発表論文一覧

内容

冨永教授がお茶大に来る前の仕事

No.論文要約
1 "Magnetic Properties of CuCr2SexS4-x"
K.Ohbayashi and Y.Tominaga, J.Phys.Soc. Japan 24 (1968) 1173-1174
磁性半導体である、CuCr2S4 とCuCr2Se4は、スピネル型構造をしており、全領域で固溶体をつくる。従って、この物質の磁気構造と伝導現象との相関を明らかにするために、まずX線回折で結晶構造を、磁化測定で時期的性質を明らかにした。この結果、x=1の固溶体では硫黄とセレンが、結晶のなかで秩序構造そしているとすると、X線回折の結果をよく説明できることが分かった。それに伴い磁気的な異常も発見された。
2 "Study of the Critical Behavior of TGS by Thermal Noise Measurments"
Y.Tominaga and S. Iida, J.Phys.Soc. Japan 32 (1972) 1437
秩序無秩序型強誘電体TGS(硫酸グリシン)の熱雑音を測定し、相転移近傍を含む広い温度領域の誘電率を解析した。熱雑音測定は外部からの入力なしに、電気的ゆらぎを測定する方法なので物理的に興味深いが、信号強度が極めて微弱で、測定例が極めて少ない。この論文では、微弱な熱雑音を電気的に共鳴させる方法を新しく開発し、熱雑音の周波数解析をすることにより、広い温度範囲にわたってTGSからの熱雑音の測定に成功した。 (学位論文の一部)
3 "Study of the Critical Behavior of TGS by Thermal Noise Measurments"
Y.Tominaga and S. Iida, J.Phys.Soc. Japan 32 (1972) 1437
秩序無秩序型強誘電体TGS(硫酸グリシン)の熱雑音を測定し、相転移近傍を含む広い温度領域の誘電率を解析した。熱雑音測定は外部からの入力なしに、電気的ゆらぎを測定する方法なので物理的に興味深いが、信号強度が極めて微弱で、測定例が極めて少ない。この論文では、微弱な熱雑音を電気的に共鳴させる方法を新しく開発し、熱雑音の周波数解析をすることにより、広い温度範囲にわたってTGSからの熱雑音の測定に成功した。 (学位論文の一部)
4 (博士学位論文)
"熱雑音測定法による臨界現象の研究"
冨永靖徳, 東京大学理学系研究科 昭和 48年3月
この研究は、熱雑音測定という方法によって、強誘電性相転移点近傍での誘電的特性を明らかにしたものである。熱雑音測定法の特徴は、外部からはいかなる入力も与えず、物質の出す雑音を信号として扱う点で、通常の測定とは、著しい対照をなしており、物理的にも大変興味深い。まず、微弱な熱雑音を電気的に共鳴させる方法を新しく開発し、熱雑音の周波数解析をすることにより、広い温度範囲にわたってTGSからの熱雑音の測定と解析に成功した。また、一次の相転移をする AgNa(NO2)2 について、この方法で、始めて相転移近傍での誘電緩和時間を測定することに成功した。 学術論文 2 および 3 を参照。
5 "Dispersion Relation of Over-damped Soft E-Polariton in Tetraglnal BaTiO3"
Y.Tominaga and T.Nakamura, Solid State Commun. 15 (1974) 1193-1198
正方晶BaTiO3の極性フォノンモードは、フォトンと結合して連成波、ポラリトンになっている。このうち、低振動数に存在する過減衰したE-モードによるE-ポラリトンの波数ベクトル依存性を、準前方ラマン散乱の角度変化から測定することに成功した。これから、長波長領域でのポラリトンの分散関係を、はじめて精度よく決めることができた。これから、過減衰して、緩和モードとの区別が明らかでなかった低振動数E-モードがたしかに、振動モードであることがわかった。
6 "On the Polariton frequency of a Damped Phonon"
Y.Tominaga, S. Wada and S. Iida, Physics Letters 50A (1974) 5-6
この論文は、誘電率の大きい誘電体において、最も低い分枝の最低振動数のポラリトンについてのスペクトルの形状を理論的に解析したものである。低振動数領域のポラリトンはしばしば、過減衰になっており、スペクトル形状が振動型か緩和型かの区別がつきにくい。このような場合でも、ポラリトンの動的感受率と振動数の積を作ると、固有振動数とその減衰定数が正しく得られることがわかった。
7 "Temperature Dependence of Dispersion Relation of Over-damped E-Polariton in BaTiO3"
Y. Tominaga and T.Nakamura, J. Phys. Soc. Japan 39 (1975) 746-752
正方晶BaTiO3の過減衰したE-ポラリトンの分散関係の温度変化を準前方ラマン散乱より測定した。このポラリトンの分散関係の傾きから、90-300 GHz程度の周波数領域の誘電率εaが得られた。誘電率 εa の温度変化を通常の誘電測定から得られた5 MHz、250 MHzでの誘電率の温度変化と比べることにより、この物質では数100 MHzの領域に分散のあることがはじめてわかった。
8 "Discrepancy of Dielectric Constant Between Mhz Region and Rman Frequency Region in Tetragonal BaTiO3"
Y. Tominaga and T.Nakamura, Solid State Commun. 19 (1976) 87-90
正方晶BaTiO3のa 軸方向の誘電率は、数MHzの周波数領域とラマン周波数領域(90 GHz - 300 GHz)の間に誘電分散をもつことが、誘電測定とE-ポラリトンの測定から明らかになった。この誘電分散をデバイ型として解析すると、室温での正方晶BaTiO3が、約6℃で斜方晶に構造相転移する際、この相転移に向かって分極の揺らぎによる緩和時間が大きくなり、スペクトルの中心成分の強度が増大することが明らかになった。

目次に戻る

お茶大での発表論文

No.論文要約
9 "Forward and Backward Raman Scattering from KH2PO4"
Y. Tominaga and T.Nakamura, Ferroelectrics 21 (1978) 317-318
KH2PO4(KDP)に対する後方ラマン散乱によってはじめてB2(z)既約表現の縦波モードの測定に成功した。この結果はこのモードの振動数よりさらに低い振動数領域にB2(z)既約表現の横波モードが存在することを意味しており、この物質の相転移の機構に対する新しい発見である。また、前方ラマン散乱からは、B2表現のポラリトンが測定された。E(x,y)既約表現に対しても、縦波と横波をはじめて分けて測定することができ、この物質の動的性質に対する新しい知見が得られた。
10 "Raman Scattering Specta of B2-Polariton and B2(LO) Modes in Paraelectric KDP"
Y.Tominaga and T.Nakamura, Solid State Commun. 27 (1978) 1375-1377
常誘電相のKDP(リン酸二水素カリウム)のラマン散乱において、準前方散乱 z(xy)z+Dyと後方散乱z(xy)-zの配置でそれぞれ、B2ポラリトンとB2表現の縦波をはじめて測定することに成功した。準前方配置では、散乱角度を(q=0.20゜-0.48゜)まで小さくすると、ストークス側とアンチストークス側の両方に横波フォノンによるポラリトンのピークを観測することができた。この事と、縦波のスペクトルを観測できたことから、(xy)散乱配置で測定される最低振動数のモードには、少なくとも一つ、フォノンの性格をもつ横波が存在する事がわかった。
11 "E-Symmetry Raman spectra of KH2PO4"
Y.Tominaga,T.Nakamura and M.Udagawa, J.Phys.Soc. Japan 46(1979) 574-576
KH2PO4の常誘電相でE(x,y)既約表現に属する低振動数領域のラマンスペクトルは、プラトーな部分をもつ特異な形をしている。このラマンスペクトルの横波の成分と縦波の成分を、はじめて分離して測定した。従来の混合E-スペクトルのプラトー成分は縦波成分で消失し、横波成分のみに属することがわかった。このE既約表現は、x軸あるいはy軸に沿った水素の動きに対応するものであるので、特異なプラトー成分が水素結合上の水素の集団的な動きに対応すると思われる。
12 "Raman Scattering Study on anomalous Low-Lying Response in LiNH4C4H4O6・H2O Crystal"
M.Udagawa, Y.Tominaga, K.Kohn, T.Nakamura and M.Maeda, J.Phys.Soc. Japan 47(1979) 869-873
LiNH4C4H4O6・H2O(LAT:酒石酸リチウムアンモニウム)結晶の低エネルギー励起のB2対称性モードを、ラマン散乱によって横波と縦波を分離して77 K から室温まで温度変化を測定することに成功した。この結晶の中心成分にあるプラトーな応答は横波と縦波の両方に存在し、横波のプラトー成分の強度は、室温から強弾性相転移点98 K に向かって減少し、相転移点以下では消失することがわかった。また、この応答がアンモニウムイオンによるものではないことが、他の類似の結晶の測定結果からわかった。
13 "E-Mode Raman spectra and Hydrogen bonds in Paraelectric KH2PO4"
Y.Tominaga and H.Urabe, J. Phys. Soc. Japan 50 (1981) 5-6
常誘電相のKDPの横波E-モードスペクトルの低エネルギー領域に存在する特異なスペクトルが、結合振動子のモデルで、プラトーな応答を含めてスペクトル形状をよく再現できることがわかった。この結合振動子として、2本の低振動数のフォノンモードと、1本の過減衰した水素モードを考えた。解析の結果、水素モードの固有振動数が1320 cm-1、減衰定数が900 cm-1と得られた。この水素モードはE(TO)のスペクトルには明確なピークとしては現れておらず、強く過減衰していることと一致している。
14 "Hypersonic dispersion in tetragonal BaTiO3 measured by double-axis Brillouin spectroscopy and determination of dielectric constant"
Y.Tominaga, M.Udagawa, Phys. Rev. B 23 (1981) 1664-1669
