水商売ウォッチング:その他の活水器

コスモアート・ジャパン(株)&オーセンネットショップ(2002/10/06)

【注意】このページの内容は商品の説明ではありません。商品説明中に出てくる水の科学の話について、水・液体の研究者の立場から議論しているものです。製品説明は、議論の最後にある、販売会社のページを見てください。

 扱っている製品が同じなので、2社同時に眺めてみる。「カーツ活水器」という、蛇口部分を取り替えて水流に空気を送り込むタイプの活水器である。オリジナルは、コスモアート・ジャパン(株)で、販売ルートの1つがオーセンネットショップらしい。 訂正:下の項目の4,5,6は、カーツの発売元であった大揮産業商事(有)によるもので、コスモアート・ジャパンはカーツを仕入れて売っていただけである。

 まず、コスモアート・ジャパン(株)の説明を読むと、

4. 流水を内面の壁に衝突させ、振動エネルギーを通常の水道水の100万倍に高めます
 
5. 活性化された水は流水時にイヤなカルキ臭や不純物を、気化排除します
 
6. 活力ある美味しい水となり、振動エネルギーによって生体細胞を共振させ活性化します

 という説明が出ている。これ以外は効果の説明になっている。この説明での「振動エネルギー」というのが意味不明である。水の振動というと、まず思い浮かぶのは、水分子内のOH伸縮振動や変角振動だが、「振動を高める」ということ自体が意味不明である。分子内振動の振動数は分子の形と水分子がおかれている環境で決まるのであって、水を激しく流した程度では変わらない。この「100万倍」がどういう測定から出てきた数値なのかがまったくわからない。従って「活性化」の中身も不明である。「振動エネルギーによって生体細胞を共振させ」ということも起こりようがない。共振するためには、共振させる相手(この場合は細胞)が固有の振動数を持っていて、それと同じ振動数で揺さぶってやる必要がある。しかし、細胞固有の振動数など存在しない。細胞は、多数の分子からできており、それぞれの分子がいろんな分子内振動をしているので、ある分子の振動モードが吸収可能なエネルギー(赤外領域)というものを考えることは可能であっても、生体細胞を共振させるということはあり得ないことだ。大体、組織によって細胞の大きさも性質も全く違う。いずれにしても、分子の振動以外に何か振動するものを想像しているのであれば、何が振動しているのかをまずはっきり書くべきだろう。

 さて、上記の宣伝はこの程度で済んでいるのだが、これが、オーセンネットショップの方では、さらに内容が追加されている。

 まず、「ボトリングしてある不自然な水」「アルカリイオン整水器で作られた、不自然な程に電離した水」「フィルターを通してあらゆる物質を取り去り、せまいところをあまりも短時間に、無理に通り抜けたために、活性力が落ちた水」という記述が出てくるが、これらの説明自体が意味不明である。ボトルに入っていようがいまいが、水は水でしかない。アルカリイオン整水器を使ったところで、水の電離は水に溶けている電解質の量と種類で決まるだけである。水に「活性力」など存在しない。フィルターを通ってきた水は、単に不純物が除去された水でしかない。

 その次のフレコミはこんな具合だ。

4. 滝野の原理によって活性化された「カーツ水」は、みずから塩素やトリハロメタンなど気化、排出し、有害な物質さえも無害化してしまいます。
5. 「カーツ水」は「波動エネルギー」を持っています。
6. 波動エネルギーを持った「カーツ水」は、人間の体内に存在する70%以上の水と共振し、細胞を活性化させます。

 塩素やトリハロメタンの排出と書いてあるが、どうやって確認したのだろうか。使用前と使用後で濃度を測って確認しないとこんなことは言えないはずだが、測定結果はどこにもない。「波動エネルギー」が、例の「波動」であれば少なくとも我々の知っている科学の範囲内には入らない。また、「水と共振」も意味不明である。「具体的に水のどの振動に対してエネルギーを与えるのかを示さないのであれば、「共振」に言葉の遊び以上の意味はないのだが。

 さらに驚きなのは、

2. 衝撃によって、プラスの水素イオン(H+)が一部蒸発してペーハーが上昇します。

である。高校の理科の教科書にあるように、水素原子は、原子核が陽子1個で、その周りに電子が1個ある構造をしている。プラスの水素イオンとは、水素原子核つまりむき出しの陽子一個のことである。普通に蒸発してくるような物ではない。この点で、水素イオンは、例えば、ナトリウムイオンNa+などと同じように考えることはできない(Na+であれば、外側の電子が1個とれても、原子核は残りの電子に取り囲まれている)。水の中では、水素イオンは水分子と結合して、H3O+の形で存在している。イオンの陽子は、水分子の電子雲に取り囲まれた形になっていて、決むき出しの陽子として存在しているわけではない。

