めた様なものだったりするんですよね。

私はまさにその近代化の時代を幾分は支えた研究所の末にいるんですね。私の所は陶磁器でした。外国の加工機械があれば、国内で部品が製造出来るかもしれないけど、その加工機械を買う外貨が無い頃に、土や石と薪をくべて加熱する炉で作れる陶磁器は外貨獲得の花形だったんですよ。私の研究所にはその時代のヨーロッパの陶磁器のコレクションがあるんですね。必死になって「外国に受けるデザイン」を探究して、国内の陶磁器メーカーがひたすら作って輸出することで外貨を稼いで、それで加工機械を輸入する。そうするとその加工機で部品や製品の国産化ができる訳ですよ(笑)。そしてやがては、部品を輸出して加工機をを作るのに必要な超硬度材料などを輸入して加工機をつくる様になり、やがて超硬度材料なども原料さえ輸入すれば国内で作れる様に成っていった訳です。

>多分、外需依存で経済発展、というよりも、
>・石油と、それ以外に必要なもの(たとえば、肥料の原料など)を買う分だけは輸出で稼ぐ。
>・外国から、しょうもないものをぼったくり価格で売りつけられないでも済むように、自前の技術レベルを一定水準に保っておく。
>というのが、戦略上必要じゃないですかね。

まさに、そこなんです。日本の貿易額は約80兆円に達していますが、1980年以降ずっと輸出超過でして、今年こそ差額が少ないですが、ここ25年くらい、だいたい10兆円程度の輸出超過になっています。
http://www.customs.go.jp/toukei/suii/html/data/y0.pdf

そして、約70兆円の輸入品にしめる原油や天然ガスなど日本が国内で産出できないものの占める割合というのは、だいたい30兆円くらいなんです。残りの40兆円くらいは衣料品や食品あるいは電子部品などのもともと日本でも作ることができたものになっている訳です。40兆円と言いますが、これがもし国内で生産されるなら、400万人規模の雇用に換算されるのではないかと思います。つまり、それだけの人が輸入に押されて失業するという計算になるわけです。まあ、その分輸出品を作るところで雇用がされいは居るのですが、日本の場合には、金額に対する雇用係数の低い物を輸出して、雇用係数の高いものを輸入していますから、40兆円の輸出によって起こっている雇用は輸入によって失われる雇用をカバー仕切れないというか、カバーするためには常に輸出超過をし続けなくては成らなくなっている訳です。
そういう理屈を理解して欲しいわけですね。


by 杉山真大 at 2009-10-13 05:15:13
戦略として成り立たなくなっているのではないかと

>apj様
>>外国から、しょうもないものをぼったくり価格で売りつけられないでも済むように、自前の技術レベルを一定水準に保っておく

それが通用しなくなっているから、苦悩の種になっているんじゃないかと。昔の様に技術の値段がブラックボックスになっているケースが限られてくる上に、下手すれば汎用品で先進技術と同じ効果を実現出来ちゃっているケースもままある訳でして。
それこそ、その”戦略的視点”からすればガラパゴス化なんて当然ではあっても経済的に引き合わなくても感受すべきことってなっちゃう[:雫:]

>技術開発者氏
>>金額に対する雇用係数の低い物を輸出して、雇用係数の高いものを輸入
そのために雇用係数の高い産業へ目先を買えて外貨を稼ぐってなる筈なのに、雇用係数の低い産業で如何に付加価値を稼ぐかって議論の方向が向かっちゃってるんですよね。で、それがある程度は巧くいっていたと思ってそのまま進んだら行き詰っちゃった。
何か「カバーするためには常に輸出超過をし続けなくては成らなくなっている」ってので、飢餓輸出ってのを思い出すのは見当違いなんですかね?


by nomad at 2009-10-18 07:56:18
Re:何が必要になるかわからないよ

むむむ?
衣料と食品に高い関税をかければ雇用は回復する!
というふうに結びついちゃったけど…

なんかえらい落とし穴がありそうな気がする。


by いろものさんの近所 at 2009-10-30 19:09:30
Re:何が必要になるかわからないよ

ではなくて 、「自由貿易体制みたいなのが経済学ではみんなの幸福度を最大化できる」みたいな単純かつ素朴な考え方があるようなのですが 、現実にそれに近い事を実行したら、少数の幸福な人と多量の不幸な人が生まれたってのがここ数年の動きなのではないかと。

で、ここのエントリーに戻ると、「経済学なんてのは机上の空論以外何物でもないが、それらしきものをもとに経済政策が決められるので、机上の空論と認識して少し勉強していれば、未来の政策が予想でき、それはそれで役に立つ」っつーのが、私の結論でふ。


by Atlantis.sawamura at 2009-10-47 17:25:47
少しモザイク寄せ集めな考え方

以前、簡易なニセ科学の判定基準で出した書籍にも、「とりえる選択肢の結果」→その分のフィードバック要素、という内容があって、

多分、状態遷移図やダイアグラム理論(ちょっとリンクを失念)を構築すると、計算不能になってしまいそうな気がします。
あの車椅子の相対性理論者が言った、世界シミュレータは構築可能だが、現実構築は無理、と言った内容になりそうですが。

ただ、それをはしょって、ヒューリスティックに結論する(つまりは安直に推論する、という事ですが)と、やはり、どこかに得意技というか、偏りができる先行技術の塊、というのがあると思うのですよ。
よく、コアコンピタンスとかいいますが、例えばシャープの液晶とか、以前はソニーのカスタマ志向(スマート趣味?)とか。
ただし、液晶もソニーもそうですが、これを安さで駆逐されてしまっているのが、今の問題で、それゆえ、安さが労働者を抑えた関係で、ワーキングプアが発生してしまっている。

