【注意】このページの内容は商品の説明ではありません。商品説明中に出てくる水の科学の話について、水・液体の研究者の立場から議論しているものです。製品説明は、議論の最後にある、販売会社のページを見てください。
KISEKISUIという水を販売しているのだが、トップページのフレコミはこんな具合である。
光量子エネルギーによって生まれたKISEKISUIは100%水、完全無添加。
1,世界最小レベルの水分子、2,独自の界面活性力、3,豊富なエネルギー触媒、4,美しい結晶構造、5,抗菌作用・・・5つの奇蹟であなたの肌を応援します。
100%水、完全無添加が本当なら、中身は単なる超純水か蒸留水だろう。そうであれば、水そのものの通常の性質以上のことが出てくるはずがない。ということで、最初の説明と、列挙されている奇跡の内容が見事に矛盾しているところが第一の見所である。
詳しい説明は、「KISEKISUIのご紹介」をクリックすると読むことができる。列挙された5つの奇跡についてそれぞれ説明があり、>>reportの部分をクリックすると、もっと詳しい説明が読める。
「世界最小レベルのクラスター値41Hz」を見ると、お約束のNMRの半値幅でクラスターの評価を行っている。もちろん、この測定では、水のクラスターに関する情報は得られないから間違いである。松下説に乗せられた企業がまた1つ、というところか。しかし、NMRを誤解するのはまだ仕方がないとしても、クラスターの単位をHzで表すのはどうかと思う。Hzって周波数の単位なんですが・・・。NMRの説明も、微妙に違っている。
測定対象物質に外部から電磁波エネルギーを与え、原子核と電磁波とが共鳴する波長の微妙な変動をとらえて、物質の構造を解明することができる。また、電磁波エネルギーによって物質の原子核の平衡が破れてから、再び平衡を取り戻すまでの時間(T2)を測定することで物質の状態を知ることも可能である。T2は繁殖幅(Hz)から逆算して求められる。
原子核と電磁波が共鳴、じゃなくて原子核の核スピンと電磁波が共鳴、が正しい。また、NMRの緩和時間にはT1とT2の2種類があって、分子運動の状態を反映するとしたら、T2ではなくT1の方である。その上、半値幅が「繁殖幅」になってるから、何も知らない人が読むとさらにわけがわからなくなりそうだ。実験結果の表もいい味出している。「純水 97Hz T2=3.3mm秒」「41Hz T2=7.7mm秒 」と書いてあるけど、「mm秒」って単位は一体?いつからHzの逆数の次元が、長さ×秒になったんだか。高校の物理でいいから教科書読み直しなさいと思ったり。
「独自の界面活性力」の説明は、読んでみたがわけがわからない。油との混じり具合がいいという実験をそのまま認めたとしても、肌にいいという結論が素直に出てこないのだ。皮脂とKISEKISUIが混じり合って肌をガードすると書いてあるが、なぜ、皮脂だけではいけないのか?普通に考えれば、必要な分だけ皮脂があれば、肌はガードできるだろうし、肌に潤いをもたらす水分は体内から供給されるから、わざわざ外から水を与える必要がないのでは?しかし、この疑問に答えてくれるような説明は見あたらなかった。
「類をみない50万個のエネルギー触媒」は、一体どこからやってきたのかが謎である。
KISEKISUIは世界で初めて水の中の有効成分の結晶、エネルギー触媒の状態を物理的に見る事が出来た水です。良い水と言う評価をされる水は多少のエネルギー触媒が存在する事が協力機関(大学、研究機関)の分析で判明さています。
