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apj (2008/05/15 20:45)
Kei (2008/05/07 21:23)
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じゃあ、普通の人に必用な(義務教育で身につけるべき)絵を描く能力ってどんなもんだろうと考えてみた。自分から進んでスケッチブックを持って出かけたり、好きな漫画やアニメの絵を描いたりする人たちについては、ご自由にどうぞ。その中で、上手くなりたいと思った人は、本を買ったり誰かに習ったりして腕を上げていくだろう。じゃあ、特に絵を描く趣味もない人にとって必用な絵画の能力って何だろう。
実は同じようなことを国語についても考えていた。漢字の読み書きや日本語のてにをはの使い方を学ぶのは最低限必要なことであるとして、誰にでも必用なのは「文章で他人に何かを説明する程度の作文能力」ではないかと思う。詩や短歌や小説など、文学的なものを書くのは、それが好きな人に任せておけば良い。そういう趣味の無い人が日常生活で必用になる作文能力は「文章で自分の考えを伝える」「マニュアルとなるような文章を書く」ということだと思う。感情を伝える文章よりも情報を伝える文章の方が、実用という点では大事なのではないか。
国語と同じに考えるなら、絵画の場合は「人に絵で何かを伝えることができる」というのが到達目標になるのではないかと思った。デザイナーが描いたようなきれいなものである必用はないが、最低限、図と簡単な文章で何かを説明できる程度に描ければいいのではないか。すると、絵画の場合、「漢字の読み書き」「てにをは」にあたるものをまず学ばないといけないが、それが何になるのか、美術には素人の私にはよくわからない。
こんなことを考えているのは、ついこの間illustrator CS2を買ってしまい、テキスト片手に使い方の練習の真っ最中だからかもしれない。思い通りに動かせないベジエ曲線に悩んでみたり、下絵取り込んでトレースの練習をして肩が凝ったりしている^^;)。実際、説明用の図をイヤでも描かなければならないことは時々あるのだ。
そういえば、広島大学で助手をやっていたある日、教授に呼び止められたのを思い出した。
「緊急事態なの。絵心はある?」
「え、絵心……ですか?」
言われた側としては、「緊急事態」と「絵心」が一体どう結びつくのか状況がわからず、一瞬固まってしまったわけだが。大体、そんなことを急に言われても、助手募集の書類で求められた内容に「そこの教授と一緒にやっていけること」「学生実験の指導ができること」「主要な業績」なんてのはあったが「絵心」は無かったぞ……、と、とにかく事情をきいた。学会のポスターの原稿の発注を忘れていて、3日のうちにMacで作ったファイルで印刷所に入稿しないと間に合わないのだが、既にデザイナーを捜す余裕もなく、Mac使いは私以外にほとんど居ないという状態だということだった。何とかするしかないので、バイト君に頼んで記念講演をする予定のホールの写真をデジカメで撮ってきてもらい、ぼかして背景に埋め込み、適当にグラディエーションをかけて、会場やら会期やら特別講演やらの情報をテキストで打ち込んで、ポスター原稿をでっち上げた。会議でOKが出たので、そのまま印刷所に突っ込んで何とか間に合わせた。後でその原稿を出版社の人に見せたら「フォントを変えすぎてないのがいい」というコメントをもらった。素人がやると、ついついフォントをあれこれ使いすぎてデザインが崩れがちになることが多いらしい。私は自分のデザイン感覚に自信がなかったから余計なことをせずに、ヒラギノのみ、強調したい一部を角ゴシックで、残りは丸ゴシックで作ったのだが、それが逆に良かったということのようだ。
こんなことがあったから、山形に移るとき、教授には「後任の助手募集の書類には条件として絵心も付け加えてくださいね」と言って出てきたのだった。
私の美術の成績は正直言って普通レベルやや下。丁寧に描くとそれなりだが、写生はキライではないが特に上手くもない。好きな漫画やアニメ絵は、描いてもバランスがくずれてうまくいかない。どうもうまく線が決まらないし、そもそもデッサンの基礎がなってないらしい(汗)。
それでも、上に書いたように、何かを作る羽目になることだってある。美術の時間に、芸術的な絵だけじゃなく、ポスターを描くといったことをさせられたのが、多少は役立っているように思う。学校の授業で身につけなければいけないことは、芸術的な作品は描けなくてもいいから、実用上最低限見苦しくないデザインができるようになることじゃないかと思ったりもするのだけど……。美術の先生の意見をうかがいたいところである。
posted at 2006/01/16 03:29:56
lastupdate at 2006/01/16 03:37:02
疑似科学批判のように何が悪いか問題がはっきりしてませんから。
でも個人的には反酒井式派ですね。
技法だけを習得させたいのなら、
デッサンばかりやらせればいいのでは?