正方晶チタン酸バリウム(BaTiO3)の[101]方向に進む横波音響フォノンの室温での分散関係を、新しく開発した角度依存性を測定できる2軸型ブリュアン散乱の方法で測定した。この横波音響フォノンは弾性定数C44に関係しており、圧電相互作用を介してE-対称性の最低振動数の横波光学フォノンと結合している。測定から得られたGHz領域での音波の分散を圧電結合モデルで解析した結果、10-50 GHz領域の誘電関数を決めることができ、従来の誘電分散の谷間を埋めることができた。
15 "Low Frequency Raman Spectra of DNA"
H.Urabe and Y.Tominaga, J. Phys. Soc. Japan 50 (1981) 3543-3544
DNA(デオキシリボ核酸)の水溶液のラマン低振動数領域のラマン散乱を測定した。水溶液のラマンスペクトルからバッファーの分子振動が消えるまでバッファー溶液のラマンスペクトルを差し引くと85 cm-1付近の低振動数領域に振動モードが現れた。このモードは、DNA水溶液の温度を上げて、2重らせんを融解すると消失することから、DNA2重らせんを特徴づける集団振動モードの1つであることがわかった。
16 "Low-Lying B2(LO) Raman Spectra in Paraelectric KH2PO4"
Y. Tominaga and H.Urabe, J. Phys. Soc. Japan 50 (1981) 3841-3842
KDP(リン酸二水素カリウム)の常誘電相のB2対称性の縦波モードの温度変化を後方ラマン散乱によって測定した。縦波モードのスペクトルには、明確なフォノンピークが測定され、振動数はほとんど温度変化しなかった。 KDPでは強誘電性相転移にともなう揺らぎが、 B2対称性の横波モードとしてy(xy)xのスペクトルに現れるはずであるが、スペクトルが特異な形をしているため、なかなか特定できかった。この論文の実験によって、y(xy)xのラマンスペクトルには、少なくとも一つの横波フォノンが存在することが明らかになった。
17 "Raman Spectra and Lattice Dyanmics of KH2PO4"
Y. Tominaga and H. Urabe, J. Phys. Soc. Japan 50 (1981) 3841-3842
この論文はKDP(リン酸二水素カリウム)のラマン散乱にかんするものである。1)pure E(TO)のラマンスペクトルの低振動数領域のプラトー成分が、2本のTOフォノンモードと強く過減衰した水素モードとの結合で説明できること、2)約110 cm-1に明確なフォノンモードとして、pure B2(LO)モードを見つけたこと、従って、この振動数以下にB2(TO)モードが存在すること、3)約20 cm-1以下の超低振動数領域にスペクトルの中心成分として緩和型のモードを見つけ、このモードが相転移に重要な役割を果たしていることを明らかにした。
18 "Central Component of y(xy)x Raman Spectra in Paraelectric KH2PO4"
Y. Tominaga and H. Urabe, Solid State Commun. 41 (1982) 561-564
KDP(リン酸二水素カリウム)のy(xy)x常誘電相でのラマン散乱スペクトルは、巾の広いレーリーウイングとして知られている。この論文では、このスペクトルのなかで、20cm-1以下の超低振動数成分が、強誘電性相転移点に向かってスペクトル強度急激に増大し、スペクトル巾が急激に狭くなることを、はじめて発見した。いままで見過ごされていたこの結果は、 y(xy)xのラマンスペクトルの解釈に重大な変更をもたらすもので、その後のKDPの相転移機構に対する議論の出発点になった。
19 "Phase Transition in K2SO4 at 56 K"
K.Gesi, Y.Tominaga and H.Urabe, Ferroelectrics Letters 44 (1982) 71-75
K2SO4(硫酸カリウム)の交流比熱と100 KHzの誘電率の温度変化を室温かた液体ヘリウム温度4.2 Kまで測定した。その結果、T = 56 Kにl型の比熱の異常と、誘電率の温度変化に折れ曲がりが見つかり、この温度で構造相転移が存在することがわかった。しかし、中性子回折の実験結果からは、同族結晶のK2SeO4 に見られるincommennsuratez 型の構造や超格子構造は得られなかった。また、この相転移点以下の構造は強誘電体でもないことがわかった。
20 "Low-Lying Collective Modes of DNA Double Helix by Raman Spectroscopy"
H.Urabe and Y.Tominaga, Biopolymers 21 (1982) 2477-2482
子牛の胸腺から抽出したDNAの相対湿度を50%から98%まで変化させながらラマンスペクトルを解析し、相対湿度の増加とともに、A型からB型へこの構造変化に伴う低振動数領域のモードの特徴をはじめて明らかにした。とくに、A型で22 cm-1の振動モードが、B型へ変化するとともに、14 cm-1まで振動数が下がり、最後にshoulderになっていく様子が測定された。このモードがDNAの2重らせん構造に特徴的なモードであることが示唆された。
21 "Raman-active torsional vibration in DNA molecule"
M.Tsuboi, Y.Tominaga and H.Urabe, J. Chem. Phys. 78 (1983) 991-992
時間分解の蛍光測定でDNAのtorsional motionに対する剛性率がわかってきた。一方、低振動数領域でのラマン散乱分光から、20cm-1以下にDNA2重らせんの集団モードが我々のグループで見つかってきた。この論文では、振動モードの解析に使われるGF行列法を用い、実験的な剛性率と、DNAの慣性能率を考える事により、ラマン散乱で得られた集団モードの振動数を説明することを試みた。
22 "Experimental evidence of collective vibration in DNA double helix (Raman spectroscopy)"
H.Urabe, Y.Tominaga and K.Kubota, J. Chem. Phys. 78 (1983) 5937-5939
子牛胸腺から抽出された固体DNA fiberの低振動数ラマン散乱スペクトルを解析した。A型とB型について、散乱ベクトルを変化させた測定結果から、低振動数の集団モードは、分極率テンソルa(yz)あるいはa(xz)に関係するモードであることがわかった。この解析から、A型で22 cm-1、B型で16 cm-1のDNA2重らせんに特有の集団モードはtorsional motion を含むものであることが示唆された。
23 "Raman Spectra of Low-lying Longitudinal Mode in KDP1-xDKDPx Mixed Crystals"
Y.Tominaga, M.Kasahara, M.Tokunaga, H.Urabe and I.Tatsuzaki, Ferroelectrics Letters 44 (1983) 265-269
KDP(リン酸二水素カリウム)とその重水素化塩DKDPの混晶のラマン散乱より、最低振動数の縦波フォノンについて解析した。この縦波フォノンは、KDPではunder-dampedであるが、重水の濃度が増加するにつれて、減衰が大きくなることがわかった。縦波の存在は対応する横波の存在を示しており、水素結合型強誘電体相転移の動的機構と重水素置換効果についての新しい知見をつけ加えた。
24 "Study on ferroelectric Phase Transition of KH2PO4 by Raman Scattering -- Objection to the Proton Tunneling Model --"
Y.Tominaga, Ferroelectrics 52 (1983) 91-100
KDP(リン酸二水素カリウム)の強誘電性相転移の機構については、これまでプロトントンネリングモデルが提唱され、DKDPとの同位体効果が説明されていた。これに対してこの論文では、KDPの超低振動数領域ラマン散乱を含む低振動数ラマン散乱と高振動数領域のラマンスペクトルを、整合性よく解析することにより、プロトントンネリングモデルが実験事実に反することを決定的に示し、相転移の機構がPO4四面体の秩序無秩序型として矛盾なく説明されることを示した。
25 "Raman Spectra of Low-lying Longitudinal Mode of KH2PO4 and KD2PO4 in Ferroelectric Phase"
Y.Tominaga, M.Kasahara, H.Urabe and I.Tatsuzaki, Solid State Commun. 47 (1983) 835-837
水素結合型強誘電体のKDPとその重水素塩DKDPの強誘電性相転移の機構はこれまで、プロトントンネリングモデルで説明され、強誘電相でKDPだけに存在し、DKDPには存在しないとされている横波モードをプロトントンネリングモードと帰属されていた。この論文では、この横波に対応する縦波モードを強誘電相で発見し、しかもその振動数が重水素塩DKDPのほうがKDPより高くなっていることがわかった。これは、問題のモードがプロトントンネリングモードであることを完全に否定する結果である。
26 "Internal Modes and Local Symmetry of PO4 Tetrahedrons in KH2PO4 by Raman Scattering"
Y.Tominaga, H.Urabe and M.Tokunaga, Solid State Commun. 48 (1983) 265-267
KDP(リン酸二水素カリウム)の常誘電相と強誘電性相で、ラマン散乱スペクトルの偏光特性の解析から、PO4の内部振動モード選択則の解析をおこなった。その結果、常誘電相においても、PO4四面体の局所対称姓がS4ではなくて、強誘電相と同じC2であることがわかった。つまり、常誘電相は強誘電相の平均構造として、静的にはPO4四面体の対称姓がS4になっていると考えることができ、相転移の機構が秩序無秩序型であることが結論された。
27 "Raman spectroscopic Study on Ferroelectric PhaseTransition in KH2PO4"
Y.Tominaga, Proc. IX Int. Conf. on Raman Spectroscopy (1984) 38-41
この論文は、ラマン分光の国際会議のInvited paper で、3編の論文17) 24) 25)をまとめたものである。KDP強誘電性相転移に対するプロトントンネリングモデルが、ラマン散乱の実験と矛盾する事を、高振動数領域でのPO4四面体の内部振動の解析、低振動数領域でのプロトンモードの否定、超低振動数領域での緩和モードの発見、の3つの観点から示した。プロトントンネリングモデルにかわるモデルとして、歪んだPO4四面体の秩序無秩序型の相転移を提案した。
