【注意】このページの内容は商品の説明ではありません。商品説明中に出てくる水の科学の話について、水・液体の研究者の立場から議論しているものです。製品説明は、議論の最後にある、販売会社のページを見てください。
職場の机をパソコンが占める時代 筆記具は「癒やし系」
ゼブラ(東京)は、1年以上研究した結果、今春、「遠赤外線効果で疲れを癒やす」ボールペンとシャープペン、「サーモアルファ」を発売した。遠赤外線を出す鉱石トルマリンを粉末にして握り部分に練り込み、指を暖めて血行を促進、疲労感を軽減するという。
(中略)
クツワ(大阪)も今春、握り部分にマイナスイオンを発生する天然鉱石を練り込み、「使えば心身をリラックスさせる」ボールペンとシャープペン、「ドクターイオン」を発売した。結果は「今も生産が追いつかない。創業約90年のなかで有数のヒット商品」(商品開発部)となり、6月にはシリーズ新商品を出した。
掲示板への投稿があったのでコメントする。
遠赤外線の効果であるが、別ページでも書いたように、電力を投入して発生させた場合については、加熱以上の効果があるという話は今のところない。また、ある温度の物質は、黒体輻射といって、赤外線も遠赤外線も出しているが、遠赤外線だけを分けて測定した例はない。ときどきサーモグラフを使った温度分布の絵を出している会社もあるが、測定結果には赤外線も混じっている(でもこれは赤外の方がメインじゃないか)から、その測定結果で遠赤外線の効果が・・・という話をするにはそもそも無理がある。
熱源は人体しかないわけだから、断熱性のある材料で作れば、総金属製にするよりは指の冷えが多少はマシにはなるだろう。別にトルマリンである必要はまったくない。トルマリンは焦電性を持った絶縁体だから、金属よりは断熱性があるだろうが、トルマリンより効率のいい断熱材料はいくらでもある。もっとも、ペンの熱容量を考えると、持ったらすぐに暖まりそうだし、指の冷えにどこまで影響があるのかが謎である。ゼブラが1年かけて何を研究したのか知りたいところだ。
で、どんな材料を使ったとしても、普通のオフィス環境ではペンよりは人体の温度の方が高いことの方が多いから、トルマリン入りのペンよりは人体の方が赤外も遠赤外も放射してるはずである。ペンを持った瞬間、ペンの方が赤外線や遠赤外線を吸収するんじゃないかと思うが・・・それよりも接触による熱伝導でペンの温度が体温に達するような気が。
ちゃんと遠赤外線を発生させて照射し何が起こるかを確認してからでないとできない話と、単に保温性がいい材料を使ったときの効果の話を混同するのはもういい加減にやめてほしい。