 クラスターが小さいという宣伝にも根拠はない。液体のままで水クラスターのサイズを測定する方法など存在しないからだ。

 「空気とバブルすること(カーツの原理)」と書かれているが、「カーツの原理」って何?少なくとも物理学事典には載っていなかった。

 ところで、この活水器とほとんど同じ状態を実現できる実験器具に「アスピレーター」がある。蛇口につないで使うのだが、活水器の説明図面で番号1で示された先に、減圧したい容器をつないで水を流すと、容器から空気が吸い出されて水と混じって勢いよく排出される。有機溶媒などを飛ばすために減圧すると、空気と混じって出てくる水に溶媒が混じって出てくる。そのまま環境中に流すとまずい場合は、水を閉じこめて循環させる方式の装置を使って、別途廃液処理をする。このフレコミのような水が本当に実現して「有害な物質さえも無害化」してくれるのであれば、廃液処理がいらなくなって、実験をしている我々は非常に助かるのだが・・・・・今のところそんな夢の処理方法は存在しない。

【2013/08/03追記】

 コスモアートジャパンから次のようなクレームが来ました。これに伴い、記載の一部を訂正しました。

天羽様


最近、ネットで
http://www.cm.kj.yamagata-u.ac.jp/atom11archive/wwatch/others/comment_11.html
のページを発見し、記載内容に間違いがあり、訂正をして頂きたく、メールを差し上げました。

コスモアート・ジャパン(株)&オーセンネットショップ(2002/10/06)
のコメントについて


扱っている製品が同じなので、2社同時に眺めてみる。「カーツ活水器」という、蛇口部分を取り替えて水流に空気を送り込むタイプの活水器である。オリジナルは、コスモアート・ジャパン(株)で、販売ルートの1つがオーセンネットショップらしい。


と記載されておりますが、
カーツ自体は当社で仕入れて販売しておりましたが、
オリジナルは、コスモアート・ジャパン(株)で、販売ルートの1つがオーセンネットショップらしい。
と言う部分は推測であっても完全な間違いで有り、訂正、又は削除をお願いします。

追記
カーツの発売元は大阪府羽曳野市にあった大揮産業商事(有)で、その後、社長が死亡され、2〜3年後に廃業、東京の代理店が引き継いだと聞いております。

4、5、6の説明文は、大揮産業商事のカーツのカタログに記載されていた内容で有り、当時の大揮産業商事(有) 澤社長の説明文です。

赤字の部分の訂正がなされないで公開が続いた場合、記録として公開されている天羽氏に対して、大阪地裁に訴訟をさせて頂くことになります。

コスモアート・ジャパン株式会社
代表取締役 安西憲雄
558-0004 大阪市住吉区長居東3−20−16
mail: cosmoart.jp@cosmoart-japan.com
tel:06-6609-2611 / fax:06-6699-6672

 当時は、同じ製品の説明が2カ所に出ていて、ウェブを見てもどちらがオリジナルかわからないので「…らしい」と書いた。が、当時であっても、別の開発元(特にコメントをつけた宣伝内容を書いた会社)がわかっていれば、そのように書いたはずである。もちろん、今でも、事実関係が間違ったままにしておくつもりはない。

 かなり時間が経った後ですが、本当の開発元についての情報提供はありがたく受け取って早速記載に反映させた。delタグで挟んで打ち消し線で削除し、追記した。

 メールには「赤字」とあったが、私は plain text でやりとりする設定にしているため、メールの本文そのものの文字修飾情報は全く見えなかった。メールでのやりとりの時には、相手の環境次第で文字修飾は見えないことあるので、文字の装飾を前提にした書き方をしない方が安全である。だから、赤字、の部分で行き違う可能性もあるが、文章を読んでわかった範囲で対応した。

 と、これだけにしようかと思ったのだけど、「大阪地裁に訴訟をさせて頂くことになります」について検討しておく。

 このような内容が届いた場合、私の判断は「相手は訴訟の準備ができておらず言ってみただけ」となる。なぜなら、このメールには事実関係が書いてあっても、訴訟になった場合の争点になりそうな内容や法律構成を窺わせる記述が全く無いからである。相手はまだ弁護士に相談すらしていないと推測する。プロがついていればもうちょっと法的な内容を書いた手紙が届くはずだからである。

 本当に恐いのは、訴えるぞとは全く書いてなくて、かつ、行為が法的にどういう意味を持つかを丁寧に記載したものが届いた時である。つまり、読めば相手が出しそうな訴状やら準備書面の内容の見当がついて、どういう法律構成で争うつもりかもわかるような内容ということである。こういうお手紙が来たら、相手は既に弁護士に相談済みで充備万端整えているはずなので、こちらもプロのところに持ち込んで対応を検討しなければならない。

 事実と違うことを出しっぱなしにするつもりは無いから、訴えるとか書かなくても普通に「会社が違います」と言ってくれれば対応はするわけで、何もわざわざ、準備できてなさそうにみえる訴訟なんか言い出さなくても良いのにねえ。

 

 

 

 

 


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