28 "Spectrum of Light Quasi-Elastically Scattered from Suspensions of Tobacco Mosaic Virus. Experimental Study of Anisotropy in Translational Diffusion"
K.Kubota, H.Urabe, Y.Tominaga and S.Fujime, Macromolecules 17 (1984) 2096-2104
完全に剛直な棒状分子として振舞う典型的物質であるタバコモザイイクヴィールスの懸濁液の動的光散乱の測定をおこない、そのスペクトルの解析から並進拡散の異方性を検討した。並進と回転の運動モードのカップリングを評価した理論とその近似解を求めることにより、並進の異方性が光散乱測定から正しく決定できる事を示し、これまで議論のあったこの問題に結論を与え、また、棒状分子においての並進と回転のカップリングの重要性を明らかにした。
29 "Collective vibrational modes in molecular assembly of DNA and its application to biological systems. Low frequency Raman Spectroscopy"
Y.Tominaga, Y.Nishimura, K.Kubota and M.Tsuboi, J. Chem. Phys. 82 (1985) 531-535
DNAの低エネルギー励起モードの性格を探るため凝集状態の違うDNAの低振動数ラマンスペクトルを解析した。この結果、85cm-1付近の巾の広いバンドは凝集状態の違にほとんどよらないことがわかった。これに対し、16 cm-1付近のシャープな振動モードは、ファイバー、ラムダファージのペレット、クロマチンのペレット、ヌクレオソームの溶液、B-DNAの水溶液等、凝集状態に強く依存することがわかった。これは、ラマンスペクトル解析で生体系でのDNAの凝集状態を推測できる可能性を与える。
30 "Scattering Wave Vector Dependence of Raman Intensity of the n1 Internal Mode in KH2PO4"
Y.Tominaga, M.Tokunaga and I.Tatsuzaki, Solid State Commun. 54 (1985) 979-980
KH2PO4 (リン酸二水素カリウム)のPO4四面体の910 cm-1の全対称ν1内部振動モードを偏光配置(yx)でz(yx)yからx(yx)yまで変化させて角度依存性を室温で測定した。その結果、どの配置でもν1のスペクトルが測定され、さらにその強度に強い散乱ベクトル依存性があることがはじめてわかった。(yx)の配置でν1モードが測定されることは、PO4四面体の局所対称性が常誘電相でも、強誘電相と同じC2まで低下しているもことを示すものである。
31 "Coupled dyanmics between DNA double helix and hydrated water by low frequency Raman spectroscopy"
Y.Tominaga, M.Shida, K.Kubota, H.Urabe, Y.Nishimura and M.Tsuboi, J. Chem. Phys. 83 (1985) 5972-5975
DNAゲルのラマン散乱スペクトルに存在する、50 cm-1以下の低振動数モードの温度変化を0℃から-140℃まで測定した。スペクトルの形はDNAに弱く結合した水和水の凍結に対応して、-20℃の付近で急激に変化する。このスペクトル変化を水和水の緩和モードと、DNAの振動モードの結合モードのモデルで解析した。その結果水和水の緩和時間として0℃でτ〜4×10-12sを得た。
32 "Dynamic Light Scattering Study of Suspensions of Purple Membrane"
K.Kubota, Y.Tominaga, S.Fujime, J.Otomo and A.Ikegami, Biophys. Chem. 23 (1985) 15-29
生物系において見られる円板状物体である紫膜を用いて先に定式化した我々の理論の検証を行うと同時に、紫膜の特性解析を行った。得られた実験結果は、理論的定式とよく一致し、並進拡散の大きな寄与と解析におけるこの重要性が確認出来た。膜状物質の最初の光散乱測定解析として、今後2次元系への応用の出発点を与えるものとしての基礎となった。
33 "Dynamical Mechanism of Ferroelectric Phase Transttion in KH2PO4 by Raman Scatering Study"
Y.Tominaga, M.Tokunaga and I.Tatsuzaki, J.J.Appl.Phys. 24 (1985) suppl. 917-919
KH2PO4の強誘電性相転移の動的な機構について、局所的に歪んだPO4双極子による「秩序無秩序型」であることを、ラマン散乱スペクトルの解析からあきらかにした。また、常誘電相でソフトモードの現れるx(yx)yスペクトルに、プロトントンネリングモードが存在し得ないこと、スペクトルの中心成分は、局所対称性がC2まで低下しているPO4四面体の緩和モードと、選択則の破れによって現れているPO4の束縛回転モードの成分と解釈できることを示し、孤立相極子の緩和時間をτ0 = 0.13×10-12sであると評価した。
34 "Order-disorder Model of PO4 Dipole in KDP Based on Recent Raman Spectroscopic Studies"
M.Tokunaga, Y.Tominaga and I.Tatsuzaki, Ferroelecttrics 63 (1985) 171-178
我々は、KH2PO4の強誘電性相転移の機構について、ラマン散乱の実験結果を矛盾無く説明するためには、PO4双極子の秩序無秩序型がもっとも整合性がよいことを示してきた。この実験結果に対して、理論的側面からも検討した論文である。PO4双極子とスレーターが最初に提唱したice ruleを満たすプロトンの秩序無秩序のモデルを合わせると、 H2PO4双極子の秩序無秩序型が考えられるが、このモデルの理論的な転移エントロピーは、大きくなり過ぎることがわかり、単純なH2PO4双極子の考えでは不十分であることがわかった。
35 "Preparation of New Organosols of CdS and CuS and their Utilization in Preparing MS-poly(acrylonitrile) Composites (M=Cd, Cu); the Semiconducting Properties of the Composites"
T.Yamamoto, A.Taniguchi, K.Kubota and Y.Tominaga, Inorganica Chimica Acta 104 (1985) 171-178
CdSおよびCuSのオルガノゾルの剛性を行い、その粒径の測定から時間経過とともに粒径の増大がおこることをみいだした。そして、ポリアクリロニトリルとのコンポジット系へのこれの応用および半導体的性質の解析をおこなった。これから、オルガノゾルを生成することを利用したコンポジットの材料開発について、検討をくわえた。
36 "Electrical Conduction Properties of CuS- and CdS-polymer Composites Prepared by Using New Organosols of CuS and CdS"
T.Yamamoto, E.Kubota, A.Taniguchi, K.Kubota and Y.Tominaga, J.Material Sci. Letters 5 (1986) 132-134
CuSおよびCdSのオルガノゾルを用いたポリマーコンポジット系の電気伝導の性質をしらべ、半導体としての応用について検討した。CuS-PAN(polyacrylonitrile)系では、p-型の伝導特性を示し、 CdS-PAN系ではn型の伝導特性をしました。また、 CuS-PANフィルムと CdS-PANフィルムを用いた、p-n接合が整流特性を示すこともわかった。
37 "Quasielastic Light-Scattering study of Semiflexible Polymers. Poly(gamma-benzyl L-glutamate) in Dimethylformamide"
K.Kubota, Y.Tominaga and S.Fujime, Macromoelcules 19 (1986) 1604-1612
PBLGのDMF溶液の動的光散乱測定を行い、PBLGの半屈曲的特性にもとずく分子の内部運動を解析し、その特質をあきらかにした。藤目らによる、この系についての理論的研究の定式が妥当なものであることを確認すると共に、半屈曲性高分子の静的、動的構造の特性解析が光散乱法により可能であることをしめした。
38 "Quasielastic Light-scatering Study on Changes in Sizes of Native White Membranes after Addition of Retinal"
J.Marque, A.Ikegami, K.Kubota, Y.Tominaga and S.Fujime, Biophys. J. 50 (1986) 139-144
円板状物質の動的光散乱の理論の検証と応用として、レチナールを欠損した紫膜 (Whilte membrane) の光散乱を研究した。レチナールの添加の前後でのスペクトルの変化から、この添加と視物質との相互作用との関係を検討し、このような2次元系の構造解析への光散乱の適用可能性をあきらかにした。
39 "New Organosols of ZnS and HgS in N,N-Dimethylformamide and Dimethylsulfoxide. Use in the Preparation of Semiconductive Polymer Metal Sulfide composite Films"
S.Devm, A.Tanibuchi, T.Yamamoto, K.Kubota and Y.Tominaga, Colloid Polum. Sci. 265 (1987) 1-3
さきに開発したオルガノゾルを利用した半導体としてのポリマー系の作成を、さらに発展させて、DMFおよびDMSO中でZnS、HgSのオルガノゾルの作成について研究し、CuS等と同様の振舞いを見せることを確認した。そして、これを用いたコンポジットフィルムの作成とその半導体的性質をあきらかにした。
40 "Dynamic Light-Scattering Study of Semiflexible Polymeres: Collagen"
K.Kubota, Y.Tominaga, Biopolymers 26 (1987) 1717-1729
ラットより抽出したコラーゲンを用いて分子の構造の半屈曲性にもとずく内部運動を解析した。抽出に際して特殊な処理をを施すことにより、ほとんど単分散の試料を得ることが可能となり、それまで分子量分布のために曖昧なまま残されていた種々の問題を一挙に解決することができた。それと同時に、半屈曲性高分子の動的構造の理論の詳細な検討が可能となった事から、相関関数の全スペクトルの議論ができ、満足のいく結果を得た。
