磁気活水器の宣伝に理科の演示実験が登場
mimonさんにコピーを譲っていただいた、「磁気サムライ」(マグローブと給水用具認定番号が同一の製品)の宣伝パンフより。
やじろべえの両端にキュウリをつけて、磁石を近づける写真が掲載されていて、説明文に曰く
磁気で水が動く
キュウリが揺れる、グルグル回る
「やじろべぇ」の両眼にキュウリを刺して磁石を近づけると、「やじろべぇ」はグルグル回ります。これはキュウリの中の水分が磁石に反発するためです。実際キュウリがひからびると「やじろべぇ」は動きません。
これは、水が「反磁性体」であることを見せるための、理科の演示実験ネタである。キュウリの代わりに、プチトマトをやじろべえの両端に取り付けても同様の実験が可能である。
こんなことを書いた以上、水で、いわゆる強磁性体(鉄やニッケルなど)のように、磁場の影響が磁場を取り去った後にまで残ることはないと理解したのかと思ったら……。
磁気活水器は、この力を利用して水を活性化します。
いやだから、その力は弱いから効果は期待できないってば。水の反磁性磁化率が小さいから、やじろべえにしてネオジム磁石でも使わないと、なかなかわからないわけで。
宣伝の残りはどこかで見たような文句が並んでいたが、この例1つとってみても、都合のよいネタをつまみ食いにして、全体がどうなっているかなどまるで考えていないことが丸わかりである。
ここからは旧ブログのコメントです。
by Tony bugbird Ohta at 2009-08-16 08:45:16
ぜんぜん関係ないのだけれど…
岩波の科学映画シリーズで、重力の存在を見せる実験があったのを思い出しました。
どうやるかというと、小玉スイカぐらいの鉛の玉と、ガラス糸で懸垂した米粒くらいのガラス玉を近寄せるのですね。
鉛玉はベアリングで滑走する台の上に乗っててそれほど大げさな力をかけなくても移動できるようになっていて、これを滑らせてガラス玉に近寄せるとスイっとガラス玉が吸い寄せられるのです。で、そこから鉛玉を戻そうとすると、ガラス玉がそれにくっついて行く。さらに鉛玉を戻すとはがれるようにガラス玉が鉛玉から離れる。
ガラス玉と鉛玉という組み合わせは、磁力や静電気の影響を排除する理由だったという説明があったと記憶してるけど、まるで磁力のようにふるまっている重力の存在を目の当たりに見せられた実験はかなり衝撃的でした。重力は日常的に存在するから、却ってその存在そのものを示すことが難しいわけで、それをこうした実験で示してみせたわけですね。
理屈で理解してはいるつもりでも、それを現象として確認できるという意味はものすごく大きいです。岩波の科学映画シリーズは、そういう意味で私の科学的好奇心の形成を促すこととなったものの一つであったことは間違いないようです。
by apj at 2009-08-53 10:14:53
言われてみれば……
Tony bugbird Ohtaさん、
その重力ですが、逆二乗の法則に従うことは、高校の教科書にも出ています。でもって、距離が遠い方は非常によく検証されているんですが、距離が近くなると実験的検証が容易でないため、ミリ以下あたりだったかで、本当に成り立っているか実験で確かめられていない、という話をどこかで読んでびっくりしました。言われてみればそうなのか、と思うわけですが。
>ガラス玉と鉛玉という組み合わせは、磁力や静電気の影響を排除する理由
ですよね。程よいサイズや材料の組みあわせがあるんでしょうね。サイズが小さすぎると、糸が帯電した効果なんてのが混じってきそうですし。
by まいまい at 2009-08-03 19:52:03
お月様ならどこまでもついてくる
ええと、磁気活性器の力が本物であったとして、コップや鍋・風呂桶は通常のものですよね。
磁石が離れるにしたがって、ヤジロベエは動きを止めるわけですから、「磁気サムライ(マグローブ)」の効果は活性器から離れると無くなってしまう、という演示実験であると思うのですが。
サムライカップ・鍋とかサムライ風呂桶とか売りつけるつもりでしょうか?
by apj at 2009-08-23 21:08:23
Re:磁気活水器の宣伝に理科の演示実験が登場
まいまいさん、
>サムライカップ・鍋とかサムライ風呂桶とか
それこそ、その辺の埃に紛れて飛んでいる鉄粉をどんどん集めそうですし、くっついたら最後取り除くのが容易ではないような。
by mimon at 2009-08-06 19:00:06
磁気サムライ
磁気サムライのサイトが復活しています。
http://www.jiki-samurai.com/
対象が業務用なのか、産業用なのか、はっきりしませんね。
業務用なら、お風呂屋さんとか飲食店などですから、設備の担当が手薄で、騙されて導入する事があるかもしれませんが、産業用途は、プラントですから、私のような設備担当の技師がついていますので、騙される事は、まずありません。
by ごんべえ at 2009-08-16 19:51:16
Re:磁気活水器の宣伝に理科の演示実験が登場
> それこそ、その辺の埃に紛れて飛んでいる鉄粉をどんどん集めそうですし、くっついたら最後取り除くのが容易ではないような。
水に砂鉄などの強磁性体が混じっていたらそれをトラップする効果はあったりするわけですね。でも、そういう効果を狙うなら、磁石をはずして中を洗えるようにしておかないとだめなような。
by apj at 2009-08-01 20:29:01
「節電器」の二の舞
mimonさん、
一般消費者だと景表法と特商法による救済が可能なことは、はっきりしています。
しかし、個人事業主を狙って、設備として売り込まれると、当該商品については実際の判断能力は一般消費者と大差無い(その事業主が取り扱っているもの=当然知識を持っているはずの内容から外れるから)のに、事業のための設備ということになって、多少グレーになってきます。丁寧に状況を説明して法律への当てはめをすれば救済可能かもしれませんが、ハードルは上がるし手間も増えそうです。「節電器」のときは、このパターンで、被害が広がりました。磁気活水器も、既に、マンションベンダーやマンション管理組合など、防衛能力が手薄で、かつ、一般消費者としての救済が届きにくいところを狙ってきているようです。
by scheme at 2009-08-59 20:42:59
え~、そうでしょうか?
Tony bugbird Ohtaさんのおっしゃる重力(万有引力)の実験は、なんか嘘くさくないですか。
1. 万有引力の確認なら、鉛玉の相手はガラス玉よりも同じ大きさの鉛玉の方が有効、吊るす糸の質量も関係無し(いとも引っ張られるから)。
2.「小玉スイカ」の大きさが分りませんが、直径30cm(150kg)ぐらいと仮定してざっくり計算すると、鉛玉の表面での引力は4.4×10^-7、重力加速度との比は4.6×10^-6ぐらい。1mの糸で吊るしたとして4.6μmしか引き寄せられません。
3. スイカぐらいの鉛玉で確認できるなら、キャベンディッシュはそんなに苦労しなかったはず。それどころかガリレオの時代に(万有引力が)とうに発見されてたでしょう。
「岩波」というの映画だから信頼できるのかもしれませんが、大手メーカーが詠うマイナス何チャラと同じような気がします。
by mimon at 2009-08-55 22:44:55
そうなんですよね
apjさん、
業務用の世界に逃げ込まれると、独禁法の
http://www.jftc.go.jp/dk/fukousei.html
「ぎまん的顧客誘引」という、広い概念でしか規制できなくなりますから、立件が難しくなります。
その割りに、農家とか、理髪店とか、無用心な人がいそうです。