「100%水、完全無添加」の水に「有効成分の結晶」 が入っているというのは矛盾している。また、エネルギー触媒の実体が何であるかが全く書いてないし、「物理的に見る」の方法も不明のままである。で、これが肝心のことだが、水の中に「多少のエネルギー触媒が存在」することなど、水の研究をやってきたけどきいたことがない。一体どこの大学や研究機関が分析したのか知りたいものだ。ひょっとしてイオンド大学ってことはありますかね?ともかく、こういうことを書くのなら、どこの誰がどんな方法でやったのか、どの論文にその結果がでているのか、きちんと示すべきだろう。ただ、ここまでの科学技術の説明の間違いの多さを見てしまうと、100%水を作っているつもりでも製造過程で何かコンタミしていないか、不安になるのは私だけではないはずだ。
その次の、
食物や水から採取されるミネラルや栄養分が血中に入る時の絶対条件は
1、エネルギー触媒の作用で酵素ができ、摂取した全ての養分が有機物となって血中に入ること。
2、その有機物を生体中の必要とされる細胞箇所に行き先を指示する情報触媒(血中に存在するタンパク質の結晶)があるか? です。
は、今の我々が知っている生理学とはかけ離れた説明である。栄養分を体内に取り込める状態にまで分解する酵素は、わけのわからないエネルギー触媒とは無関係に、我々の体内には普通に存在する。「栄養分やミネラル」と言っておきながら、「有機物となって血中に入る」って一体?ミネラルが有機物に化けることなどないはずだが。また、栄養分の行き先を指示する情報触媒が存在するという証拠もない。とりこんだ栄養分は血液の循環によって輸送され、それを必要とする細胞が適宜取り込んでいる。「血中に存在するタンパク質の結晶」も間違いで、血液中の蛋白質は結晶になっているのではなく、普通に溶けてたり、あるいは赤血球などの膜構造の中に閉じこめられた形で分散している。だいたい、蛋白質が機能を発揮するには結晶になっていたのではだめである。「行き先を指示」って、郵便物や宅急便の配達じゃあるまいし。
「美しい結晶構造」のところでは、
ご存じでしょうか?水にも結晶があることを。
水の結晶は氷だー!!
普通の水は時間の経過とともに性質が変化(腐る)しますがKISEKISUIの結晶構造は17面体。酸素のラジカルも起きないので長時間、壊れにくく安定した性質を維持できるのです。
17面体も意味不明だが、大体、製品の写真を見る限り、KISEKISUIは液体でしょ。結晶のときの話なんて関係ないじゃないか。
詳しい説明を見るとさらに意味不明な説明が並んでいる。
普通の水分子(結晶)は何らかの反応で水分子が小さくなりますが
分子のサイズは一定だ。水の結晶は氷だし、氷になったからといって、またその氷を砕いたからといって、分子の形も大きさも変わらない。「分子」の概念わかって書いてますか?
ピュアウオーター、純水等、一般的な物質は保存期間中に酸素のラジカル(急進的、過激なさま)ができ
「ラジカル」は学術用語で名詞だ。「急進的、過激なさま」と訳すことはない。
しかしKISEKISUIの結晶構造は、壊れにくい17面体の立体構造として存在するため長時間保存しても変化がないことが実験から明らかにされました。
一体どういう実験をしたのか詳細情報を希望。17面体であることと、壊れにくいということの両方をどうやって実証したのだろうか?KISEKISUIは瓶の形状から見るに、液体として売られているのだが、結晶構造が特異であったとしても、それと液体の性質は無関係じゃないの。
近赤外スペクトル測定の説明のところにある、「240nmから短波長側」は、そもそも近赤外じゃなくて、紫外線の領域である。