41 "Counter ion dependence of water of hydration in DNA gel"
H.Urabe, M.Kato, Y.Tominaga and K.Kajiwara, J.Chem.Phys. 92 (1990) 768-774
DNAの水和水のダイナミクスをあきらかにするために、DNAのカウンターイオンをLi-、Na-、K-、Rb-、Mg-、Ca-、Sr-、Ba- に置換した試料について、0℃から-150℃までの低振動数ラマン散乱スペクトルとDSCの測定をあわせて検討した。凍結過程でDNAの最低振動数モードの振動数(ω)の温度変化がカウンターイオンによって異なり、これが水和水の状態を表すことがわかった。また、温度変化に対してωpがヒステリシスを示すものとそうでないものの、二つのグループ分けができた。
42 "Study of Glass Transition in K2HPO4 Aqueous Solution by Brillouin and Raman Spectroscopy"
K.Nakamura and Y.Tominaga, J. Phys. Soc. Japan 59 (1990) 747-753
K2HPO4(リン酸一水素カリウム)の飽和水溶液を冷却すると結晶化しないで、ガラス状態が得られる。ガラス転移温度(~200 K)の前後で、ブリュアン散乱、ラマン散乱等でそのダイナミクスを検討した。ブリュアン散乱からは、縦波音波の振動数がガラス化とともに連続的に増大すること、横波音波がガラス転移以下の温度で観測されることがわかった。ラマン散乱からは250cm-1 以下の低振動数領域のスペクトルが、液体、ガラスを含む全温度領域にわたって3本の減衰振動モードで記述できることがわかった。
43 "Dynamics of PO4 tetrahedrons in KDP-DKDP ferroelectrics by Raman scattering study"
Y. Tominaga, M.Kasahara and M.Tokunaga, Ferroelecttrics 107 (1990) 127-132
KDP(リン酸二重水素カリウム)の強誘電相のx(yx)yラマン散乱スペクトルに、世界ではじめて、160 cm-1をみつけた。従来このモードは、KDPのみに存在しDKDPには存在しないものとされ、プロトントンネリングモデルの根拠となっていた。この論文は、KDPおよび、KDP-DKDPの混晶すべてに、対応するモードが存在し、DKDPの濃度の増加とともに、振動数が上昇することがわかった。このことで、プロトントンネリングモデルの根拠を否定するとともに、歪んだPO4四面体の秩序無秩序相転移のモデルの正当性を主張した。
44 "Study on dynamical structure in water and heavy water by low-frequency Raman spectroscopy"
K.Mizoguchi, Y.Hori and Y.Tominaga, J.Chem.Phys. 97 (1992) 1961- 1968
水と重水の250 cm-1以下の偏光解消ラマン散乱スペクトルを95℃ から-15℃ まで温度変化を測定し、解析した。この低振動数ラマンスペクトルには、2本の減衰振動モードだけでなく、1本のデバイ型の緩和モードが存在することをはじめてあきらかにした。これらの振動と緩和モードで感受率の虚数部を最小二乗法で解析し、緩和時間、固有振動数、減衰定数を得た。この論文で、水の低振動数励起に、誘電緩和とは別の速い緩和の存在する事があきらかになり、その後の水の動的構造の議論の道筋をつけた。
45 "High Pressure Raman Scattering and Local Distortion of PO4 in Paraelectric KH2PO4"
I.Takenaka, Y.Tominaga, S.Ikeda and M.Kobayashi, Solid State Commun. 84 (1992) 931-933
ダイヤモンドアンビルセルを用いて、4.2 GPaまでのの高圧力を印加してKDPのラマンスペクトルを測定した。PO4四面体の局所的な歪みにより、S4での選択則を破って、x(zz)-xスペクトルに現れているPO4のν4内部振動モードが、2 GPaから3 GPaの間で消失した。このことは、高圧力下でPO4四面体の局所的な歪みが解消さS4対称性になることを意味している。これは、高圧力下でKDPの強誘電性相転移が消失する事と矛盾がなく、歪んだPO4四面体モデルを支持するものである。
46 "Vibrational Modes of Deuterium in KH2PO4"
K.Mizoguchi, Y.Nakai, S.Ikeda, A.Agui and Y.Tominaga, J. Phys. Soc. Japan 62 (1993) 451-454
水素結合型強誘電体の重水素置換効果をあきらかにするために、KDPとDKDPについて、非干渉性非弾性中性子散乱のスペクトルとラマン散乱のスペクトルを同時に比べることにより、PO4のモードと(重)水素モードを特定した。この方法は、水素の非干渉性中性子散乱の散乱断面性が他に比べて非常に大きい事と、PO4の分極率の変化がラマン散乱に大きく出ることを利用する事によって成功した。
47 "Hydrogen and PO4 Modes of RbH2PO4"
A.Agui, Y.Nakai, K.Mizoguchi, S.Ikeda and Y.Tominaga, J. Phys. Soc. Japan 62 (1993) 959-964
KDPと同族の水素結合型強誘電体であるRbH2PO4 (RDP)単結晶の非干渉性非弾性中性子散乱の散乱ベクトル依存性と温度変化を測定した。この結果をRDP単結晶のラマン散乱と比較する事により、水素モードを特定し、さらにその水素モードの運動方向まで特定することが出来た。また、粉末のRDPの中性子スペクトルの温度変化を、フィティングする事によりモードの巾が、相転移温度のの前後で急激に変化する事がわかった。
48 "The B1 and A2 Modes of KDP/RDP Family in Low-Frequency Raman Spectra"
A.Agui and Y.Tominaga, J. Phys. Soc. Japan 62 (1993) 832-833
KDPのx'(y'x')y' 低振動数ラマンスペクトルには、常誘電相でB1既約表現のモードが1本しかなく、因子群解析から得られる本数より1本少ない。そこで、同族のRDPとDKDPについて、x'(y'x')y'スペクトルを解析した。RDPでは因子群解析のとおり、強誘電相でA2が3本、常誘電相でA2が消失し、B1が2本になることがわかった。また、DKDPでは、常誘電相の1本のモードがショルダー型になり、丁度KDPとRDPの中間的になる事がわかった。
49 "New High Pressure Phase and Local Distortion of PO4 in RbH2PO4"
A.Agui, Y.Tominaga, I.Takenaka, S.Endo and K.Kobayashi, Solid State Commun. 87 (1993) 233-236
KDPと同族の水素結合型強誘電体であるRbH2PO4 (リン酸二水素ルビジウム)の単結晶に、ダイヤモンドアンビルセルで8 GPaまでの高圧力をかけてラマン散乱を測定した。2.5 GPa以上で、PO4のν4内部振動モードが消失し、PO4四面体の局所歪みが解消されるのは、KDPと同様であったが、4.5 GPa以上で、新しい高圧相を発見した。この相では、一度消失したν4内部振動モードが、分裂した形で再び現れ、粉末のX線回折では回折パターンが急激に変化した。しかし、構造の特定にまではいたらなかった。
50 "Dynamical Structure of Water in Aqueous Solutions of Ascorbic Acid by Low-Frequency Raman Scattering"
Y.Wang and Y.Tominaga, J. Phys. Soc. Japan 62 (1993) 4198-4201
ビタミンCとして知られている、アスコルビン酸は2つの構造異性体とそれぞれに、光学異性体をもつ。このうち、L-キシロ-アスコルビン酸(ビタミンC)とその構造異性体であるD-アラボ-アスコルビン酸について、その水溶液の低振動数ラマン散乱からそれぞれの水の動的構造について解析した。水の2つの減衰振動モードの減衰定数の濃度変化から、生理活性のない、D-アラボ-アスコルビン酸のほうが、生理活性のあるL-キシロ-アスコルビン酸より、水の動的構造に強く影響を与えることがわかった。
51 "Low-frequency Modes of KDP-type Crystals and Transition Mechanism"
Y.Tominaga, A.Agui and S.Shin , Ferroelectrics 152 (1994) 397-401
KDPの相転移に伴うゆらぎが現れる、x(yx)y ラマンスペクトルは特異な形状をしており、これまで多くの議論があった。我々はすでにこのスペクトルをプロトントンネリングモデルで解釈することの矛盾点をあきらかにしてきた。この論文では、誘電関数として因子型と呼ばれる積で表される表式を、この特異なラマンスペクトルにはじめて適用することにより、スペクトル形状を完璧に近い形で説明することができた。その結果、相転移に向かって異常を示すのは、中心の緩和成分のみであることがわかった。
52 "Dynamical structure of water in aqueous solutions of D-glucose and D-galactose by low-frequency Raman scattering"
Y.Wang and Y.Tominaga, J. Chem. Phys. 100 (1994) 2407-2412
グルコースとガラクトースの水溶液の低振動数ラマン散乱から、糖水溶液中での水の動的構造を検討した。水の2本の減衰振動の固有振動数は濃度に対して全く変化せず、減衰定数もほとんど変化しなかった。これらの糖は6員環の構造をもった単糖であるが、この6員環は、丁度氷の6員環の構造と大きさがほとんど同じである。我々は、水はピコ秒のオーダーでは、氷の構造が各所に生成消滅していると考えているが、以上の結果は、これらの糖が水の動的構造にぴったりはまって、水分子間の振動モードにほとんど影響を与えないということを示している。
53 "Dynamical structure of water in aqueous electrolyte solutions by low-frequency Raman scattering"
Y.Wang and Y.Tominaga, J. Chem. Phys. 101 (1994) 3453-3458
アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンを含む電解質水溶液の、低振動数ラマン散乱から、電解質水溶液中での水の動的構造を解析した。250 cm-1 以下の低振動数スペクトルを、2本の減衰振動モードと1本のCole-Cole 型の緩和モードで解析した。この結果、振動モードは濃度によって、あまり変化がなかったが、緩和モードの緩和時間の濃度変化は、イオンの種類を問わず、これらの水溶液系の粘性と強い相関をもっていることがわかった。
54 "Dynamical Mecahnism of Phase Transition in KDP-Type Ferrpelectrics"
Y.Tominaga, J. of Korean Phys. Soc. 27 (1994) S16-S21
KDPの強誘電性相転移のプロトントンネリングモデルの実験的証拠の一つとして、x(yx)y ラマン散乱スペクトルの中心成分の緩和型スペクトルが、0.93 GPa以上の高圧力下で振動型に変化するという実験が支持されていた。我々は、このスペクトルに対して、因子型の誘電関数を用いた解析で再検討した。 その結果、圧力によって相転移と矛盾なく変化するのは、緩和モードであって、トンネリングモードとされた振動モードは相転移のソフトモードと逆の振る舞いをすることがわかった。
55 "Dynamical Aspects of Water by Low-frequency Raman Scattering"
Y. Tominaga, Y. Wang, A. Fujiwara and K. Mizoguchi, Journal of Molecular Liquids 65/66 (1995) 187-194
水の動的構造を5個の水分子による瞬時的な四面体構造を考える事により、ラマン散乱の高振動数領域と低振動数領域のスペクトルを整合性よく説明することができた。1600 cm-1以上の高振動数領域でのスペクトルパターンは、水分子1個の分子内振動としては説明できず、四面体的構造をかんがえることによってのみ可能であること、低振動数領域もこの四面体的構造による水分子間の伸縮振動と変角振動、および、この構造の生成消滅にともなう緩和モードを考えることにより、よく説明される。この考えを水溶液系に適用した。
56 "Study on hydration structure of L-xylo and D-arabo ascorbic acid solutions by time domain reflectometry"
T. Umehara, Y. Tominaga, A. Hikida, and S. Mashimo, J.Chem.Phys. 102 (1995) 9474-9479
L-キシロ-アスコルビン酸(ビタミンC)と、生理活性のない構造異性体であるD-アラボ-アスコルビン酸について、その水溶液の誘電緩和の濃度依存性を時間領域反射法誘電測定装置(TDR)で測定し解析した。誘電緩和の測定からは、水和水とバルクの水の緩和時間と、それぞれの水の量に比例する緩和強度が得られる。この結果、ビタミンCの水和水の量は D-アラボ-アスコルビン酸より、多く、そのかわり、バルクの水の量が少ないことがわかった。
57 "Low-frequency Raman scattering of aqueous solutions of L-xyloascorbic acid and D-arboascorbid acid"
Y.Wang and Y.Tominaga, J.Chem.Phys. 104 (1996) 1-6
この論文では、 D-アラボ-アスコルビン酸に含まれる蛍光の問題を、合理的に解決し、より信頼度の高い解析をおこなった。濃度変化もさらに細かく測定した結果、 L-キシロ-アスコルビン酸(ビタミンC)水溶液中のバルクの水の動的構造は、D-アラボ-アスコルビン酸に比べて変化が少ないことが濃度変化より確認された。誘電緩和の測定から得られた水和水の量の違いと合わせることにより、ビタミンCは水溶液中で水和水に囲まれ、その結果、まわりの水にはあまり影響を与えないと考えることができる。
58 "Dynamical sturucture of water in dioxane aqueous solution bu low-frequency raman scattering"
Y.Tominaga, S. M. Takeuchi, J.Chem.Phys. 104 (1996) 7377-7381
ジオキサン水溶液中の水の動的構造を低振動数ラマン散乱スペクトルの解析から検討した。水に起因する1本の緩和モードと2本の減衰振動モード、ジオキサンに起因する1本のガウス型のモードで、水溶液系の濃度変化のスペクトルを解析した。その結果、水のモル分率0.8付近で、水分子間の伸縮振動モードの減衰定数が発散的に増大しこのモードが消失した。水のモル分率0.8は、ジオキサン1分子に対し、水分子4個に相当するので、この濃度以下では平均として水分子の四面体的構造がなくなったと考えられる。
59 "Temperature Dependence of Relaxation Time of Water in NaCl Aqueous Solution by Low-frequency Raman Spectroscopy"
K.Mizoguchi and Y.Tominaga, J. Phys. Soc. Japan 65 8(1996) 2690-2693
モル分率 0.04 のNaCl水溶液の低振動数ラマンスペクトルの温度変化を測定した。2本の減衰振動モードと1本のCole-Cole型の緩和モードで感受率に変換したスペクトルを解析した。振動モードについては、純水の場合とあまり変化がなかった。また、緩和時間の逆数の温度変化は、320 K以下過冷却状態まで、Curie-Weiss 則に従うことがわかり、Curie-Weissは純水の場合に比べて、小さくなることがわかった。これは、同じ温度で緩和時間が純水に比べてつねに長いことに相当する。
60 "Distorted Tetrahedrons and Libration Mode in KH2AsO4 (KDA)"
Y.Tominaga, K.Iizuka, J. Korean Phys. Soc. 32 (1998) S493-S495
水素結合型強誘電体KDPと同型のKDA(KH2AsO4)結晶の x(yx)y ラマンスペクトルを、因子型と呼ばれる積で表される表式で解析した結果をKDPと比較することにより、強誘電性相転移を担う、 KDAのAsO4四面体の歪みがKDPのPO4四面体の歪みより少なく、それに伴って、それぞれの四面体の束縛回転モード(Libration Mode)と中心の緩和成分との結合がKDAの方が弱いことがわかった。この事が、KDAの強誘電性相転移点の低さと対応していることが示された。
61 "Dynamical Structure of Water by Raman Spectroscopy"
Y.Tominaga, A. Fujiwara and Y. Amo, Fluid Phase Equilibria 144 1(1998) 323-330
これまで、水の低振動数ラマンスペクトルの形状が、5個の水分子でできる瞬間的な四面体的構造での水分子間の振動と緩和で説明される事を示してきたが、この論文では、この考え方が、水分子の分子内振動にも有効であることを示した。5個の水分子でできる瞬間的な四面体的構造では、酸素原子のまわりに4個の水素原子が存在し、これらが小さい歪んだ四面体を形成している。この歪んだ四面体の9個の基準振動で、水の高振動数領域のラマンスペクトルの形が説明できることをGF行列法も用いて示した。
62 "Dynamical structure of water in NaCl aqueous solution"
K.Mizoguchi, T. Ujike and Y.Tominaga, J. Chem. Phys. 109 (1998) 1867-1872
モル分率 0.08までのNaCl水溶液の低振動数ラマンスペクトルの濃度変化と温度変化の両方を測定し、2本の減衰振動モードと1本のCole-Cole型の緩和モードの重ね合わせでスペクトルを解析した。緩和時間の逆数の温度変化は、300 K以下過冷却状態までは、Curie-Weiss則に従い、300 K以上では緩和時間の対数がArrhenius型の温度変化をすることがわかった。また、緩和時間の分布パラメーータb は濃度上昇でも温度降下でも、いずれも減少することがわかった。
63 "Low-frequency Raman scattering of liquid CCl4, CHCl3 and acetone"
Y.Amo and Y.Tominaga, J. Chem. Phys. 109 (1998) 3994-3998
代表的な有機溶媒である四塩化炭素、クロロホルム、アセトンの低振動数ラマンスペクトルに現れる、緩和型のモードは、従来のCole-Cole型の緩和関数では全く説明ができない。そこで、二状態遷移モデルに基づいた、Multiple Random Telegraph (MRT)モデルの緩和関数を用いて説明することを世界で初めて試みた。四塩化炭素とアセトンでは、十分に満足のいく結果が得られ、MRTモデルによる緩和の解析の妥当性が示された。クロロホルムにおけるわずかなずれは、ガウス型のモードを一個導入することにより解決される。
64 "Dynamical structure of water in aqueous solutions of LiCl, NaCl, and KCl by low-frequency Raman scattering: comparison between multiple random telegraph model and Cole-Cole relaxation"
Yuko Amo and Yasunori Tominaga, Physical Review E 58 (6)1998, 7553-7560
有機溶媒のスペクトルをよく再現したMRTモデルを水溶液の低振動数ラマン散乱の解析に用いた。水溶液では、水の伸縮振動が180cm-1に、変角振動が50cm-1にあるとされており、これら2つのモードに減衰振動を用いて最低振動数モードにMRTモデルを用いた。これまでは緩和にCole-Cole関数を用いてもスペクトルを再現できていたが、Cole-Cole型の関数は高振動数領域まで裾野を引き、対応するエネルギーの吸収が無限大に発散するという困難があった。MRTモデルにはこの困難が生じないので物理的により妥当な解析といえる。また、陽イオンの水に対する構造形成・破壊効果を緩和モードの熱浴の揺らぎの相関として定性的にあらわれた。ラマン散乱のスペクトルから構造形成・破壊効果の情報を取り出す方法を見つけた点がこの研究の有意義な点である。
65 "Molecular dynamics of thiophene homologues investigated by femtosecond optical Kerr effect and low frequecy Raman scattering spectroscopies"
K.Kamada, M.Ueda, K.Ohta, Y.Wang, K.Ushida, and Y.Tominaga J. Chem. Phys. 109 (1998) 10948-10957
