市販のDVDソフトには,著作権保護のためダビングできないようにプロテクトがかかっている。このため,買ってきたDVDを再生した信号をパソコンに取り込んで個人的に利用しようとしても,ビデオキャプチャーがコピープロテクトに対応していると,画像が表示されず,見れなかったりする。パソコン内蔵のCD/DVDプレーヤーでも見れない場合があるそうだが,さすがにこれはまだ経験していないが・・・。ところが,プロテクトすると外す手段が必ずでてきて,今やプロテクトが有名無実化し,日本映像ソフト協会がクレームを出している。slashdot.jpでもこんなふうに話題になった。私はMacユーザなので,Windows環境でDVDのコピーがどういう状況か詳しくは知らないが,読んだ限りではコピーできるソフトが出回っているようである。
実は,DVDをコピー手段としては,ソフトだけではなく,ハードウェアも販売されている。正式には画像安定化装置という名前で売られている装置で,本来の目的は,画質がよくないビデオをデジタル化して保存するときに画質を良くするための装置であるが,これを通すと市販のビデオやDVDまでコピーできてしまうようだ。当然この行為は違法である。
ところが,今回,DVDのコピーでも画質を良くするという目的でもない理由でコピーガードキャンセラーを購入することになってしまった。
遊びの話で恐縮だが,この春,SONY Computer Entertainment(SCE)のPlayStation2(PS2)を購入した。どうしても手に入れてやってみたいPlayStation用のソフトがあったのだが,今やPS2が主流になりつつあるので,まあ買うならPS2だろうと思ったのだ。
PS2を買ったはいいが,ウチにテレビがないから画像を出せない。ここで素直にテレビを買えば良かったのだが,1人暮らしなので荷物を増やしたくないし,軽い液晶テレビはまだ割高感がある。さらに,私はパソコン(PowerBookG4, 1GHz)を持っているから,液晶ディスプレイを1つ持っていることになる。PS2でゲームをしながら同時にパソコンで作業することはちょっと無理なので,PBG4にPS2のゲーム画面が出れば,別にディスプレイを買う必要はなくなる。大体,画面ばっかり増えても一人暮らしではどうしようもない。
PBG4はそのままでは外部のビデオ信号を取りこめないので,PS2の画像を出すためには,画像キャプチャの装置を介して接続しなければならない。そこで,アイ・オーデータ機器の,ハードウェアDVエンコーダ搭載 TVチューナーBOX(GV-1394TV/M)を購入した。
PS2---GV1394TV/M---PBG4というふうに接続してみたら,PS2用のソフトは問題なくMacに画像も音声も出るのに,PS用のソフトはどれも画像が出ないことがわかった。これでは,肝心の目的を果たせない。
最初は,PS2の問題ではないかと思って,SCEのサポートに修理依頼を出したのだが,「現象を再現しない」ということで戻ってきた。GV1394TV/Mのマニュアルには,一部のゲーム機には対応していない旨書かれているが,一番売れ筋のPSソフトが全部だめというのはちょっと対応していなさ過ぎる。
問題を切り分けるために,中古ゲームショップへ行って,PSOne本体と携帯用液晶ディスプレイを購入した。液晶ディスプレイはPSOne本体にネジで直接取り付ける専用のものである。これでPS用ソフトを再生して,動くことを確認してから,再度映像と音声をGV1394TV/Mに入れてみたのだが,やっぱり画像は出ないままである。さらに,変換ケーブルとコネクタを買ってきて,PS2でPS用のゲームソフトを再生しながら,その信号をPSOneのディスプレイの外部入力端子に入れてみたら,ちゃんと表示される。これで,少なくともPS2本体は普通にビデオ信号を出していることが確認できた。
PSOneを買ったのならPS用ゲームはそっちでやればいいと思う人もいるかもしれないが,中古で買ったので読み取りヘッドが動くときにガーガー音がしてうるさくて興ざめだし,携帯用ディスプレイはやっぱり小さ過ぎる。PS2ではPS用ソフトも遊べるはずなのにウチの環境でそうなっていないのはどうしても納得できない。
次に考えたのは,GV1394TV/M側に何か問題があるのでは?ということだ。マニュアルを読むと,コピーガード信号を検出したら画像再生を中止するようになっていると書いてある。もし,PS用ソフト再生時にコピーガード信号だと誤認するような信号が最初のうちにたまたま出ていたとしたら,GV1394TV/Mが動作しないかもしれない。そこで,SCEのサービスセンターに電話をした。「PS用ソフト実行時のビデオ信号はPS2用ソフト実行時のビデオ信号と全く同じものが出ていますか?PS用ソフトをプレイしているときの信号には,ビデオ録画できないようなプロテクト信号が入っていますか?」と質問したら,「普通に家庭用のビデオデッキで録画できます。プロテクトはしていません」という返事だった。ビデオ信号の種類については明確な答えが無かった。