見たものをそっくりそのまま細部まで描けるようにすればいい。
でも絵画ってそれだけではないでしょう?
私の考える、義務教育レベル(中学くらいまで)で最低限身につけておくべき絵画能力は、空間的な物の配置やそれらの関係を、見て理解し、理解したそれを他人にわかるように表現する、というものです。
なぜなら、社会人、一般生活者、志願教育を受ける者は、「どこかへ行く」「どこかへ行かせる」「何かを持ってくる」「何かを納める」などの行動を自律的に行う必要があり、そのためには、空間における物の配置と関係を理解するとともに、その理解を他人と共有することが欠かせないからです。
端的には、地図を読み、地図を描くこと。――これは人としてぜひとも身につけておかなくてはなりません。生活するうえで重要なスキルですが、かなり欠けている人が多いのも事実です。
また、ある場所での作業において「動線の感覚」を持つことも、効率や安全の面で有効ですが、これも「その場の見取り図」を描ける能力のあるなしに影響を受けます。
以上のことから、『物の配置』(と単純化しますが)を描写する能力の習得は必要だと、私は考えます。
より基本的な技術としては、ある物体をあえてしげしげと見て、それが立体的にどんな形状になっているのかを意識的に理解する訓練、それからそれを「輪郭」と「光と陰」という“文法”で形にする訓練は必要でしょう。
その他、教養として、さまざまの美術の領域やその技法を知ることや、古今の名作を沢山見ることは、大人になるためには重要ではないかと思うのですが、これは私が美術が好きな人間であるための好みの偏りなのかもしれません。
(……細かい好みを言えば、遠近法の概念や実践はやっておいてほしいと思います。『物の配置』に付随した単元になってしまうかとは思いますが。――といいますのは、某所で『地震雲』というものを信じ込んでいる人々に困っておりまして、そういう人の中には「遠近法で見た平行線状の雲群」を「放射状の雲」と誤認する人が多いのです)
国語を学べば、世の中に小説や詩や評論といった表現の仕方があることを知るし、漢字や文法も身につけることができますが、だからといって、全員が進んで文章を書きたがるわけでもないし、文章を書く楽しみがわかるわけでもない。絵の場合だって同じだろうと。
おこぜさんがおっしゃるように、空間を把握して誰かに図で説明することができる、というのは、芸術性を抜きにしても、生きていく上で必用ですよね。まさに「文法」を知るということなので。名画の鑑賞は、文学を読むのと同じで、教養としては大事でしょう。鑑賞がゼロではいけないから、全員で美術の資料集なんかを見ていろいろ教わるあたりがミニマム。その後もっと高い画集を見たり、美術館に出かけたりするのは、1クラスのうちの一部の人でしょう。
母が言うには学校で学ぶべき美術の範囲は「デッサン力」。
それ以外は指導はするけど文句はつけないって言ってます。
つまり、デッサンは見たものを体(手)で再現する能力なわけで、図・絵を書くには最低限必要なものですが、それ以降は想像力・表現力の範疇なので必要な人には必要ないからみたいです。
そうすると、学校でやらなきゃいけないことはやっぱりバランスが大事になってきますね。
まず、デッサン力を訓練する、と。漢字の書き取りやら文法の学習にあたる部分ですね。でもそれだけだとつまらないから、他の人の絵を鑑賞する(文学を読んだりする)、自分でも描いてみる(作文する)。
図工の授業って、漢字の書き取りや文法にあたるデッサンをきちんとやる前に、「見たまま描いてみなさい」てなことになってたような……そりゃやっぱり敷居が高くて無理な罠。ここまでは基礎のデッサン、それで身につけたことを使って風景とか静物とか描いてね、ってなってなかったですよ。私が学校に通ってた頃は。
小学校の図画工作に関しては、教える側に素養があるわけではないので、あんまり期待しない方がいいかも(^^; 下手な子もすくい上げられないし、うまい子も「絵が子どもらしくない」とか言って萎縮させられます。
要は指導の仕方の問題だと。
デッサンはまずは好きに書かせるのだけど、そのうえで「こう書くんだ。こうしたほうがいいよ。」加えて高学年になったら「人間なら骨格とか考えてデッサンしようね」とか指導するんだそうです。
「あらあら、これじゃあ軟体人間ねぇ」みたいに。
色の塗り方とかそういうのは指導するときの言い方を「こうする方法もあるね。こういう作品があるから参考にしたら。」みたいな言い方に変えるそうです。てゆか意識して変えてるわけではないらしいですが。