チオフェンの同族化合物である、CH4O, CH4S, CH4Seについて、時間領域フェムト秒光学カー効果分光(OHD-OKE)と、周波数領域の低振動数ラマン分光を用いて、構成原子の分子量と慣性能率を系統的に変化させる事によって、低エネルギーの分子ダイナミクスを議論した。双方の測定で得られた緩和時間はStokes-Einstein-Debyeの関係式とよく一致した。さらに、束縛回転モードと並進モードの解析から、分子間相互作用について議論した。
66 "Molecular dynamics of acetophenone and its derivarives investigated by femtosecond optical Kerr effect spectroscopy and depolarized low-frequency Raman scattering"
Y.Wang, K.Ushida, Y.Tominaga ,and A.Kira Chem. Phys. Letters 299 (1999) 576-582
アセトフェノンとその誘導体について、フェムト秒光学カー効果分光(OHD-OKE)と低振動数ラマン分光スペクトルの解析から、低エネルギーの分子ダイナミクスを議論した。両者はフーリエ変換を通じて大変よく一致しており、相補的な分光であることを確認した。分子内振動モードも、 OHD-OKEではっきりと検出することに成功した。これらの物質の配向緩和時間の系統的な測定から、水素結合の交換によって誘起された強い分子間相互作用の存在が示唆された。
67 "Dynamical structure of water in alkali halide aqueous solutions"
Tomoko Ujike, Yasunori Tominaga and Kohji Mizoguchi J. Chem. Phys. 110 (1999) 1558-1568
アルカリハライドAX(A=Na, K, Rb, X=Cl, Br)のラマンスペクトルの、濃度と温度依存性を測定した。Cole-Cole緩和と減衰振動子2つの重ね合わせを使って解析した。過冷却状態において、カチオンがK, Rbの水溶液の緩和時間は水より短くなった。また、ラマンスペクトルより得られた緩和時間は粘性率と相関することがわかった。緩和時間から活性化エネルギーを求めると、カチオンがNaの水溶液と、KやRbの水溶液とでは異なっていることがわかった。
68 "Breakdown of narrowing limit and overdamped limit of relaxation mode in Low-frequency Raman spectra of ethylene glycol"
Yuko Amo and Yasunori Tominaga, Physica A 265 (3-4)1999, 410-415
DMDP2000(SOPRA)を用いてエチレングリコールの偏光解消ラマンスペクトルを0.01cm-1まで測定し、緩和関数と減衰振動の重ね合わせで現象論的なfittingを行った。緩和モードが2つあって、遅い方の緩和はoverdamped limitとnarrowing limitが成立しており速い方の緩和はこれらの近似が両方とも破れていると考えるとスペクトルをよく再現できた。
69 "Possibility of breakdown of overdamped and narrowing limits in low-frequency Raman spectra: Phenomenological band-shape analysis using the multiple-random-telegraph model"
Yuko Amo and Yasunori Tominaga, Physical Review E 60 (2)1999, 1708-1715
水と重水の低振動数ラマン散乱の温度依存性を測定し、緩和モード1つと減衰振動モード2つによりフィッティングを行った。緩和モードには、高周波領域でのoverdamped limitとnarrowing limitの破れをとりいれたMRTモデルを用いた。水では約300K(重水では310K)を境にして、スペクトルをMRTモデル1つと180cm-1の減衰振動1つで再現することができた。緩和時間を分子間振動のユニットの寿命に相当すると解釈すると、50cm-1の変角振動が十分振動する前に振動のユニットが熱揺らぎで壊されるため、独立した振動に見えないという説明ができる。また、遠赤外吸収では、49cm-1の吸収ピークが303Kを境にして現れなくなることがわかっており、今回提案した解析法を用いることで、分子間振動について、赤外とラマンの結果がはじめて一致した。
70 "Dynamical structure of XCl(X=Li,Na,K) aqueous solutions by low-frequency Raman scattering: relation between 50 cm-1 vibration mode and relaxation mode"
Yuko Amo and Yasunori Tominaga, Physica A 275 (2000) 33-47
水および電解質水溶液(LiCl:0.08, 0.2, NaCl:0.08, KCl:0.08 molar ratio)の低振動数ラマン散乱の温度依存性を測定し、緩和モード1つと減衰振動モード2つによりフィッティングを行った。緩和モードには、高周波領域でのoverdamped limitとnarrowing limitの破れをとりいれたMRTモデルを用いた。電解質水溶液は、いずれも室温で水より緩和時間が遅いが、温度を上げていくと緩和時間が短くなり、それと同時にある温度を境にして水の場合と同様に50cm-1の変角振動が無くても緩和モードと180cm-1の振動のみでスペクトル全体を再現できた。変角振動の振動数は温度に対して僅かしか変化せず、緩和時間が変角振動の周期の約5倍よりも短くなると、変角振動の成分無しでスペクトルを再現できることがわかった。LiCl0.2の溶液では、もともと緩和時間が遅く温度を上げても緩和時間が5倍より短くなることはなく、全温度範囲で変角振動の成分が必要であった。緩和時間を分子間振動のユニットの寿命と解釈するなら、振動として観測されるには、最低でも平均5回以上はある振動のユニットが構造を保つ必要があると考えられる。
71 "Low-frequency Raman study of water isotopes"
Yuko Amo and Yasunori Tominaga, Physica A 276 (2000) 401-412
水の同位体4種類(H2O,D2O,H218O,D218O)の低振動数ラマン散乱の温度依存性を測定し、緩和モード1つと減衰振動モード2つによりフィッティングを行った。緩和モードには、高周波領域でのoverdamped limitとnarrowing limitの破れをとりいれたMRTモデルを用いた。中性子散乱の結果より、180cm-1の振動は酸素のみが動いており、50cm-1の振動は酸素と水素の両方が動いていることがわかっている。そこで、振動が調和振動であるとした場合、酸素のみおよび水分子全体の質量の違いから予想される特性振動数の違いを計算し、測定結果と比較し、よい一致を得た。また、水の同位体のスペクトルは全て、高温でMRTモデル1つと180cm-1の減衰振動1つで再現することができた。
72 "Low-frequency Raman spectra of amorphous ices"
Y. Suzuki, Y. Takasaki, Y. Tominaga and O. MishimaChemical Physycs Letters 319 (2000) 81-84
低密度アモルファス氷(LDA)と高密度アモルファス氷(HDA)の低振動数ラマン散乱を測定た。HDAのラマンスペクトルは、水と似ていて、氷(Ih)とは異なっていた。HDA中の水素結合ネットワークは、水に類似していることが考えられる。
73 "Low-frequency Raman study of ethanol-water mixture"
Yuko Amo and Yasunori Tominaga, Chemical Physics Letters 320 (2000) 703-706
エタノールと水の混合物のスペクトルはは、50cm-1から400cm-1の分子間振動に関しては純水と純エタノールのスペクトルの重ね合わせで表される。しかし、緩和が主体となる50cm-1以下は重ね合わせでは表されず、測定結果と重ね合わせのずれの積分値が濃度に依存し、水のモル分率0.8付近で極大となることがわかった。
74 "Low-frequency Raman scattering of KOH and NaOH aqueuos solutions"
Yuko Amo and Yasunori Tominaga, Journal of Raman Spectroscopy 31 (2000) 547-553
KOH と NaOH水溶液の低振動数ラマンスペクトルの濃度依存性を測定した。解析は、緩和モード1つと減衰振動モード1つの重ね合わせで行った。緩和モードに、Cole-Cole関数を使った場合とMRTモデルを使った場合の比較をし、50cm-1のピークの振動数の変化から、MRTモデルの方が妥当であるという傍証を得た。
75 "Salt-induced volume phase transition of poly(N-isopropylacrylamide) gel"
Masahiko Annaka, Keiko Motokawa, Shigeo Sasaki, Takayuki Nakahira, Hideya Kawasaki, Hiroshi Maeda, Yuko Amo, and Yasunori Tominaga , Journal of Chemical Physics 113 (2000) 5980 - 5985
NIPAゲルの体積相転移温度は、アルカリ金属イオンの種類と濃度によって変化し、ゲル中の水の化学ポテンシャルの差で説明することができる。ラマン散乱の結果から、塩の存在によってプロトンの協同的な運動が起こり、これがゲルに疎水的に水和している水の構造をこわす。このためにゲルの体積が減少する。
76 "The Landau-Placzek ratio of water-alcohol binary mixtures"
Yuko Amo and Yasunori Tominaga, Chemical Physics Letters 332 (2000) 521-524
DMDP2000を用いて、水とアルコール(エタノール、メタノール、1−プロパノール、2−プロパノール)混合系のRayleigh-Brillouinスペクトルを全濃度範囲にわたって測定した。メタノール以外ではRayleighとBrillouinの強度比(Landau-Placzek比)は水のモル分率0.89で極大を示し、超音波吸収の結果と定性的に一致した。このことからLandau-Placzek比の大きさが混合状態でのミクロな濃度揺らぎを反映していることがわかった。