このことから,GV1394TV/Mのプロテクト検出信号の実装が甘いのでは?と疑った。それならば,世の中にはコピーガードキャンセラーなる装置があるので,こいつを介して接続してやれば画像が出るのではないかと考えて,ネットで調べて,エスケイネット(株)のパワースタビライザー3DWProを注文した。初期ロットに不具合があってファームウェアアップデートが必要という情報もあったので,直接エスケイネットに購入を申し込むことにした。
実はこれを注文した直後に,上記slashdotの話題が出た。現在私が置かれている状況を投稿してみたら,PSの画像信号は通常のビデオ信号(NTSC)はなくて疑似NTSCというものだというフォローがついた。大抵の民生用機器では疑似NTSCにも対応しているので画像が表示されるが,キャプチャボードで対応しているものはない,どうしてもキャプチャーしたければ一度ビデオデッキに録画したものをキャプチャーするしかない,ということだった。カノープス電子のウェブページでも,自社製キャプチャーボードはPSの疑似NTSC信号に対応していないということだった。録画することが目的なのではなく,ゲームをすることが目的なので,一旦ビデオに落とせというのでは意味がない。私はこの手の映像関係は素人なので,疑似NTSC信号があるということも知らなかったし,それがどういう信号なのかを描くことができない。ただ,この指摘を読んで,しまった早まった,これはひょっとして間違ったものを買ってしまったか・・・と思ったのだが・・・・。
さて,3DWProが届いたので,画像信号について,PS2---3DWPro---GV1394TV/M---PBG4という接続をしてみた。今回は,Sビデオケーブルを用いて接続した。音声の方はPS2---GV1394TV/M---PBG4という接続である。3DWProを普通に接続した状態でPS2にPS用ソフトを入れてみたら,PBG4に画像が表示されるようになった。どうやら,3DWProは疑似NTSC信号をキャプチャできるNTSC信号に変えてくれるらしい。また,この状態で市販のDVDソフトをPS2に入れて再生すると,GV1394TV/Mは動作しなかったので,この状態ではDVDに対するコピーガードは正常に動作していた。次に,3DWProのRESET+SATULATION(-)同時押しをしてみた。すると,PS用のソフトの再生とDVDの再生の両方の画像がGV1394TV/M経由でPBG4に表示されるようになった。
まだ,手持ちのPS用ソフトを全部試したわけではないので,中にはできないものもあるかもしれない。今週末にでもいろいろ試してみるつもりだ。
ということで,3DWProとGV1394TV/Mの組み合わせでは,DVDコピーガードキャンセル機能を使わない状態でも,PS用ゲーム画像を表示することができた。3DWProのどの機能がこれを実現してくれたのかは,私にはよくわからない。画像信号の素人にとってはいまのところまったくのブラックボックスであり,結果オーライという状態だ。画像安定化装置は他にもいろいろあるし,実装によってはPSの画像をキャプチャする機能がコピーガードキャンセル機能と一体となっているものもあるかもしれない。いずれにしても,キャプチャーボードのメーカーが対応してない疑似NTSC信号でも,画像安定化装置を通すと何とかなるという実例となっていることは確かだ。
SCEが「プロテクトなどしていません」というのに,そのままではキャプチャできない画像信号を,画像安定化装置にかけてパソコンの画面に出してゲームをする行為は・・・当然合法である。
それにしても,SCEのサポートの情報の出し方が悪い。私はちゃんと「PS用ソフト実行時のビデオ信号はPS2用ソフト実行時のビデオ信号と全く同じものが出ていますか?」と質問したのに,これについてはまともに答えず,後の方にだけ答えてくれた。私は,もうちょっとでアイ・オーデータ機器に間違ったクレームをつけるところだった。訊かれたことには正確に答えて欲しい。サポートの応対の態度はとても丁寧だったが,必要な情報が得られないのでは意味がない。PS用ソフト実行時のビデオ信号が疑似NTSCだというのは,別に企業秘密でも何でもないだろう。一言疑似NTSCだと言ってくれれば,キーワードを頼りに後からネットで調べたりできるのに。
slashdotで信号が疑似NTSCであることを指摘してくれた方には感謝したい。この指摘がなければ,3DWProを使ってPSの画像が表示されることがわかったら,アイ・オーデータ機器にに対して「コピープロテクト対応の実装がタコだ」と大クレームをつけて誤爆するところだった。