また、正直この辺は逆に子供のやったことに驚かせられ参考になる事も多いのだそうで・・・。
作品鑑賞は、絵を描くときの参考というよりは、感性を磨くとか情操の部分とかが大きいそうです。
「こういう手法があるんだ」<「何を感じるか」
です。
まぁこれはうちの母のやり方(現在は保育園のやとわれ園長)であって、先生にもいろいろいるんで・・・とは言っておりました。
幼稚園でアンパンマんの使用許可をとっているらしく、年末に帰ったら、母ったら知らんうちにアンパンマンがすごく巧く描けるようになってました(苦笑)。
>幼稚園でアンパンマんの使用許可をとっているらしく
使用許可が要るんですか。言われてみれば要りそうな気も。幼稚園や保育園あたりだと、他にはポケモンとかですかねぇ。
子供が勝手にTV見てうろ覚えで描いたものでも、外に出すと問題になるのだろうか。
両方とも使用料をごくわずかですがお支払いしております。商業利用より遙かにお安くしていただいており、ご厚意に甘えている状態ですけど。
もちろん、「使用範囲」というものも決められているそうで、何でもかんでもアンパンマンを使用してよいわけでもないんです。
酒井式は、美術の素養が全くない先生でも、それなりに指導できる(ように見える)のが支持される理由だと思います。また、絵が苦手な子からの評判は悪くないです。自分なりの表現スタイルを持った子たちをきちんを評価してあげられれば、指導の基本が酒井式でもかまわない、と個人的には思います。
とんでもない指導をしている小学校の先生が少なくないので、酒井式のがまだマシ、ともいえます…
「実用上最低限見苦しくないデザイン」能力については、「ノンデザイナーズ・デザインブック」1冊で、かなり向上するのではないでしょうか。
最近「水伝」のことはすっかり忘れて、「酒井式」の議論に没頭しているながぴいです。
のぶさん、
酒井式が問題なのは、単なる「描けない子のための救済措置」の範疇を逸脱しているとこがあるからだと思います。
完成形が決まっていて、それをクラス全員に先生の細かい指示通りに描かせること。これをプラモ作りに例える人もいるようです。
「学校では誰でも半強制的に席に座らされ、同じ内容の教科書で、全員一緒に説明を聞くのが当たり前だ」との声もありますが、九九や漢字の書き取りといった暗記科目と図工や美術を同列に扱うことはできないと思います。
「情操教育」という側面もあるのだから。
しかもプラモ作りのようにして描いた絵を、どうやらコンクールに応募しているらしい。コンクールに応募するような絵に本人のオリジナリティがないというのはなんかおかしいと思います。
(上司の機嫌ばかり気にしている「指示待ち人間」を量産されても困るしねえ…)
この中で「ワープロソフトが使われない」という話をしたのだけど、これも表現力としてワープロでは重要であったレイアウトやフォントの選択、さらには分かち書きといった技術が紙を使わずWebやメールで見るようになったために、下手にレイアウトやフォントの切り替えをしても読む人には迷惑だなってしまって使われなくなった。と論じました。
だからといって文章で表現する限りフォントやレイアウトを無視して良いとは思わないで、それこそポスターを作るとかなれば「分からない・知らない」では通用しないでしょう。
結局、紙で表現する場合の技術・技能とWeb上で必要とする技術は違うということで、学校教育でここまで踏み込めるのか?となると無理じゃないか?と思う次第です。
絵心についてはわたしは完璧に負け組ですからね(^_^;)
ただ、絵の神経と図面の神経が違うのだな、というのは分かってきました。
CAD使いの世界では、はじめの頃(30年前)には紙の図面をディスプレー上に表す形で始まりましたが、近年では図面が対象とする三次元物体そのものをコンピュータ上に作り込む方向になりました。
この結果CADでの入力に図面のセンスは不要になってしまった。
実際にやってみると(平面で表現する)図面は三次元構造物を想像する能力を要求するので、動く部品を表現するのは極めて難しくCADで部品を組み立てる方が合理的だ、となりました。
つまりは絵においても文章同様に用途によって作り方も使い方も違ってくる、となってしまいます。
学校では絵や文章の技術の種類を教えるのは良いかもしれません。
実務的には別にトレーニングするより手がないように思います。