77 "Local Distortion of PO4 tetrahedra in the paraelectric phase in low temperature under high pressure in KH2PO4"
H. Furuta, S. Endo, M. Tokunaga, Y. Tominaga and M, Kobayashi, Solid State Communications 117 (2001) 7 - 11
KH2PO4中のPO4四面体のν1-ν4モードのラマン散乱を、3 GPa以上にわたる高圧かつ室温から150 Kまでの低温の条件で測定した。3 GPa以上かつ150 Kのとき、スペクトルは常誘電相のC2ともS4とも異なっていた。このことから、構造相転移が起きたか、高圧低温でもプロトンのdisorderが残っているか、いずれかであることが考えられる。
78 "Salt effect on volume phase transition of a gel"
Masahiko Annnaka, Yuko Amo, Shigeo Sasaki, Yasunori Tominaga, Keiko Motokawa and Takayuki Nakahira, Physical Review E 65 (2002) 031805-1 - 031805-8
NIPAゲルの体積相転移に及ぼす塩の影響は、化学ポテンシャルを用いると、塩の種類によらず評価することができる。この化学ポテンシャルの振る舞いと、塩水溶液の低振動数ラマン散乱の解析から得られた久保数の振る舞いが関連していることがわかった。
79 "Classification of Alkali Halide Aqueous Solutions by Kubo Number"
Yuko AMO, Masahiko Annaka and Yasunori Tominaga, Journal of Molecular Liquids 100 (2002) 143-151
低振動数ラマン散乱を用いてアルカリハライドイオン水溶液の測定を行い、MRTモデルと減衰振動の重ね合わせで解析した。緩和モードから得られる久保数の変化は、アルカリ金属イオンとハライドイオンがスペクトルに対して、イオン+水分子の作る体積に比例した影響を及ぼしていると考えると、イオンの構造形成・構造破壊の効果で説明することができた。
80 "Raman spectral analysis of liquid ammonia and aqueous solution of ammonia"
Tomoko Ujike and Yasunori Tominaga, JJ. Raman Spectrosc. 33 (2002) 485-493
液体アンモニアの分子振動領域のラマンスペクトルには、アンモニア分子1個の基準振動で期待される振動モードの数より多くのスペクトルが観測される。従来、これはフェルミ共鳴現象として説明されていたが、アンモニア水溶液では、この考えはうまくいかない。この論文では、アンモニア2量体の基準振動を考えることにより、アンモニア水溶液までを含めて、分子振動の全スペクトル領域で、非常に整合性よくモードの数と振動数、強度変化を説明できる事を明らかにした。
81 "Effect of charge transfer on bandshape analysis for low-wavenumber Raman specra of alkali metal halide aqueous solutions"
Y. Amo, M. Annaka and Y. Tominaga, J. Raman Spectrosc. 33 (2002) 829-832
アルカリハライド水溶液の低振動数ラマン散乱では、ハライドのイオン半径が増加すると、散乱強度が増加する。この増加のメカニズムについては、可視から紫外に励起波長を変えると強度が波長依存することを理由として、proton-transferのpre-resonant effectであるという説明がなされていた。そこで、励起波長を変化させて測定し、強度標準を用いて、強度の波長依存性を調べた結果、Arレーザーの488nmと514.5nmの間では散乱強度は励起波長に依存しないということがわかった。従って、アルカリハライド水溶液の測定結果について、これまで通り現象論的な解析を行ってもかまわないことが確認できた。
82 "Hydrogen modes in KDP/DKDP mixed crystals"
Y. Tominaga, Y. Kawahata and Y.Amo, Solid State Communications 125 (2003) 419 - 422
KDP(KH2PO4)/DKDP(KD2PO4)の混晶系のにおいて、水素(重水素)モ−ドが観測される高振動数領域のラマンスペクトルが、単純にKDPとDKDPの和スペクトルで再現されることが明らかになった。これから、水素モ−ドと重水素モ−ドがPO4四面体の分子振動モ−ドと分離して同定することが可能になり、対応する水素モ−ドと重水をモ−ドの振動数の比として常誘電相でも強誘電相でも、同じく1.37を得ることができた。この結果は、混晶系でも水素モ−ドと重水素モ−ドはそれぞれの個性は失っておらず、単純な光学的な振動をしている事を意味しており、プロトントンネリングのような特別な状態を考える必要のない事を示している。
83 "Low-frequency Raman scattering study of tert-butyl alcohol-water and tetrahydrofuran-water binary mixture "
T.Fukasawa, Y.Amo and Y. Tominaga, Journal of Chemical Physics 118 (2003) 6387-6393
tertブチルアルコ−ル(TBA)/水、および、テトラヒドロフラン(THF)/水、の二成分系の低振動数ラマンスペクトルを解析した。いずれも、80 cm-1以上の分子間振動の振動数領域では、それぞれの純物質の和スペクトルで再現できたが、80 cm-1以下の緩和モ−ドを含む振動数領域では、測定スペクトルは和スペクトルと系統的なずれを示した。このずれの積分強度の濃度依存性を解析した結果、これらの二成分系での、局所的な不均一性や濃度揺らぎと、よく対応していることが明らかになった。つまり、分子間振動においては、それぞれの個性が残っているが、緩和モ−ドの含む領域では、協力的なダイナミクスが存在し、それらが、分子レベルでの動的構造を反映していることがわかった。
84 "Low-frequency Raman study of water-ethylene glycol oligomer binary mixtures "
Y.AMO, Y. Inadachi and Y. Tominaga, Journal of Chemical Physics 119 (2003) 10801-10805
エチレングリコールオリゴマー(EGO)水溶液の低振動数ラマン散乱を測定し,スペクトルの分子間進藤領域を純物質の重ね合わせで再現した。また,重ね合わせからずれた最低振動数領域について,ずれの積分強度を求めた。この解析方法は水と均一に混じるほど積分強度のずれが大きくなる傾向がある(アルコール水溶液で既に確認済み)。EGOの場合は,モノマーユニットの繰り返しが3以下と4以上で水との混じり方が違う可能性があることがわかり,繰り返しが大きいほど均一に見えた。これはアルコールと逆の結果だが,EGOの場合はエーテル酸素のまわりにも水が配位できるため,分子量が大きくなることで,水が感じるミクロな環境がむしろ均一なものに近づくのではないかと考えられる。
85 "Molecular Association in Binary Mixtures of tert-Butyl Alcohol-Water and Tetrahydrofuran-Heavy Water Studied by Mass Spectroscopy of Clusters from Liquid Droplets "
Toshiko Fukasawa, Yasunori Tominaga and Akihiro Wakisaka, Journal of Physical Chemistry A 108 (2004) 59-63
tertブチルアルコ−ル(TBA)/水、および、テトラヒドロフラン(THF)/重水(以下で は単に水という)、の二成分混合系について,「液相クラスター質量分析計」でクラ スター構造の濃度依存性を解析した。TBA系では、低濃度でも水のクラスター構造の 他にTBA水和クラスター(TBA)m(H2O)nが生成した。この水和クラスターのサイズ分布 は、水分子クラスターのサイズの分布と相似しており、水分子クラスター内の水分子 と、TBA分子の水酸基が置換し、TBA分子は水の水素結合ネットワークの一部としてク ラスターを形成することが分かった。一方、重水にTHFを加えた場合には、低濃度で は、THF分子は主に単量体として観測され水分子のクラスター構造は影響を受けな い。濃度の増加とともに、水和クラスター(THF)m(H2O)nが発生するが、そのサイズ分 布の解析から、THF分子は水のクラスター構造に付加する形でクラスターを形成する ことが分かった。
86 "Phase Relationships of Crystalline Polymorphs of Mesogenic 4-Cyano-4'-heptyloxybiphenyl (70CB) and 4-Cyano-4'-octyloxybiphenyl (89CB) "
K.Hori, Y.Iwai, M.Yano, R.Orihara-Fufukawa, \underline{Y. Tominaga}, E.Nishibori, M.Takata, M.Sakata and K.Kato, Bull. Chem. Soc. Jpn. 78 (2005) 1223 - 1229.
編集中
87 "The First Observation of Low-Frequency Raman Spectra of Supercritical Water "
Yasunori Tominaga and Yuko Amo, J. Phys. Soc. Jpn. 75 (2006) 023801-1 -- 023801-3.
編集中
87 "Temperature and pressure studies of Raman peaks related ot hydrogen modes in KDP "
Y.Mita, K.Takabe, M.Kobayashi, S.Endo, Y.tominaga, J.Phys.:Condens. Matter 18 (2006)5185-5190.
編集中
88 "Dyamical mechanism of ferroelectric phase transition in KDP/DKDP mixed crystals and distortion of PO4 tetrahedron "
Yoshimi Kawahata and Yasunori.tominaga,Solid State Communications in press .
