よくある質問その2

 私のところにこれまでに寄せられた質問、コメントなどをQ&Aとしてまとめました。

Q. πウォーターを使うと、淡水魚と海水魚を一緒に飼うことができるという宣伝があります。写真もあります。このような証拠を見せられると、πウォーターの奇跡の効果があるのではないかと思ってしまいますが・・・?

A. 別にパイウォーターでなくてもできます。天羽は、魚については素人なので、理科教育MLというところで質問したところ、以下のような回答をいただきました。(筆者の許諾をいただいたのでこちらで紹介します。改行位置を少し編集しました。)

高田@マリンワールド海の中道です。

当館では淡水魚と海水魚を同じ水槽で飼育展示しています。
これは、魚の浸透圧調節の機能を学んでいただくために設置している水槽です。
水槽に特別な装置があるわけでも、魚を徐々に馴らしたものでもありません。ましてや、水槽水がパイウォーターで満たされている訳でもありません。またマジックでもイリュージョンでもありません。
原理は到って簡単。魚の生理食塩水をつくり、その中に淡水魚と海水魚を同時に、(馴らしたりせずに)入れているだけです。つまり、淡水魚も海水魚も体液の塩分濃度がほぼ同じであるため、その生理食塩水に入れると、魚の体から出入りする水がないのです。

ここからは、魚の浸透圧調節に関する薀蓄です。
興味のある方はご一読ください。

魚は海で誕生し、軟骨魚類(サメ・エイ)から硬骨魚類へと繁栄しました。また住み場所を、海から川へ広げる方向でどんどんと拡大していきましたが、これはやがて魚が陸に進出する予行演習のようなものだったと考えられます。魚にとって海から淡水へ進出することは、その後の陸上に上がるために呼吸、乾燥、重力、移動、などのために体のシステムを大幅に変えなければならないことに比べれば、あまり大した事ではありませんでした。これは生物進化関係の本を見ても、魚が海水から淡水へ進化する過程をあまり大きな位置付けにしていないことからもうなづけます。

しかしながら、私たちの目から見ると、海水と淡水の塩分のちがいへの対応をどうしていったのだろうか?と心配になるところです。

魚は、海から淡水へ進出していったものであり、最初から別々のところで別々に発生し進化したのではありません。したがって、淡水魚も海水魚も体の中に含まれる塩分濃度はほぼ同じです。この濃度は、海水よりも薄く淡水よりも濃くなっています。(約1%程度と思ってください)魚は自分の周りにある水と、自分の体に含まれる塩分の違いにより、脱水や水ぶくれになる危険性を常にもっています。つまり、海水魚は塩をかけられたナメクジのように脱水状態にあり、淡水魚は水ぶくれになる危機にあるのです。このため、淡水魚と海水魚では、まったく逆の塩分濃度調節(浸透圧調節)機能を持っています。脱水されようとしている海水魚は、水を沢山飲んで、あまりおしっこをしないように心がけています。腎臓の機能もそのように動きます。また余分にとりこんだ塩分は鰓の特殊な細胞から排出しています。逆に淡水魚は、水ぶくれにならないように、水はあまり飲まず、大量のおしっこをして水をどんどんと排出します。またおしっこで体の塩分が排出されないように同じく鰓の特殊な細胞で取り込んでいるのです。淡水魚と海水魚が別々の生活をしているのは、このようにまったくちがった体の仕組みを持っているからです。ウナギやボラ、スズキなど、海と川の両方を行き来できる魚は、この両方の機能を持って使い分けたり、成長ホルモンの分泌を調節するなどをして体液の浸透圧調節をしています。しかし、大半の魚は、このどちらかの仕組みしか持たないため、海水魚は淡水に、淡水魚は海水にはすめないのです。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
O
 o        マリンワールド海の中道   
 ゜。.>゜))))彡  (海の中道海洋生態科学館)
    高 田  浩 二 aed07754@nifty.com
 〒811-0321 福岡市東区西戸崎18-28
 Tel 092-603-0400  Fax 092-603-2261

 水槽の写真もいただきました。ありがとうございました>高田様。

 いずれにしても、淡水魚と海水魚を1つの水槽で飼えることが、「パイウォーターの奇跡の効果」の根拠にはならないということです。元ネタは楽天に出ていた宣伝なのですが、ペットボトルの水については成分の分析をしているのに、水槽の水については何もしていません。また、もともと水槽の水は、「海水をパイ化」したと称しています。ペットボトルの水とは相当成分が異なっても不思議はないし、具体的にどういう操作をしたかは不明ですが、魚の生理食塩水濃度が実現したと考えるのが、最も合理的な説明だと思います。

Q. トルマリンは水を電気分解しますか?永久に電流が流れるというのは本当ですか?

A. 両方とも嘘です。トルマリンを水に入れると、水のpHが少しアルカリ性になって、微量の水素が発生するという報告があります。トルマリンの成分のアルカリ金属が水に微量溶けたと考えると説明のつく現象です。水を新しいものに取り替えれば少しずつ成分が溶け出すと予想されますが、トルマリンは永久機関ではありませんから、永久に微少電流が流れるようなことはありません。

 なお、トルマリンを水に入れたらどうなるかについて、測定した方がいまして、当方の掲示板のメッセージ番号657に書き込んでおられますので、こちらに転載しておきます。

[657] トルマリンからのナトリウムの溶出 by ばかし さん

トルマリンが水を電気分解するとおっしゃる方がいっぱいいらっしゃって、当方辟易しております。で、今日ついでがありましたので、トルマリンからどの程度、pHをあげる原因になるであろうナトリウムが溶出するか、簡単な実験をしてみました。

1. ブラジル産トルマリン(粉末(粒径は不明))1.0 gをMilliQ水10 mlに分散。
2. 5分間放置、0.45μmのメンブランフィルタでろ過
3. 原子吸光にてNaを定量

その結果、溶出量は0.06 mg/g でした。このときのpHは正確には測定しておりませんが、別の実験から9-10程度と思われますので 、オーダー的には溶け出したナトリウムが単純に塩基として機能しているとして良いと思います。

 トルマリンは、ものによって組成が多少ことなりますから、溶けやすさに違いがあったり、溶けるイオンの種類に違いがあったりすることが予想されます。いずれにしても、トルマリンのミラクルな効果を云々する前に、水の成分の元素分析をやるべきでしょう。トルマリンを入れた結果できた水は、成分と濃度がわかってしまえば、試薬と蒸留水を使って同じに作ることができます。

top pageへ戻る

水商売ウォッチングに戻る

Y.Amo /
当サーバ上のページに関する問い合わせや苦情のメールは公開することがあります。