そういう意味では、あまり分野を限定するのは、私はいいことだとは思っていませんが、ただし、やはり、コアはどこだ、と正確に突き止めるのが重要かな、と思っています。

そういう意味では、フリーターの言葉をワーキングプアに置き換えた努力までは買います。ただし、実際に給与の向上になっていない。(どうやら、好景気になった際にもそうなっていないようです)
http://d.hatena.ne.jp/iDES/20090921/1253519904

で、さて、どうしたものやら。というところですね。
個人的に、ものすごく変な論だし、誰も支持してくれない、とは思っているのですが、実は成果に向かって努力し続ければ、成果がでなくても評価し続ける成果主義(ってどんなや…)が有効かも、とか妄想したりもしますが。それが内需の購買圧力になっていく、というパターン。

もちろん、これも、いつかは成果を挙げる実態がなければだめですが…。


by Atlantis.sawamura at 2009-10-56 17:29:56
補足

フリーターの言葉を…の部分は、実態を表さない「フリーター」の言葉を止めて、「ワーキングプア」の言葉を使い、実態に向き合う、みたいな意味で書きました。
その努力までは買うけど、その後が続いていない、というような意味です。


by 技術開発者 at 2009-10-42 00:10:42
輸出と輸入はペアものだからね

こんにちは、皆さん。

亀レスですが、少し書きますね。

>飢餓輸出ってのを思い出すのは見当違いなんですかね?

飢餓輸出というのは、国内の一部の層が必要とするものを輸入するための外貨が欲しくて、貧民を飢えさせても輸出をするという事ですから、貿易の目的である「輸入したい物があるから輸出する」という面では健康的(?)なんですね。日本やドイツのように「とにかく輸出したいから、国内の産業が衰退しても輸入して相手に輸出を受け入れるだけの外貨を渡したい」というのは「自殺輸入」とでも言うべきかもしれません。

>衣料と食品に高い関税をかければ雇用は回復する!
>というふうに結びついちゃったけど…

残念だけど、輸入関税では解決出来ないのね。なんていうか輸出と輸入はペアなのね。相手が欲しがる物を輸出する限り、相手に外貨を稼がせるために輸入をしないわけにはいかないからね。何が起こるかというと関税の効果を打ち消すように為替レートの変動が起こる(円高になるのね)。もちろん円高になるぶんだけ輸出はしにくくなるので多少の効果はあるんだけど、日本人は「輸出する」という事にカルト宗教の信者が教義を信仰するかのごとくにはまっているから、下請けメーカーを泣かせたり、労働者を非正規雇用にしたりして、輸出を守ろうとするのね。そうすると国民の可処分所得が減って国内での売れ行きが下がり、その分を輸出で稼ごうとするという動きが起こるだけね。

>「自由貿易体制みたいなのが経済学ではみんなの幸福度を最大化できる」みたいな単純かつ素朴な考え方があるようなのですが 、

もともと厚生経済学以外の経済学では幸福と言う概念は扱っていない面があってね。他の経済学では「経済活動が効率的かどうか」という評価軸でみます。経済活動が効率的に行われると幸福がもたらされるかどうかは、むしろ社会学とか政治学の範疇ですね。上で「飢餓輸出」なんて話もでているけど、国民を飢え死にさせて輸出して外貨を稼ぐことが経済的に「効率的」かどうかは評価できます。それが幸福かどうかは、国民に判断して貰うしかないですね。ただ「輸出信仰」にどっぷりはまっている日本国民なら「それでも輸出が順調だから幸福だ」と幸福に感じるかもしれません。この部分は宗教学であつかうべきかも知れないですね。


by 杉山真大 at 2009-10-44 06:28:44
輸出信仰というのか・・・・・

>「輸出する」という事にカルト宗教の信者が教義を信仰するかのごとくにはまっている

輸出すれば他国に依存しなくて済む、って考えなのかも知れませんよね。他国から輸入すれば底を見られるからって、疑心暗鬼的な恐怖と言うべきなのか。
カルトって話が出てきたけど、今ネットで人気(?)の三橋貴明もその辺りの疑心暗鬼感が根強いって気がするんですよね。輸出依存じゃないってのを強調し、技術立国を説き、”特定アジア”の脅威を力説しているんだし。
http://xurl.jp/dr7a


by apj at 2009-10-47 07:55:47
Re:何が必要になるかわからないよ

 本当は、自国で技術が無くて生産できなかった場合に、足元見られてぼったくられるか、相手の商談をアテにして振り回されて大損するか(戦闘機の調達が今まさにこれ、国内の関連技術の維持まで危ぶまれる事態になってる)なんですよね。だから、自分トコで使うものを自分トコで作れりゃ、輸出まではしなくたって、他国に依存する状態にはならないはずなんですが。


by 杉山真大 at 2009-10-20 08:48:20
それが輸出信仰に行き着く訳で

>apj様
>>自分トコで使うものを自分トコで作れりゃ、輸出まではしなくたって、他国に依存する状態にはならないはず
作って採算が合うってのならまだしも、それが巧くいく例が限られてるんですよね。

だから日本に続く発展途上国なんかだと、供給元を特定国家一辺倒にしないでおいたり、技術を特別駆使しなくてもオペレーションやマネジメント・サービスで補うってことになったりしちゃう。これだと輸出信仰に走らずとも、足元を見られずに済みますからね。