編集中

目次に戻る

その他の論文・記事など

No.論文要約
1 "レーザ分光におけるI2 セル"
冨永靖徳、中村輝太郎, 固体物理 9 (1974) 329-335. (アグネ技術センター)
ラマン分光スペクトル測定で、低振動数領域の散乱光を検出をしようとすると、圧倒的に強い弾性散乱光(迷光)に埋もれて測定が大変困難であった。ヨードの蒸気が、アルゴンイオンレーザの緑の発振線のドップラー幅のなかに、鋭い吸収線をもつことを利用しすると、この強い弾性散乱光除去のフィルターとして利用できる。 I2 セルフィルター制作と利用方法を実践的に解説し、チタン酸バリウムのポラリトンを約2cm-1 まで測定できることを示した。
2 "低周波ラマン分光とその応用"
冨永靖徳, 分光研究 32 (1983) 401-403. (日本分光学会)
ラマン分光の低振動数領域を測定する場合、迷光をいかに除去するかが大きなである。分光器自身の迷光除去率の改良が最も直接的であるが、改良された分光器でも以下の工夫をすることにより、さらに、迷光の除去率が改善されることを実際に示した。散乱光を1個の集光レンズで直接分光器にいれるのではなく、一度分光器の外のピンホール上に像を結ばせ、このピンホールで余分な弾性散乱光を除去した上で、2番目の集光レンズで分光器のスリットに入れるとDNAなどの不透明な試料でも、低振動数領域のスペクトルを精度よく得られることがわかった。
3 "ラマン分光からみたKDP型強誘電性相転移の新しい視点"
冨永靖徳、徳永正晴, 固体物理 18 (1983) 725-736. (アグネ技術センター)
リン酸二水素カリウム(KDP)に代表される水素結合型の強誘電相転移の同位体効果は、水素結合上のプロトンのトンネリング運動によるものであるというのが定説であった。これに対し、主に我々のラマン散乱の実験結果から、プロトントンネリングモデルを否定し、代わりに局所的に歪んだPO四面体の秩序無秩序型の相転移機構で、すべての実験結果が整合性よく説明されることを示した。この新しい考え方はその後、非干渉性中性子散乱の実験で確認され、現在にいたっている。
4 "KHPOの強誘電性相転移と重水素効果−ラマン分光−"
冨永靖徳, 日本物理学会誌 39 (1984) 520-524. (日本物理学会)
リン酸二水素カリウム(KDP)とその重水素塩(DKDP)の相転移温度の違いを、これまで、同位体効果と称してプロトンのトンネリングモデルで説明してきた。これに対して、ラマン散乱の実験からは、プロトンのトンネリングモデルを否定する結果が得られている。このことは、これらの結晶のなかでは、水素と重水素は、もはや、化学的な性質が全く同じと言う意味での同位体ではなく、重水素化することにより、結晶の局所的な構造も変わってしまうことも意味しており、無批判な同位体効果に対する警鐘をならした。
5 "低振動数ラマン分光測定方法とその応用"
冨永靖徳, 赤外・ラマン・振動 [III] (1986) 29-36. (南江堂)
ラマン分光では、分子振動が測定される高振動数領域の測定が多く、低振動数領域のスペクトルは、迷光の問題等の困難のために、これまであまり取り上げられてこなかった。この低振動数領域のスペクトルを積極的に取り上げ、その測定方法と解析方法を開発し、スペクトルの物性的な意味を明らかにした。この低振動数領域のスペクトル測定の例として、1)DNAゲルの集団振動モードと水和水の緩和モード、2)KDPの中心成分の緩和モードの実体を明らかにした。
6 "生体高分子のブリュアン散乱−DNAの融解によるブリュアン散乱−"
冨永靖徳, 月刊フィジックス−ブリュアン散乱− (1987) 413-417. (海洋出版)
レーザによるブリュアン散乱スペクトルからは、音波の速度と吸収を得ることができる。ブリュアン散乱スペクトルの測定は、通常ファブリ−ペロ−干渉分光計が用いられるが、生体高分子のように、不透明で弾性散乱の多い物質では、中心の弾性散乱光に隠れて、音波による信号をえることが極めて困難である。これを、解決するためファブリ−ペロ−干渉分光計のエタロンを5回散乱光を通す5パス方式の分光法を試み、コントラストの向上をはかった。その結果、DNAの二重らせんが融解するまでの、ブリュアンスペクトルの測定に成功し、音速の変化が測定できた。
7 "DNAの水和構造"
占部久子、冨永靖徳, DENKI KAGAKU 57 (1989) 637-641. (電気化学協会)
DNA二重らせんは、まわりに大量の水をつけてらせん構造を安定化している。この水を水和水といい、二重らせんに強く結合しDNAと一体になっているものを、第一水和水という。また、DNAと弱く結合しDNAのまわりを囲んでいるものを第二水和水という。低振動数ラマン散乱の解析と、走査型示差熱分析の解析から、これらの水和水の構造について明らかにした。とくに、DNAのカウンターイオンが変わったときの水和構造の変化について、明らかにした。
8 "DNAゲルの凍結とトリスバッファの析出"
占部久子、加藤美登里、梶原一人、冨永靖徳, 凍結及び乾燥研究会会誌 36 (1990) 14-17. (電気化学協会)
DNAゲルの凍結過程での水和水の変化は、低振動数ラマン散乱スペクトルの変化でモニターすることができることがわかってきた。種々のバファー溶液で作成したDNAの凍結過程を調べていくうちに、トリスバファを用いたDNAゲルの場合には、トリスバファの析出過程が見られることがわかり、他のバファのDNAと比べることにより、DNA凍結過程でのDNAのクラスター形成に関する知見が得られた。
9 "スペクトロスコピ−で水の動的な構造を覗く"
冨永靖徳, 日本物理学会誌 48 (1993) 773-780. (日本物理学会)
液体の水が単純なHO分子でないことは、誰もが認めるところであり、水のもつ多くの特異性は、水の水素結合によるものであるされている。この解説では、液体の水がピコ秒のオーダーでの短い時間では5個の水分子からなる四面体的な構造をとっていると言う作業仮説を立てて、その動的な側面を、低振動数ラマン分光と誘電緩和という分光学の手段で調べた。水と重水、ジオキサン水溶液、アスコルビン酸水溶液について、水分子間の四面体的な構造の、速い緩和と遅い振動という統一的な描像で記述することを試みた。
10 "水素結合型強誘電体におけるトンネリングモデル:実験的側面"
冨永靖徳、徳永正晴, 日本結晶学会誌 40 (1998) 26-31. (日本結晶学会)
KH2PO4を代表とする水素結合型強誘電体の相転移機構について、長い間、2極小ポテンシャルの間をプロトンがトンネリングするという、トンネリングモデルの考え方が支配的であった。この考え方が間違っていることを、我々がラマン散乱の実験で初めて示して以後、最近までのこの問題に対する経過を、主に、実験的な側面にたって、新しい中性子散乱の実験や、その解釈に適用された、非対称ポテンシャルの考え方を紹介しながら示した。
11 "水のラマン散乱と水素結合によるクラスター"
冨永靖徳, 日本結晶学会誌 40 (1998) 95-100. (日本結晶学会)
液体の水がピコ秒のオーダーの短い時間では、5個の水分子からなる四面体的な構造をとっていると考えることにより、水の低振動数ラマン散乱のスペクトルの形状を説明してきた。この解説では、この考え方をさらに押し進めて、高振動数ラマンスペクトルの形状にも適用することを試みた。その結果、水の分子振動領域も含む、全振動数領域のラマンスペクトルのすべてのバンドが、この考え方で矛盾なく帰属できることがわかった。この事により、液体の水の動的構造を考える場合、水素結合によるクラスターを考えることが重要であることが明らかになった。
12 Breakdown of narrowing limit and overdamped limit of relaxation mode in low-frequency Raman spectra
−低振動数ラマン散乱で見る液体のダイナミクス−
研究会報告「第7回『非平衡系の統計物理』シンポジウム」
天羽優子、冨永靖徳、物性研究 73 4(2000) 735-749.
2状態遷移模型に基づく緩和関数を用いて、液体の低振動数ラマン散乱のスペクトルを解析した。THz領域に現れる、分子間相互作用による緩和モードでは、overdamped limitとnarrowing limitの両方の破れを考慮することが不可欠である。同位体水、電解質水溶液、有機溶媒を例とした解析結果をまとめた。
13 低振動数ラマン散乱でみる液体の緩和と振動
天羽優子、冨永靖徳、日本物理学会誌 55 3(2000) 205-208.
2状態遷移模型に基づく緩和関数を用いて、液体の低振動数ラマン散乱のスペクトルを解析した。THz領域に現れる、分子間相互作用による緩和モードでは、overdamped limitとnarrowing limitの両方の破れを考慮することが不可欠である。特に、揺らぎの相関久保数と物性がちゃんと結びついている点が大事である。
14 Breakdown of overdamped limit and narrowing limit in low frequency Raman spectra of liquids
Yuko Amo and Yasunori Tominaga Transactions of the Materials Research Society of Japan 25 3(2000) 727-730.
2状態遷移模型に基づく緩和関数を用いて、液体の低振動数ラマン散乱のスペクトルを解析した。このモデルでは、overdamped limitとnarrowing limitの両方の破れを実効的に取り入れている。水のような複雑な液体にもやCCl4などなどの単純な液体にもこのモデルは適用できる。

目次に戻る

著書

No.著書概要
1 放送大学教材「自然系実験」
[分担執筆] 宮代彰一、遠山紘司、 渡部徳子、大井みさほ、冨永靖徳、田中清臣
[担当部分] p.115-143 $9 誤差と精度、$10 測定とゆらぎ
(放送大学新興会)
昭和60年4月から64年3月まで放送大学で放送された教科書である。内容は、自然科学における実験について、広い分野に共通する問題、考え方、あるいは、手法などを拾い上げ、考えるいうものである。担当した箇所は「誤差と精度」、および「測定とゆらぎ」の部分で、測定に伴う誤差の扱いかたと、測定対象のもつ本質的なゆらぎについて、基本的な事柄を解説した。
2 「強誘電体と構造相転移」
[分担執筆] 中村輝太郎、作道恒太郎、石橋善弘、冨永靖徳
[担当部分]$2.2 格子振動とソフトモード,$3.1 光散乱実験,$7.2.1 BaTiO3の立方−正方相転移,$7.3 KDP
昭和 63年(裳華房)
強誘電体の基本的な性質とその理解の仕方、さらに、強誘電性相転移の構造相転移のなかでの位置づけを、大学の専門課程の学生や大学院修士課程の学生を念頭に解説されている。担当部分では、相転移に伴うソフトモードという考え方とその実験方法を詳説し、最近得られた新しい実験結果の紹介をした。

top pageへ戻る
目次に戻る

Y.Amo /
当サーバ上のページに関する問い合わせや苦情のメールは公開することがあります。