「あの、O-157菌もK.O.!」の説明も、ちょっと乱暴すぎる。「大腸菌を100個以上入れ」と書いてあるのに、実験結果のグラフを見ると、実験開始時で350,000個/mlとなっている。何mlで実験したか知らないが、液量の合計によっては、菌の個数はこの数倍から数十倍になる。そりゃ、確かに100個以上に違いはないけど、実験の記述としては、数が違いすぎる。「大腸菌の分裂状態が見られず、約2時間30分で全菌は一同にその動きが停止しました。 」と説明してるのに、実験結果のグラフではあら不思議、数そのものが0に減っている。環境が悪ければ菌は死なないまでも一時的に増殖をやめるんだけど、条件が良くなるとまた増えたりする。この場合は0個になったとはいわない。一体どうい実験結果を表したグラフなのだろうか。対アクネ菌の実験写真もよくわからない。最初の写真を見た限りでは、結構大きな粒々が写っているので、菌のコロニーができていると思われる。ということは、透明に見えてはいるが、シャーレの中は寒天培地を使っているのだろう(そうでなければ、菌は液体中に分散して、単に液が濁って見えるはずだ)。さて、そのまま2時間おくとどうなるか。たとえ菌が死滅したとしても、既に繁殖した菌体自体がその場で消滅するわけではないから、見た目はそのままのはずである。つまり、死骸が残るはずなのだ。なのに、KISEKISUIを使った方の写真には菌のコロニーがまったっく見あたらない。この水の中では死ぬなり死骸が全部消滅します、というのなら、そりゃなるほど確かに「奇跡」だろうけども、今度は科学の範囲に入らないような。
会社概要の説明もなかなかすごい。
光量子エネルギーという科学の最先端は
って書いてある。確かに、フォトンのことを光量子と呼ぶけど、普通にただの光である。「 この最先端の技術、最先端の理論」の中身をぜひ知りたい。宣伝を見た限り、我々の知っている光量子とはかなり違う話に見えるので。
すべては、わたしの本業である自動車関係の仕事の中での『排気ガスを無くしてしまう量子エネルギー』との出会いから始まりました。
驚くことにこのエネルギーを燃料タンクとエアーフィルターに取り付けるだけで、マフラーからの悪臭と黒煙が消えてしまうのです。
環境問題が一気に解決ですな。我々の知っている光量子と別物らしいのが惜しいところ。ところで、エネルギーって取り付けるものでしたっけ?
わたしとしては少しでもこの量子エネルギーの理解者を増やしたい気持ちで、まずは家族や知人で化粧水として使ってみたのです。
化粧水の前に、排気ガスの方を立証してトヨタにでも持ち込んだ方が、理解者が一気に増えると思うんだけど。その前に理論詳細の出版も必要かと。テクノロジーがスゴイというフレコミの割には、実現しているのが「化粧水」で、ハイテクとはほど遠い評価と体験談しかないという落差が気になる。
新しいエネルギー技術の理解者を増やすことは、頭で理解してもらうことではなく日常に受け入れられることなのかもしれません。
違うと思う。化粧水を使った結果得られるのは、エネルギー技術の理解じゃなくて、この化粧水は自分に合うかどうかという体験だろう。ちっともエネルギー技術そのものの理解が深まらないのだが。
化粧水としては、使って具合がよければそれでOKだけど、宣伝内容がこれでは、製品開発のもとになっている科学技術のレベルが疑わしくてとっても不安である。宣伝内容を公開する前に、自社技術陣のチェックを受けた方がいいんじゃないの。
【追加情報】(2002/08/21)
この件について、当サイトの掲示板の[709] で、shuさんが、以下のような書き込みをしています。
プラスMで気になったことが
アクネ菌とはおそらくPropionibacterium acnesのことだと思うのですが、
この菌は絶対嫌気性菌でなおかつグラム陽性球菌のはずです。
また、血液不含の培地にはほとんど発育しない菌であり、なおかつ
写真のような大きなコロニーはつくりません。
菌が発育している培地のコロニーは100くらいだと思いますので、
その取り扱いによっては、イオン水の効果抜きに、空気中の酸素で
簡単に死んでしまうことでしょう
私は菌の専門家ではないので、上記の記述内容を自分で確認するには、図書館に行くか専門家に訊くかしかありません。が、面白い指摘であり、検討する価値があると思うので、ここに掲載します。どなたか真偽を確認されましたら、ぜひお教えください。